第52話 人は見かけによらない
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【全て正直に話す】または【あの空間の事だけ話す】後からスタートです。
「アスカ、明日は七夕を行うよ。
短冊に書く願い事を考えておいてくれ」
「七夕……」
七月六日、私は第一ホールでジョーカーと一緒に向かい合わせで昼食を食べていた。
……七夕。
私の知っている七夕と同じだろうか?
「そうだよ、君の知っている七夕と同じ七夕さ」
「……鬼ごっこのように、ちょっとズレてたりしないよね?」
「仮にズレていたとしても、安全だよ。
私達の七夕は、バンブーツリーに願い事を書いた短冊を飾り、星空を眺めながら皆で夕食を食べるだけだからね」
「皆で夕食?」
「この日のためだけにハルトが特別メニューを用意しているから、もっと楽しみにすると良い」
ジョーカーがスプーンでオムライスを掬い、小さく微笑む。
今日のメニューは、あんかけの海鮮風オムライス。
とろとろのあんでコーティングされており、味も見た目も少し変わったオムライスだ。
――――外見が幼いジョーカーがオムライスを食べているのを見ると、何だか微笑ましく感じる。
「……それは、私を子ども扱いしていると思っても良いのかい?」
「そ、そういうわけじゃないけど……」
ジョーカーは最後の一口を食べた後、不満そうな声で言った。
どうやら、この手の内容は禁句らしい。
次からは考えないようにしよう。
「人は見かけによらないよ、アスカ。
可愛い外見をしているけれど、実は恐ろしい悪魔かもしれないからね」
「可愛い外見に……悪魔?」
「そうさ。
外見で人を魅了し、捕食をするんだ」
――――真っ先に浮かんだのは、ノエルの姿。
あんなに可愛らしい外見だけれど、実際はマフィアの仲間だ。
「彼女レベルの外見なら、きっと仕事もスムーズに済んでいるのだろうね。
正直、私はとても羨ましいと感じているよ」
「ジョーカーはスムーズに進まないの?」
「……私が魔法使いだと言っても、初対面だと信じてくれない人ばかりなんだ。
いちいち説明するのは疲れるだろう?」
困ったように眉を寄せながら、ジョーカーは立ち上がった。
「では、そろそろ私は他の子達にもイベントを伝えてくるよ。
また会おう、アスカ」
「またね、ジョーカー」
ジョーカーが去るのを確認し、私は食べかけのオムライスを再び食べ始める。
そういえば、ノエルはいつ来るのだろう。
あれから大分経っているが、未だに会っていない。
さらに、私はノエルの元へ遊びに行ってもいない。
――――――もしかして、偶然私が居ない時間に来た……とか?
その場合、どうやって謝ろう。
とりあえず、近い内にアジトとやらへ行った方が良さそうだ。
...to be continued...
いよいよ夏になりました。
何だかナツさんが活躍しそうですよね、夏だけに……って漢字の滑りそうな話題は避けます……orz