第四十二話 鉄の馬に乗る男
「ここか……」
ギルはビアンカがなんとか調べあげてくれた情報を頼りに最後に暴食豚頭の姿を目撃したという始まりの村という場所に来ていた。
この場所のエリアは経験値を上げたりするのに便利らしく初心者冒険者たちがこの村を訪れ、英雄として祀りあげられている数々の幾千の勇者たちもこの村の出身であり、地元ではかなり有名な村らしい。
だが、それは今は昔の話しであり失礼な話しだが、もし、現在この初心者冒険者クラスたちしかいないこの村に悪食豚頭の群れが近づくことのようなことがあれば確実に始まりの村は今頃瓦礫の山と化し、村人は一人残らず悪食豚頭たちに惨たらしく食い荒らされて、皆殺しにされていただろう。
ギルは馬を降りて、村の様子を確認するがそんな狂暴なモンスターが目撃されたとは信じられないぐらいその村は活気があり平和的でどこにでもありそうなただの村であった。
『本当にこんなところにあの暴食豚頭が出たのだろうか……?』
半信半疑でギルはこの村の村長に直接話しを聞くことにした。ギルは村人に尋ね、村長の自宅へと案内してもらった。
「貴方がこの村の村長ですか?」
「はい、村長のアルデロと申します」
アルデロはギルに一礼を済ませる。
「で、その鎧を着ているということは大国であるアルニカ帝国の聖騎士団の方とお見受けいたしましたがこんな小さな村に何用でしょうか?」
「あぁ。この前、この村の付近にが率いるの暴食豚頭と悪食豚頭の群れを目撃したと報告があった。本当であれば我々の国も人事とは言ってられない案件なので気なり、様子を見に参った次第であったのですが……」
というのは建前で、まずギルの第一の目的はを退治した旅人というのがあの鉄の馬に乗った謎の男と同一人物か確認することであった。
「そうでしたか。それはわざわざご苦労様でございます」
人の良さそうな笑みを浮かべるアルデロ。
「確かにこの村が悪食豚頭の群れに襲われたのは事実です。ですがある旅人様が暴食豚頭と悪食豚頭たちを一瞬にして、倒して下さったのです」
「その旅人の名は?」
「さぁ?旅人でしたので物資をこの村で補給次第、また旅へと向かわれましたので」
「では、どんな格好をしてましたか?」
「普通の旅人の装いをしたお方でしたよ。それ以外はあまり覚えてませんね」
おかしい。村長の態度にギルは何かが引っ掛かった。
そんな村の最大の危機を救ってくれた恩人だというのに名も特徴もよく分からないとは些か変な違和感を感じた。
まるで俺に余計なことを喋らないかのようにしているような…?
ギルは直感的にそんな気がした。
すると、ゴーオラもギルのことを聞きつけやってきた。
「ほほほ。これはこれは……アルニカ帝国の聖騎士団様が何用で?」
「貴方は……?」
「私の父で、先代村長だったお方です」
「ゴーオラと申します」
「アルニカ帝国第3部隊副隊長ギル・アルベルトです。突然本日、この村におしかけてしまい申し訳ありません」
「まぁまぁ、かまいませんよ。ここは夢見る若き者たちのためにある村ですから」
ほほほ、といつものように笑いゴーオラは長く生えた白髭を撫でる。
「それで、今回は副隊長様が何用で直々に参った次第で?」
「はい。この前の暴食豚頭の襲撃についてのことで」
「あぁ、それのことですか……」
「この村を助けたという旅人は何か鉄の馬に乗っていませんでしたか?」
「いや最近儂は目が悪くてしまい、一体なんのことやら……?それにもうその旅人は旅立ってしまい、この村にはおりませんぞ」
「では、せめてその旅人は次はどこの町へ向かうとかも何も言ってませんでしたか?」
「いいえ。特には……」
「村長さん、よく思い出して欲しい!少しでもいいんです、何かその旅人に教えてッ…!」
「これ以上我々が聖騎士殿にお話しできる話しはございません」
ゴーオラからは先程の笑みは消え、静かに声を発する。
「どうかお帰り下さい」
ギルはそれ以上、何も聞けなかった。




