後
「全く、あんたって子は信じられないよ」
いつの間にか目を覚ましたおばあさんが、声を掛けました。
「本当に、あんたがその格好で来るなんて……」
おばあさんは、まじまじと見つめてから、ため息と一緒に言葉を吐き出しました。
「私は、赤い頭巾を孫娘に贈りはしたけど、息子にはやってないんだがねえ」
赤ずきんちゃん――ではなく、赤い頭巾を被る彼は、渋い顔をして黙り込みました。
「妻と娘に頼まれた男がすることは、一つだけだ」
「こんな息子を持った私の気持ちにもなっておくれよ」
「仕方がない。娘はお友達と出掛けるんだから。『お父さん、一日だけ私の代わりになって。お願い! 聞いてくれないとお父さんのこと嫌いになる!』と言われれば誰だって……」
「それで、大事な嫁さんは何て言ったんだい?」
「面白そうだから聞いてやって欲しい、と」
おばあさんは、重いため息をまた一つ、こぼしました。
「あんたは親馬鹿というよりも、ただの馬鹿だね」
「……む」
後日、赤ずきんは、お父さんとお母さんと一緒に、おばあさんのお見舞いに行きました。
めでたしめでたし。
【その後の狼】
森の中には、お腹を抱える狼がおりました。
「うう……痛い」
「やだ、狼ったらまた胃を痛めているの?」
「仕方がないだろう。あんなに恐ろしい体験をしたんだ。ああ、今も赤ずきんが俺を狙っているのかと思うと恐ろしい……」
森では、眼光の鋭い屈強な赤ずきんの噂が流れました。
おしまい。