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 麗らかな春真只中は、春眠暁を覚えずとはよく言ったものでいつもより長く寝過ぎてしまう。

 実家に帰ってきて三日が経ち三日とも寝過ごした。

 過去最高の睡眠記録(夜から翌夕まで)は更新していないが、起きて昼飯を食う生活を二日。

 本日は昼の二時間程前に起きたので、近所の公園に散歩に来ましたが設置した椅子とポカポカ陽気で動く気が失せて、昼になろうかとしているでしょう。遊んでいた子供達はご飯と母親に呼ばれ今やここら一帯で閑古鳥が鳴いている。


「親に呼ばれて中断するのが子供だとしたら、呼ばれないのが大人の特権だとは思わないかね?」


「そんな寂しい特権いらないですよ……人間食べずに生活出来れば最強じゃないですか?」


「それな。ケミ天才」

 ケミは怖いくらい天才的閃きが――


「それな。じゃなーい! どう考えてもバカよ! バカの発想よ! あなた達バカなの?」


「行きなり来てバカとは失礼な……そんな乱れた口調を使うなんて、貴族らしさが微塵もありませんことよ? デネブ様」


 紫の瞳に怒りを灯してらっしゃる。デネブ様お貴族の娘さんだから人の少ない時間にお散歩にこられたのかしら? 優雅っすねー。


「最近のあなたはバカ過ぎて……ハァ……疲れるわ」


 デネブ様頭を押さえて頭痛かしら?


「お疲れですね? よかったら隣に座りますか?」


 ケミ側にズレてベンチを一人分開ける。座って良いよーと合図ポンポンとベンチを叩く。お貴族さまを立たせっぱなしは良くない。


「私が昼食を終えて窓からふと見たら、昼食前と変わらずずーっと同じ所に座りっぱなし! 今何時だと思っているのっ! バカ!」


 南中はけっこー過ぎてる。南だと思って顔を上げたが首ちょっと曲げねばならん。

「遅めのランチぐらい?」


「分かってるなら帰りなさいっ! カペラちゃん一人でご飯になっちゃうでしょ!」


 姉妹のいないデネブは我が妹カペラを自分の妹のように可愛がっており、自分に厳しく他人にも厳しい(自分調べ)デネブがかなり甘やかす。身分差を越えた友情って感じ。


「崇高な考えの元ここにいるのだけれど」


「ほぉー、そのすーこーな考えとやらを言ってみなさい」


「……お腹空いて動きたくない」


「子供かっ! 何歳児よ! 同い年として恥ずかしいわ」


 ポケットの深くをまさぐると奇跡的に乾パンが! 割って、

「……半分食べる?」

 差し出してみる。

 賞味期限は切れていないが、この湿気で丸出しポケットインなのであまり食べたくない。


「食べるかぁぁぁぁぁぁっ!!」


「ケミ、いる?」


「……あっ、自分のポケットにも入ってましたのでお気になさらず」


 ケミ乾パン食っとる草


「あぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


 女の子が出しちゃいけない声を出してる。単芝生えるw

 にしても、ケミの煽り性能高過ぎ。

 これ以上はデネブがもたないだろうから、ポケットに戻す――半分だけ食べとこ。


 #


「いきなり静かになるんですもん。ビビらせんといて下さい」


 いきなりパタンと地面に座り込むのは、脳血管ぷっつんしたかと流石に怖かった。心臓に悪い。


「本当にカペちゃんにちゃんと食べる相手いるのね?」


「そりゃあ、いるさ。朝昼は別として、夕飯時は忙しくて両親は月五日開けるくらいだし。家族じゃなくても誰かしら毎日いるし」


「違うわよ。年の近い心の許せる相手よ」


「お兄ちゃんカペラに彼氏(いいひと)とかまだ早いと思いますので、ごめんなさい」


「バーカ。そんなんじゃなくって、家庭教師が嫌いって話していたから、ベガが仲を取り持ったのなら大丈夫よね。良かった。合格としましょう。これ以上叱責するつもりはありません」


 言われると妹が信頼する友人は居ない。幼馴染のデネブが代役をしているが、やっぱり平民貴族の壁が存在する。弱みを出せる言える友人は必要なのか自分にはわからん。必要なやつは必要だし、不要なやつは不要と個人差みたいな部分。

 鈍感力とかフラストレーションの発散方法があれば気にするモノでも……そもそも論だが、人付き合いってなんかこう溜まるものじゃね? 多かれ少なかれ。解決法なんて慣れと諦め。それにいち早く気が付き、実行するのが難しんすよねー。未だに自分なんかデリケートなんで。


「ベガ坊ちゃまは他人の礼儀だけは厳しいですからね。妹を泣かせるのはやり過ぎです」


 余計な告げ口すな。


「いやいやいや、あれは妹が悪い。あの態度何様のつもりですか! それと自分は年上には礼節を重んじてますよ? セイラさんにだってきちんと……あれ? あんまり話していない?」

 そういえば、セイラさんと話した記憶がない。妹お任せしますとか言った覚えが……

「職人気質なので、多くは語らない。背中で理解を――駄目っぽい?」


「駄目ですし、泣かせたことで及第点より下まわりましたが、まあ良いとしましょう」


「ダメかー。ありよりのなしだとは思いましたが、やっぱりダメかー。てか及第点の下って不合格では? 甘めの採点ありがとうございます」


 顔色もだいぶ良さそう。手の甲でおでこの体温を触り測って自分を触る。自分の方が熱くて俺のが病気? ってデネブお嬢の体温知らん。最初が熱くて冷めたんだっけ? いや、貧血だから体温が戻るのか?

 ……


「そう言えばなんで貴族の娘なのに、平民の公園にいるんだ?」


「貴方も貴族でしょ……私の家あそこなんだけど」


「俺はなんちゃって貴族だし。あー、あそこの窓から。ここ裏手側になるのか。近くても一人って危なくない?」


「ここ、私の家での持ち公園なんだけど。さっきお水買ってくれた屋台の名前」


 わーお、地主か。屋台名気にしてなかった。一般人は気にするモノでもないだろ。自分の家が彼女の家に荷物卸してるので覚えておかないとまずいんですけど、自分こんなんだから大丈夫雰囲気を出しとけ、でセーフ。駄目だったら最悪妹を売りましょう。妹と遊ばせとけば大体いけます。

 屋台ってヤクザっぽくない? 香具師ですよ、ヤシ。店番に強面のにーちゃんがいますね。


「体調戻ったみたいだし、おぶって戻ろうか? ケミが」


「もう少しこうしてる」

 デネブは頭の位置を直し、まだ膝枕続けよ感を出した。太股が髪の毛で少し蒸れつつあるんだけど、ご希望なら仕方ない。


「はいはい。本日は特別におんぶか、お姫様抱っこで戻るか選べるキャンペーンをしてましてですね――」

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