七十五話 帰ってきました!
タイトル通りです!
大変長らくお待たせいたしました。ここまでお待ちいただいた読者様には大変申し訳ないです。
気付いたら半年ですよ半年。ええ。現代能力ものの執筆とかゲームとかアニメ鑑賞とか仕事とか色々してたらそんなに経っちゃいましたよはい。
最近失踪して帰ってきたと思ったら最終回間近宣言することが多い(自分の事)ですが、今作は違います。構想だけならいっぱいありますし伏線も張り巡らせ…ると言えるほど多くは無いですけどありますからね。
ただしばらくリアルが忙しくなりそうなので更新頻度はお察しです。善処はします。
「………」
僕は今、シーサイドの前に立っている。
勝手知ったる我が家であり、ずっと経営してきた店でもあると言うのに――-僕はなかなか入れないでいた。
それもそのはず。日帰りのはずが6日も帰らなかったのだ。しかもなんの連絡も無しに。
ウォンリー島の封鎖は手紙を出すことすら許さなかった。封鎖されていれば当然島から出て行く人も居ないし、連絡手段が完全に断たれていたのだ。
きっと島が封鎖されていること自体はこの町にも伝わっているのかもしれないけど、店に居るフォリスやセシカさんがそれを聞いたとは限らない。セシカさんに至っては日帰りで出掛ける事すら言ってないのだ。
もし店に来てたら心配かけちゃってたかな…いや、それより目先の問題だ。
ずっとお店で留守番をしていたはずのフォリスが何も言わない訳が無い。見かけるなり激怒されてもおかしくはない状況だ。
それは仕方ないと分かっていても、気後れしてしまうのが人の性。誰も火の中に飛び込みたくないのは当たり前だ。
けど、ここで止まっていてもしょうがない。
意を決して鍵を開け、扉を思い切り開け放つ。
「ただいまー!」
そして大声で帰還報告を行う。これで嫌でも気付くはずだ。
「………?
ただい、まー…?」
返事が無い。
もしかして外出しているのだろうか。
ドタドタドタ…
店の奥から何か聞こえる。
よく聞くと足音のようだった。それも廊下を思いっきり走っている。
フォリス、相当怒ってるのかな…?
「……!」
奥から出てきたのはフォリスだった。
けど、様子がおかしい。僕を見るなりまたすぐに走って――
「うぅっ!?」
全力のタックルが襲い掛かってきた。
両腕は背中に回され、なす術もなく床に倒れる。
「フォ、フォリス…?」
「バカ…バカ! 死んじゃったかと思った…!」
「……ゴメン。」
痛いほど強く抱きしめられ、すすり泣く声を聞いてどれだけ心配をかけてしまったのかを知る。
頭を撫でてあげたいけど、僕の腕は彼女の両腕にきつく縛られてしまっている。
だからせめてされるがままにしていた。
「せ…マノア。」
「セシカさん。執事さんも来てたんですか?」
「はい。お嬢様は二日ほど前にここに来て、貴方が音沙汰も無く帰ってこないと知ってずっとここに居ました。
私もですが、それほどまでに心配されていたのですよ。何か言うべきことはありませんか?」
「…そうですね。
ごめんなさい、フォリス、セシカさん、執事さん。遅くなってしまいました。」
「…それで、手紙も送れず帰ってこられなかったと。」
「はい。」
僕はリビングで三人に六日間の事を伝えた。
日帰りのつもりだったけど島全体が封鎖されてしまった事、本当は男が入ってはいけない事、今回だけは許してくれたこと。
もちろん、島ではレーサさん、ティーサさん、ウィラさんに世話になったことも。
「一応、う…私達もウォンリー島が一時的に閉鎖されていたことは分かってた、わ。
けど、まさかマノアが行ってたなんて思わなかった。」
「………」
「あの、フォリス? そろそろ離しても良いんじゃない?」
あれからずっとフォリスが僕から離れてくれない。というか今も抱きしめられたままだ。
最初の痛いくらいの力はもうないんだけど、そろそろ放してほしい。
「…嫌。」
「そ、そう…」
そう言われては無理に引きはがすことはできない。心配させた僕には突き放す権利なんて無い。
