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吸血秘書と探偵事務所   作者: かみこっぷ
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2話  ラッキースケベと引き換えに受け入れられる不幸はどの程度なのか

「所長、こちらは準備出来ました」


「こっちもこれで、と。よし完成だ」


時刻は午後4時50分。夏祭りの1日目開始まで後10分という所で滑り込み的に屋台は完成を迎えた。


「それにしても、もう夕方だってのにまだまだ暑いわねー。雪でも降らせてやろうかしら」


「それは……夏祭りの風情とか……いろいろぶち壊しなのでやめたほうが」


「千里の言うとおりだな。つーかお前だけ屋台の組み立てに参加してないんだから文句言うんじゃありません!」


ぶーたれる雪女をたしなめる相一。そんな彼に悪戯っぽい笑みを向ける氷柱。


「ふっふーん? そんな事言っちゃっていいのかしらー? あたしがいなくて屋台の営業できるのかしらー?」


「うぐっ、し、失礼しました氷柱サマ、どうぞ何なりとお申し付けくださいナ。とまあ、冗談はさておき今回はお前の力に頼る部分が大きいからな、欲しいものとかあったら言ってみ? できる範囲で何でも言う事聞いてやるよ。……お金以外で」


「氷柱さん、あんまり所長を困らせるようなことは……」


璃亜が不安そうな表情を浮かべる。


(いや、いくら氷柱でもそんな滅茶苦茶な事は言ってこないだろう。……あれ? でもこの前こいつにお使い頼んだ時は向こう一週間奴隷の様に扱われた気が……、あ、なんかそう考えると不安になって来た)


己の迂闊な発言によって引き起こされるかもしれない悲惨な日々に戦々恐々とする事務所の所長であった。


そんな相一の様子には気づいていないのか氷柱がやや俯き加減でポツリと漏らす。


「…………祭」


「いやぁああああああ!! 待った待って待ってください! 氷柱さん、何でもとは言ったけど限度ってモノを――――へ、……祭?」


予想外の言葉に思考が一旦ストップする。


「……祭、見て回る」


(マツリ、ミテマワル……? ただ祭を楽しみたいだけかよ!)


「なんだ、そんな事か。もちろん屋台の手伝いは頼むけど、ちゃんと全員休憩をとれるようにするし氷も……、大きいのを幾つか置いてってくれればなんとかなるだろうし……」


予想を大きく下回る難易度のお願いにほっと安堵する相一は、目の前の雪女がわなわなと身を震わせている事に気づいていない。


「ちっがぁぁあああああう!!」


ゴチィッ!! と、氷柱の拳が相一の顎を打ちぬく。しかも女の子の柔らかい拳では無く、厚い氷のグローブ付きで、だ。


「ぐぅ……ぉぉ……っ!」


三半規管を揺さぶられ膝から崩れ落ちる相一に対し、事務所のメンバー+詩織の視線は冷たかった。


「所長、いくらなんでも鈍感過ぎます」


「今のはさすがに……所長さんが悪いと思います……」


「探偵さんってたまにウルトラC級のミラクルかましますよね」


肉体精神共にボコボコにされ、地面に突っ伏した相一が首だけ動かし氷柱を見上げ、一言。


「あ、縞々」


ごグシャァ!! と、何かを、より正確には人間の頭を思い切り踏み潰したような音が聞こえた。





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