~国の現状は~
皆さんこんばんは! おはようございます! こんにちは!
どうも鷹飛 諒でございます!
今日は予定より早い投稿になります。これからはある程度書き溜めているものもあるので少し早いペースでしばらく投稿していくかもしれません。
では!
「和人君! 和人君!」
誰かがオレをゆすりながら声をかける。
オレが目を開けると、涼音のきれいな顔がすぐ近くでオレを見下ろしていた。あ、可愛いな。
「い、いや大丈夫。どれくらい寝てた?」
「ほんの数分だ」
オレは起き上がり、涼音の手を借りながら立ち上がる。
オレは皆の眼を見ようと見渡したが、皆気まずそうに眼をそらす。
「まぁ、これがテンプレ通りなら、オレの無能さをグスタフに報告。理不尽に憤慨したグスタフはオレの処刑を命令し、あえなくオレの人生デッドエンド。文字通り死ぬって所だな」
「そんなこと王はしません! あまり冒涜しないでいただきたいですぅ」
エミリアは怒ったように大声で叫び、頬を大きく膨らませる。
「ああ、悪い」
オレは少しエミリアに気圧され、一歩後に後ずさる。
「でも、オレが無能ってことはグスタフに伝えなきゃだろ」
「それはそうですがぁ」
エミリアは困り果てながらちらちらとオレを見る。
「なんだよ?」
「そのぉこの王国の国王陛下を呼び捨てにするのはどうかとぉ思うんですがぁ」
「それは私も同じだな、和人君。目上の人をもう少し敬うべきではないか?」
涼音もエミリアと同調し、オレに声をかける。
「王は王でもオレ達の元いた日本じゃれっきとした誘拐犯だ。そんな奴に敬語を使うつもりはない」
オレは腕を組みそっぽを向く。
「和人君……あなた、見かけによらず図太い性格してますね」
「いやいや、お前ら忘れてるかもしれないけど、ここには魔族と戦うために呼ばれてるんだぞ。要約すれば私たちと一緒に魔族と殺し合いしてくださいって言ってるようなもんだぞ。そこんとこ忘れんなよ」
「そんなことは分かってる。俺たちはそれを覚悟して協力することに決めたんだよ」
「そ、そうだったんだ。わ、悪かった」
オレは大樹の気迫に少し震えあがりそうになった。それほど大樹の剣幕は凄まじかった。
それでもオレはどうしても腑に落ちない。なぜ、そんなにもこの国に協力しようとしているのか。生憎とオレは正義感が強いタイプではないしむしろ性根は腐っているようにも思える。当初はこいつらが今の立場の自分に酔っちゃっている馬鹿の集まりかとも思ったが、知れなりの覚悟があると見える。
「でも、こ、この機会に、和人さんにもこの国の現状を見せても、いいんじゃ、ない、かな?」
琴音がびくびくしながら上目遣いで意見を言う。
願ってもない提案にオレは内心期待する。というかもうここにはいたくない。魔法、嫌い。
「そう、ですねぇ。王への報告もその後でいいでしょう。和人様、これからあなたには子に国の現状を見ていただきます。それを見て協力するかしないか考えてください」
エミリアの真面目腐ったまともな口調にオレは無言で頷くしかなかった。
ちらりと涼音達の方を見ると、全員が神妙な面持ちをしていた。
「では、いきましょう」
オレたちはひとまず魔法の練習もろくにしなかったが中断し、城の外へ出た。
町並みは普通に見えた。いかにもファンタジー物で出てきそうな中世風の街並みで町の人たちもそれっぽい服装だ。確かに街は普通だ。商人が声を張り商売をし、いろんな人が広場を行き交う。しかし……。
「物乞いが多いな」
オレは率直に感想を述べた。明らかに物乞いが多い。小さな子供までもが広場の端で手を突き出して必死に物乞いをしている。
「ええ、数々の魔族との戦争に負け続け、魔族の領地と最も近かったこの王国は領地を追われ、現在はこの王都のみになってしまいました。グスタフ国王の計らいで即席の簡易住居を建て、人々が生活できるようにしましたが、しかしそれにも限界があり、こうして物乞いが増える一方なのです。そのせいか街の雰囲気も落ち込み、犯罪も増えています」
「これじゃあ、戦争が長続きしたら魔族とか関係なしにこの国は滅びるぞ。魔族の属国になったほうが――」
「それはいけません‼」
エミリアが声を荒げる。
「魔族は我々に我々人間を問答無用で根絶やしにすると公言しています。それに……送られてきたんです。行方不明とされていた男女二〇名の死体が……」
「っ!」
オレは目を見開く。
「その死体にはご老人も小さな子供もおり、女性の体には暴行された後もありました」
エミリアの体は少し震え、その震えを抑えるように肘を抱く。涼音達もうつむいた表情を浮かべている。どうやらその死体を四人も見たようだ。
この様子から見て、暴行は性的という意味も含まれているだろう。オレは無性に胸糞が悪くなった。
「まぁ、この国の状況はよくわかった。でも、協力の件は考えさせてくれ。まぁ、するとしても勇者じゃなく一兵士としてかもしれないが」
「わかりましたぁ。では、王に報告も兼ねて城へ戻りましょうかぁ」
エミリアが促し、皆がそれに従い王城へと戻ろうとする。
「あ、ちょっと待ってくれるか」
「ん? どうした」
オレが声をかけ、大樹が反応し振り向いた。その後にみんなも次々と振り向いた。
