第四十六話 その日の夜
「ふぁ~……」
晩飯と風呂を済ませたベットの上で俺は大きな欠伸をかく。
今日は色々あって疲れたなぁ……。
騎士様がいきなり家に訪れて、俺がスライムだってこともバレるかと思った。まぁ、それはなんとかバレずに済んだみたいだけど……。
俺は早々にベットに潜り、今日は若干広くなったベットで眠りについた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺が気持ちよく寝ていると深夜遅くにそっと誰かが俺の部屋の扉が開く音が聞こえた。
「んーっ…?」
気配で目が覚め、俺は寝ぼけた目を擦って扉の先を見るとケンジが枕を抱きながらこっちをずっと見つめていた。
「ふぁ~!……なんだぁ、ケンじゃないか。どうしたんだよ、こんな夜中に」
「えっと…、その」
珍しくもごもごと喋りはっきりしないケンジに俺はその行動が理解できず困ってしまった。
「どうした?おねしょでもしたのか?」
「違うっ!」
俺がそう茶化すと顔を真っ赤にして怒るケンジ。
んだよー。ちょっとからかっただけじゃん。
「んなら、一体どうしたって言うんだ?怒んないから言ってみろよ……」
「……笑わない?」
「わらわないから」
凄い念押ししてくるケンジに俺も食いついたように言い返す。
「……怖いから、ポチと一緒に寝ていい?」
「はぁ……?」
俺は何故一人で寝るのが怖いのかよく分からなかった。だって、一人で寝れたほうが広々とベットでも寝れるし快適ではないか。
「暗いの、怖い」
俺はようやくケンジの体が震えているのが分かり、何故そんなに暗闇を怖がっているかに気づく。
この家に来たばかりのケンジには酷いクマが出来ていて、うとうとして眠いはずなのに中々寝ようとしてくれないケンジに正直、俺も寝かしつけるのにかなり苦労したものだ。
けど、きっとそれは外でいつモンスターに襲われてもおかしくなかったから夜はいつも怖くて眠れなかったのであろう。
俺はずっと一人だったので寝る時も一人暗い夜、冷めた布団にくるまって寝るのが俺の中では当たり前となっていた。けど、一般家庭では違う。普通、まだこの歳の子は親と一緒に川の字で寝ていてもおかしくない歳なのである。
『そうか…、これが普通の5歳児の反応なのか』
ケンがおかしいんじゃない。あの頃の俺の方が冷めすぎていたんだ。
そんなことにようやく気づいた俺はなんだか呆気に取られてしまった。
――阿呆だな……、俺も。
俺はぎゅと唇を噛みしめ、そっと布団を捲る。
「ほら、一緒に寝たいんだろ」
「そんなとこ突っ立ってると風邪ひくぞ」と俺は空いてるスペースをポンポンと叩きながら言う。
「!!、うんッ!」
俺が許可すると同時に勢いよくベットにダイブしてきたケンジ。こら、埃が舞うだろ!と俺は注意するが、にこにこと嬉しそうに布団に潜り込んでいるケンジを見るとそれ以上何も言えなくなってしまう。
「えへへ……!」
やれやれ、ケンジの羽毛布団が使われるのはまだまだ先の話しになりそうだな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ほんとにいいのかー?」
「うん」
俺は昼間っから外で何をしているかというとケンジの髪を切っていた。何故か急に髪を切りたいと言い出したケンジ。多分、昨日ギルに女の子に間違われたことよっぽどショックだったんだろう。
『けっこう根に持つタイプなんだなー。ケンって……』
「そよ風の刃」
こんな綺麗な白銀の髪なのに切ってしまうなんてなんか忍びないなぁと思いつつ、ケンジが望むなら仕方ないと俺は風魔法(小)そよ風の刃を使い、ケンジの肌を傷つけないよう細心の注意を払いながら髪をスパスパと切ってきく。
誰かの髪なんて切ったことなんてないから自信はないんだけどね……。
プラチナホワイトの髪は雪のようにハラハラと地面に落ちていく。
「ふぅー……。こんなもんかな?」
取りあえず肩のより短いショートボブぽっい感じに切ってみた。少し長さが揃ってないところもあるがド素人にしてはよくやったほうだと誉めてほしい。
「わぁー!頭が軽いや!!」
頭が軽くなった不思議な感覚にはしゃぐケンジ。俺は黙ってその姿を見つめる。
家庭を知らない俺にはまだ一般家庭がどういうものなのかは理解出来ていないけど、俺は従獣魔として出来る限りの愛情をアイツに注いでやろう。
そう思いながら俺は今日も青空に燦々と輝いているお天道様を見上げる。
ようやくひとくぎりつきましたー!




