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rm06 2014年プロ野球開幕について

 結局のところ日差しが心地良すぎるのが原因だろう。空も海も大地も新生の時を迎えるように人間社会もまた新たなるスタートがこの四月から始まる事も日本においては多い。ついでに虫たちもよく活動するようになったが、まあ向こうも嬉しいんだろうしこちらとしてもあんまり無下にはしたくないところ。


 花の咲き誇る季節。街を鮮やかに染める桜や食べても美味しい見ても綺麗な菜の花もいいが、一番見ると嬉しくなるのはオオイヌノフグリだと確信している。あんな素敵な花ってそうないのにあの絶望的なネーミングセンス。とにかく、脇にそんな花たちが咲いているアスファルトを抜けて二人は研究所に集まっていた。


「ねえ、とみお君聞いた? この南郷宇宙研究所が経営難で破産するって話」


「へえ、そうなの? 初めて聞いたなあ」


「何か脱税とかしたらしくってもう博士は逮捕されてて、今日にも強制執行のためヤクザが大挙やって来るって話よ。今日集まってもらったのは他でもない、私たちの力でヤクザたちを退治するためだって」


「へー、それは頑張らなきゃなあ」


「なんてね、嘘よ嘘。ねえ、今日はエイプリルフールだから」


「ああ、なーんだ、それは良かった。と言うか絶対そんな話今さっき考えたでしょ。さすがにクオリティ低すぎるよ」


「うるさいわね。まあそれはともかく、ようやくプロ野球開幕した頃合だしどうにかこの平和を守るために新年度となっても戦い続ける覚悟に一片の嘘もないのはこの私の体内に脈々と流れる赤い血潮を証明してくれているわ」


「なんだそれ。でもまあ、僕だってその志は負けてないつもりだよ。運動神経はちょっと鈍くても、実力の全てをスーツに依存してるくせに戦闘になるとやたらと強気な発言を連発しても、そこだけは最初から今まで、そしてこれからも変わらない部分だから。ところで、今年の広島はどうなの?」


「でもまだ開幕して三試合しかしてないから、それとオープン戦ね。そのオープン戦では一応勝ち越したし、これはいい流れと言えるわね。オープン戦で優勝したらペナントでも、という話ではないけどやっぱりオープン戦で大負けするような球団はシーズンでも苦戦するというデータはあるようだから」


「そりゃあファンとしても負ける試合より勝つ試合を多く見たほうがいいに決まってるからね。それで言うと苦労したのはヤクルトや阪神で、優勝したのはソフトバンクだったね」


「ソフトバンクはスタンリッジ・ウルフ・サファテ・李大浩・岡島・鶴岡・中田といった積極的な補強を見せたし、まずここまではその成果が出てるんじゃない? 元々優秀な選手は多かったし、その中から競うという部分もあって層の厚さは日本一でしょうね。しかしなりふり構わぬ強烈な補強よねえ。当然ペナントレースでも優勝しないと次に変えるべきは監督にってなるのはもはや必定だし秋山監督も責任重大」


「セリーグでは巨人がトップだっけ。ここも大竹に片岡と実績のある選手をFAで獲得したからね。やはり連覇が現実的なんだろうね」


「パリーグは楽天もいいスタートを切ってるわね。でも基本的に大外ししたくない堅実な予想をしたいなら巨人とソフトバンクを首位に予想するのが無難よね。そしてカープは、意外と二位に予想する人がファン以外でも多いという印象ね。もちろん不安要素は多くあるけど、それでも巨人以外の他球団と比較するとまだましなほうと見られているみたい」


「他球団はそんなに不安材料が多いの?」


「まずは投手よね。カープにはエース前田健太がいる。これが大きなアドバンテージなのよ。中日吉見やヤクルト館山といったタイトル獲得経験があって本来の実力を発揮すれば立派なエースとなれる投手たちは怪我で離脱中で、横浜はそういった選手すらいないから」


「ああ、やっぱり投手ってなるのか。横浜なんていい打線を持ってるのにね」


「開幕投手に二年目の三嶋が抜擢されたけど一回の時点で勝負ありという大炎上。三浦ももう四十路で先は短く、じゃあ次は誰がエースになるのかと問われるとご覧の有様。補強で久保や高橋尚成を獲得したものの彼らとてどれだけやれるか。それにキャッチャーも去年一番出番の多かった鶴岡を久保の補償で取られて在籍するのは実績皆無な選手ばかり。ようやく最下位を抜けたとは言っても、こうもちぐはぐな運営をするようでは道は険しいと見られても仕方ないわね」


「他はともかくキャッチャーはいきなり出てくるってポジションでもないからね。ヤクルトは、去年は怪我人が多かった印象だけど」


「今年もそれなりに故障者は出てるけど、ただ間違いなく選手層は薄いほうと言えるわ。先日には増渕投手を放出して日本ハムから今浪内野手獲得というトレードを仕掛けたけど、特に内野は厳しかったから期待通りに働けば面白い補強となるわね」


