第三十六話 なんか間違ってすごいの出しちゃった
ポチ視点です。
バイクを飛ばし荒野を駆け抜け、俺は目標の積荷にどんどんと近づいていく。小爪竜たちもバイクのエンジン音で俺の存在気付き、容赦なく牙を向けてくる。
――早めに片付けるとしますか。
「大いなる風波!!」
俺が風属性魔法(中)の魔法を発動すると魔法陣が展開され俺の回りに薄い風の防壁が生まれる。俺の体を守るように包み、俺に襲い掛かってくる小爪竜共は悉く俺の纏った風の防壁とバイクに跳ねられ返り討ちにあう。
うわぁー! 我ながらえげつないなぁ、俺の魔法。
「な、何なんだ!?あれは!」
「凄いよ!あの人、鉄のお馬さんに乗ってるんだお!!」
「俺たちを……助けてくれているのか?」
三人は俺の登場に凄く驚いているようだ。
まぁ、そうですよね。こんな知らんおっさん急に出てきたらびっくりしますわな。
そんな俺はというと相変わらずの自分自身の魔法の威力を見て、ドン引きしていた。自分でしでかしてる事だが、ついつい俺は魔法とやらには今だ馴れずいて他人事のように思ってしまう。
バイクで小爪竜たちを跳ね飛ばしているのを横目に俺はごそごそとバッグを漁り、ある物を取り出す。
「あった!」
俺がバッグから出したのはあの胡散臭い魔法少女から買った魔法道具の一つ、モンスターグッパイ☆発煙筒という非常にネーミングセンスが残念すぎる魔法道具。確かこれにはモンスターが寄りつかなくなるという効果があるとマーリンは言ってた。
取り合えずあの小爪竜たちを積荷と馬車から引き離す必要があった。俺はマーリンのその言葉を信じ、発煙筒を点火させることに決めた。
だが、点火させる前に彼等にも知らせ協力を仰がなければらないので俺は念話で三人に話しかける。
『おい!お前ら取り合えず全員、目と鼻を隠してろ!!』
バイクで小爪竜たちを蹴散らしながら俺は積荷の傍へとそのままスピードを落とさずギリギリの範囲で近づく。確かギルと言ったけか?あの金髪の青年は俺の姿をじっと見つめた後、大声で叫んで指示を出す。
「皆ぁー!!目と鼻を隠すんだ!早くっ!!」
『よし!それで良いぞ、青少年!』
大いに俺は賢明な決断を下した少年を誉め称え、その合図と共に魔法で発煙筒に点火させる。すると俺の片手からもくもくと赤い煙が出てくる。ギリギリに近づいた馬車と積荷に俺は発煙筒の煙で包み隠すようにぐるぐると何周も回る。
「ゲッホッ!ゴッホォ!!うわぁー、こりゃキツイッ……!」
噎せかえってしまうほどの悪臭にゴーグルをつけているはずなのに目が玉葱を切った時のようにひりひり痛む。俺も一応モンスターなのでそれ相応の効果があるらしく息が苦しい。
だが、その分確実に小爪竜たちにも効果があったようで悲鳴を上げ馬車と積荷から離れて行く。
俺は煙の外に出て、小爪竜たちの後ろに立ち回る。この煙が目眩まし代りになっている間に蹴りをつけなければならない。俺はそっと手を翳し、ふっと脳裏に浮かんだ適当な呪文を呟く。
「聖なる戦風の息吹き!!」
どっかに遠いとこにでも吹っ飛んじまえ!
そう念じながら唱えると、俺の目の前に巨大な魔法陣が三つ展開され幾つかの大きい竜巻が生み出される。
「あれっ?」と俺も思わず呟く。
おっかしいなぁー?風属性魔法(中)位の魔法をセレクトしたはずなんだけど。
俺は画面を取り出し今発動した魔法を確認する。
【聖なる戦風の息吹き】
風属性魔法の究極魔法。
おひゃぁっ!!!おじさん、熱くなりすぎてなんか間違って凄いの出しちゃったよ!
