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解けた魅了と次の恋  作者: ミカン♬


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3/9

 大通りを歩きながら、ネリアは終始ご機嫌だった。


「あっ、可愛い!」


「見て見て、今度あれが欲しいな!」


 子供みたいにはしゃぐ彼女を、レミアンとユゼフが優しい目で見守っている。



 やがて私たちは、高級ブランド店の前で足を止めた。


 ガラス張りの美しい店。

 大きな看板を見上げたネリアが目を輝かせる。


「ここでエレナはウェディングドレスを注文したの?」

「ええ。完成まで半年以上かかるみたい」


「ここはエレナの母上のお店なんだよ」

 レミアンが得意げに説明する。


 するとネリアが羨ましそうに頬を膨らませた。


「いいなぁ~。何でも無料なの?」

「いいえ。お金は払うわよ」

「親子なのに? あ、ご両親は離婚してたんだっけ」


 悪気はないのだろう。

 でも、いちいち説明する気力も沸かない。


 そんな微妙な空気などまったく気づかず、レミアンが笑顔で爆弾を投下した。


「エレナ、ネリアのウェディングドレスを僕たちから贈ろうよ」

「へっ?」


「そんな~悪いわぁ」

「そうだよ。そこまで甘えられないよ」


 口ではそう言っている。

 でも二人とも、断る気なんてこれっぽっちもない顔だった。


 私はにっこりと微笑む。


「あら、お二人はいつ結婚なさるの?」

「たぶん君たちの後かな。まだ資金を貯めないといけないから」


 ユゼフが答えた、その瞬間、レミアンが私の手をぎゅっと握った。


「エレナ、構わないよね?」


 青い瞳が期待に満ちている。


「どうせならユゼフの婚礼服も用意してあげようよ」


「お、お好きにどうぞ」


「ありがとう!」


 ぱっと花が咲いたように笑うレミアン。

 そのまま三人で店の中へ入っていった。


 ……最初の頃は、もっと遠慮していたのに。


 今では当然のように私の財布をあてにしている。


 分かってる。


 私がずっと許してきたからだ。


 別に大金じゃない。


 私にとっては。


 そう自分に言い聞かせながら店へ入った。



 ◇◆◇



「エレナお嬢様、いらっしゃいませ」


 すぐに声を掛けてきたのは、若い男性、店長代理だった。


 艶のある黒髪。

 銀縁眼鏡。


 整った顔立ち。

 背が高く、妙に色気がある。


 ラーシュだ。


 母のお気に入り……多分、若い恋人。


「エレナと同じウェディングドレスを注文したいんだけど」


 レミアンがそう言うと、ラーシュは口元を緩めた。


「お値段は五千万ゴールドになりますが」


「ご、五千万!?」


 レミアンは慌てて私を振り返った。


「エレナ、いいよね?」


 いいわけないでしょう!


 そう言おうとしたのに。


「唯一無二のお品ですので、同じものはご用意できません」


 ラーシュが先に断った。


「じゃあ同じくらいのドレスを注文しよう!」


 レミアンの諦める気はゼロだ。


「エレナお嬢様、いかがなさいますか?」


 ラーシュが私を見る。

 同時にレミアンがまた私の手を握った。


 すると今度はネリアが慌てて首を振る。


「そんな高価なのは結構です! 五百万くらいので十分だわ」


「そうだよレミアン。そのくらいでいいよ」


「そんな安物でいいのかい?」


 ……レミアン。

 五百万ゴールドは十分高級品なのよ?


 ラーシュは私たちのやり取りを眺めながら、にやりと笑った。


「お買い上げありがとうございます。採寸はこちらへどうぞ」


 ――ラーシュ!

 私、まだ何も言ってないわよ!?


 抗議する暇もなく、ネリアとユゼフは採寸室へ消えていった。


 そしてレミアンはというと。


「せっかくだし僕も新しい服を見ようかな」


 楽しそうに売り場へ向かっていく。



 私は疲れ果ててソファへ腰を下ろした。


 しばらくして、ラーシュが紅茶を運んでくる。


「どうぞ」

「ありがとう」


 カップを受け取ると、ラーシュが盛大にため息をついた。


「はあ……お嬢様は本当に男を見る目がございませんね」

「失礼ね」


 何よ。

 母のお気に入りだからって偉そうに。


 私は紅茶を一口飲んだ。


「そうだわ。馬車も注文したいのだけど、手配してくれる?」


「婚約者様のために?」

「そうよ」


 するとラーシュは額を押さえた。


「救いようがありませんね」


 カチンときた。


 そもそも貴方だって母のお気に入りじゃないの。

 レミアンと大して変わらないくせに!


 私は思いきりラーシュを睨みつけた。


 けれど彼は涼しい顔。


 本当に、いつも憎らしい!



 その後も私はソファに座ったまま。


 延々と。


 本当に延々と。


 三人組が、ウェディングドレスのデザインを選ぶ様子を、眺め続けるハメになったのだった!



読んでいただいて、ありがとうございました。

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