オレは腰に付けた巾着を取り出し、果物屋の方に足を向ける。
巾着にはこの国のお金である銀貨がぎっしり入っていた。まだこの国のお金の基準が分からないが、先程城を出る前、この国の貴族と思われる小太りの人にお会いした記念にという事でこの金をもらった。聞くと涼音達も以前に渡されたという。まぁごますりという意味もあるのだろう。
「その金で何するんだ?」
大樹たちもオレと一緒に果物屋の前で並んだ。
「こうするんだよ」
オレは果物屋の店主に巾着の中を見せる。案の定店主は驚きすぎて目が点になっている。ふむ、やはりこの中には相当な額のお金が入っていると見た。
「この金ありったけの果物を売ってくれ」
オレはにこやかな笑顔で店主を見る。
「ええぇ‼ だ、旦那この量じゃ店に並んでるもの全部売ってもお釣りがでますぜ」
「そっか……じゃあ~おいそこのパン屋。そのパンも売ってくれ」
オレは隣のパン屋にも声をかけ、それが引き金になったのかほかの食品の商人がここぞとばかりに次々と勧めてくる。
オレの手元からどんどんお金は無くなっていき、代わりにパンや果物、その他や焼いた肉や果汁水がオレの腕の中で山のようになって積まれている。
「こんなもんか。ちょっと……手伝ってくれるか」
オレはみんなに促し、ある程度食材を持ってもらった。
「こんなに買い込んでどうするのですかぁ? 和人様ぁ」
少し重たそうにするエミリアは食材でオレの顔が見えなかったのか、身体を横にねじりながらオレの真意を見抜こうと凝視する。
「まだわかんないのかよ」
はぁ、とため息をつきながら一人のみすぼらしい服装の少年に近づいた。さっきまで物乞いをした子だ。
「あぁ~どうしようかなぁ~食べ物を買ったはいいけどこれじゃあ食べきれないなぁ」
オレはわざとらしく大声で周囲の物乞いにも聞こえるように言ってみた。
オレの目の前の少年はキョトンとした表情でオレを見つめている。
オレは思わず苦笑して、リンゴを一つ手に取り、少年の前にやった。
「買ったはいいけど、食べきれないんだ。手伝ってくれるか?」
そう言うと、少年はようやくわかったのかぱあっと顔を輝かせ、頬をやわらかく緩ませる。
「いいの?」
「良いも何も、食べるのを手伝ってほしいんだ。これは人助けだぞ」
オレは直接リンゴを少年に持たせる。
「うん!」
少年はリンゴにかじりつき、子供らしからぬ恍惚の表情を浮かべる。
「おい! そこにいるみんな! みんなも手伝ってくれるか?」
オレはほかの物乞いにも声をかけ、どんどん買った食べ物を配っていく。
他の方へ眼をやると涼音達もオレと同じように食べ物を物乞いに配っていた。皆は少し楽しそうに子供たちと会話している。
広場は軽くお祭り騒ぎになり、俺たちに便乗して無償で食材を配っている者もいた。よく見ると友人同士らしい。簡易住宅に入れた者と入れなかった者だろう。なんとなく罪悪感で思うように話しかけられなかったとオレは軽く予想する。
「君は、優しいんだな」
涼音がオレに近づき、オレの隣で食べ物を配っている。その顔は勇者というより女神の微笑のようだった。いやいや、オレなんかにかける笑顔じゃないだろ。
「いや、優しさとかじゃないし。単にこのお金を保持しておくままなのが嫌だったんだよ。これ完璧にご機嫌とりだろ? しかも少なからず自分が困った時はよろしくお願いしますよっていう賄賂も入ってるだろ絶対。こんなもん知らないふりして全部使っちゃうか捨てるかした方がいいんだよ」
「君はなんとなく観察力というか察知力? が優れているようだな」
「はっはっは。こういうのはゲームの為に培われたようなものだからな。あまりゲーマーなめるなよ」
オレはわざとっぽく鼻を高くする。
「君は俗にいうオタクというものだったのか?」
「なんかそういういい方されると傷つくなぁ」
オレはバツが悪そうに頬を掻く。
気づくと腕の中の食べ物はもうなくなっており、子供たちや大人たちもお腹をさすりながら満足そうにしている。オレが買った食べ物は満腹になっても余るようでしばらく持つそうだ。それはよかった。
いろんな人から感謝され、少し照れくさい気持ちにもなった。
「お兄ちゃん、ありがとう!」
さっきオレがリンゴをあげた少年がオレに駆け寄り、満面の笑顔をこちらに向けてきた。
その姿が何とも微笑ましく、オレは少年の頭を撫で。
「こちらこそありがとうな。食べるの手伝ってくれて」
同じようにニコッとはにかんで見せる。
「うん! じゃあねぇ~‼」
オレは走り去る少年を見送りながら、ふと視線を感じる。横を見ると、涼音がぽーっと頬を赤らめてこっちを見ていた。
「どうした? ぼうっとして」
オレは少し心配になって涼音に声をかける。
「い、いや何でもないぞっ」
涼音は大げさに慌てて、足早に城へと戻っていく。
「さぁ! し、城へ戻ろうか」
「そうですねぇ。お忘れかもしれませんが、和人様のことを王に報告しなければいけないので」
あ、忘れてた。あ~憂鬱だ。
オレは逃げられないと悟り、大人しく王の間へとついていくことにした。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
感想、誤字脱字など気軽にお書きください!




