表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血秘書と探偵事務所   作者: かみこっぷ
PR
85/90

3話 決着②

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


決着は意外過ぎる程すんなりと着いた。


何度目かの全力での正面衝突。吸血鬼の少女が決して大きくない拳を握り、異形の牛鬼が両腕の筋肉を大きく膨らませる。


接触――――――否、それは激突。


ッゴォン!!


吸血鬼の細腕と牛鬼の剛腕が音を立ててぶつかる。


双方共に人間からは計り知れない力を秘めているのは間違いない。


だがそれは、人間から見た程度の話。新幹線も軽自動車も人の脚ではとても追いつけるものではないのと同じように。


「仕舞いです」


両者の力が拮抗したのはほんの一瞬。


ゴギン、という鈍い音と共に黒く逞しい腕が明後日の方向へとへし折れた。


「ぎ――――――ンぐッ!?」


「その大口は閉じておいてもらいましょうか。不快な悪臭が所長に届かないように」


自身の数倍は優に超える太さの巨腕を破壊した華奢な手が、人一人を丸呑み出来そうな牛鬼の大口を鷲掴みにし文字通りその口を閉じさせる。


「ンぐゥ! んんんんんんんッ!」


不自然な部分からだらりと垂れ下がった片腕と逆の腕で吸血鬼に掴みかかる牛鬼。だが、その手が吸血鬼の身体を捉える事は無かった。


何故なら――――――


ドズンッ!! とその巨体に釣り合った牛鬼の頭部が剥き出しになった海底へと突き刺さったから。


鷲掴みにした牛鬼の顔面を足元へと叩きつけた璃亜が両手を軽くはらう仕草を見せる。


頭部の半分を海底にめり込ませ、常識外れの勢いでつんのめった様な恰好の牛鬼。筋肉質で獣毛に覆われた上半身とそこから連なる蜘蛛の胴体から伸びる黒い脚がびくびくと不規則に震える。


「氷柱さん」


「はいよー」


ヒュン、と璃亜の肩越しに一本の氷剣が飛来し、彼女の足元で不気味に蠢く牛鬼の身体に突き刺さった。


パキパキパキ――――――空気が軋む音を鳴らしながら、もはや身動き一つしなくなった牛鬼の巨体を透明な氷が包み込んでいく。


ひっくり返った蜘蛛の裏側をそのまま固めた様な悪趣味なオブジェを足蹴にしながら璃亜が小さく息を吐く。


「このまま粉々に砕いてやりたいのは山々ですが…………。うちの所長はそこまで望んではいないでしょう」


璃亜はそう小さく呟き――――パキン、と凍りついた海底を踏みしめ巨大な氷のオブジェに背を向けた。


そして――――――。


右の手刀を一閃。裏拳気味に放たれたその一振りが通り過ぎたラインをなぞる様にオブジェの上半分がゆっくりと滑り落ちていく。


「それでも…………所長の命を脅かしかねない存在を見過ごす訳にも行きません。たとえ…………それが所長の意思に反する事だとしても、です」


ドズズン、と完全に分断されたオブジェの片割れが海底に落地する。


「いやぁこうもあっさりぶった切られるとそれはそれで傷つくんだけど?」


「心配しなくとも氷柱さんの(コレ)は並大抵の力じゃ破壊出来ないくらいの強度はありますよ」


決着のついた海底に降り立った雪女の表情はどこか釈然としない様子で。


「それを見事に真っ二つにされてるから言ってるんだけど」


呆れた風に息を吐く雪女と吸血鬼が動くものの無くなった静かな海底を後にする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