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第四十一話 とある酒場にて

 時は少し遡り、ここはアルニカ帝国にある『黒猫の尻尾亭』。飯もうまく、美人だかちょっと強気な女将が酒を注いでくれると人気の店であった。


 沢山の客がいる中、奥にあるカウンター席に座り酒を飲むあの三人の姿があった。


 「まぁ、そんなに落ち込まないんだお。ギル副隊長」

 「元気を出せ」



 二人は真ん中の席に座るギルの肩を叩く。

 任務は無事達成したが、明らかに落ち込んでいるギルを酒の席に呼び慰めていた。


 「でもまさか、ギル副隊長の追跡を撒くとは思わなかったんだぉー」

 「あぁ。あの者、ただ者ではないな」


 あの後、一応ギルドの名簿も調べたがどこにもあの男と一致しそうな特徴を持った者はいなかった。こうなるともう自分たちで調べ上げるのにも限界があり、正直なところ八方塞がりな状態であった。


 「なんだなんだー?うまい酒なのにギルはそんなにしけた顔しちゃって。せっかくの酒が不味くなるじゃないのさ」

 「ビアンカさん……」


 ギルにそう呼ばれたのはここの『黒猫の尻尾亭』の美人女将として有名なビアンカであった。艶やかなココア色の長い髪にすらりとモデルのような体型なのにふっくらとしたでかい胸。

 明るいオレンジ色のドレスを纏い、ビアンカが身につけていたドレスは胸の辺りは胸の谷間が見えるぐらい大胆にあいているセクシーなデザインであった。


 その美貌を見るだけにこの店に通い続けている馬鹿な客たちもいるを忘れてはいけない。


 「ビアンカさん!実はね……」


 ラブリーはブンブンと尻尾振りながら任務の途中で出会った不思議な男の話しをビアンカに話した。


 「ふーん。なんだぁ、私はすっかり女にでも逃げられたのかと思ったよ」

 「……違いますよ。ビアンカさんは俺を一体なんだと思ってるんですか?」

 「ん?その歳にしては珍しい、アルニカ帝国童貞騎士団長様」

 「ブハァッ!!」


 ギルは飲んでいた酒を勢いよく吹く。横で「ギル副隊長、大丈夫~?」とむせたギルの背中を擦るラブリー。


 「ごっほ!げほっ!……ビアンカさんッ!!」


 女性には優しいギルが珍しく顔を真っ赤にさせてビアンカを睨む。


 「あっははは!!本当こいつ、からかいがいがあるよな!」


 ギルの反応を見てビアンカはギルを指を差し、もう一つの片手では腹を抱えながらビアンカは豪快に大笑いする。


 「俺を玩具にして遊ぶのは止めていただきたい!」


 「聖騎士たるものがそんなふしだらな……!」とブツブツと呟き、ギルはますます不機嫌になっていく。


 「まぁまぁ。そんなに怒んなってギル」

 「……誰のせいだと思ってるんですか」


 まだ根に持っているのかギルはビアンカに厳しい視線を向ける。


 「そのお礼と言っちゃなんだけど、変わりにいい話を聞かせてやるからさ」


 ひとしきり笑ったビアンカは一呼吸入れ、話の本題へと入る。


 「実はなつい最近気になる噂が流れてな……。解体屋に悪食豚頭(オーク)の群れが納品されたって話しなんだが」

 「悪食豚頭(オーク)ですか……」


 悪食豚頭(オーク)は確かに厄介なモンスターであったが、それぐらいの捕獲ランクのモンスターなら自分にも狩れると自負するギル。

 しかし、次のビアンカの言葉でギルは言葉を失う。


 「悪食豚頭(オーク)が納品されたその数、約100匹以上。そして、その中にはなんとあの暴食豚頭(キング・オーク)もいたそうだ」

 「なっ……!」

 「えっ!暴食豚頭(キング・オーク)ってあの、捕獲ランクAの!?」

 「しかもそれだけの数を仕留めたのはたった一人の何処の誰かも分からない旅人だったらしい」

 「なんとっ……!」

 「馬鹿な……!?そんな人間いるわけが……!」


 はっとギルの中には何故かあの鉄の馬に乗った謎の男の姿が思い浮かぶ。


 「何故かこの情報は解体屋の中でも厳重な規制がかけられていて私も詳しい話しまでは分からないんだけど……」


 ビアンカはギルに、にっこりと妖艷な笑みを浮かべる。


 「ちょっと興味ないか?なぁ、ギル?」

 「……ビアンカさん。その話しもっと詳しく調べてみてもらえませんか?」


 そう言うとギルはグラスに入った酒を一気に飲み干した。

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