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【第2部開始!】サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第2章 死刑囚と本当の形

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第114話 謝罪の嵐

 魔王城は、とても大きかった。


 水色を基調としたレンガ。それが幾重にも積まれている。


 まるでおとぎ話の城のよう。


 こんな場所に、シリルのお母さんがいる。


「皆さん揃いましたね」


 シリルが一言かけた。それに全員が頷く。


「お母さん。シリルです。開城をお願いします」


 そう声をかけると、ドアが開いた。


 長い廊下には、脈打つような形状の絨毯。


 シリルが言うには、これは蛇をモチーフにしたデザインらしい。


 彼のお母さんは、怒ると髪が蛇になるようで……。


 ってこれメデューサだよね。あの有名な神話に出てくるやつ。


 両壁に飾ってある燭台の炎は青く、神聖さをだしている。


「ここがお母さんの部屋です」


「『お邪魔します』」


 魔王城の深奥部に入ると、玉座には一人の女性がいた。


 女性の髪は緑色。腰丈まで長く伸びている。


 魔王がいる部屋は、とても小さかった。


 規模としては、市民体育館くらいだろうか。


 こんなこと仲間に伝えても、理解できるのは大輝くらいしかいない。


 という大輝は、その場で土下座をしていた。


「ここへ来て早々、無礼なことをしてしまい。申し訳ございませんでした!」


 このタイミングで謝罪とは……。


 本当に反省しているのか、不安になる。


 その行動もあってか、全員の視線が大輝に集まる。


「ダイン・ルーディスの生まれ変わり……だったと聞いていたけど」


「はい」


「顔を上げなさい。順序が間違っているわ」


「しかし……!」


 魔王は玉座から立ち上がり、大輝の傍に寄った。


 軽く視線を合わせると、大輝は理解したのか顔を上げる。


「わたしはラディル・ヒューストン。シリルの母です。今日はお越しいただきありがとうございます」


「メビウス・エル・デュクスと言います。神と魔王である僕たちは相容れぬ存在。そんな中、急遽の日程でお招きいただきありがとうございます。今回は僕たちの仲間ははしたない行動を起こしてしまい、誠に遺憾と思っております。今後同様なことを侵さぬよう、責任をもって指導していきますので、ご理解のほどよろしくお願いします」


 流石は上位神メウス。謝罪がしっかりしていた。


 普段はちゃらちゃらしているのに、こういう時に限って礼儀正しい。


 これにも、ラディルは驚いたようで棒立ちになっていた。


 続いて、エレン。ライガン。零。ティアと挨拶を済ませる。


「初めまして、ミカエラ・シャーロットです。一応聖女です。暴走した大輝は私が止めました」


「そうなのね。疲れたでしょう。メサイア、部屋の準備をお願い」


「承知いたしました」


 メサイアという女性が礼をすると、城の奥の方へと走っていった。


 最後は大輝の番。だけど、彼にはふたつ名前がある。


 今の顔と裏の顔。ラディルには割れている。


「最後はあなた。ダイン」


「は、はい……。ダイン・ルーディス。今は工藤大輝という名前です」


「散々暴れてくれたようね」


「はい……。ただいつものように、龍の血を飲んだはずが……」


 大輝はその後壊毒に負けてしまったと答える。


 だけど、生きているだけで私は十分だった。


 彼とは約束をしているし、きっと守ってくれる。


 それなら安全だ。きっとうまくいく。


「大輝。もう一度顔を上げなさい」


「はい……」


「使用人から聞いたことだけど、死者は収容所にいる人だけに限定したそうね」


 ラディルが統計データの話を始める。


 収容所にはたくさんの罪人がいる。


 その罪人だけに、絞って暴走した。


 彼は地上で暴れる際、武器の所有はしていない。


 メウスの結界や、エレンたちの避難誘導もある。


 全てが正しい方向に繋がったと仮定していい。


「今回あなたは、正しいことをしてくれた。ちゃんと足を洗って帰ってきたのね」


「その……。本当に申し訳ないのですが……」


 大輝は、小さい声で呟き始める。


 一瞬の静寂。この場周辺では珍しい時計のカチカチという音が鳴る。


「俺……当時の記憶がすっぽり抜けていて。覚えてません……」


「別にそれでもいい。あの収容所にいた罪人の処分は、もう十数年行われてなかったから」


 大輝のおかげで、解決した。罪を罪として扱うのではない。


 これが、メディルなりの優しさ。


 私は、大輝に『よかったね』と言う。


 だけど彼は呑み込めていないようだった。


「俺は、本当に正しい行動がとれたのか知りません。もしかしたら、負傷者が出ているかもしれません」


「ええ」


「そんな俺を。永遠の死刑囚や、不死身の死刑囚と呼ばれている俺を。なぜ処罰しないんですか?」


 大輝は、必死に殺してくれとでもいうような意見を問う。


 ラディルは、少し黙り込んだ。少しの時間だけ。それだけでも長い。


「そうね……。なら、これでどうでしょう?」


 ラディルは、巨大な樽を用意した。


 そこからは、血なまぐさいものが漂っている。


「これは……」


「わたしの血よ。あなたへの処罰として、ここに滞在期間中、三樽分の血だけで生活してもらう」


「い、いいんですか……?」


 大輝にとっては絶好のチャンス。


 ただ、身体を形成するに重要な栄養素は絶対に摂取できない。


 そんな状態を用意してくれたようで、大輝は後ずさる。


 魔族の血なんて、人が飲んではいけない。


 私はメウスの友人であるリザークを思い出した。


 彼も、魔族に身体を売っている。


「わかりました。それでお願いします」


「交渉成立ね」


 大輝とは違う部屋。私はいつも通り、メウスとエレンの三人で一部屋に。


 しかし、なぜあの時大輝が後ずさったのか。


 その心情が気になったけど、それ以降彼は姿を現さなかった。

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