八十九話 一気に進んだ!?
ここ最近新作の投稿で忙しい…
あ、もしよろしければユーザーページまたは小説情報の下の方から読めると思うのでそちらからどうぞ(ステマ)
「と言う訳で来ました! オータク姉弟の相談コーナー!」
「この部屋は相談窓口じゃねえ!」
「っていうかそんなコーナーも無いよ!?」
セシカとフォリスの2人はその日の仕事が終わると、日をまたぐ前に宿の大卓姉弟の部屋を訪ねていた。
目的はもちろん、色ボケしたマノアについての相談である。
「…この2人、案外有料で相談窓口を開いたらそこそこ儲けるかもしれないわね。」
「なるほど、2人は異世界人だから、異世界人ならではの知識や物の見方が活きるかも…」
「せっかくだから水晶玉置いて、占いっぽくしない?」
「もう占い屋じゃねーか。でもなんか悪くなさそうだよ水晶玉っていくらなんだ?」
「こっちの世界ガラス高いからね。買えなかったら代わりにそれっぽい容器に水溜めて、『この水面にあなたの未来が見える…!』とか言っておけば良いんじゃない?」
「それでも良いけど、水面にゴミ浮いてたら一気に感じ悪くなりそうだなぁ…」
「あー、ありそう。透明なカバーでもかけたいね。けどガラスは高いし…」
「…私、そんな話ししにきたんじゃないんだけど。」
占いトークで盛り上がる三人をスッパリと言葉の刃で切り捨てるセシカ。そもそも彼女が脱線の原因であることをツッコんではならない。
やや棘が出てしまったのはトークに置いてけぼりにされたからと言う訳ではなく早く話を進めたかっただけなのだろう。思い人のスキャンダルとなれば流石のセシカも焦りは出る。
「ゴメンゴメン、マノア君の相談でしょ?
それについてなんだけど…実はレーサさんからも相談されてたんだよね。」
「彼女から? アユミに? シンヤには?」
「俺もだ。俺達姉弟に相談しに来たんだよ。2人と一緒でな。
一昨日、レーサさんが夜突然俺達の部屋に来てさ。マノアの様子がおかしいって言われたんだよ。」
「一昨日…先輩の様子がおかしくなった日だ!」
「それで昨日本人にも話を聞いたんだけど…どう聞いてもあれは恋煩いだね。ラブコメに精通してる私達がそう思ったんだから間違いない。」
「らぶこめ…?」
「恋愛話ってことだよセシカさん。この人達の世界ではそういう娯楽作品が溢れてるんだ。
…作り話のことをそこまで誇らしげに言うのもどうかと思うけど。」
「作り話じゃない。」
「おいおい、作り話だって多少は根拠があるんだぞ。そうなきゃリアリティが出ないし読者も共感してくれない。つまり人気も出ないし読む人も少なくなるってことだ。
そして著者はそれを生業にしてるんだ。色んな人に読んでもらってお金が貰えるように凝って作るのは当然だろ?」
「…それもそうね。」
「ちなみにレーサさんにはマノア先輩の事は言ったの?」
「ちょっとどうかと思ったけどね…そういう相談事だったから。」
「だから彼女も意識してたのね。」
マノアとレーサの様子に合点がいくセシカとフォリスだったが、彩弓はただね、と続けた。
「…実は私達、一つだけおかしいと思ってることがあるんだ。」
「それって、もしかしてきっかけ?」
切り出したのはフォリスだった。
セシカと話をした時にも言っていた心当たり。それはどうやら正解のようで姉弟の頷きを獲得する。
「初対面って訳じゃないから一目惚れって訳でもないし、つり橋効果やその他異性が魅力的に感じられる効果や法則に当てはまってないんだよ。俺達がそれを知らないだけって可能性もあるけど、明らかに違和感しかない。ラノベなら叩かれてるな。」
「むしろ、ラノベ的にはあれじゃないの? 惚れ薬とか媚薬とかそう言う系?」
「その薬について詳しく聞かせて。」
「待ってセシカさん! 薬なんかで向けられた気持ちが嬉しいの!?」
食いつくセシカを必死に抑えるフォリス。身長差もあってかフォリスがかなり苦戦している。
「今はもう何が何でも振り向かせなきゃいけない時じゃない!」
「そういう考え方は絶対良くない方向に転ぶから! それにレーサさんもセシカさんも好きって状態になっちゃったらどうするの!? 先輩が苦しむだけでしょ!? 」
「マノアならきっとどっちも選んでくれる…!」
「それレーサさんから取り返したことになってないよね!?」
「あの、そもそも惚れ薬なんて作り話だからね?」
「「薬で性別が変わるんだから今更じゃない!?」」
「…それもそうか!」
「納得するのか!?」
「まあ納得したところで私が惚れ薬の仕入れ先知らないのは変わらないし…なによりマジであってもおかしくないんじゃない?」
「…そっかー、異世界だもんな。ファンタジーだもんな。」
進矢も納得したところで話しが戻る。
「だけど、惚れ薬ではないんじゃないか?」
「どうして?」
「マノアの話によると、レーサさんが好きになったのって仕事中、それも注文を取りに行ってた時だろ? そんな時に何か飲んだり食べたりするか?」
「そうだね。基本的に仕事中は飲食しないはずなんだけど…」
「フォリス、マノアが仕事中に何かを食べさせられたとかってあるか?」
「無いよ。っていうか、それがきっかけなら先輩がそう言ってるはずじゃない?」
「そうか…」
「…………注文を取る時…惚れ薬…媚薬…異世界…ファンタジー…ファンタジー?」
「姉ちゃん? もしかして何か閃いたのか?」
静かにハッとした彩弓は、顎に手を当てたまま呟いた。
「薬じゃないとしたら…?」
「薬じゃない?」
「そう、例えば魔法…もしくは、それに似た術的な何か。」
「そんな魔法あるなら知りたい…いえ、待って。」
セシカは思い出した。それに類ずる術を行使する存在を。
「人間を惚れさせる…とはちょっと違うけど。
発情させる術を持っている者がいるわ。」
「発情…もしかして淫魔か!?」
「…確かに、淫魔ならこの世界にも居るよ。そっちの世界とは違って夢魔とは別の存在だけど。」
「けど、そうだとしたらレーサさんが淫魔ってことにならない? あの人がそうだって聞いたことないんだけど…」
「そもそも、淫魔だったら恋煩いどころか一気に発情まで行くんだろ? なら違うんじゃないか?」
「いえ、聞いたことがあるわ。
力が弱い淫魔が、その術を行使すると比較的に若年…子供のような恋愛感情を持つことがあるって。
必ずしも自分を対象にすることは出来ないって。」
「今までの疑問が一気に解決した!?」
「ご都合主義的な何かすら感じる…!」
「神は言っている…ここで解決できぬ定めではないと…」
「フォリスちゃん、そのネタもう古いよ。」
「え!?」
原因がはっきりした今、彼女達を阻むものは無く。
時を置かずして、彼女達は淫魔の捜索を企て始めた。




