3話 最後の手段?
「それで敵の姿は? 確認出来ましたか?」
「お? それはもうバッチリとこの目に――――――」
その時、先ほど俺が浮かんできた辺りの海面がボコボコと泡立ち始める。
海中で何か動きがあったのだろう、咄嗟に足場を飛び降りようとする俺の腕を璃亜が掴んで引き止めた。
「…………っ、璃亜!!」
「ここで所長を行かせることは彼女の覚悟に泥を塗るのも同じです。今は氷柱さんを信じて―――――――」
その言葉を遮る様に泡立つ海面を突き破り俺達の眼前に巨大な物体が飛び出した。
ドパァ!! と相応の水飛沫と共に現れたのは文字通り氷山の一角とも言える巨大な氷の塊だった。海面から突き出しているのは円錐形の先端、その一部に過ぎない筈だ。
そしてその先端部分へ倒れこむようにしがみついているのは、海水で濡れた青白いツインテールを体に貼り付けた氷柱だった。
「氷柱!! おい、大丈夫か!?」
氷山のてっぺんでぐったりと倒れこむ少女から返事は無い。
俺は璃亜の制止を振り切り氷山に飛び移り、刺さるような冷気を足裏に感じながら氷柱の元まで駆け上がる。
「おい! 起きろ、氷柱! おいってば――――」
肩を揺すろうが頬を張ろうが反応を見せない氷柱に、一抹の不安が募る。
妖怪というのは人間に比べ頑丈にできている。多少のダメージや、それこそただの酸欠でくたばる様な事は無い…………と思う。だが妖怪同士の争いに限れば話は別だ。
その事実がゆっくりと俺の心にのしかかる。
その重圧に押しつぶされまいと声をかけ続けながら、最後の手段に出ることを決心した。




