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解けた魅了と次の恋  作者: ミカン♬


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2/9

 友人たちの声が私を諫める。


「どうしてそんなにレミアンが好きなの?」

「エレナなら、もっと良い相手がいるでしょう?」

「まさか侯爵夫人になりたいから?」


 違う。

 そんな理由じゃない。


 全ての始まりは――三年前。


 レミアンと初めて会った、お見合いの日だった。


 本当なら、この縁談は断るはずだったのよ。

 ユーグ侯爵家の評判は最悪。

 父も乗り気じゃなくて、お断り前提のお見合いだった。


 なのに。


 輝く金髪。

 吸い込まれそうな青い瞳。

 信じられないくらい整った顔立ち。

 

 初めてレミアンを見た瞬間、私は一目で恋に落ちてしまった。

 


 お見合いの途中、私たちは侯爵家の庭園を歩いていた。


 そのときだった。


 ブーン……。


 不気味な羽音が聞こえた。


 振り返ると、蜂の群れがこちらへ向かって飛んできていた。


『うわぁああ──!』


 悲鳴を上げてレミアンが走り出した。


 私も慌てて後を追う。


 だけど。


『きゃっ!』


 ドレスの裾を踏んで転んでしまった。


 耳元で鳴り響く羽音……怖い!


 私はその場でうずくまることしかできなかった。


 すると突然。


 ふわり、と何か、頭から被せられる。


 次の瞬間、身体が浮いた。


 誰かに抱き上げられ、私は安全な場所まで運ばれた。


『じっとしていて』

 耳元で優しい声が囁く。


 安全な場所に下ろされても、私は目を閉じて震えていた。


 しばらくして。


『もう大丈夫だよ』


 恐る恐る顔を上げると、レミアンが立っていた。

 少し息を切らせながら、困ったような顔で。


『あ……ありがとう』


『うん。怖がらせてごめんね』


 陽の光を浴びた金色の髪がきらきら輝いていた。

 まるで神話の太陽神みたいに。


 彼は手を差し出した。

 私は……その手を掴んで起き上がった。


 その瞬間。


 私は完全に恋に落ちたのだ。



 ◇◆◇



 今日はレミアンとのデートの日。


 ……とはいえ、彼は迎えに来てくれない。


『うちのボロの馬車に、美しいエレナを乗せられないよ』


 そう言うから、いつも私が迎えに行っていた。


 だけど、


『この日は、別々に行こう』


 そう言われたのだ。


 私は護衛を馬車のそばに残し、一人で待ち合わせのカフェへ向かった。


 レミアンは護衛付きのデートを嫌がる。


『お金持ちだって見せつけているみたいで嫌なんだ』


 そう言って不機嫌になるから。


『エレナは僕が守るよ』


 なんて言われたら、断れないじゃない。


 カフェに入る前、ふと窓の中を覗く。


 すると。


 三人が楽しそうに笑っていた。

 まるで私を待っているというより、最初から三人だけの世界が完成しているみたいだった。


 胸が少しだけ痛む。


 店に入ると、ネリアがこちらを見た。


「エレナ遅~い」


「時間を間違えたのかしら?」


 冗談のつもりで言ったのに、誰も反応しない。


 ユゼフがネリアへ話しかける。


「ネリア、ケーキ、お替りする?」

「もうお腹いっぱい」

「じゃあ次、行く?」


 ……面白くない。


 お替りするほど長い時間、三人で楽しんでいたのね。


「エレナ、何か飲む?」

「いらないわ」


 そう答えると、レミアンは申し訳なさそうに眉を下げた。


「ごめんね。本当は迎えに行くべきだった。でも今日は両親が馬車を使っていて、それでユゼフに迎えに来てもらったんだ」


 そう言いながら、私の手をそっと握る。

 その温もりに、機嫌が直ってしまう自分が悔しい。


「侯爵家なのに馬車が一台だけなの?」


 ユゼフがくすりと笑う。

 レミアンも肩をすくめた。


「うちは貧乏なんだ。仕方ないさ」


 ……なんだか妙に芝居がかっている。

 欲しいなら素直に言えばいいのに。


「じゃあ、レミアン専用の馬車を贈るわ」


「ほんと? ありがとう」


 ぱっと明るくなる顔。

 その笑顔を見ると、つい甘くなってしまう。


「これでいつでもレミアンに送り迎えしてもらえるわね。良かったわね、エレナ」


 ネリアが無邪気に笑う。

 ユゼフもレミアンも楽しそうに笑った。


 ……なぜか、その光景がひどく不快だった。


 当然、お会計は私が済ませる。


 店を出ると、いつものようにネリアを真ん中にして三人が腕を組んで歩き出す。


 私を置いて。


 しばらく歩いたところで、レミアンが振り返った。


「あっ」

 思い出したように私のもとへ駆け寄ってくる。


 そして、きゅっと私の手を握った。


 嬉しい!


 ――だから私は、この手を離せない。


 どれだけ不満があっても、寂しくても。


 レミアンが好きだから。



読んでいただいて、ありがとうございました。

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