そう言えばフォリスは平行世界で僕と死に分かれてるんだっけ。今回の失踪が呼び水になってその時のことを思い出してしまったのかもしれない。
「ずっとこうしてたい…」
「フォリス?」
なんかフォリスが怖い。今背筋がゾクっとした。
「せ…フォリス、気持ちは分かるけどそろそろ離れてあげて。」
「…はい。」
セシカさんの言うことは聞くんだ。
まあ、セシカさんは貴族だし、今回は僕が悪かったことだし…助かったから良いんだけど。
「………」
「…後でまたしても良いから。」
「ありがとう!」
フォリスの名残惜しそうな、寂しそうな顔を見て情けを出してしまった。
今のは小声だったけど、セシカさんには聞こえてしまっていたみたいでちょっと微笑まれた。さっき止めはしたけど、黙認ってことで良いのかな。
「…お嬢様、御夕飯はどうされますか?」
「夕飯? それならここで…あ。
い、いえ。マノアは今帰ってきたばかりだし、4人分の食材なんて無いだろうから良いわ。帰って食べる。」
「しかし、本日ご帰宅なされることはまだお伝えしていないので…戻られてもお嬢様の分は恐らく無いかと。二日前、しばらく食事は作らなくてもよいとお伝えしてしまったので。」
「じゃあ執事さん…じゃなくて、貴方は明日帰ると伝えてきて。今日はここに泊まるから。」
「それは良いのですが…マノア様は帰られたばかりです。そこで客を泊めると言うのは」
「大丈夫ですよ。」
「…しかし、先程聞いた話では旅行先でも色々とあった様子でした。
今お疲れではないのですか?」
「大丈夫です。旅行に行ったとは言っても、向こうでバッチリ休んできましたから。
明日からお店も再開します。」
常連さんを安心させるためにも、お店の再開は早くしたかった。
僕が無事であることだけは伝えておきたい。3人を見るに、僕は相当な働き者で何日も休むような人じゃないなんて思われてるらしいし、心配してる人もきっといるだろうから。
「旅行の心労をあまり甘く見てはいけませんよ、明日は1日お休みするべきです。」
「そうは言ってもやることも無いですし…」
「家で過ごされるだけで良いのです。お店には次の日から再開すると貼り紙をして、ゆっくりしてください。」
執事さんがこんなに頑なになるのは珍しい。ちょっと驚きだ。
「私も、明日は止めた方が良いと思うわ。」
「セシカさんも?」
「ええ。だって貴方の話を聞く限り、気の休む暇もなさそうだったから。
いつ男だとバレるか分からないし、バレたら終わりみたいな状況で何日も島に居たんでしょう?
貴方の事だから、きっと罪悪感をずっと感じ続けてたでしょうし…気持ち的にはかなり参ってると思う。
だから後でどっと疲れるわ。今は何ともないみたいだけど。
確かレーサさんから疲れに効く薬は貰ってたわよね? 今日はご飯を食べたらそれを飲んで寝なさい。」
「………」
そうなのだろうか。
だけど、考えてみればそうなのかも…
「…マノア、ちょっと休んでて。」
「セシカさん?」
「今日は私がご飯を作るわ。」
「え!?」
「!?」
セシカさんって料理出来るの!?
いつもコックさんに作ってもらってるみたいだし、貴族なんだからわざわざ自分で料理する必要なんて無いと思うんだけど。
「……」
今はすまし顔だけど執事さんも驚いていた。
と言うことは少なくとも執事さんの前で料理したことは無い?
…あ、でもこの執事さんとはそんなに付き合い長くないんだっけ? 少なくともシーサイド再建の数ヶ月は一緒に居たはずだけど。
「簡単な物しか作れないけど、私だってやろうと思えばできるわ。」
「だったら僕が作ります! 貴族のセシカさんにそんなことさせるわけにはいきません!」
「今は貴族のセシカじゃなくて、貴方の友人のセシカよ。
キッチンの勝手が分からないからフォリスは借りていくけど、貴方は執事と大人しくここで待っていなさい。
…もしマノアが来ようとしたら取り押さえてでも止めて。」
「かしこまりました。」
そう言い残して、セシカさんはフォリスの手を引いてキッチンへ消えた。
僕は貴族に料理をさせるという状況に内心冷や汗をかきながら待つしかなかった。




