表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

第3章:チタンの断絶

エイドロンは、これまでの人生で感じたことのないような温かい太陽の光で目を覚ました。巨大なベッドのベルベットのシーツの上で伸びをしながら、彼は前世の悪夢を一度も見なかったことに気づいた。生まれて初めて、彼は安らかに眠ることができたのだ。

ギィィ……。

「起きて、朝寝坊さん!」

エイドロンは跳び起き、瞬きをした。ドアのところに立っていたのは、折りたたまれた黒い衣服の束を抱えた王女セラフィナだった。

「王女? なぜ俺の部屋に?」エイドロンはシーツを引っ張り上げながら尋ねた。

「あなたの新しい制服を持ってきたのよ!」彼女は誇らしげに言い、その束をベッドの上にドサリと置いた。「魔法をかけられた蜘蛛の糸で作った特注品よ。体温を調節してくれるし、体の回復も早めてくれる。それに、もの凄く軽いの」

エイドロンは懐疑的な目でその黒い生地を見つめた。「高そうですね。こんな派手なものを着て落ち着けるかどうか……」

セラフィナは腕を組み、わざとらしく唇を尖らせた。「私が何時間もかけて選んだのよ! 今すぐ着なさい。じゃないと、ケンタにベッドから引きずり出させるわよ!」

「わかった、わかりました! 怒鳴らないでください、着ますから」エイドロンは苦笑しながら、着替え用の衝立の奥へと服を持っていった。

彼が衝立から一歩踏み出した時、今度はセラフィナが息を呑んだ。その衣装は深い漆黒で、銀色のアクセントが彼の骨のように白い髪とアメジスト色の瞳を完璧に引き立てていた。まるで第二の皮膚のように、彼の体にぴったりと馴染んでいる。

セラフィナは目を見開き、その頬にほんのりとピンク色の赤みが差した。

「……まあ、似合ってるじゃない。一応ね」

「ありがとう、セラフィナ。この服、大切にするよ」

彼は心からの感謝を込めて言った。

「どういたしまして! なんて言ったって、あなたは私の専属騎士なんだから」彼女は微笑んだ。

「おお、エイドロン! 素晴らしいじゃないか」

部屋の入り口から豪快な声が響いた。そこにはドアフレームに寄りかかる騎士ケンタが立っていた。

「修練場へ向かう準備はいいか? お前の本当の実力を見てみたくてね」

「いいですよ」エイドロンは肩をすくめた。「自分の立ち位置を確かめてみます」

「私も行くわ!」セラフィナが宣言した。

ケンタの笑顔が消え、厳格で保護的な表情に変わった。「姫様、国王陛下の命令をご存知のはずです。今の時期、あなたが城壁の外に出るのはあまりにも危険すぎます」

エイドロンは眉をひそめた。「危険? この帝都の真ん中がですか?」

「エイドロン、魔王軍のスパイはこの王国のいたるところに潜んでいるのだ」ケンタは神妙な面持ちで説明した。「彼らの主な標的は、皇帝陛下とセラフィナ様だ。暗殺の試みは毎週のように起きている」

「魔王軍……」エイドロンはその言葉を繰り返した。その響きは彼の口の中で重く感じられた。

「私のことは心配しなくていいわ」セラフィナは腰に手を当てて反論した。「自分の身くらい自分で守れるもの」

「姫様、これは国王陛下の勅命です。城内でお待ちください」ケンタは毅然と言い放った。

セラフィナはため息をつき、肩を落とした。「わかったわよ……」

「そういえば」エイドロンは空気を和らげようと口を開いた。「危険だなんて話ばかり聞いていたら、腹が減ってきました」

「じゃあ、あなたのためにアップルパイを焼いてあげる!」セラフィナは一瞬で機嫌を直し、声を弾ませた。

「もし2人分作るのが手間でなければ、私も一切れいただきたいですね」ケンタもニヤリと笑って付け加えた。

「考えておくわ! ほら、早く訓練に行ってらっしゃい!」

彼女は笑いながら、王宮の厨房へと向かって歩き出した。

意図せぬ一撃

修練場は、石と強化鋼鉄で作られた巨大なアリーナだった。ケンタはエイドロンを中央へと導き、重厚な銀のブロードソードを抜いた。彼がそれを構えると、刃が眩い白い光を放ち始めた。