ぎぁぁあ!!頼むから人と荷物だけは傷つけてくれるなよ!!俺は必死に竜巻様にお祈りする。
数本の伸びた竜巻は小爪竜の群れと積荷と青年たちがいる方角へと速度を速め向かっていく。
「きゃ!竜風なのだお~!」
「くっ……!」
「皆!しっかり何かに掴まっておくんだ!!」
ギルたちは手近にある岩などに捕まる。だが、俺が召喚した竜巻はまるで俺の意を汲むように小爪竜だけを綺麗に吸い込み、渦の中にと巻き上げる。どんどんと空気を取り込み、大きい渦になった竜巻は馬車と積荷は一切傷つけず、煙だけを巻き上げ小爪竜と共に飛ばされていった。
あ、ありゃ?なんか大丈夫そう??
竜巻はあっという間に去り、その場を包んでいた煙は晴れた後は元の何もない正常な荒野に戻っていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「す、凄い竜巻だったのだお……!」
「あ、あんなにいた小爪竜たちがこんないとも簡単に一掃されるとは……!」
「……ッ!!」
ラブリーとローガンが地面に膝をつき茫然としている中、ギルは言葉すら失っている様子であった。
『な、何者なんだ!?あの鉄の馬に乗る人物は……!』
あんな高度な魔法技術と魔力を持っているなんて! ギルは遠くに離れた謎の男に目が離せなかった。ともかくこの場を助けてもらった礼を言うべくギルは謎の男に声をかける。
「あ、あの貴方は一体……!」
ギルがそのまま男に駆け寄ろうとしたその時。荷台に隠れていた商人たちが顔を出し小爪竜の群れが消え去るのを確認すると誰もが歓喜の声を上げた。
「や、やった……!積荷も俺たちも全員無事だ!!」
「あぁ!流石アルニカ帝国の聖騎士様たちだ!!」
事の経緯をちゃんと見ていなかった商人たちは先程の魔法もギルたちがやったものだと思っており、ギルたちに感謝を言うべく近くに寄ってくる。
「ありがとよ!聖騎士様!!」
「えっ?僕たち??」
「すごいなぁ!あんなにいた小爪竜共をやっつけちまうなんて!」
「あっ、いや、あれは俺たちの力ではッ……!」
「わ、悪いが道を通してくれ…ッ…!!」
ギルが慌てて男の元へ行こうとするが商人たちは中々その手を離してくれない。
「ま、待ってくれ!」
そうギルが必死に呼びかけるも虚しく、鉄の馬に乗った男はそのまま何処かへと走り去っていってしまった……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
用も済んだしさっさと自分の家にでも帰ろっと。
何か俺を見て喋りたそうにしてたあの青年には悪いが、黙って俺は帰らせてもらうことにした。だって、余計なこと聞かれると困るし何よりあそこは聖騎士様たちがモンスターたちを追い払ったってしていた方が面子も立つじゃん?
ならば余計な事はせず、はい解散ーッ!!と言わんばかりに俺は黙って何も言わずバイクを走らせることを選択した。一応俺も俺なりに気を使ったわけさ。
はぁー、肩も凝ったし帰ったら風呂にでも入っろ!っと、俺が家に向かってバイクを走らせる中、後ろから何か声が聞こえる。
『んっ?』と俺が振り返ってみるとそこにはなんと、映画のワンシーンみたいに格好よく馬を乗りこなし此方を追いかけてくるあの金髪の青年がいた。
「待ってくれ!そこの鉄の馬に乗ってる者よ!!礼がまだ言えてない!」
てえぇぇぇーッ……! 青年よ、君、礼を言うためしてもしかしてここまでして追いかけてきたの?ちょっと律儀通り越してておじさん、君に恐怖感じるよ!
どうしよう、この副隊長様?とやらの対処。既に肩が凝って疲れている俺は追いかけてくるこの若き青年の扱いに困り果てた。
『イケメンに追いかけられてもおじさん全然嬉しくないよ!!ていうか、誰得の展開だよ!!』
俺はチートの俺でも持ってなさすぎる恋愛運に悔しさを滲ませる。




