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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第4章 相棒

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第132話 血に宿る力

 早朝。宿屋から出てセリンの家に向かう。


 今日はなんだか物々しい雰囲気だった。


 セリンの家には、人だかりができている。


 そこには大輝がいないのに……。


「失礼します。通してください」


 人の群れをかき分け、強くもまれながら進む。


 セリンの家には軍のような装備をした獣人が数名。


 きっと警備員か何か。そうなったら、きっと事件が起きたのかもしれない。


 胸が強く押される。顔が不自然に上を向き真っ青な空が見えた。


「通してください……。通して……!」


 ようやく群れの外れへと出た私は、なんとかメウスたちと合流できた。


 私は、メウスたちに事情を聴く。しかし、本人たちも理解できていないようで……。


「朝起きたらこうなってて……」


「メウスもわからないの?」


「う、うん……。肉がどうとかって……」


 ――――――――――――――――――


『ダメよ、あれは人間だから食べられるの。私たちが食べたら、捕まってしまうわ』


 ――――――――――――――――――


 昨日のことを思い出す。すると突然ドスンという音がした。


 何かが落下した? そんなことできる人なんて……。


「やっぱりな……」


「大輝?」


「おはよ。ミカエラ。みんな」


 大輝が人ごみを避けて降臨したらしい。


 それはなんとも大胆な……。場所も手段も択ばないのは、彼らしい。


 そもそもこの人は〝スーパー空気読めない星人〟だからね。


「それで、やっぱりって……」


「昨日の親子がいただろ? きっとその親が通報したんだろ」


「通報って……」


「おい! そこのおっさんたち。さっさと引き返さないと殺す!」


 いや、そこで威嚇するタイミングじゃない気が……。


 獣人の警備員は、それぞれで剣を握る。


 対して今大輝は武器を持っていない。


 ラディルの城から出る際、彼は受け取った剣を預けていた。


 つまりは、今持っているものは赤黒くなった長剣だけ。


「これくらいなら素手でいけるな……」


「え?」


「実を言うと俺も怒ってんだ。今朝、パン屋の店主が捕まったからな」


 それで、飛び火が来ると大輝が直行したらしい。


 警備員の鋭い目。一人が飛び込んでくる。


 大輝は刃を素手でとらえた。兄の血なんて見たくないのに滴り落ちる。


 だけど、本人は痛みを感じていないようで……。


「剣筋が甘いな……」


「なに!? 一般風情が!」


「次はこっちの番だ!」


 滴り落ちた血に火が付く。それは、警備員の身体を焼き尽くした。


 こんな魔法。私が知っているものには存在しない。


 しかも、彼は無詠唱で発動している。


「熱い! 熱い熱い熱い!」


「あはは。よわっちぃな!」


 大輝の笑いがこだまする。火が消えると、警備員は野垂れ動いているだけ。


 相手には一切やけど跡を作っていない。これは幻覚?


「怪我はさせないから安心しろ。してもいいのは俺だけだからな」


「こ、こいつ……! 何者だ!」


「ん? ただの一般人だがなんだ?」


「嘘を吐くな! 一般人でこの強さは……」


「なら種明かしだ。俺の名前はダイン・ルーディス。生まれ変わりの殺し屋だ」


 自分で名乗っちゃうんだ……。というか、あらゆるところから悲鳴が聞こえてくる。


 ダインという名前は、禁句と言ってもいい。警備員の顔も青ざめていた。


 バタリ。倒れる音がする。誰かが卒倒したのだろう。


 連鎖的なドミノが発生する。状況は深刻の一途をたどる。


「さーて。なぜパン屋の店主を捕まえたか、吐いてもらおうか」


 私は見ているだけ。何もできていない。


 全て大輝一人で終わらせた。周囲のことも考えずに。


「こ、殺し屋に言うことなどない! さっさとこいつを捕まえて火祭りにしろ!」


「ははは。それくらいじゃ俺は死なねぇよ」


「その! お兄ちゃんは……!」


 言ってしまった。私が出る番ではないのに……。


 視線が私の方へ向く。立ち上がることに成功した警備員が、私を捕まえた。


「ふーん。妹も捕まえるのか。ま、簡単だけどな……」


 大輝はどこで手に入れたかわからないナイフで、指を切る。


 血に効果を付けているのか、出血量が多い。


「これでどうだ! ブラドブラッシュ!」


 放たれた血の雫。それが私を捕らえた警備員に付着する。


 そこから、どんどん浸食するように黒ずみ始めた。


「それは、腐食を早める魔法をかけた血だ」


「ふ、腐食だと!?」


「そうだ。安心しろ、心臓までは至らない」


 そのまま、大輝は私を回収する。


 大輝から家の中に入るよう言われ、私は中に入った。


 そこには、負傷をしたリンダさんの姿。


 どうやら、肉提供の罪で迫害されたらしい。


「リンダさん。すぐに治療します」


「ありがとうねぇ……。これでは息子に顔も見せられないよ……」


「十分頑張りましたよ。一度消毒をしますね。メウス。度数の低いお酒ある?」


「十パーセントくらいでいい?」


「うん。それくらいあれば大丈夫」


 同時に、タオルを持ってくるエレン。気が利いて助かる。


 シリルは桶を持ってきてくれた。ライガンは水を運んでくる。


 私は桶にお酒を入れて、水で薄めた。


 獣人はアルコールに弱いはず。


 水で限界まで薄めたアルコールをタオルに含ませる。


 男性陣には退散してもらい。服をゆっくり脱がせた。


「酷い……」


 リンダさんの全身には、大きな切り傷や痣ができていた。


「しみると思いますが、我慢してください」


 戦場ではできないやり方。だけど、実際にはこれが正しい。


 タオルを洗っては拭く。血の汚れが綺麗になると、治癒魔法で治していく。


 治癒魔法は聖女だからできること。普通の人よりも効果が高い。


「終わりました。これで問題ないと思います」


「ありがとう。どうやら、あちらも終わったみたいねぇ……」


 私は家の外を見る。そこには、立ち尽くす大輝と山になった警備員。


 これは、完全に圧勝だった。本人も戦い足りないかもしれない。


「これで終わったか。さあ、全てを話してもらおうか」


 大輝は魔法で警備員をつるし上げにする。


 もはや完全に立場逆転。命を奪わなかっただけよしとした方がいいかも。


 そして警備員から告げられたものとは……。

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