2話 ラノベ主人公特有突発性難聴(仮病)
相一が度重なる頭部へのダメージから回復した頃には既に夏祭りは始まっており、屋台の方にもちらほら客が来ている。そちらは現在、璃亜と千里、詩織の三人が対応している。残り二人は休憩をとっている。
その二人はと言うと……。
「だったら最初からそう言えっつーの!!」
「だ・か・ら! 最初から言ってたでしょーが!」」
「言ってまーせーん! お前が言ったのは……マツリ、ミテマワル。だけだったろ! そこからどうやって俺と一緒に祭を見て回りたい、なるんだよ!?」
「それくらい察しなさいよ! この鈍感唐変木クソ所長!!」
わーぎゃー騒ぐ二人をよそに、屋台の方は繁盛しているようだった。超定番のかき氷ということもあるだろうが、一番の要因は売り子にあるかもしれない。
「ここのかき氷の屋台、スゲー美人が売り子してるんだって!」
「それマジ!? どれどれ……、って本当だなんかのコスプレか? あの白髪ポニーテールの娘すごいかわいい!」
「えー、俺はあっちのサイドテールの方が好みかなー」
「ぼぼぼ、僕はあの……、ちち、ち、小さいおかっぱの娘が……」
かき氷以外モノ目当てでギャラリーが集まってくる。結果として売上に繋がるのだが。
「……氷柱、今すぐあの野郎連中を氷漬けに――――いいや、ここは俺が直接……ッ!!」
「どうどう、落ち着け所長バカ。あんなのでも客は客でしょ」
相一の首根っこを捕まえながら氷柱がたしなめる。
「ええい、離せ氷柱よ! 俺は所長として、みんなに悪い虫が付かないよう目を光らせておく責任が――――」
「…………そういう反応、私が同じ状況でも、して……、くれたり……」
ボソボソとした呟きは相一の耳には届かなかったらしく。
「へ? 悪い、聞いてなかった。何て言ったんだ?」
「何ッでもッ! ないわよ、クソ馬鹿!!」
「痛っ、痛いです氷柱サン、分厚い氷の塊で背中をグリグリするのやめてもらえません!?」
「うるさい馬鹿所長、ホラ約束。……祭、見て回るわよ……一緒に」
「へいへいお供させていただきますよ。ウチの大事なお嬢様に悪い虫が寄って来ないように、な」
「しっかりちゃっかり全部聞こえてんじゃないのぉぉおおおお!?」
元は雪の様に真っ白な顔を真っ赤に染めた雪女の絶叫は祭の喧騒によってかき消された。




