~初めての魔法と現実~
四話目です!
どうも鷹飛 諒でございます!
次回の投稿は日曜日の予定ですが早まったり遅くなったりするかもしれません。ご容赦ください。
では!
「ああ! きつい! きつすぎる! 死ぬぅ死ぬぅぅぅぅぅぅ!」
この世界に来てから早二週間が過ぎていた。オレは悲鳴を上げていた。騎士の訓練がインドア平凡人間にはとてもじゃないほどきつかったのだ。二週間たった今でもなれる気がしない。
オレはもつれそうな足を何とか前に前にと動かしていた。
すると、誰かがオレの背中を思い切り叩く。
「うわっ!」
「ほらほらどうしたぁ! 和人、みっともねぇぞぉちゃんと走れぇ!」
はっはっはと豪快な笑い声を上げながら大樹がオレの背中を叩く。
「痛い! 痛いって! 仕方ないだろぉ向こうの世界じゃインドア派を貫いてたんだから。激しい運動は久しぶりなんだよ」
「しかし、少し頼りなさすぎじゃないですか和人君」
クール系壮介さんが呆れた様子でオレと並走する。
「くっ! 壮介は仲間だと思ってたのにインテリ運動音痴系じゃなかったのか!」
「何を考えていたんだか」
壮介はまた呆れたようにため息をつく。
「まぁ基礎訓練の後は俺たちと魔法の練習だ。走り込みよりはまだマシだろう。がんばれ」
おお魔法の訓練。それは楽しみだ。二週間たってやっと魔法の訓練。気づかないうちにオレの足が速くなる。さぁ勇者としてここに呼ばれたんだ、どんな力が使えるのだろう。ワクワクしてきた。
さぁ! あと……十五周。楽しくない。
「かっはぁ! はぁはぁはぁはぁ。やっと……走り切った」
オレは耐え切れずにひざを折り、その場で崩れ落ちる。額から顎から髪の毛からぼたぼたと汗を流し、自分でも気味が悪いぐらいに地面が濡れていく。
「お疲れぇ、全く和人はだらしねぇなぁ、ハハハハハ!」
「うっせぇ、余計なお世話だ」
息も絶え絶えでようやく言葉を絞り出すオレ。大樹とは会ってまだ少しだが、豪快な体育会系と平々凡々な文化系という凸凹な感じがうまくはまったのかすぐに仲良くなった。
壮介とも軽口を言い合える仲ぐらいには仲良くなれたような気がする。
「お~い! 三人とも終わったか。エミリアさんが呼んでいるぞ。早速魔法の練習だそうだ」
涼音が遠くからオレ達に呼びかけ、駆け足で近づいてくる。隣には琴音もいて、二人の首筋からは汗が一筋流れていた。城から支給された通気性の良い麻の服を着た二人は騎士姿の時よりも体のラインがはっきり現れていて、少しドキッとしてしまった。だって可愛いんだもん。
汗をタオルである程度ふき取り、三人で涼音たちついていくことにする。
案内されたのは天井にまで届く本棚がいくつもある部屋に通された。本棚には難しそうな書物がびっしりと敷き詰められており、本棚で壁は見えなくなっていた。目の前には人一人ぐらいの身長分の直径はありそうな大きな水晶がこれまた大きなクッションの上に飾られるようにして置かれていた。
「で、でっか……」
オレは口をあんぐりと開け、呆気にとられる。
「皆さん、揃いましたかぁ」
後ろからエミリアの声が聞こえ、振り返る。
「そういえば、エミリアが魔法を教えてくれるのか?」
「そうですよぉ。私が先生なのですぅ」
「エミリアさんは王国一の魔導士として有名なんだよ」
涼音が説明口調で話す。
「へ~そうなんだ」
え、こんな奴が?
