第二十五話 異世界での初ボス戦
おびただしいほどの涎を垂らし、鼻が思わずひん曲がってしまいそうな酷い口臭を放つ暴食豚頭。
『足リナイ、足リナイッ……!! 色ンナ森ノモンスターヲ食ベタノニマダ足リナイ……』
あー、なるほど……。こいつらが最近、近隣の森のモンスターを食い荒らしたせいでこの前の狩りの時もまったくモンスターが出てこなかったのか。
お前等のおかげでこっちは一時間も時間を無駄にしちまったじゃねえか。一児を育てる男には一時間でも貴重な時間なんだぞ、この豚野郎。
俺はついついそう心の中で毒づく。おっと、昔のクセで口が途端に悪くなるのが俺の悪いところだ。
『おい、暴食豚頭。俺はな、なるべくここの世界ではあんま目立たず、只平和に田舎暮らししたいだけなんだよ』
『もう二度と人間たちに悪さしないことと森のモンスターを無暗に言うなら見逃してやるから約束しろ』と俺が言うと暴食豚頭はせせ笑うように気味悪い笑みを浮かべる。
『グフフッ……! 子供ノ匂イガスル。旨ソウナ、匂イダ』
こいつ……、ケンジたちにもう気づいてやがる。
暴食豚頭の巨大な鼻はどうやら見掛けだおしではないらしく、嗅覚も鋭いらしい。
『俺の約束を守って大人しく帰ってくれる……ってわけじゃなさそうだな。その顔は……』
『子供、子供ォ……!!オマエ、青イ、不味ソウダカライラナイ……』
おし! あの豚、ぜってえ許さなねぇ!! そりゃ、旨そうなだなと言われても困るけど。俺のつるつるモチモチ、プリティーボディーを見て、不味そうとか一言で片付けやがった!
俺と暴食豚頭との交渉は決裂した。俺は暴食豚頭って走り出す。
『よーし! 喰らえ俺の魔法を……!』
ここはなんか小説とかでよくある異世界ものの主人公らしく格好よく一発技を決めて……。俺はそう思い、暴食豚頭に向かって跳ねて飛びかかる。
『えっ!? うおっ、っとと……!』
草原のため風が吹き荒れるエリア。急に突風に煽られ、俺は体がスライムのため軽いのでバランスを崩しそのまま、ゴツンッ! と暴食豚頭の額にぶつかる。
雑魚モンスターの十八番『体当たり』が見事にクリーンヒットする。
『いって!』
『ブィヒィィイァアァアアッ!!』
まるで物凄い攻撃を喰らったかのように絶叫を上げる暴食豚頭。その場に倒れたかと思ったら、苦しそうにぶつかった頭を抱え、呻く。天に手を上げたと思ったらパタリッ……とその手は力なく地面へと堕ちる。
『えっ、ちょ……嘘でしょ?』
うぇええええ!?? 何これ?
『体当たり』で俺の初ボス戦これで終了ッ!?
俺がしたのって、ただの体当たりだよ?そんなに強くもぶつかってないし……。
だが、目の前に倒れた暴食豚頭は白目を向け既に絶命していた。俺が暗然として暴食豚頭の屍を見ていると、離れていたところでその光景を見ていた村人たちの歓声が沸き上がる。
「う……うぉおおお!! すげぇ! あのスライム、マジで暴食豚頭を倒しやがった!!!」
「俺たちの勝利だぁああ!!!」
「と、とうちゃん! 俺たち勝ったの?」
「あ、あぁ……。信じられないが、そうみたいだ……」
始まりの村の危機が去り、男たちの喜びの声が上がる。ケンジはポチの傍に駆け寄り、抱き締める。
「ポチ、凄いよ!! あの暴食豚頭をやっつけちゃうなんて!」
『うーん……。なんか、解せない』
まぁケンジの願い、始まりの村を救うっていう目的は達成できたからいいっか。