「バレンティンが去年は六十本打っても最下位だったという事実があるからね。とにかくバレンティンや小川以外の選手が奮起すればってところかな。そして中日は?」


「開幕カードで当たったけど、ううむ、まだ今シーズンの形が定まっていないように見えたわね。打順とかにしても、大島は絶好調だったけどクリーンナップがちょっと冷えてていまいち得点に結びつかなかったり、ちょっとちぐはぐと言うかはまりきってないと言うか。ベテランも多いから、これから本領発揮するのか実は衰えていてこれが実力なのか。そこはもう少し進まない事には何とも言えないわ」


「谷繁選手兼任監督もこれからどのような采配を振るうのか気になるよね」


「選手として衰えが見られる中でキャッチャーとして、また監督としても頭を使わないといけないから大変よね。しかもそれまでは自分が安泰だったから必要なかったポスト谷繁を見つけるという仕事も課せられて。今のところは第三戦でいい打撃を見せた松井捕手が有力かしらね」


「谷繁が磐石だった分大変だよね。広島も石原が離脱でもしたら白濱とか出てくるわけだし。いざとなれば倉が一軍なんだろうけど、そろそろ引退となっても不思議ではない年齢だからねえ。ところで阪神はどうなの? 開幕の巨人戦ではいきなり投手陣が崩壊してたけど」


「能見がエースだからって毎試合抑えるって事でもないし、炎上が開幕カードで連発したところでシーズンずっとああじゃないわ。ただチームとしての強みは明らかに投手だっただけに、それがいきなり崩れたっていう嫌な感じはあるかもね。打線に関しては新外国人のゴメスが鍵よ。正直去年の段階でもあんまり迫力のある打線じゃなかったから。うまくはまったら面白い打線になると思うけど」


「西岡は大丈夫なのかなあ。それと迫力という点で言うと今年の広島はキラとエルドレッドのコンビが最初から揃っているのはいいよね。中日戦でも早速ホームランをかっ飛ばしてくれたわけだから」


「思えば去年の今頃は栗原の復活を信じて起用していたのよね。結局栗原は調子が上がらず二軍落ちしてそのまま浮上せずシーズン終了。今年もオープン戦でまったく打てずに今は二軍。しかもその打席を見ると明らかに打てそうになくて案の定打てなくて、ちょっと正視に堪えない惨状よね。これが本当にカープの四番として活躍していた選手の姿なのかとにわかには信じられない、信じたくないという」


「結果的に栗原や東出みたいな苦しい時代を支えてきた選手が一軍からいなくなったらAクラスという形になって。でもじゃあ栗原とキラどっちを選ぶかと問われるとねえ。東出と菊池もだけど。ここ数年で出てきた選手に押されて彼らの居場所が少なくなってるよね」


「でも世代交代ってそんなものだから。レギュラーから押し出されてしまったらとにかく代打なり守備固めなり、何かで存在感を発揮してまだ戦えるとアピールしない事には始まらないわ。特に栗原は事実上ファースト専門なんだから打撃で貢献するしかないけど、二軍の成績もお寒いし。これ以上考えても嫌な言葉しか出ないから今はやめましょう」


「うん。そしてサードはまだ固定されそうにないかな。堂林やルーキーの田中、それに小窪ってなるけど、どうなるんだろうね」


「それと木村昇吾だけど、やっぱり控えに置きたいでしょうから。オープン戦では好調に見えた堂林だけど終盤には調子を落として、その流れでシーズンに入ってしまった感じね。候補の中では一番長打を期待出来るだけにうまく復調と言うか、成長よね。もっと大きくなるといいんだけど」


「外野もねえ。丸とエルドレッドはいいとして、残りは現状松山か廣瀬かってなるけど正直どっちももう一歩で」


「ここはやはり去年と同じく併用が一番現実的なんでしょうね。実際固定するような格でもないし。いっそ二軍で目下四本塁打の高橋とか、いえ、それも先走った妄想が過ぎるわね。見たことのない選手に夢を託したくなる気持ちはあるけど結局一軍でしょうもないプレーを見せる選手たちだってその見たことのない選手に競争で勝って一軍にいるわけだから、そんな夢が転がってるって事はそうないものよね。それに高橋はまだ若いからまず二軍でしっかり試合に出てほしいし」


「実際は迎あたりが昇格していつも通りのパフォーマンスを見せるってパターンかな。投手陣もねえ、今の先発陣から一皮めくればやれ福井だの篠田だの」


「まあ大瀬良と九里って、ルーキーがいきなり二人もローテーション入りしてる現状もかなり異例だけど。そして九里は、いきなり六回一失点で今年のルーキーにおける勝ち星一番乗りを果たしたけど面白いピッチングだったわね。奪三振皆無でゴロゴロゴロゴロと稲妻のようなピッチングスタイルで」


