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第2章:影と白銀の指輪

森はもはや監獄ではなかった。そこは試練の場だった。

最初こそ混乱したものの、エイドロンの生存本能がすぐに目覚めた。彼は胃の痛みを和らげるために酸味のある赤い木の実の群生を見つけ、溶けた星の光のような味がする川の水を浴びるように飲んだ。しかし、夜の帳が下りると、その静寂は無残に打ち破られた。

耳障りな叫び声が木々の間に響き渡る。

澱んだ沼の水のような臭いを放つ、緑の肌をした3匹のゴブリンが藪から飛び出してきた。エイドロンの胸に恐怖が走る――かつての「被害者」としての古い習性だ。だが、ギザギザの棍棒が彼の頭部をめがけて振り下ろされたその瞬間、彼の手のひらに冷たい重みが具現化した。

無から現れたのは、渦巻く闇を纏った鋼の刃だった。

エイドロンは必死の叫び声を上げながら、それを振り抜いた。刃は紙を切り裂くかのように、最初のゴブリンを一刀両断した。

「はははっ!」

エイドロンは狂気じみた、引きつった笑い声を漏らした。アドレナリンが彼を暗い興奮へと突き動かしていく。

「お前たちに俺は殺せない……俺はもう一度死んでるんだ! 今度は絶対に生き延びてやる!」

残りの小鬼たちも影の残像の中で倒れていったが、すぐに地面が激しく揺れ動いた。錆びた肉切り包丁を手にした、身長7フィート(約2.1メートル)を超えるホブゴブリンのリーダーが夜の闇に向かって咆哮した。それは驚くべき速度で動き、エイドロンの胸に拳を叩きつけた。

エイドロンは吹き飛び、肋骨が砕け散った。激痛が走る――が、次の瞬間には消え去っていた。彼自身もまだ理解していない「神の加護」である奇妙な黄金の温もりが彼を包み込み、肉体を瞬時に繋ぎ合わせていく。

「次は俺の番だ」

エイドロンは低く唸った。彼は目を閉じ、大気中に漂う不可視のマナの糸を感じ取った。それを手繰り寄せ、広場の光そのものを吸い上げる。闇の刃が脈動した。流れるような一連の動作で彼が放った黒いエネルギーの三日月は、巨人の巨体を一撃で両断した。

再び静寂が戻る。エイドロンは息を吐き、震える両手を見つめた。

「これが俺の力か……悪くない」

帝国騎士

孤独な修行のまま1週間が過ぎた。エイドロンは森の鳥を狩り、高い樹冠の上で眠り、その体はより引き締まり、強靭になっていった。やがて木々がまばらになり、真昼の太陽の下でエルフと人間が交易を行う活気ある村が姿を現した。

彼の腹が大きな音を立てた。彼には金もなければ、身分もない。

「仕事を探さないとな」

パン屋の方へ視線を泳がせながら、彼はそう呟いた。

「おい、ガキ!」

荒々しい手が彼の肩を掴んだ。不揃いな革鎧を着た3人の男たち――低ランクの冒険者だ――が彼を取り囲む。

「お前、何か価値のあるものを持っていそうだな。金を差し出せ。さもなきゃ命はねえぞ」

エイドロンの目が暗く沈んだ。彼は影の刃の柄に手を伸ばし、この通りを墓場に変えてやろうとしたその時、緊張を切り裂くような威厳のある声が響いた。

「そこまでだ、下衆ども!」

銀色に輝くプレートアーマーを着た男が歩み出てきた。その胸の紋章は、彼が帝国騎士であることを示していた。

「チッ! ケンタ様か!」リーダー格の男が毒づいた。「ずらかるぞ!」

強盗たちは人混みの中へと消え去った。ケンタは落ち着いた、好奇心に満ちた視線をエイドロンに向けた。

「大丈夫か、旅の者。ずいぶんと遠い国から来たような顔をしているな」

「エイドロン・カゲだ」

彼はぶっきらぼうに答えた。

「俺は……ここに来たばかりで。それと、腹が減っている」

少年に奇妙なポテンシャルを感じ取ったケンタは、彼を近くの酒場へと連れて行った。エイドロンが無言で、一心不乱に食事を平らげる中、ケンタはある提案を持ちかけた。

「私はこれから帝都に戻る。お前のような目をした男が、こんな辺境の村で腐っているべきではない。私と一緒に来い」

王女と青い指輪

帝都は石と黄金で築かれた巨塔のようだった。大いなる城門をくぐりながら、ケンタは皇帝の慈悲深さについて誇らしげに語った。しかし、その案内は、絹のフードを被った少女がエイドロンの胸に衝突したことで中断された。

