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第七十四話 プニプニは禁止です

 「えっと~……」


 俺はどう誤魔化そうと考えたが、この二人共に下手な嘘は通用しないと思うし、逆に嘘をつくと返って不信感を抱かれ印象を悪くするかもしれない。ここは正直に打ち明けるのが吉だなと俺は判断した。

 ダルクスさんとリンダさんは口は堅そうだし、変に俺のことも悪用しようとしないだろう。俺が見た限りは信用はしてもいいと思える人物たちだった。


 「はぁ……分かりました。俺の正体、教えてもいいんですけどその変わり、あんま驚かないで下さいよ?」


 二人の視線に俺は観念したように両手を上げながら溜め息をつくと「スキル【変身(チェンジ)】解除」と言う。すると、俺は頭の先からみるみると人間の原型を崩して、体は青い液体状になり溶けていく。

 俺のそんな姿を見て、リンダさんも堪らず「きゃあ……!」となんとも女性らしい短い悲鳴を上げた。

 んー、やっぱりちょっと見栄えが悪いよな。この変身解除方法。

 やはり、いきなり目の前で人が溶ける光景なんて気持ち悪いという言葉以外、何もないだろう。

 リンダさんには申し訳ないとは思いつつも、それでも俺の体は溶けていくのを止めない。

 最終的には俺の体だったものはスライム特有の青いゲル状に変わって、床にドロッとした感じでゲルが広がる。そして、弾力のある液体は一気に、ポヨヨンッ!とゴムみたいに縮まり、一つの青い塊になった。


 『どうもぉー』


 視線の高さはすっかり俺の方が低くなってしまったが、俺は早速二人にスキル【念話(コンタクト)】で話しかけた。


 「こりゃ、驚いた……!!まさか人に化けられるほどの力があるスライムがいるとは!しかもちゃんと人語も理解していて、知能もある!」

 「ポチさん、ですよね?これ……」

 『二人共、興味津々なのは分かりますけど黙って俺の体をプニプニするのやめてくれませんか?』


 ダルクスさんとリンダさんはキラキラと目を輝かせ、俺の許可をとることもなく、人差指でプニプニっと俺の体をプニってくる。しかも、連打で。

 猫が飼い主にしつこく肉球を触られる気分ってこんな気分なのかな?

 俺は暫くは我慢していたが何時まで経ってもプニるのをやめようとしない二人に痺れを切らし、『ウギァッー!』と大爆発する。そして堪らず二人の間を跳びはね、ケンジの頭の上に避難する。ったく!どれだけ俺のことをプニれば気が済むんだこの二人は!



 「すいません。あまりつつくと……ポチの体が痛むので、やめて上げて下さい」

 『俺は八百屋に置いてある桃か』


 よく桃の旬になると八百屋にそんな張り紙貼ってあったな、おい。確かにケンジの言う通り、スライムの俺の自慢であるツルツルモチモチボディーに傷がつくのは嫌だが、その説明も複雑であった。


 「ごめんごめん!つい、冒険者魂が疼いてしまってなぁ~……!」

 「す、すいません。あまりに気持ち良かったので私も思わず……」

 『まぁ、それはいいですけど。次、触る時はちゃんと俺に言って下さいよね?』


 二人共も我に返り、素直に謝ってきた。仕方ない、俺のボディーは誰もを魅惑するモチモチボディーだからな許してやろう。悪気は無さそうだったので俺はすぐに二人を許してやった。そして俺は実は、自分が異世界からの転生者だと言うこともカミングアウトし、ダルクスさんとリンダさんに説明した。


 「なるほどねぇ。急に突拍子もない話だけど、ポチ君が嘘をついてるということもなさそうだ。でも、あの試合で戦ってたスライムが実はポチ君でケンジ君の従獣魔だったとは……。少しややこしい気もするが」


 ダルクスさんは顎に手をつけ、俺とケンジを先程の穏やかな笑みではなく、わくわくしたような楽しそうな笑みを浮かべて見てくる。


 「面白い二人組(コンビ)じゃないか!魔力がまったくないケンジ君に魔力が異常に高いポチ君。正反対のように見えるけど、二人共お互い足りない部分は補っている。私は聖霊王祭で君たちの戦いを見てそう直感したよ」

『でもいいのか?俺は確かに今はケンジの従獣魔やってるけど元はモンスターだぞ、ダルクスさん?』

 「そんなのは大した問題じゃないさ」


 ここのギルドを一任されてるギルドマスターのはずなのに、今笑顔でさらりと凄いことを言ったぞ、このおっさん。


 「本当は登録が終わり次第、すぐに冒険家の身分証ライセンスを発行できるはずなんが……どうやらポチ君の登録は少々私が弄って(?)上げといけない必要が出てきたから、明日までこの国で待っててくれ」


 なんか弄るとか言ってるけどそれってギルドマスター的にいいの?俺はそう思いつつも深く突っ込むことはやめた。どうせ俺があれこれ突っ込んでも、ダルクスさんのことだし笑って誤魔化されるのがオチだ。

 ダルクスさんにそう告げられた俺たちは明日まで取り合えず、ここアベシス王国に留まることが決定した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「まさか、もう一日ここに泊まることになるとは」

 「宿、どうしょっか……」


 俺は人間の姿に戻り、卵を持つケンジと共に冒険家ギルドから出た。俺はさっさと冒険家ギルドで登録を済ませたら、この国を出て出発しようと思っていたのにまさかのもう一泊滞在することになるとは予想してなかった。

 んー、仕方ない。またハンナさんたちに頼んで宿屋に泊まるか?と考えていると後ろから俺たちを呼び止める声が聞こえた。


 「ポチさん!」

 「?リンダさん……?」


 俺たちを呼び止めてきたのはリンダさんであった。リンダさんは俺たちに駆け寄ってくる。


 「宿はもうお決まりになりましたか?」

 「いえ、これから探しに行くところですけど……」

 「なら、私の家に泊まっていってください」

 「えっ!」


 突然のリンダさんの申し出に俺は驚いてしまう。


 「私ももう上がりでいいと室長から言われましたので、ついでに一緒にどうぞ」


 そうさらっと女性に言われてしまったら俺たちも断る理由もないので「じゃあ、お言葉に甘えてッ……!」と、リンダさんのご厚意に甘えることにした。

 そして心の中では『うひょーい!人生初異性にお泊まりを誘われたぜぇ!』っと俺は秘かにはしゃいでいた。

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