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【第2部開始!】サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第2部 第1章 転移者と再会

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第105話 勇者召喚の儀

 翌日。ついに召喚の儀が始まる。儀式は中心人物になる人とその関係者しか入れない。


 舞台となる場所は、王城の地下深くにある大広間だった。


 壁や床は黒曜石でできている。ものすごく広く、ところどころ埃が目立っていた。


 長い間使われてなかったのだろう。中央に円形の台座。その周囲に数段高い見物席がある。


「さて、成功するか……」


「おじいちゃん。きっとメウスならできますよ。彼はどんなに失敗をしても最終的に成功をする人ですから」


「そうだな……」


 アルバスはそう言って、見物の席についた。


 しかし、昨日途中で別れた時からメウスに会っていない。


 そして、合流する気配すら感じない。どこで何をしているのだろうか。


「アルバス国王。そういえば、あれからシリルさんは?」


「おおう。そうだった。シリル騎士団長は、しばらく本隊から抜けることになった。どうも孫のことが心配のようでな」


「だからいないんですね……。」


 今頃シリルさんは色々と準備をしているのかもしれない。


 シリルは、エレンの先生だった人。勇者養成学校を卒業したエレンを一度は騎士学校に誘おうとしていた。


 だけど、エレンが無理やり押切り、今がある。それだけでも、エレンは喜んだだろう。


 シリルはハーフデーモンで、新緑の髪を持っている。


 身長も高く、すらりとした見た目が特徴。そんな彼にも考えがあるのかもしれない。


「それにしても、まだメウス殿は来ないのかね?」


「はい……。今魔法紙で連絡を取っているのですが……」


「なんと。ミカエラ嬢でも反応がないとは……」


 すると、入口の大扉が開く。そこにはメウスの姿があった。


 両手には巨大な瓶。中には透明な液体が入っている。


「お待たせしてしまい、申し訳ございません……。聖水の準備に時間かかっちゃった」


「なんで聖水?」


 どうやらメウスは一人で龍神の滝に行っていたらしい。


 龍神の滝は、エレンの故郷ベルンライト領にある観光地。


 聖水という魔力を多く含んだ水の源泉地帯でもある。


 だから、ベルンライト領の水は、ゼレスリシア共和国の中で一番おいしいとのこと。


「メウス殿、なぜ聖水を持ってきた」


「ちょっとね。今回はピンポイントで召喚したいから」


 メウスの考えが読めない。儀式会場にいるのは、一部の使用人が数名。


 そこに私とエレン。メウス。国王のアルバスだけ。


 ティアや零、ライガンは個人部屋で待ってもらっている。


 この儀式の時になにか起きたら困る。誰が失敗を取り返すのやら。


「では始めるよ!」


 メウスは手に持つ聖水を数段下にある円形の台座へ流し込んだ。


 水で満たされていく、その中心にメウスが立つ。


「まずは事前に供給していた魔力を聖水に流して……。ぼくの魔力と結合させて……」


 いちいち説明をしなくてもいいのに。準備は着々と進んでいく。


 いつの間にか完成していた魔法陣。白く発光する聖水。


 ものすごく幻想的で、見とれてしまう。それは、エレンやアルバスも同様のようだ。


「上級階級第三位、メビウス・エル・デュクスより命ずる。啓示した条件をもとに、未来有望な勇者をこの地に導きたまえ」


 メウスが詠唱をする。それも神語での詠唱だった。


 魔法陣が青く輝く、暴風が吹き荒れる。


 濃くなっていく魔力の渦。息がつまるほどの量に頭痛がしてくる。


 私は、どうにか目を開けていられたけど、エレンは圧に押されていた。


 アルバスの方はというと、顔が見えない。


 位置関係的には、相向かい。閃光のように発せられる魔法により、そこが視認不可悩になっていた。


「メウス……。これは……」


「もう少し。もう少しで……」


 光に包まれている彼の声だけが聞こえる。すると、影が一つから二つに変わった。


 誰が召喚されたかはわからない。だけど、長身で短髪。纏うオーラは何度も感じたことがある。


