表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
解けた魅了と次の恋  作者: ミカン♬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/9

 レミアンが帰ると、お姉様は私に向かって言った。


「一刻も早く、あのクズとの婚約は破棄しましょう」

「ええ、そうします」


 すると、その後ろから。


「やっとお嬢様も目が覚めたのかな?」


 ラーシュが、嫌味っぽく口を挟んできた。


「……変な感じだわ。レミアンを好きだった気持ちが、綺麗さっぱり消えてしまったみたい」


「お嬢様の好意が消えて、《魅了》が効かなくなったんだろう」


「私……本当に魅了されていたのね」


「こうやってね」


 ラーシュがそっと私の手を握る。


 ――ドキッ。


 胸が小さく跳ねた。


 でも、レミアンの時みたいな、不自然に夢中になる感覚じゃない。


 もっと穏やかで。

 自然と心がはずむような――そんな感じ。


 ラーシュが真っ直ぐ私を見つめる。


「俺はずっと、エレナお嬢さんを見守ってきた。でも最近は、大きな危険なんて無かった。……だから今回は油断した」


 彼のシュンとした顔は辛そうだ。


「本当に謝らないといけないのは俺だ。怪我をさせて、怖い思いまでさせた。……すまなかった」


 ……不思議。


 私の心臓、

 どうしてこんなにドキドキするの。


 戸惑っていると──


 バシィッ!!


 突然、お姉様がラーシュの背中を思いきり叩いた。


「……っ!? い、痛っ!」


「肝心なところで遅れるんだから。役立たず!」


 ラーシュは背中を丸めて顔をしかめる。


 いつもは澄ましているくせに。

 お姉様の前では、弟の顔になるのね。


「あはは」


 笑えた。


 ……うん。


 レミアンといる時より。


 ずっと、心から笑えた。



 ◇



 それからしばらくして。


 朝食の後、お姉様は真剣に私に尋ねた。


「婚約は、本当に破棄するわよ? 覚悟はできている?」


「ええ。……なんだか、長い夢を見ていたみたい。心配かけてごめんなさい」


「大切な貴方を守るのが、私の使命よ。私はただ、エレナの幸せだけを願っているの」


 そう言って、そっと抱きしめてくれる。


 ──温かい。


「お姉様にも幸せになってほしいわ。もちろん、ラーシュもね」


「ふふ。孤児院から引き取られて、私達は十分幸せよ」


 お姉様は懐かしそうに笑った。


「子供の頃なんて、まだラーシュも小柄だったから、私のフリをしてエレナと遊んでいたのよ?」


「……全然気づかなかったわ」


「双子だもの」


 大好きなオルガお姉様と過ごして来た時間と思い出。

 その中に、ラーシュも含まれていた。


 嘘みたい。

 ──あのラーシュが、可愛いドレスを着て私の傍にいた?

 女の子のフリをして、お人形遊びや、手を繋いで一緒にお昼寝をしていたなんて。



「でも背が伸びて誤魔化せなくなった。エレナの前から消えるしかなかったの」


 ラーシュが鮮明な赤毛を黒く染めていたのは、目立たないようにするため。

 そして――ずっと、私を陰から見守ってくれていたのだ。


「私、大切にされていたのね」


 胸の奥がくすぐったくなった。



「では、始めましょうか!」


 ぱっと立ち上がったお姉様は、まるで戦場に向かう騎士みたいに頼もしい。


「うちの高級レストランの個室を、レミアンが予約したと報告があったの」


「三人でご馳走パーティー?」


「いいえ。二人よ」


 相手はユゼフね。


「そこに『ご子息とエレナの結婚についてご相談がある』と言って、ユーグ侯爵夫妻をお招きしたわ」


「大丈夫なの?」


「『ご子息には、絶対に内緒で』ってお願いしたわ。『先日の件。エレナが怒っていて、レミアンには会いたくないから』と言ってあるのよ」


「上手くいくかしら?」


「レミアンとユゼフは恋人同士なのでしょう? 

 お酒が入ると、きっと雰囲気も甘くなって……ふふふ」


 なるほど。

 あの二人の関係を暴露して、婚約を破棄させる。


 完璧な罠である。


 さすがお姉様。



 ――まもなく、私とレミアンの関係は終わる。


 私は魅了されていた。

 好意の上に重ねられる、愛の魔法。


 でも。

 ラーシュとの勘違いとはいえ、レミアンが好きだという気持ちは本物だった。


 もし、貴方が誠実な人だったなら。

 もし、本当に私を愛してくれていたなら。


 違う未来もあったかもしれないのに……。


 そんな感傷も秒で終わる。


 私が捧げた愛もお金も、すべてが無駄だった。



読んでいただいて、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