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「てんてんてん、てんてんてー」
なんか違う。なんかズレとる。ギターあんま詳しくないからなぁー。ポロンポロンと気の向くままに弾いていたが、混ざる不快音表情が呼応して歪む。眉間にシワが……
どれがズレているかは定かではない。
スチール弦っていうくらいだし、思い立った金属で弦作ったのが結構前。メンテしてないし錆びてんのかなぁー。またもや不快音に手が止めた。舐めるように見ても変わるハズないが、じっと見て探った。睨み付けて直る魔法に目覚めないかなぁ。
プロでもおれば――口煩くなくて、余計な会話をしない上で気兼ねない会話の出来る気遣いする人物。やっぱ要らない気がしてきた。てか、存在しない。初対面でそれは求め過ぎ。自分でなんとかするしかないかぁ。そんなに思い入れがないし、投げる未来がみえる。
楽器って欲しくなりません?
弾けたらカッコいいもあるが、一番は所有感が堪らない。持っている優越。弾ける弾けないは二の次。部屋に飾るとシャレオツな気がしなくもない。
布でぐるぐる巻きにしてあり、木部分はカビてない(買った部分なので良かった)し、弦は見た目錆びてない。布がお洒落なんです。布が巻いてあってもお洒落なんです。そのままな飾りもお洒落ですが、埃が。
それはそれとして、こう、見た瞬間にニュータイプ的なピーンてする感覚に弾くしかない使命感に駆られた。な訳で作った今や部屋の片隅肥やしになっていたギターを引っ張り出した。
久々に弾いたから指痛ぇ。指凹んでる。
「坊ちゃま、何でそんな暗い曲を弾いているんですか?」
ケミはハンカチで拭いながら戻ってきた。これの完成時弾かせてみたら上手くてちょっと悔しかったのを覚えている。そつなくこなすのと金持ち特有の習い事でちょっと感が努力しないでやってますよアピールみたいでイラっとする。
「禁じられた遊び」
「何処がですか、真っ昼間から楽器弾いているなんて自由人でしょ」
「失礼な。曲名だよ、曲名」
「聞いたことないですけど、作曲したんですか?」
「いや? 初心者向け」
「初心者向け? いや、だから聞いたことないですけど」
「弾いてみる?」
天才作曲家とかめんどくさいの極み。書かされるとかムリムリ。誤魔化しにはなっていないが弾かせれば紛れるだろとパスした。
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普通に弾けとんなぁー。
「てか、なんで弾けとんの? 禁じられた遊び」
「いや、やけに耳に残りまして……いいなー、この楽器。ギターでしたっけ?」
ケミはたまに自分が作ったものを欲しがる。この前は馬車内で寝癖を強制的に直そうとなんちゃってヘアアイロン(鉄の棒を暖めて挟む仕組みだけの簡易な奴)を欲しがった。持っていても邪魔だから使い方を提案してあげたが、
「あげないけど」
これは絶対渡さん。
「買いますよ?」
金まで積もうと異常に執着。完成当初から今まで見る度にいいなー、欲しいなーとウザアピールしてくるから、余計に渡す気が失せる。
「売らない。なにされてもこんな未完成品絶対に売らない。けどちゃんとしたものが完成したら贈ってやらなくもないから、期待しないで待て。それまでなら好きに弾いて良いぞ」
完成出来る気配のあるものは、自分が納得するまで作るに決まってんだろ。未完成品を他人に渡すなんて死んでも嫌だ。
「強情ですねー。こんなにも欲しがっているのにくれないなんて。気長に待ちますよーだ。この一弦がズレてる感じが堪らなく良い」
「本当にズレてるから、直っ――」
手を伸ばし奪おうとしたら避けやがった。ケミのくせに小癪な。
「好きに弾いて良いんだよね?」
意地悪な顔で、満足するまで手放さんと抱える。渡す気は無いと。
「後でどれがズレてるか教えろよ」
本当に気に入っているんだな、楽しそうに弾いて――
「うるさああああいぃ! 私の部屋隣! 暗記やってんの! 陰気臭い曲でこっちの気が滅入る!」
妹が怒鳴り込んできた。
荷物の積み降ろしの掛け声とか聞こえるし、雨音も響く。この世界に音楽の緩衝材とか防音概念無いと言われると納得する。
壁薄くてレ○パレスかな?
金属のみで合成素材は作れんからなぁ。
「ケミ続けていいぞ?」
「この状況で続ける鬼畜ではありませんよ」




