~手のひら返しと仕返し~(1)
どうも鷹飛 諒でございます!
結構長くなってしまいました。なので三つに分けさせていただきました。すいません。
今回も生温かい目で読んでくだされば幸いです。
では!
「なんと! では和人殿にはなんの力もないと……」
あのお金を手渡してきた小太りのおっさんが絶句している。
こいつ、王政府の文官だったのか。それにしてもあの時あくどい顔していたな、要注意の人物だな。
「いえ、一般の王国民の魔力よりは少し多い程度の力和持ち合わせておりますぅ」
エミリアが控えめに反論する。
ああ、悲しいね。簡単に言えば村人Aと一対一のケンカをすればぎりぎり勝てるぐらいの力は持ってるってことだろ。そんな反論をされても全然嬉しくないね。もう! さっきからおれの傷は抉られっぱなしだよ!
オレは無表情で内に秘めた皮肉と愚痴を表に出さないように努めた。
「で、オレはこれからどうなななるんだ?」
堂々としようとしたがやっぱり高校生。内心物凄くびくびくしてる。だって怖いんだもん。
オレの問いにグスタフ国王……もうグスタフでいいや、グスタフは終始うつむいたまま黙り込んでいる。
他のみんな、騎士たちや側近の文官共、エミリアや涼音達もこの国の国王であるグスタフの言葉を待っている。
やがてグスタフは、その重い口を開き始めた。
「わしの言葉を伝える前に、一つ和人殿にお聞きしてもよろしいかな?」
「……ああ」
「この国の現状は見ていただいたと思う。どう感じた?」
「ひどい有様だな。戦争も負け続き、だと聞いたぞ」
「うむ、誠に耳が痛い話じゃ。そう、わしらのこのバルカ王国は戦争に負け続け、王都を残してほかの領土はすべて魔族に奪われてしまった。本来なら国民を優先し、いち早く民が快適に暮らせる環境を整えなければならないのじゃが、土地がなければそれもできまい。わしらには戦うしか選択肢がないのじゃ」
「ああ、理解している」
「そこで、今一度問う。勇者和人殿、わしらと共に魔族と戦ってはくれぬか?」
グスタフは王という身分も顧みず、深く頭を下げる。
「国王陛下! 頭をお上げください!」
グスタフの部下たちが慌てたように彼に近づき、頭を起こそうとしている。しかし、グスタフは断固として頭を上げようとしない。
「……断る」
オレはグスタフを見据えていった。
「貴様ぁ‼ 王が頭を下げてまで頼んでいるというのに……断るとは何事か!」
一人の文官が吠える。
「おいおい、話を最後まで聞けよ」
オレは掴みかかる勢いで近づいてくる文官を両手で静止しながら抑える。
「オレは勇者としての協力は断る。だが……兵士としてならこき使って構わない」
オレは最後の最後まで迷ったが、最終的には覚悟を決め、まっすぐとグスタフを見つめた。
「本当に良いのじゃな?」
グスタフがオレの目を見つめ返し、ゆっくり問うた。
「ああ、構わない」
「…………」
グスタフはオレの返答を噛みしめるように受け止め、静かに喜んでいるのかゆっくりと何度もうなずきながら目をつむっている。
「皆の者! 今日を持って五人目の勇者であるこの柊和人が国に尽力することをここに誓った。そして、今ここに厄災を退きし五人の勇者が復活したことを宣言する‼」
グスタフはカッと目を開き勢い良く立ち上がる。舞うように勢いよく手を前へ突き出し、大きく広がった袖口がひらりと舞う。
グスタフの声が冷たい大理石の空間に響き渡り、静寂の佇む気配を消し去っていく。
グスタフの声が響いた束の間、文官や騎士団長のアレク、そしてその取り巻きである多くの騎士たちが、五人の勇者の復活という歴史的な場面を目の当たりにし、おおぉという感嘆の声が口からわずかに漏れる。漏れると同時に至る所から拍手が聞こえ、それが波紋のように空間いっぱいに広がっていく。
大きな拍手の中で勇者をたたえる声が聞こえ、全員がこの良き日を祝福している。
「おい、壮介……なんかこっぱずかしいな」
大樹が壮介の隣で照れたように指で鼻の下をこする。
「ふふふ、そうですね。すこし大げさな気がします」
壮介も照れて頬をわずかに赤く染める。
琴音は涼音にしがみつき、おろおろしており、涼音はその横で堂々と手を振り、声援にこたえている。
