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【第2部開始!】サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第2部 第1章 転移者と再会

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第103話 グラーシア領の本屋で

加筆しました

 グラーシア領の本屋は思ったよりも小さかった。シャーロット領のが大きすぎるだけなのかもしれない。


 運転はメウス。一緒に来たのは零とエレン。ライガンの三人。


 結局、メウスとエレンはついてくるらしい。それだけ私のことを気に入っているのだろうけど。


 しかし、なぜライガンが来たのかがわからなかった。


「ライガン。なんで来たの?」


「そのですね……。聖女様はどのような作品をお読みになられるのか気になりまして」


 なんだ。私は基本どんな本でも読む。メウスからも、魔法書から写真集まで読むことを知られている。


 だから、そこまで面白いことではないと思う。そもそも、それを知ってどんな意味があるのだろうか。


「私の読書傾向を見ても面白くないですよ」


「いえいえ、これはわたくしの興味本位でありますので……」


「それならいいんですけど……」


 本屋に入る。そこには小さな本棚が数列並んでいるだけ。


 ものすごくショボいと言ったら侮辱になるんだろうけど。


 だけど、寄贈されている本はものすごく難しそうなものばかりだった。


 ここなら私が求めているものが見つかるかもしれない。


「予算は……金貨百枚ね……」


 お金はメウスが用意してくれた。どうも料理本が沢山売れたようで。


 私が手伝いしてよかったと思う。自分の作品が売れるってこんなに嬉しいんだ。


 だから、この予算はメウスの売り上げからいくらか頂いたもの。


 大事に使わないとね。


「魔族の本。魔族の本……」


「聖女様。こちらの本はどうでしょう?」


「なになに?」


 ライガンが持ってきたのは、『世界全集』と書かれた本だった。


 表紙を開く。そこには、ゼレスリシア以外の国まで書かれていた。


 著者は、アラン・リゼルタス。聞いたことのない名前だ。


「ライガンはこの人知ってる?」


「知りませんな……。しかし、タイトルが面白そうだったもので……」


「うーん。値段は……金貨五十枚……」


 買うか買うまいか……。悩む。だけど、これを買ってもメウスがお金を補填してくれるだろう。


 ここは、投資するしかない。私はライガンが掘り出した本を持って、管理人のところへ向かった。


「管理人さん! この本ください!」


「ほいほい」


 ここの本屋の管理人は男性のようだ。少し小太りの人が奥のほうから出てくる。


 管理人は、私が突き出した本を凝視した。そして、顔が真っ青を通り越し、真っ白になる。


「こここ、これを買われるのですか?」


「はい! 金貨50枚ですよね! これを!」


 私は事前に仕分けておいた五十枚の金貨も突き出す。


 こんな痛い出費。全然苦しくなんかない。きっとメウスがなんとかしてくれる。


 管理人は、まだ放心状態だった。無理はない。金貨五十枚はひょいと出てくるものじゃない。


「貴方様はおいくつで……」


「今度の一月で十二です!」


「しかし……。こんな役立たずで高額な本を、なぜ買われるのですか?」


 それは面白そうだからに決まってる。そもそも論面白くない作品を誰が買うのだろうか。


 この本には魔力も感じる。この書店から解放されたいと言っている。


 それなら、誰かが買わないといけない。それだけでも、違う。


 大切にされたい本は、大切にしたいと思っている人が買うべきなんだ。


 それだけで、持ち主のない作品は本物(・・)になる。


「タイトルを見て、ビビッと来ちゃいました!」


 私は得意のスマイルで受け答えをした。支払いはグダグダに終わり、私はメウスたちを待つ。


 予算的にはまだ余裕があるので、もう少し本屋を回ることにする。


 次に気になったのは、昔から気になっていた作者のもの。


 ルーディス・グランダ。この世界に数冊しか出さなかったという天才。


 私は一度でもこの人の本が読んでみたいと思っていた。


「ライガンはルーディスって知ってる?」


「ルーディス……ルーディス……。あ、あの人ですね!」


 ライガンが走りだす。そして本を持ってきた。


 著者はルーディス・グランダ。それも、遺作呼ばれている作品だった。


 『異世界電子目録』これは、ルーディスが夢で見た異国の話をもとにした作品。


 彼女は、この本を書ききった直後亡くなったとされている。


「ルーディスさんに会いたかったなぁ……。だけど、なんでこの本を?」


「実は……ルーディスは、わたくしの叔母なのです」


 ライガンの叔母ということは、血縁関係が複雑になってくる。


 ライガン・レーシス。それがライガンの本名。つまり、ルーディスも魔族かもしれない。


 そうか。ならいいことを学べるかもしれない。


 この本も買おうと思ったけど、金額はオーバーしていた。金貨百二十枚。


 さすがは人気作家でなかなか出回らない作品。バカにならない。


「欲しいけど……。どうしよう……」


「なに?」


「あ、メウス!」


 偶然メウスと合流した私。彼に経緯を話した。すると、追加のお金を用意してくれる。


 本当にお金が湧いてきた。神様にありがたや……。


 私は追加の本を持って管理人のところへ行く。


 メウスがいたからか、今回はスムーズに進んだ。


 これでほしい本は買えたんだけど、零とエレンが見当たらない。


「メウス。エレンと零は?」


「レイなら帰ったよ。エレンは知らな……」


「見つけましたー。ホントここ入り組んでて道がわからないですね……」


「いたいた」


 呼ばれて出てきてってそういう問題じゃない。そんなエレンも様々な本を抱えていた。


 彼も色々本を買ったようだ。王族だから予算もそれなりだったと思う。


 私たちは車に乗り込むと、シリウスさんの家に向けて走り出した。


 空は曇っていて、あまりよろしくない。そんな中でも屋根のある車は便利だった。


「メウス、家までどれくらいかかりそう?」


「あと一時間くらいかな?」


「了解!」


 私は、しばらく本を読むのに集中した。


 もちろん読むのは、ルーディスの遺作。それも、ものすごく面白くって……。


 外の風景も忘れて、次のページへ次へ次へとめくっていく。


 物語の旅はものすごく楽しい。それが、今の私にとって唯一の楽しみだった。


「ミカエラ。本当に大丈夫なの?」


 メウスが尋ねてくる。私は顔を上げて、『大丈夫』と答えた。


 車の中での時間はあっという間に過ぎていく。


 それも、まるで一瞬で終わってしまうように。


 この場に零がいないのは悲しい。だけど、彼のことだから、無事に着いていると思う。


 ふと外の景色を見た。夕焼けが広がる空。もう夕方なんだ。


 帰ったら夕食の準備。明日は王都へ向かう。


 平和な毎日が続けばいいのにな。そう思うことしかできない自分が苦しく、 悔しくなった。

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