「和人様ぁ何か失礼なことを考えてはいませんかぁ?」
「いいえ、違います。考えていません」
図星をつかれて敬語になってしまった。察しのいい奴め。
「ところで毎回ここで魔法を練習するのか?」
「いえ、ここは魔法の適性を調べたりぃ、知識の幅を広げたりする場所ですよぉ。今日はぁ和人様に魔法に追いての説明とその適正を調べるためにぃ、ここに案内させたんですよぉ」
「なるほど、じゃあなんで大樹や涼音たちもいるんだ? 涼音たちはその必要はないだろう」
なんせ涼音たちは一か月前からここにいて訓練しているんだから。
「それはぁこれから共に戦っていくであろう皆さんの力を互いに知り合った方が身になるのではと思いましてぇ和人様にも私どもの力を知ってもらおうと他の勇者様も呼んだのですよぉ」
「なるほど。分かった。じゃあ早速始めよう時間が惜しい」
もうオレはワクワクを抑えることができなかった。
「では、早速。
魔法は簡単に言えば魔力を介し、奇跡を起こす力です。魔力は生物ならどんな個体でもその身の中に流れており、その魔力量は個人差があり、魔力量が多いほど魔法の才能があるという事です。ですが魔力の量は絶対ではなく訓練によってその上限を増やすこともできます」
魔法の説明になった途端、エミリアが急に饒舌になったことには驚いたが、それよりも魔力の量について気になった。
うーん。人によっては魔力量が極端に少ない場合もあるのか、なんだか不安になってきた。
すると、エミリアがオレの不安を見透かしたかのように優しく微笑み。
「大丈夫ですよぉ。古来より勇者の魔力量は魔王の持つ量に匹敵すると言われていますぅ。
ちなみに魔法の適正とは属性のことを示していて、人によって使える魔法の属性は様々です。しかし、適正だと示されなかった属性は何年修行しても修得は不可能です」
エミリアの説明にうんうんと頷きながら、頭の中で整理していく。それにしても魔法ってなかなかシビアなんだな。
「まぁこんな言葉ばかりじゃぁよくわからないと思うのでぇ実際に見てみればその理解も深まると思いますぅ」
エミリアはそう言っておもむろに目を閉じ手を胸の前で祈るように合わせる。
「お、おお!」
徐々にエミリアの周りが澄んだきれいな青色に輝きだし、青い球がぽつぽつと湧き上がる。
『紡ぐ、紡ぐ、糸の如く紡ぐ、運命の理を捻じ曲げ、強固な意志を槍とする』
声に合わせ、突如エミリアは合わせた手を広げる。その左右の手の指先と指先の間から糸のように青い光が伸び、手首をねじることで五本の青い光の糸が重なりながらねじれていく。その糸がねじりきるその瞬間にエミリアは音が鳴るほどの勢いで手を合わせ、先程よりも広い間隔で両手を広げる。そこからは青く神々しく光る魔力の槍が手と手の間から現れていた。
「これが、魔法……」
奇跡という言葉がふさわしいほどの光景にオレは笑いを止められなかった。オレはゆっくりとエミリアが作った青い槍に手を伸ばし、触れようとする。しかし触れようとした瞬間、手から電気が流れたような感覚が奔り、思わず手を引っ込める。それでもオレの笑みは崩れることはなかった。
「これは水属性の基礎魔法の『水槍』。このように魔法は詠唱により己のイメージ明確化し、そのイメージを魔力で作り出す。という順番で発動します。ですが、練習を重ね、慣れてくると……」
エミリアは涼音に目配せをする。
それに気づいた涼音はおもむろに虚空から何かつかみ取るように左拳を握ると手から雷にも似た紫色の閃光が迸り、涼音の手元で一瞬にしてバチバチ電撃を帯びた槍になる。
「おお! 凄いな‼」
「あのように、一瞬で魔法を行使できるようになります。ちなみに涼音様は雷属性の適正を持っています。
属性は全部で七つ。火、水、雷、土、風、光、闇の七つです。この内光と闇は少し特殊で、光は聖職者、闇は魔族に適性が多くみられます」
ほうほう。すごいな、魔法凄いな! いやぁオレも早く使えるようになりたいぜ! もうエミリアのまともな口調なんてもう蚊帳の外だ。
「ちなみにぃ大樹様は火、壮介様は私と同じ水、琴音様は土の属性を持っています」
エミリアが属性を紹介するたびに大樹たちが手から一瞬で槍を作り出す。
「お、おい! そ、その適正はどうやって調べるんだ?」
オレは興奮しながらエミリアに詰め寄る。
「あの水晶を使います。あの水晶に手をかざし魔力を注ぐことで適性を調べることができます。例えば~大樹様」
エミリアは大樹に声をかけ、それに反応して頷いた大樹は水晶の前に立ち、手をかざす。
すると水晶の周りが赤く輝き、水晶の中いっぱいに燃え盛る炎が現れた。
「大樹様は火の適性を持っているのであのように炎が発現します。和人様も手をかざして手に集中し、魔力を注げば適性が分かりますよ」
「だけど、魔力なんてそんな早く操れたりするものなのか?」
「この水晶は魔力を吸収するので相手の魔力を引き出すという特性があります。私も少しお手伝いしますので安心してください」
それを聞いたオレは勢いよく水晶の前へと走り出し早速水晶に手をかざす。いよいよだな。ふっ、オレの本当の力を見せてやるぜ! え? フラグっぽい? ふっそんなばかな!
