第七十三話 あなたは一体、誰??
「!」
「どうして僕が魔法を使えないのが分かったんですか!?」
そうだ。俺たちはこの国に来て、そんなことなど誰にも話していなかったはずだ。それなのに何故、ダルクスさんがそんなケンジの事情を知ってるのか分からなかった。
「私は【魔力感知】というちょっと変わったスキルを持っていてね……。私は、相手に少し触れるだけでその者の魔力残量が分かるんだ。けど、ケンジ君からはその魔力を……一切感知出来なかった。これは魔力が尽きたというより、生まれつき魔力がないと言った方が当てはまる感じたんだ」
俺は先程のケンジとダルクスさんの握手を思い出した。
さっきの握手はそのためだったのか……!
にこにこと穏やかな笑みで笑っている人だが、本当この人心の奥では何を考えてるか分からないので油断できないな、と俺は再認識させられた。
「だが、君は魔力は一切持ってはいなかったがあの不思議なスライムの従獣魔を従え、大切にし絆をきちんと結んでいた。ケンジ君はまだ体は小さいが知恵と勇気で、あのアルニカ帝国の聖騎士でも強くて有名なギル君も倒した。ギル君がもし、冒険家になっていれば間違いなくAランクの冒険家にはなっていただろう……。それなのに、この実績を称えずしてギルドマスターを名乗るなんて、アベシス王国支部のギルドマスターとして失格だ」
「あ、ありがとうございます……」
ダルクスさんはそう言いながらケンジに微笑みかける。ケンジもあまり他人からそこまで褒められたことがなく、照れたようにダルクスを見返した。だが、そのダルクスさんの言葉にリンダさんは疑問を抱いていた。
「ちょっと待って下さい?室長のその口振り、まるで試合を見てきたかのような感じですよね……?」
リンダさんの問いに、ギックンッ!とダルクスさんの体が僅かながら震えたような気がした。だが、流石は長年の付合いで仕事仲間で部下と言ったところか。リンダさんはダルクスさんのその僅かな動揺を見逃さなかった。
「まさか……部下である私に『書類の締め切りが間に合わないから手伝ってくれ!』と泣きついて、折角の祭りで休みだった私に休日を返上させ、書類仕事を押し付けた挙げ句、自分だけ途中で仕事をこっそりと抜け出して祭りを見に行っていた、なんてこと……言わないでしょうね、室長?」
だんだんと雪原に吹きわたる吹雪のように言葉が冷たくなるリンダさんの声。それと共にダルクスさんの顔も真っ青になっている。
「て、てへッ……!って、イタタタタァッ!!……き、気のせいかな!?さっきより頭握る力が強くなってる気がするんだけども?リンダ君」
「はい、そのつもりでやってますので」
いい歳こいて茶目っ気たっぷりでウィンクをしたダルクスさんの頭蓋骨を今度は林檎を片手で粉砕するような勢いで握り潰そうとするリンダさん。
ダルクスさんって上司だよね!?リンダさんは本当にその人の部下なんだよねッ!?
見ろ!俺の隣に座っているケンジも、そんな様子のリンダさんたちの姿を見て、この場の状況をどうするべきなのか分からず「あわわわッ……!」とただ大きく開いた口を手で塞いでいるじゃっているではないか!
これじゃあどっちが部下で上司か分からねぇなぁ、と俺はその目の前で起きている惨劇を遠い目で見ながら思った。
あ、ダルクスさん死んだ。
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「では、ポチさんもこちらの方に手をかざして冒険家登録お願いします」
「はい」
リンダさんの怒りも冷め、取り合えず俺の冒険家としての登録作業がおこなわれた。スクリーンが前に出てケンジとように俺は青い画面に手をかざした、すると。『ブー!』ッと思いっきりエラー音みたいなのが大音量で鳴り響いた。青かった画面も赤染まって何か文字が浮かび上がってきた。
「うわぁ!」
俺は驚いて慌ててスクリーンから手を退け、後ろに飛び下がった。こ、今度はなんだッ!?なんなんだ!!
俺は突然、応接室に鳴り響いた防犯ブザーのようなエラー音にどうすればよいかいいか分からず、戸惑った。
「何、これ……どういうこと?」
「ん?どうしたんだい?」
リンダさんはスクリーンの前に立ち、浮かび上がった文字を見て困惑の表情を浮かべた。ダルクスさんもその様子を見て、リンダさんの隣に立ち、共に画面を覗く。
「『モンスターは冒険家登録できません』……って、これは何かの故障かな、リンダ君?確かにここのギルドの登録認証画面さ、ボロくなってきたからそろそろどうにかしなきゃとは思ってはいたけども……叩けば直るかな?」
「やめて下さい!!……ケンジ君の時はちゃんと作動してましたし、今私も確認したところ何処にも異常は見られませんでした。原因は見たところ、こちらの方ではなく……」
そう言うと二人共はスクリーンから目を離し、ゆっくりと振り向いて、後ろに立つ俺に視線を合わせてきた。
「ポチさん……あなたは本当は一体何者なの?」




