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吸血秘書と探偵事務所   作者: かみこっぷ
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3話 20代半ばはお兄さんだよね?

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


時刻は午後2時過ぎ。昼食目当てでやって来る客もまばらになり、店内が落ち着きを取り戻した頃。厨房の奥から一仕事終えたという表情の前橋が姿を現す。


「いやぁーお待たせして申し訳ない。お客さんの波が中々引かなくて…………ありがたい話なんですけどね」

その顔に疲れは見えるものの、それ以上に今の状況を喜んでいる事は一目瞭然だった。


「この様子だと俺らの思惑通り作戦通りって感じですね」


にやりと笑って親指を立てる相一とそれに応える前橋。男二人、合わせて四つの視線は客足の引いた店内のテーブルを隅々まで拭いて回る濡れ女の後ろ姿を追いかけていた。


「これは――――、秘書さんに報告だね」


「氷柱ちゃんにも…………言っとこう…………」


鼻の下を伸ばす野郎二人に冷ややかな視線を送る女子高生と千里眼。


「いやいやいやいやこれはあれよ? 一連の事故で客足の遠のいたこの断波海水浴場に再び活気を取り戻すべく、一応原因の一端を担っていた水張にも協力してもらってだな――――」


「まあそれがあの二人に通るかどうかは置いとくとして。でも実際前に来た時に比べて他のお客さんも増えましたよねー」


詩織の言葉に皆が視線を海の家から浜辺に移すと腹ごしらえの済んだ海水浴客が再びはしゃぐ姿が目に映る。心なし男性の割合が多いように見えるが、まあ誤差の範囲だろう。


「はっはっは。冗談はさておき、本当にあなた達には感謝してもしきれませんよ。この断波海水浴場がまた大勢のお客さんで賑わう光景をこうして見られる様になったのもあなた達のおかげですからね。本当に、本当にありがとうございました」


自分の年齢の半分程度であろう相一に向き直り真剣な表情で頭を下げた。深く頭を下げる前橋の肩にそっと手が置かれる。


「まーその、そう言って貰えるのはこちらとしても嬉しい限りですけど、今回の様な妖怪変化を相手にするのが俺達の仕事みたいな物なんで。もしまた妖怪だのなんだの、そういう類で困った時にはいつでも連絡下さい。天柳探偵事務所はいつでも皆様のご依頼をお待ちしていますから。…………ああ勿論、普通の依頼も受け付けていますんで」


そう言って前橋の手に一枚の紙きれを手渡した。


「あー探偵さん名刺渡してるー! なんかそういうの見ると大人って感じがしますね――――――意外と」


歯に衣着せぬ女子高生の物言いにかくりと肩を落とす。


「意外とは余計だっつの。これでも立派な成人男性よ? 世間的には大人で爽やか素敵なお兄さんと呼ばれるべき――――」


「さわ…………やか…………? うーん…………?」


小さな両腕を組みながら首をかしげる千里の顔は難解なプログラムを解き明かしている時の表情に酷似していた。


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