「よく見ておくんだ、エイドロン」ケンタが言う。「私の剣は、周囲に漂うマナを吸収する」

ケンタが素早く、鍛え抜かれた動作で剣を振り抜いた。刃から圧縮された空気の波が噴出し、20インチ(約50センチ)の巨岩を真っ二つに切り裂いた。

「すごいな」エイドロンは素直に感銘を受け、そう呟いた。「さすが王国一の騎士だ」

「実は私の真の力はこんなものじゃないのだがね、まあそれは後で見せよう」ケンタはウインクした。「さて、お前の剣を見せてくれ。どこにある?」

エイドロンは目を閉じた。彼は胸の奥にある冷たい虚無に手を伸ばし、それを引きずり出した。黒い煙の微かな摩擦音とともに、ギザギザとした漆黒の影の刃が彼の手中に具現化した。

ケンタの眉が跳ね上がった。

「純粋なマナから魔法の武器を具現化できるのか? それは極めて稀な能力だぞ、エイドロン。実に見事だ」

「どんな切れ味か、試してみます」

エイドロンは巨大な石の標的に歩み寄り、精神を集中させると、横一文字に薙いだ。

――スッ。

闇の刃は、熱したナイフがバターを通るかのように、17インチ(約43センチ)の厚さの岩を難なく通り抜けた。

「どうやら俺の負けですね、ケンタ」エイドロンは刃を消しながら言った。「17インチしか届かなかった」

しかし、ケンタは答えなかった。彼は岩の向こう側を見つめたまま、顎が外れんばかりに口を開けていた。

「エイドロン……お前、一体今何をやったんだ?」ケンタが掠れた声で囁いた。

「どういう意味です?」エイドロンは振り返った。

粉砕された巨岩の遥か後方、ソリッドな強化チタンで作られた高さ30フィート(約9メートル)の頑丈なアリーナの壁に、一直線の、黒く光る切り口が刻まれていた。

彼はただ岩を切っただけではなかった。彼の影のエネルギーの衝撃波は、この王国で最も耐久性のある金属をも切り裂いていたのだ。

「そんな、つもりじゃなかったのに!」エイドロンは目を見開いて狼狽した。「本当にすみません! 壁の修理代は俺が払います!」

「修理代だと?」ケンタは後頭部を掻きながら、引きつった笑いを漏らした。「お前の能力はデタラメだ、小僧。いつかお前は、この世界がこれまでに見たこともないような最強の騎士になるかもしれないぞ」

「俺は英雄になりたいわけじゃないんです、ケンタ」エイドロンは自分の手のひらを見つめながら、静かに言った。「ただ、平穏に生きたいだけなんです」

「はははっ、本物の強者らしい台詞だ」ケンタは微笑んだ。

彼らの会話は、重厚な鎧を着た別の騎士がフィールドに駆け込んできたことで遮られた。

「ケンタ団長! 緊急の報告です!」

「レオン」ケンタは姿勢を正した。「報告を」

「国境の村人から伝令がありました」その騎士、レオンは息を切らしながら言った。「『暴食グラトニー』が目撃されました。すでに15人が喰われています」

エイドロンの胃が冷たく沈み込んだ。

「『暴食』って、一体何なんだ?」

レオンは困惑したようにエイドロンを見た。「団長、この新入りは誰ですか?」

「彼はエイドロン・カゲ、セラフィナ様の新しい専属騎士だ」ケンタが彼を紹介した。「エイドロン、こちらはレオン卿だ。帝国で2番目に強い騎士だ」

「よろしく、レオン」エイドロンは握手を交わしたが、彼の意識は報告の方に向けられていた。「『暴食』って何なんですか?」

ケンタの表情が、これまでにないほど真剣なものへと変わった。

「魔王は、人間たちの王国を滅ぼすために、配下の中でもトップクラスの7体の怪物を送り込んできた。彼らは『七つの大罪』の名を冠している。色欲ラスト傲慢プライド怠惰スロウス強欲グリード暴食グラトニー憤怒ラース、そして嫉妬エンヴィーだ。彼らの主な目的は、皇帝陛下とセラフィナ様を始めとして、この王国を完全に抹殺することだ」

エイドロンは立ち尽くした。自分はただ静かで、平和な暮らしを望んでいただけだった。

だが、今まさに自分のためにアップルパイを焼いてくれているであろう、あの笑顔の王女の顔が脳裏に浮かんだ瞬間、彼の胸の奥に冷徹な決意が宿った。

どうやら、自分が引き受けた仕事は、思っていたよりも遥かに危険なものだったらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