「おっと! お嬢さん、大丈夫ですか?」

エイドロンは彼女を支えながら尋ねた。

ケンタの顔から血の気が引いた。彼はその場に片膝をつく。

「エイドロン、下がれ! そのお方はセラフィナ様、皇帝陛下のご息女だ!」

「私はただバザールが見たかっただけよ!」

セラフィナは息を切らしながら、反抗的な光を宿した瞳を輝かせた。「お父様ったら、ちっとも城壁の外に出してくれないんだもの!」

ケンタはうめき声を漏らした。「姫様、それでは私の首が飛びます! どうかお戻りを――」

言葉の途中で、ケンタは近くの路地に飛び込んでいく怪しい人影の集団に気づいた。

「強盗か。エイドロン、姫様をお願いする。お前なら彼女を守れると信じているぞ!」

エイドロンが抗議する間もなく、ケンタは走り去ってしまった。

「ふん」

セラフィナは腕を組み、エイドロンを上から下まで値踏みするように見た。

「私はお守りなんて必要ないわ。特に、そんな平民みたいな格好をした男の世話なんてね」

「信じてくれ」エイドロンはため息をついた。「俺だって仕事を探していたいさ。だが、あんたの相手をすることになった以上……どこへ行きたいんだ、お姫様?」

「宝飾品街よ」彼女はそう要求した。

指輪の店に入ると、空気が一変した。セラフィナは様々な宝石を指さしていたが、エイドロンの視線は銀の指輪が並ぶトレイへと吸い寄せられた。前の人生の記憶――血に染まったプレゼントの記憶が脳裏をよぎる。

「ちょっと! ぼーっとしないでよ」セラフィナは唇を尖らせた。「どれを買えばいいと思う?」

エイドロンはサファイアの指輪を指さした。

「この青いやつだ。あんたの瞳に宿る炎によく似合っている」

セラフィナは固まり、首筋まで真っ赤になった。「そ、そう……。まあ、あなたのセンスも、それほど悪くはないみたいね」

騎士の選定

彼らが再び通りに出た時、エイドロンの「視覚能力」が突如として警報を鳴らした。彼が上を見上げると、屋上の工事で緩んだ巨大な石のブロックが、セラフィナの頭上をめがけて落下してくるのが見えた。

一瞬にして、影の刃が彼の手の中に閃いた。――一閃。

石ブロックは彼女の髪に触れる前に、塵となって爆散した。周囲の群衆から息を呑む音が漏れる。

「私を、助けてくれたのね……」

白髪の少年が自分を庇うように立っているのを見上げ、セラフィナは胸を高鳴らせながら呟いた。

宮殿に戻ると、重苦しい空気が漂っていた。威風堂々とした佇まいの皇帝は、娘を抱きしめた後、エイドロンに向き直った。

「そなたは帝国の血統を救ってくれた」皇帝は宣言した。「褒美として、黄金の詰まった箱を授けよう」

「畏れながら、陛下」エイドロンは一礼した。「俺は金が欲しいわけではありません。自分の居場所……職が欲しいのです。しがない商店主の人生でも構いません」

「商店主ですって?」

セラフィナが一歩前に進み出た。その顔には突然の決意が満ちていた。

「いいえ! お父様、私はそれを認めません。彼を私の『専属騎士』にしてください!」

エイドロンは目をパチクリさせた。待て、何だって? 静かな生活を送るはずだったのに。

「専属騎士だと?」皇帝は考え込んだ。「それは重責だぞ。だが、娘の安全のためなら……よかろう。そなたに屋敷と爵位、そして月に500枚の金貨を支給しよう」

エイドロンは頭の中で素早く計算した。屋敷。そして固定給。

(2ヶ月もあれば、この世界の静かな片隅で隠居できるほどの金持ちになれるな)

「お受けいたします、陛下」

「素晴らしい!」ケンタはにやりと笑い、エイドロンの肩を叩いた。「お前の訓練は私が担当しよう」

その夜、セラフィナはエイドロンを新しい宿舎へと案内した。ドアの前で彼女は立ち止まり、松明の炎に照らされて顔を赤らめた。

「改めて、ありがとう、エイドロン」彼女は囁くように言った。「あなたって……意外と優しいのね」

彼女は彼が返答する前に、足早に去っていった。

エイドロンは豪華なベッドに腰掛け、月明かりを見つめた。

「優しい? 何も分かってないな」

彼は拳を握りしめ、皮膚の下で脈打つ闇のマナを感じ取った。

「今は騎士の役を演じてやるさ。だが俺は、この世界の誰よりも強くなってやる。もう二度と、誰にも俺をコケにさせはしない」

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