第三十七話 森の中でのバイクチェイス
「あー……どうも?」
取り合えず声をかけられてしまった以上、俺は無視はできないので振り返って適当に返事をする。
「よかった!言葉は通じるようですね、俺はアルニカ帝国聖騎士団第3部隊副隊長ギル・アルベルトと申します。先程は危ないところを部下共助けて頂きありがとうございました!」
「別に人として当然のことをしたまでだから気にすんな」
あっ、俺もう人じゃないんだった。モンスターだったわ。
「是非、正式にお礼がしたいので俺たちと共にアルニカ帝国いらしてくれませんか?」
うーん、困ったな。純粋な気持ちで言ってくれているのは分かるんだが、あまりこの青年と一緒にいると変に探られそうだな。若い時の知的好奇心を舐めちゃいかん。
これ以上余計な詮索をされたくないため俺は折角の申し出だが断ることにした。
「あー……別にいいよ、助けたくて俺が勝手にやったんだし。それに今俺急いで家に帰らなきゃならんし帝国には行けないと思う」
家やケンも世話のこともあるしな。
「そんな……!そんなの俺が気も済みません!」
「えぇぇ……」
「恩人に何もせず帰すなんてアニマル聖騎士の名折れです!」
ダメだ、この子真面目そうでいい子そうだけどその分、頑固で真面目過ぎるのが裏目に出て、融通が利かない職人気質の子だわ。
「でも俺は帝国とやらには行けないんだって!ていうか、お礼も言ったんだしもう良くない?どうして君はここまでして俺を追いかけてくるわけ!?」
「それは、俺が個人的に貴方に大変興味があるからだ!」
うぇぇえ……!何言っちゃってんのこの子!?そりゃ世の女性はこんなイケメンからそんな熱い眼差しで言われたら嬉しいかもだけどおじさん男だから!だからその一種の腐がつく女子の層だけが喜びそうな発言やめて!
俺は必死になってこの青年をどうするか考える。すると、丁度良いところに身を隠せそうな森を見つける。
――もう撒いた方が早いかも。
「悪いけど、俺急いで家帰って夕飯の準備しなきゃいけないから!じぁ!!」
「えっ、あっ!」
俺は半ば強引といった感じに会話から抜け、森の中をバイクで突っ切る。木と木の間はバイクが入るとすれすれぐらいの隙間で地面は整備もされていないのでごつごつと荒れた道でしっかりと集中して運転してないと木に衝突してしまいそうだ。
だが、やはりそれだけでは撒けなかったのか後ろからまだ青年の気配を感じる。
くそぅ、やるではないかイケメンよ。けど、おじさんも君に自宅まで着いてきてもらうわけにはいかんのよ。
俺は更にスピードを加速させる。俺はわざと荒れた斜面をバイクで駆け抜ける。
「スピードが上がった……!」
ギルは男を見失わぬようギリギリの速さで馬を走らせる。ギルの巧みな馬術を駆使し、次々立ちはだかる障害も楽々避ける。
「あー!もう、しつこいなぁ……!」
俺がイライラするように呟きながら先を見ると森を抜けた先にはと大きな川の姿を捉える。それを見た俺は一つのアイディアが浮かぶ。
「悪いなぁ、青年。風刃――――」
俺は風の刃で前の木を数本切り落とす。すると、俺が通りすぎる時間差で木は崩れていく。
「なっ……!」
突然木が崩れてきて驚いてギルは馬を止める。俺はその間に川に向かって一直線にバイクを飛ばす。そして、ギリギリの所で――。
「凍える桟橋」
「に、2属性使いだと……!」
あっという間に川の水が凍りつき氷の斜面が出来て助走のついたバイクで飛ぶ。ドンッ!となんとか無事に向う岸に着地成功。そのまま俺はバイクで駆け抜ける。
『はぁーー!マジで死ぬかと思った……!!』
なんとか俺は青年を撒くことに成功しその後何事もなく家に帰った。
だが、家の前で体育座りして俺の帰りを待っていたケンジに「遅い……」とぶすっとした不機嫌な顔で怒られた。
うぅっ……!俺、頑張って帰ってきたのにケンが冷たい!




