第二十四話 悪食豚頭を討伐せよ!
始まりの村の外れで戦いは既に始まっていた。村の男たちは槍や弓矢で攻撃し楯で身を守るが相手は悪食豚頭。
群れ一つで約100匹以上おり、それに比べこちらは村人や見習い勇者候補を含めても20人程弱の人数。多勢に無勢なこの状態。従獣魔のたちも共に力を貸してくれるが悪食豚頭の方がレベルが高く魔法で攻撃してもちっとも効いている様子がなかった。体力がなくなった者から悪食豚頭の牙に襲われていった。
「村長……!ダメです!!このままじゃ、全滅します!」
「くっそ……!」
そう呼ばれたのはまだ村長としては若そうな黒髪に日に焦げた褐色の肌をした30代ぐらいの歳の男性。槍を持ち、見事な槍術と風魔法の合せ技でひたすらに悪食豚頭共を一匹一匹確実に潰していく。――だが、一瞬の油断が命取りだった。村長の背後から悪食豚頭の棍棒が村長の頭部めがけて降り下ろされる。
「ぐがぁ……!」
もろに頭にダメージを喰らった村長。青草の上へと倒れる。直ぐに態勢を立て直そうとするが頭からは血が流れ、フラフラと意識が朦朧としておりうまく立てない。
「ぐっ……!」
そうしている内に背後から悪食豚頭は村長の黒髪を掴み上げ、首筋をまるで品定めするかのように涎を垂らしながらじっくりと舐めるように見る。悪食豚頭の口から出る死体が腐ったかのような酷い腐敗臭と浅く荒い息遣いが村長の首筋に当たる。
――ここまでかっ!
村に残してきた妻とまだ幼い子のことが脳裏に過る。悪食豚頭が村長の首に鋭く伸びた前歯を突き立てようとした、その時。
「――とうちゃん!」
戦火の中、聞こえたのは間違いなく自分の息子のティプの声であった。
「なんでこんな所にっ……!?いけない、ティプッ!こっちに来るな!!」
悪食豚頭の大好物は柔らかい女子供の肉……。必死にティプに叫ぶ村長であったが、もう遅かった。
完全に悪食豚頭はティプの姿を捕らえ、獲物を変えた。ゆっくりゆっくりと悪食豚頭がティプに向かっていく。
「お、お前なんか怖くなんかないんだぞぉ!行け、ベロア!!」
ティプは自分の従獣魔を前に出し悪食豚頭に立ち向かう。
従獣魔のベロアは得意の火属性魔法(小)火球を悪食豚頭の顔めがけ一発、時放つがやはりレベルが差がありすぎるのかダメージは全く受けていなかった。
『ブィヒィーーー!!』
邪魔だと言わんばかりにベロアの腹を蹴っ飛ばす悪食豚頭。
「ベロア!」
蹴っ飛ばされたベロアを抱き抱えるティプ。
「キュ……」自分のことはいいから逃げろと言わんばかりに弱々しい声で鳴くベロア。
ふっとティプはあのスライムが言った言葉が頭に浮かぶ。
『モンスターの従獣魔だってな生き物なんだ。どんなモンスターにだってちゃんと心があるだよ』
「うっう……!ごめん、とうちゃん、ベロアッ……!!」
無力過ぎる自分と必死になって戦ってくれたベロアに対して何も出来ない自分が悔しくて涙を溢し始めるティプ。そんなティプの元に悪食豚頭の魔の手が忍び寄る。
「や、やめてくれ……!頼む……!!」
必死に地面を這いずり悪食豚頭に手を伸ばすが届かない。
「や、やめろぉぉぉ!!」っと村長の、父親としての悲痛な叫び声が戦火の草原に響き渡る。
『おらよっと』
すると突然、悪食豚頭の頭に何処からか現れた青い謎の液体がへばりくっつく。悪食豚頭は液体のせいで息が出来ず呻き苦しむ。必死に自分の顔についたものを引き剥がそうとかきむしるがつるつると滑って上手く剥がせない。
その間に村長はティプの元へと駆け寄り、愛しい我が子をぎゅっと抱き締める。
「ティプ!あぁっ……!良かった!!」
「とうちゃん!!」
ティプに怪我ないことに安堵する村長。二人を襲ってきた悪食豚頭はそのまま傍に倒れ窒息死した。悪食豚頭の顔を覆っていた青い謎の液体が突然、うねうねと生き物のように動き始めある一つの形となる。
「な、なんだ……?あれは、スライム……なのか?」
「お、お前!なんでここにッ……!!」
ポチの突然の登場に驚きのあまり、ティプの涙はいつの間にかに引っ込んでいた。
『なーに、俺のご主人様がどうしても村の人たちを助けに行くって煩くてっな』
なんて呑気に近所を散歩する気分で言う俺。
「ティプ君、大丈夫?」
俺の後から追いついたケンジ。だが、村長は顎が外れんばかりに口を大きく広げ震える指先で俺を指差す。
「な、なぁっ……?!スライムが喋った……!!」
『あー、その説明は後でな。今は取り合えず……
』
そう俺は言うと、すっー……と俺は腹に息を溜め、――一気に吐き出す!
『テメらぁあああ!!いい加減しろぉぉお!!!』
俺の怒号の咆哮がびりびりと空気が震え上がらせる。俺の咆哮にその場にいた何十匹もの悪食豚頭たちが次々と気絶して倒れていく。突然バタバタと倒れていく悪食豚頭たちに戦っていた村人たちも驚く。
「急に悪食豚頭たちが……!」
「よ、よく分からないが……皆!チャンスだッ!!やっちまぇー!」
気絶している内に悪食豚頭たちの息の根を止める村人たち。村人たちにも勢いが戻り、形勢逆転していく。信じられない光景を見てまだ驚きを隠せない村長。
「あ、貴方は一体…!?」
『俺はただのスライムだよ。そんなことより……』
数多くの悪食豚頭が倒れる中、ただ一匹だけ俺の咆哮でも倒れない悪食豚頭がいた。
《モンスター.156 暴食豚頭》
*Lv 110
HP 2056/2056
SP 742/742
攻撃力 1810
防御力 1506
捕獲ランク A
「あいつは……暴食豚頭!!」
『あいつが親玉だな』
俺はあいつに向かって歩いていくと村長は顔面蒼白で俺を必死に止める。
「む、無理だ!!暴食豚頭はSランクの冒険家かそれとも帝国のおられる聖騎士団長クラスの実力がないと以上倒せない!!」
『そんなもん知るか』
村長の制止を振り切り、俺はケンジに「村長と一緒にここで待ってろ」と言うと暴食豚頭の前と出た。
初めてのボス戦突入です!




