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【第2部開始!】サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第2部 第1章 転移者と再会

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第108話 魂石と聖剣

 水晶でできた剣は、セリンの工房で異様に目立っていた。


 一般的な鉱石とは輝きが違う。まるで、どこにも存在しない一点もの。


「お兄ちゃん。これって――」


「鉱石じゃない。『こんせき』ってやつで作ったものだ」


 こんせき。漢字で魂の石と書くらしい。つまり、魂を結晶化したもの。


 魂は光の集合体と言うけれど、こうやって物質化できるらしい。


 そして、物質化した魂石は剣にして、魂と近い存在になるようだ。


 すなわち、某魔法少女ものの変身アイテムプラス心臓部みたいなもの。


 知らないうちに知らない時間軸で作っていたなんて……。


「大輝の魂石は非常に純度が高いんだ。俺もこんな魂石見たことねぇかんな……」


 セリンがそう言いながら、左手の人差し指で鼻下をこする。


 別に鍛え直したのはセリンだけど、持ち主は大輝だからね?


 そもそも、魂石の存在は初めて知ったけど……。ってもしかして……。


「メウス。魂石って、ゼノンレグスレイブにも使われてたりする?」


「まあね。今のレグスレイブは、ゼノンの意思を引き継いだあとの、ぼくの魂石を使った二代目だよ」


「へぇー」


「ミカエラ。他人に説明させておいて、その反応はないよね?」


 とりあえず、聖剣は魂石を使用したものと言うのが分かった。


 魂石は一人にいくつ持てるか知らない。だけど、最低一つは持っているんだと思う。


 この中で詳しそうだとしたら、大輝くらいしかいない。


 だけど、気付けば大輝の姿が消えていた。セリンの工房は小さそうな外観のわりに広い。


「ミカエラさん。大輝さんなら、外に出ていきましたよ」

 