 召喚者はそれ以上増えなかった。やがて世界が落ち着く。


「すみません。国王陛下……」


「いや、いいのだ。一人呼べただけでも良しとしよう」


「ありがたきお言葉……」


 メウスが謝罪をする中。長身の男性はキョロキョロと周囲を見回している。


 髪の色は黒。少しだけ茶色が混ざっている。一瞬、こちらを振り向いた。


 見覚えのある容貌。この人を私は知っている。


「大輝お兄ちゃん?」


 私は思わず名前を呼んでしまった。その言葉に、男性は私の方を向く。


「誰だ?」


 しかし、相手が私を覚えているはずがない。前世では黒髪黒瞳。ただの一般人。


 それだけの情報では、理解するのは難しいだろう。


「美香だよ! お兄ちゃん!」


「美香? 本当なのか? 本当に美香なのか?」


 大輝は私の発言に答え合わせをするように、何度も名前を呼んだ。


 ふと目尻が熱くなったのを感じ取る。大輝の瞳にも涙が溜まっていた。


「お兄ちゃん! 会いたかった。会いたかったよ……」


「美香……」


 お兄ちゃんは普段着を着ていた。まるでセンスを感じない、雑な組み合わせ。


 聞けば、大学の講義が終わった後敷地全体に魔法陣が出現したらしい。


 気づけば他の受講生の姿が消えていて、自分だけがこの場所に呼ばれたのだとか。


「ものすごく可愛くなっちまったな……」


「うん。私、転生しちゃったみたい」


「転生か……ってことはいま幾つなんだ?」


「十一。今度一月に十二歳」


 大輝にはその後、この世界の年間周期を教えた。


 それよりも彼は、他の受講生を気にしていた。


「メウス。今回の件、原因はわかる?」


「そうだね……。多分他の国でも召喚の儀が行われたんだと思う」


「召喚の儀ってそんな頻繁に行われるもんなのか?」


「いや。今回が例外だっただけだと思う」


 メウスは少し不満げな言葉を発する。召喚の儀は基本ゼレスリシアで行われるらしい。


 そして、儀式の間は天界申請をしているのはここしかないようで。


「大輝。ここに呼ばれた理由はわかる?」


「おうよ。俺は勇者として召喚された。そして、魔王を倒してほしい。ファンタジー作品のあるあるテンプレだな! 美香から頻繁に聞かされてきたから大体覚えている」


「正解。あと、私のことは美香じゃなくて、ミカエラって呼んで」


「み、ミカエラ?」


 私が大輝に指摘すると、彼は困惑した表情を見せる。


 それもそのはず、私が提示したのは、過去の私じゃないことを言語化したものだから。


 大輝は数秒考え込む。だけど、名前が近いこともあり、なんとか理解してくれた。


「ま、今は血が繋がってないもんな。美香……じゃなくてミカエラ。よろしく……」


「ミカエラさん! その男は誰なんですか! 僕を忘れないでくださいよね!」


「ごめんエレン……。この人は、私の前世の兄で……」


 エレンが激おこの状態で見物席から降りてくる。


 かなり頭に来ているようで、湯煙でも出ているんじゃないかくらい沸騰していた。


「ミカエラさんのお兄さん? 見た目が違うじゃないですか!」


「それは、私が転生して姿形が変わったからってだけで」


「それ以前の問題ですよ! っていうよりも、なんでメウスはミカエラさんの前世のお兄さんを呼んだんですか!」


 矛先はメウスに移動する。メウスは少し驚いた様子で震えていた。


「ぼくが知ってる人としたら、彼しかいなくて……」


「そうだ。俺はこのベッド神から呼ばれたんだ。しかも特例でな!」


「ぼくはベッド神ではないやい! ちゃんとメウスっていう名前があるからね!」


 いやいやいや、メウスはベッド好きでしょ。お兄ちゃんのベッドでもダイブして占領したって。


 なんだか騒がしくなってきた。なんで私の周囲は男性率が高くなるのだろう。


「とりあえず、腹減った。弁当大学に置いてきちまったからな」


「じゃあ、お昼としましょうか」


 私たちは儀式会場の後始末して、地上階に戻った。


 歩くたびに暑苦しい。そして、お兄ちゃんの二の腕がものすごく太い。


 相変わらず筋トレを続けているようで何よりと思ってしまうのは、正当妹の観察眼が原因なのだろうか……。

ブクマ・評価宜しくお願いします!!!!!!!!!

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