↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第3章 獣人の国にて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

125/130

第125話 生命の大結晶

 ◇◇◇ミカエラ目線◇◇◇


 戻ってきたエレン。私は少し嬉しかった。


 本当は、家の中にいる状態で迎えたかったけど……。


 エレンがいない間私たちは何をしていたか。


 それは、この獣人の国のエネルギー源を管理している場所の見学だった。


「本当にエレン様を連れて行かなくてよいのですか?」


「うん。きっと今の彼だと聞いてくれないだろうし。どこにいるかもわからないし」


「そうですか……」


 この時ライガンは寂しそうな顔をしていた。


 私も悪かったかもしれない。解決策は見つかったけど……。


 きっと大丈夫。大丈夫。不安な気持ちを押し殺す。


 坑道を歩くと、クリスタルの数が増えてきた。


 セリンが言うには、この先に生命の大結晶があるとのこと。


「生命の大結晶は、獣人の国全域にマナラインを引いている根源だ。俺はここのやつらと仲がよくてな」


「だから、セリンさんの顔パスで入れたんだね」


「そういうこった」


 セリンを先頭に、奥へ奥へと入っていく。


 最奥部に着くと、エメラルドグリーンの巨大なクリスタルが出現した。


 風が冷たい。明かりもない。だけど、大結晶の光源だけで十分だった。


「すごいね……」


「だねぇ……」


 私とメウスは、その大結晶をずっと見ることしかできなかった。


 こんな綺麗な場所。私はもったいないことをしたかもしれない。


 あの時、私がエレンに合わせるべきだった。


 そうすれば、『絶交』なんてされずに済んだ。


 もう後戻りはできない。そう考えることしかできない。


 これでよかったのだろうか。終わらない自問自答。


 私はこの大結晶の場所に来る前のことを思い出す。


 ――――――――――――――――――


『私、悪いことしたかもしれない……』


『ミカエラさん。そう気を落とさずに』


『わかってる。わかってるけど』


 この時私は、心に棘が刺さった感覚に陥っていた。


 正しく考えられない。そんな心境。


『エレン……大丈夫かな? どうしよう……』


『ミカエラさん。落ち着いてください』


『だけど、シリルさんもあの時何か言ってくれれば……』


 私は無意識に誰かのせいにしようとしていた。


 罪を重ねれば重ねるほど、重くなる。


 晴らし方が分からなくなっているのに気付いた時には、シリルになすりつけていて……。


『このまま空気が悪いと、エレンも困りますよ。セリンさん。気分転換になる場所ありますか?』


『そうだな……。生命の大結晶を見に行くのはどうだ?』


『ではそうしましょう』


 ――――――――――――――――――


 そうして、私たちはここにいる。


 大結晶はとても力をくれた。今なら、エレンを迎えることができる。


 岩肌にも負けない、そんな輝きが勇気を与えてくれた気もして……。


「そろそろ帰りましょうか」


「そうだね……長居も悪いかも」


 シリルとメウスの提案で、私たちはセリンの家に向かう。


 その時、私は来た道の反対側に別の道を見つけたんだけど。


 セリンに聞くと、その道は要塞王城と直結しているらしい。


 さすがにここの王城とは、関係を持つことはないだろう。


「こっちが近道だ。ついてこい」


「ありがとう、セリン」


「まあな……」


 それから数分。無事にセリンの家に着くと、中にはエレンと大輝がいた。


 エレンは今にも泣きそうなくらい、目に涙を浮かべている。


 そんな彼の背中を大輝がさすっていた。


 まるで、弟を見ている時のように……。


 エレンは袖で涙を拭うと、涙声で切り出した。


「その……! ミカエラさん!」


「なに?」


「さっきは絶交するなんて言ってすみませんでした……!」


 突然謝ってきた彼に、私の身体がピクリと動く。


 これには、他のメンバーも驚いたようだった。


 そこで私は『なんで謝っているの?』と問いかけると……。


「僕のわがままのせいですよね……。あの時は空腹が耐えきれなくて……」


「わかってたよ。でも、エレンなら寂しがるかなって。私がいないことも、好きなものが食べられないことも……ね?」


「は、はい……!」


 私は、出かける前に見つけた大量の小さいパンを渡す。


「これ、騙されたと思って食べてみて」


「でも、これただのパンですよね?」


「うん。多分エレンの期待に応えてくれると思うから、早く食べて」


「わかりました」


 エレンはパンを食べ始める。すると、何かに気づいた顔をした。


 途端、彼の食べる速度が上がっていく。『肉が入ってます!』と言った時には、三個食べきっていた。


「なんで僕は気が付かなかったんだろう」


「食べ物はね。食べてみないとわからないものだよ。見た目ではわからないからね」


「たしかに……そうれふね……。おいひ……。もう一個!」


 エレンはどんどん食べていく。加速は止まらない。


 少しすると、家のドアが開いた。そこには、髪をピンクに染めた、犬耳の女性。


「母上!」


「あらまぁ。大所帯ねぇ。セリン元気かい?」


「もちろんだ。母上も連勤お疲れって言いたいところなんだが……」


 どうやら、彼女がセリンのお母さんらしいけど……。たしかにこの状況はイレギュラーだった。


 とりあえず、テーブルに散らかったパンを整理すると、メウスが椅子を用意。


 七人で円を描くように座る。顔がはっきり見える座り方って、なんか嬉しい。


「セリンの母のリンダ・パッシュと言います。息子がよく世話になっているようで嬉しいねぇ……」


「ってわけで、俺の母上だ」


 優しいママさん肌のリンダさん。獣人だからか、老けている様子がない。


 本で読んだところでは、獣人は最大二百歳まで生きるらしい。


 つまり、実際はもっと若いのだろうか。


「ところで、きみたちはどういうご関係なんかねぇ?」


 リンダさんは、みんなに質問をする。だけど、誰も答えることができない。


 このメンバーは、勇者パーティと言っても形になりきっていない。


 だから、はっきり言うことができない。そこを、大輝が裂いた。


「俺は関係ないな……」


「それはどういうことかい?」


「こいつらはこいつらで、ひとチーム。俺はあくまでもソロ。付き添っているだけだからな」


 そうだ。私たちと大輝はメンバー証が違う。だから、関係ないという回答になる。


「ということだ。ま、俺はこのメンバーと一緒じゃないと羽目外しそうになって怖いんだが……」


「大輝はそうだよね。なんか、独立したら一人で暴走してそう」


「んなこと言うな……。それよりも、セリン師匠。俺たちはどこで寝ればいいのでしょうか?」


 やっぱり、大輝はセリン相手だと敬語になるらしい。


 その後、リンダさんが宿屋を用意してくれて、食事だけこの家を使うことになった。


 宿屋のベッドは少し狭かったのだが……。


「ミカエラはぼくのものだ!」


「いいえ、僕のものですよ! メウス!」


 普段通りの取り合いが始まってしまった……。

読んでくださりありがとうございます


いいねは大事にしまっておきます

リアクションも入れておきます


星は1から5どれでも大丈夫です


下の評価ボタンからぽちっとしちゃってください!


最高の励みになります!


ついでにぜひブクマもお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。