 私が右往左往しているのを不思議に思ったらしいシリルが、一言かける。


 『ありがとうございます』と伝え、私は外に出た。


 そこでは、ブンブン剣を振り回す大輝の姿。その脇では、エレンが見物している。


 このままチャンバラごっこをしたら面白いと思うけど、さすがにいい大人の大輝がするはずない。


 しかし、大輝の行動には少しぎこちなさを感じた。


「お兄ちゃん何しているの?」


「使い勝手の確認だ。やっぱ今の身長だと短いか……」


 たしかに、今の剣の長さは不恰好に見えてしまうくらい微妙。


 まるで、短剣でももっているかのようで、不自然だった。


 大輝が空を見上げる。私も視線を向けると、青水晶と同じくらいの晴天。


 この空の向こう。もし日本に帰れるのなら……。


 ビュシュン。風を切る音。さっきまで大輝の動きを見ていたエレンが素振りをしている。


それに負けじと、大輝も剣を振り何かに気づいたような顔をした。


「ソウルリンク アクト!」


 彼が詠唱した途端、剣は青白く輝き刀身が伸び始める。


 約五秒。短いようで長い時間。剣は鋭く真っすぐに長くなり、大輝の身長との違和感がなくなる。


 青く、透き通った剣。それは、エレンが持っている聖剣と比べても美しさが計り知れない。


 そして、紋章は白く輝いていた。そういえば、少しくすんでいたのが消えている。


 元々この剣は、紋章部分が壊れたようになっていた気もする。気のせいだろうか。


「体力が落ちてるな……。魔力量も足りない……」


「え?でもお兄ちゃんは毎日筋トレを……」


「い、いやあ、過去を振り返るとなぁー。俺めちゃくちゃ弱っちくなっちまった。ってなぁー」


 怪しい。ものすごく怪しい。私は大輝を観察した。ただ剣を縦斬りするだけ、型が成立していない。


 何か隠している。だけど、なんで私の周りには隠し癖がある人ばかりなんだろう。


「その……大輝さん。あなたの本気ってどれくらいなんですか?」


「ん? んーと……。エレンだったか? そのな……。エレンの城を一回斬るだけで崩壊できる」


「……え!?」


「一回斬るだけで、だな……。けど、それは魔力で強化した場合。通常であれば、簡単にこの工房を吹き飛ばせる」


 大輝がそんなに強かったなんて……。ただのミリオタだと思ったけど、そうでもないらしい。


「なら、僕と手合わせいいですか? ここだと工房が危ないので、それなりに離れたところで」


「いいぞー!」


 そうして、大輝とエレンは工房から離れていく。ベルンライト領は平地が多いから、被害は少ないだろう。


 私も二人を追いかけた。そこでは、ゼノンレグスレイブを中段に構えるエレン。


 対して大輝は剣を下段に構えていた。どちらを応援すればいいかわからない。


「審判頼んだ!」


「お願いします!」


「りょ、了解! 始め!」


 私の合図で、二人は接近する。ここは大輝に焦点を当てた方がいいかもしれない。


 まず先に動いたのはエレンだった。中段の剣を下段に移動させ、真下から大輝の懐を狙う。


 そこを大輝が躱し、剣の柄でエレンの背中を叩いた。


 始まって数秒の決着。毎日素振りをしているエレンであっても、歯が立たない。


 まるで、相手にされていないようだった。


「エレンは、まだまだだな……。俺が一から教えてやろうか?」


「いいんですか?」


「おうよ。ついでに秘儀も伝授してやる。ってな! まあ半分忘れちまったけどよ」


 大輝は剣を空高く投げる、そのまま無詠唱で飛行。


 剣を手にすると、勢いよく真下へと落下した。


 地中深くまで突き刺さる刃。そのまま赤い光を纏うと、爆音が響き渡る。


 現れたのは巨大なクレーター。それも、浅く広くの形だった。


「魔力を抑えたけど、こんなもんかな?」


「すごいですね……。これも?」


「いや、思い付きだ」


 思い付きでこんなことができるなんて、本当にバカ兄だった。


「大輝は、何者なの?」


「ん? 知らん。ってか言えない。まあ、いつまでも美香の兄ってのは変んね」


「そ、そう……」


 三人で工房に戻る。その最中、王都方面から高速移動をする人影。


 走って駆け付けると、そこには、零とティア。ライガンの三人がいた。


 そうだ、まだこの三人を大輝に紹介していなかった。


「ミカエラお姉ちゃん! なかなか帰ってこないから心配したよー!」


「って、アネキが言ってるから連れて来た」


「もちろん、わたくしもついてきております」


「三人とも、突然はやめてよね」


 軽く怒っておけばいいだろう。


「ミカエラ、こいつらは?」


「え、えーと、この少女がティア。私の愛銃であるヘカートの人間体」


「ふむふむ。ヘカートって、俺がミカエラにあげたやつだよな? なんでここにあるんだ?」


「わからない」


 そこまで話すとティアがスカートの裾を両手で持ち、お辞儀をした。


「ご丁寧にどうも」


「次に、魔族のライガン。私がスカウトして、仲間になった。元々は酪農の家で手伝いをしてたんだっけ?」


「ええ。そうですとも」


「演技力はバツグンだから」


「ほ、ほう……」


 大輝はあまり興味なさげだった。まあ、それもそっか。


「なぁ。こいつおめぇの敵か?」


 低評価を受けるだろうと思ったらしい零が、拳銃のグリップを握りしめる。


「ん? 敵じゃねぇっていうか。ミカエラの兄だ」


「兄だと……。殺す!」


「別に今ここで撃ってもいいぜ」


「では失礼する」


 零は、大輝に近づく。対して大輝は零の身長に合わせ腰を落とした。


 拳銃が大輝の頭に突き付けられる。私は零を止めようとしたが、メウスに制された。


 ――バン! 鼓膜が破裂してしまいそうな音が響く。


 だけど、大輝は二カりと笑っていた。なんで死ぬことがないんだろう。


「なんだと……!?」


「ま、こんなもんだよな……。普通の拳銃の限界は」


「は? おめぇな。自分から死にに行っておいて、その言いぐさはねぇだろ」


「まあな。簡単に身体硬化魔法をかけておいた」


 ここに来て数時間が経過。完全に大輝は魔法を使いこなしていた。


 本当に自分の兄なのかわからなくなってしまう。


 それだけ、人外の域にいる彼を誇っていいのかどうか。


「じゃあ、皆さんでおやつにしましょう」


「私が買った果物だね。ちょっと待っててください!」


 そうして、私たちはミルを食べた。話題は南西の魔王城になり、即日移動が決まる。


 しばらくゼレスリシアには戻ってこないかもしれない。


 王都に戻り、騎士団集会所で大輝の分のメンバー証を取得。


 メウスの車の荷台に荷物を乗せて、私とエレン。大輝。ライガン。愛銃二人。そして、シリルで乗り込む。


 車の規模が拡大していたのは驚いたけど、余計に燃費が悪くなったような……。

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