オレはその横でぶすっとした納得いかない顔で猫背になりながら腕を組んでいた。
いや、確かに、勇者じゃなくて兵士として協力するとは言ったけど、こんなにオレへの声援がないというのはいささかひどすぎやしないか? 自分でもわかってるけどさ、少しはオレを応援してくれてもいいんじゃないかな? 誰もオレに眼を合わせてくれない。
しばらくすると、グスタフは手を高々と上げ、皆を黙らせる。
「今宵は宴じゃ。城を開放し、国を挙げてこの日を祝福しようではないか!」
グスタフは両手大きく広げて、盛大にこの場を盛り上げた。
後はもう、大忙しだ。グスタフの発案で今日が祭日になってしまったせいで、城中のメイドや執事が動き
回り、厨房は常時フル回転。その間にも貴族、貧民関係なく城を出入りし、町中も盛大ににぎわっている。
涼音達は貴族や騎士たちにつかまり、楽しそうに談笑し、その中の若い貴族たちは琴音と涼音にお近づきなるために、怒涛の勢いでアプローチをかけている。まぁ、見たところすべて空回りしているようだが……。
その中でもオレは公衆の面前で無能っぷりを暴露され、誰にも相手されなかった。仕舞いにはすれ違いざまで消えろだの無能だの吐き捨てられ、オレの心は悲しさのあまりつぶれてしまいそうだった。いやもうつぶれたかも。もう人間て薄情だなほんとに。
オレはここにいても周りの雰囲気が悪くなるだけだと思い、オレは城を跡にした。その前にたんまりと食べ物を抱え込んだ後で。
オレはたんまりと食べ物を抱えながら街へと出る。その足で今日訪れた広場へと向かう。
そこには案の定、みすぼらしい格好で羨ましそうに城を眺める物乞いの人たちが佇んでいた。
「お前らなぁ……今日は記念すべき祭日で城を開放してるんだから来ればいいじゃねぇか」
「あ……昼間の兄ちゃん」
オレは昼間の時に会った少年に声をかけた。
少年は少し気まずそうに眼を逸らす。
「そういえば、お前の名前聞いてなかったな」
「おいらの名前か? おいらはカムって言うんだ」
「カム、か。オレは和人だ。よろしくな、カム」
オレはいつものようにカッと笑い、リンゴをまた差し出す。
「あ、うん」
カムは暗い顔をしながらオレの手からリンゴを受け取る。
「どうしたぁ、今日は、祭りだぞカム。今のうちに精一杯楽しんでおかねぇと損するぞ」
オレはそう言いながら食べ物をほかの人たちにも配っていく。
カムたちは少し迷った様子でオレの顔と手渡された食べ物を交互に見つめていたが、やがて嬉しそうにか
ぶりついた。
しかし、やはりオレが腕いっぱいに食べ物を抱えて持ってきても、カムのほかにも一〇人以上物乞いがいたのですぐになくなってしまう。皆も少し物足りなさそうな顔を浮かべていた。
かくいうオレも一緒にカムたちと食べていたが、皆にほぼ分け与えていたせいで少し腹持ちが物足らないと感じていた。
「なぁお前ら、今日は開放日だ。皆で城に行って食べ物を食べに行こうぜ」
「え! しかし、私たちのようなものが行っていいのですか?」
「母さん、おいら城に行ってみたいよ」
「僕も!」
「あたしも!」
「オレも!」
「あ、わたしも……」
申し訳なさそうに遠慮するカムの母らしき泣きぼくろが特徴の美人な女性にカムが子供らしく甘えた声でねだる。
その声に続いて子供たちが声を張り上げて便乗する。
「でも……」
それでもカムの母は渋ったように声を詰まらせる。
「なら、オレが子供たちを城まで責任もって連れていきますよ。行く気になったら皆さんもいらしてください」
オレがカムの母に慣れない敬語で声をかけ、子供たちと手をつなぐ。
「では、子供たちをよろしくお願いします」
カムの母が礼儀正しく深々とお辞儀する。その姿は薄汚れていてみすぼらしい格好のものの、その身からにじみ出る艶々しく気品ある雰囲気が彼女の育ちの良さをうかがわせていた。
その姿にオレは少しの間だけ見惚れてしまい、オレの袖を引っ張るカムのおかげでハッと我に返る。
「任せてください」
オレはお辞儀にはお辞儀で返し、その場を後にした。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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