「では和人様。目を閉じ、感じてください。あなたの中では魔力が血液のように全身に駆け巡っています。その血液をゆっくりと手に集めてください。そうするとほんのりと手が温かく感じます。そのような感覚を思い浮かべるのです」
エミリアはオレの肩に手を置きゆっくり語り掛けてきた。
血液を手に? よくわからないけど魔力は血液として考えればいいのか。うーん普通の血液は心臓の鼓動で全身にポンプのように行き渡らせてるんだったよな。じゃあ自分の心臓からポンプの要領で魔力を押し出すって感じか。
そう考えてみると、身体全体からぽかぽかと温まったような感覚を感じる。
「そうそうその調子です」
エミリアの声が聞こえる。その励ましの声でオレの心がどんどんと高揚していく。
その熱を今度は手に移動させるイメージで少し水晶にかざした手に力を入れてみた。
「きれい……」
とうっとりしたような琴音の声が聞こえる。
どうやらオレの体からはきれいなエメラルドグリーンの光が出ていたらしい。それがゆっくりと水晶へと移っていく。
「とても美しい魔力の操作です。一切の淀みがありません。和人様は魔力の操作が得意なのですね」
エミリアから賞賛の声が上がる。なんか褒められるとやっぱり嬉しいな。
オレはゆっくり眼を開ける。さぁオレの適正はなにかな?
と目見張らせるオレ。だがそこには何もなかった。
「……あれ?」
オレはもう一度魔力を注いでみる。
しかし、何も起きない。
「あれ、オレモシカシテサイノウナイ?」
絶望した表情でエミリアを見る。
「えぇとぉ、も、もういちどぉやってみましょうぉ」
珍しく慌てているエミリアがいつもの口調で指示する。
オレは頷いてもう一度水晶に手をかざす。
やっぱり何も起きない。なぜだ? なぜだ⁉ おいおい神様ほんとにオレに厳しすぎはしないか? マジどんだけオレの人生ハードモードなんだよ! こんな鮮やかに無能っぷりを証明されるなんてなぁ。体力もない。魔法の力もない。くそ、誰かがフラグを立てたとしか思えんぞ……あ、オレさっき立てたわ。
「いや、待って、ください」
琴音が水晶の中心を指さす。
皆が水晶内の中心の方を凝視する。
そこには本当によく見ないと見えなかったが、ピンポン玉ぐらいの小さな竜巻がそこには存在していた。
「……ふぅ、よかっ……みんな、ちょっと水晶に魔力を籠めてみてもらえないか」
オレは本当はやりたくないが皆との差というものを見るために言った。
「いや……でも」
壮介が気を使っているような様子で渋っている。
「やってくれ。確かめたいんだ」
オレは水晶から一歩離れ、腕を組み、じっと待つ。有無を言わせないためだ。
壮介は反論の意味がないと分かり、みんなと顔を見合わせ、溜息を吐き、一歩水晶へと近づく。
「やってくれって」
いつまでも渋る壮介にややイラつき、急かす。
「わかりましたよ」
ようやく壮介は観念し、水晶に手にかざす。
すると大樹の同じように、水晶いっぱいに今度は膨大な水が津波のようにあふれ出す。
「…………次」
オレが言うと壮介が下がり、琴音が前に出る。
すると、今度はバランスボールぐらいの土の塊が現れ、オレは少しホッとする。勇者の中でも俺ほどとは言えないが、それでも少しオレは安心した。……前言撤回。
突然その土の塊から絶え間なく土で作られた剣山が伸びてきた。その剣山達は水晶に何度もぶつかり崩れていく。崩れ去ったところからまた新たに剣山が生まれ、また水晶にぶつかり崩れ去っていく。部屋内は床が揺れる勢いで凄まじい轟音が響いている。
「次っ‼」
オレはみんなにも聞こえるように大声で叫ぶ。
琴音はオレに声に気付いたようでそそくさと水晶から離れる。それと同時に音も鳴りやんだ。
「和人君、もうやめにしないか」
「涼音、やってくれ」
オレは少し困った様子の涼音に有無を言わせず、言い方は悪いが強制的にさせた。
水晶には電撃が間を入れずに次々と発生し、水晶の中を縦横無尽に迸る。
「も、もういい……一つ聞いていいか?」
「は、はい……なんでしょうかぁ?」
オレはエミリアに声をかける。
「オレは勇者としてここに呼ばれたんだよな」
「はい、そのはずですぅ」
「っ……な、ならお前らが調べた文献とやらに能力の劣った勇者はいたか?」
「いえ、過去の勇者の力については確かに明確に記されてはいませんがぁ、でもぉ数々の記録で勇者たちの力が凄まじいことは証明されてますぅ」
誘拐されるようにここに召喚されて、二週間経った頃にはもう無能と言われる。いっそ清々しいね。
「はは、あははは……」
「か、和人君?」
涼音が慰めようとオレの肩に触れようとする。
しかし、それは叶わなかった。なぜなら、オレの視界はいつの間にか暗転し、オレは勢いよく後ろへ倒れこんだ。
ああ神様、ちょっとこれはさすがにひどくない?
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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