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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第4章 相棒

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第134話 懐かしき償い

 ◇◇◇大輝目線◇◇◇


 レヴェルの居場所がわかった。


 それを喜んでいいのかわからない。


 俺の前世は、たしかにダインだった。


 その名前が今でも懐かしく思う。


 今となっては夢物語。神から告げられた最後の人生。


 俺は上手く波に乗れているだろうか。


 考えるだけでも、レヴェルに見せる顔がない。


「レヴェル……」


 記憶の螺旋を戻していく。今いる世界に生れ落ちた日を思い出す。


 俺は……。私は、ドラゴニュートの父と人間の母の間に生まれた。


 家はそこまで裕福ではなかった。


 そして、私はその家族の一人息子だった。


 当時から重い圧を受けて、少ない食事で耐える日々。


 やがて私は大人になり、知的生命体には魂を石化できる力があると知った。


 私はすぐに自分の魂石を生成して剣を作った。


 しかし、平穏な日々はそこまで。手にした瞬間重度の飢餓に襲われる。


 ――『我を使いたければ血を得よ』


 その言葉が脳内に流れた時は驚いた。剣に意思などないと思っていたから。


 私は人を殺した。血を集めた。そうしていくうちに、血を浴びることが快楽へと変わる。


「ダインレヴェナント……。そう名付けよう」


 私は剣に名前をつけた。その名前をレヴェルは気に入ってくれた。


 両親は早くに亡くなった。なのに、涙ひとつ流せない自分。


 他人の死。それに哀れみすらも感じない。心が穢れていく。


 その後も戦場に出ては殺しを続けた。


 やがて、剣豪と殺し屋の肩書を得た私は、龍の血にまで手を付けるようになる。


 しかし、同族であるはずの血は身体が受け入れなかった。


 人間の血だ。人間の血が混ざっているから、交わらない。


「中和するものを作らなければ」


 私は、様々な薬を作った。薬学の能力だけが高くなった。


 けれども、納得のいくものはできないまま。


 レヴェルの意見も聞きながら、毒物にも手を出した。


 毒リンゴ。半魚草。リグの実。爆毒。聖水。


 完成したものは、いつの間にか指定劇毒になっていた。


 私が作れば、その即効性から死刑囚に与えられる。


 私が使えば、大勢に被害が出る。


「これで……飲めるようには……なったが……」


 しかし、寿命という限界は近づいていく。


 私はレヴェルを知ろうと残りの時間を使った。


 せめてもの償いをと、彼が集めた数多の命を返還しようとした。


「アルウールバゴダ……」


 私は、ひたすら文字を書き殴った。


 文字が次の世でも忘れまいと、ひたすら書いた。


「アルウルバゴダ アルウールバゴダ」


 戻せ戻せと、元に戻せと……。


「レヴェルディルアグシア アルウールバゴダ」


 レヴェルが得たものを、全て戻せと切に願いながら……。


「イルディルデリア ルスディルデリア」


 血も、肉も奪ったもの全て……。


「アグドリィケ レグズゼリア」


 取り込んだ者の命を全て……。


「アルウールバゴダ」


 元に戻せと、全ての苦しみから解き放てと。


 私は、それだけを願って一冊の本を書いた。


 命が尽きる時、私はレヴェルと約束をした。


 私が戻ってきた時は、彼が嫌うこの詩を歌うと……。


 最後の輪廻を通り、私は日本に生まれた。


 過去を忘れたいと、決別を選んだ。


 俺は工藤家の長男として生まれる。


 四歳だった時、初めて日本語を覚えた。


 それでも、書きなれていたのはバルダ語だった。


 俺が生まれてから四年後に妹が生まれると、家は忙しくなる。


 妹の美香は、本当に可愛かった。


 前世でも、こんな可愛い子が生まれればよかったのにと思うくらい。


 五歳の時、俺は再び異世界に入った。


 そこでセリンという鍛冶師と出会い、剣の業を理解していく。


「大輝はすごいな。弟子にしては出来過ぎている」


「は、はい……! 師匠!」


 その時、俺は初めて血を飲んだ。やはり、この世界が好きと感じた。


 それでも、強制的に日本へ返される。


 血の味を思い出してしまった以上、戻ることはできなくなった。


「俺にとって、美香は特別だ。死んでほしくない……」


 その願いは、叶うわけがなかった。


 俺の前で、彼女は死んだ。俺以外の人に殺された。


「ラグズディルリアラゼシシル」


 彼女は俺が殺した。まるで捏造のような文章。


 それでよかった。そうして、もらいたかった。


 俺はひたすら日本での生活に慣れようとする。


 だけれども、なかなか上手くいかない。


「大輝。無理しなくていいのよ」


「あ、ああ……。そうだよな。ちょっと寝てくるよ」


「大学受験。がんばって!」


 高校での留年含めた四年間。大学生になれば二十歳。


 ようやく馴染んできた時。また訪れた異世界で、ミカエラと出会った。


「お兄ちゃん。久しぶり」


「美香……なのか?」


「うん。今の私はミカエラだけどね」


 嬉しかった。心から、浄化された気がした。


 それでも、血の味だけは忘れられない。


 日本で獲得できなかった自由。憑りつかれたように、浴びた。


「私の血が飲みたいなんて、言わないでしょうね?」


「いや……。飲みたい……」


 俺と美香は、ミカエラは特別なんだと思った。


 彼女の血はとてつもなく美味で、純粋。


 初めてで、全てを理解してくれる味。


「大輝……。戻ってきて……」


 俺が暴走した時も、聖女の力を利用し助けてくれた。


 今の俺を救えるのは、ミカエラしかいない。


 そう思ってしまうのは、浅い夢か、現実か。


 聖域に到着すると、俺はレヴェルを探した。


 きっと、ミカエラなら許してくれる。


 ――――――――――――――――――


『まあ、安心してくれ。血の一滴がなくても問題……』


『なくはありません!』


 ――――――――――――――――――


 彼女がこう言っていても、裏ではしっかりわかってくれている。


 ミカエラは嘘が下手だ。全て顔に出る。


 仲間の中心人物。その中でも姉肌の彼女は、優しすぎる。


「ミカエラ。本当はレヴェルに会いたいんだろ?」


「うん。だって、最初に私の血を献上してくれるんでしょ?」


「ああ。そうだ。の前に、俺の血で回復させてからだけどな」


 広い空間が見えてくる。そこには、捕縛された人々。


 先頭にいる警備員を殴り飛ばし。鎖をほどく。


「もう安心してくれ。ここは俺が引き受ける」


「は、はい……! 助けてくださりありがとうございます」


「お、お名前は……!」


「ダイン・ルーディス。生まれ変わりの殺し屋だ」


 レヴェルはすぐそこにいる。俺は、台座に向かって歩みを進めた。


 懐かしき日の声を求めて……。

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