「中日打線は見事にその術中にはまった感じだったね。ちょうど内野には守備範囲の広い菊池がいるしおあつらえ向きのスタイルだよね」


「そう言う意味では自分に合った球団に指名してもらったのかもね。今後は悪いなりに抑える事は可能なのか、対策されたらどんな手を打てるのか。そこをクリア出来ると本当に面白い戦力となるわね。少なくともコントロールの問題で自滅しそうにないのはいいわね」


「大瀬良もどうなのかな。これまで相手を完全に抑えたってピッチングはないようだけど」


「まああくまでオープン戦や二軍戦と本番は違うかも知れないし、やっぱり駄目かも知れない。ましてやルーキー、どんなピッチングを見せるかなんて私には分からないわ。ただ幸い、カープには前田健太がいる。おそらく今年まででしょうけど、ルーキー達が学ぶ事は多くあるはず。そして打線もうまく奮起して、とにかくAクラスに入ってほしいわ。出来れば優勝を」


「そうだね。それともうとっくに開幕してるサンフレッチェについてだけど」


「今の時点で順位を気にするのも野暮だけど三位だし、まあ悪くない滑り出しとは言えるわね。やや失点は多いし得点も少ないけど、それでも勝ち点を奪えているのはまさに悪くないという感じ。なぜか塩谷がやたらとゴールを決めてるけど本来その仕事をすべき佐藤寿人あたりがもっと調子を上げれば。そして青山の代表入りはあるのかとかも気になるけど、まあしばらくは怪我なく無難に乗り切ってくれれば上等じゃないかしら」


「ACLもあるもんね」


「今年はまだ望みあるでしょ。早速今日にも試合あるけど、でも何となく他人事な大会よね。とりあえず予選でも突破してくれればまた変わってくるんでしょうけど」


 このような事を話していると敵襲を告げる警報が鳴り響いた。ちょっとだけ期待したが、エイプリルフール特有の嘘ではないと理解できた瞬間に二人は心を切り替えて、エメラルドグリーンの瞳を光らせながら出動した。


「ははははは、俺はグラゲ軍攻撃部隊のナナホシテントウ男だ! 」


 それにしても太陽に向かって飛ぶからてんとう虫っていい名前だなと思う。畜生、誰だよあの花にオオイヌノフグリとか名付けた野郎は。それはともかく、ナナホシテントウ男たちが出現した草原にまもなく渡海雄と悠宇も到着した。


「またも現れたなグラゲ軍。お前たちの陰謀をこれ以上放っておくわけにはいかないぞ!」


「よりによって何もこんな日に出てこなくてもいいじゃない」


「ふん、やはり現れたか。貴様らを倒さずして惑星改造もなしと言える。さあ行け雑兵ども!」


 寝てる時に何やら羽音が聞こえたりして、それはちょっと困るのだがまだ虫の少ない冬の記憶も鮮明なので寛容でいられる。これが夏となると話は別だが。とにかく、暖かさに呼応して虫が湧いてくるように現れた雑兵を渡海雄と悠宇は倒した。


「よし、残るはお前だけとなったなナナホシテントウ男」


「今ならまだ間に合うわ。この侵略は全部嘘だったって言って撤退してくれてもいいのよ」


「馬鹿め。嘘どころかこの俺がここにいてお前たちを血祭りに上げるのがこの世界の現実よ。このようにしてな!」


 そう言うとナナホシテントウ男は懐からスイッチを取り出して巨大化した。この巨体もまた真実であれば渡海雄と悠宇もまた誠実な心を合わせて巨体に対抗するという現実的な解決策を目指した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 心地良い春風も日差しもメタリックな巨体には感じられるだろうか。相対する巨体は一瞬の隙を狙った動きに終始した。


「ええい、ランサーニードルで勝負だ!」


 その隙を見計らって渡海雄は黒いボタンを押した。メガロボットの胴体から射出された複数本の針がナナホシテントウロボットの全身に風穴を開けた。


「むうっ、もはやこれまでか。残念だがこの惑星が正しい姿を受け入れるにはまだ時間がかかりそうだ。脱出する」


 ナナホシテントウロボットが爆散する直前に作動した脱出装置によって彼は宇宙の向こうへと去っていった。戦いという現実はこれからも続く。しかし心を同じくする仲間がいるから、まだ立ち向かえるのだ。二人は瞳と瞳を合わせて微笑み合いながら、基地に戻った。

今回のまとめ

・本当にオオイヌノフグリは好きな花なのに牧野富太郎め

・ルーキーは大竹の穴埋めではなくまず去年の中崎中村超えから

・去年とか途中までキラいなくてよく打線を組めたもんだなあ

・サンフレッチェは去年も割と静かな出だしだったし順調

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