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終末世界に帰省した元社畜、実家のネギを抜いたら聖剣でした~俺が収穫した野菜だけ性能がおかしい~  作者: k-ing


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30/35

30.社畜、化け物と鬼ごっこをする

 運動場に出ると、化け物はすでに降りてきていた。

 視線の先は野菜が入っているカゴを見ている。

 まさか化け物でも腹が空いているのだろうか。


「お前、腹減ってるのか?」


 俺の声に化け物はビクッとしていた。

 恐る恐る振り返る化け物。


『グワアアアア!?』


 まるで驚いた声を上げたようにびっくりして、急いで逃げようと羽ばたいている。


「お前、あいつに何やったんだよ?」

「何って……雷落としたぐらいだぞ」


 俺はすぐにナスの萼を広げて電気を溜めていく。

 化け物はひとまず俺から距離を取れたことに喜んでいるようだが、この間雷が落ちてきたことを忘れたのか?

 俺はここぞとばかりにナスを振る。


――バッチイイイン!


 ナス三本を一気に使ったが、明らかに耳を塞ぎたくなる音に周囲からは悲鳴が上がっていた。

 だが、それだけ効果があったのだろう。

 化け物に直撃して、ふらふらと落ちてきた。

 これならさらに追撃もできるだろう。

 俺はネギを取り出してすぐに駆け寄る。


「へへへ、やっとあいつを倒せるぜ! 石も拾えるといいな!」


 化け物を倒すと稀に石が手に入る。

 ダイコはそれが気に入っているのか、ボリボリと音を立てながら食べるからな。

 ダイコも嬉しそうに走って付いてくる。


「あいつら悪魔か……」


 拓也が俺のことを悪魔と言っているが、どこから見ても悪魔には見えないだろう。

 野菜を持った悪魔なんて恥ずかしいからな。


『グワァ……』


 化け物はその場で倒れ込んでいた。

 あれだけ手こずっていた相手なのに、野菜が揃えば脅威でもない。

 あとはネギで切れば終わりだ。

 俺はそのままネギを構えた。


『グワアアアア!』


 それに気づいた化け物はすぐに逃げていく。

 相変わらず逃げ足は早いし、ちょこまかと飛んでいく。

 気づいた頃にはネギでは届かない距離に飛んでいた。

 俺が再びナスを取り出すと、化け物は勢いよく近づいてきた。


「なっ……」


 ネギを取り出すと空高く羽ばたくし、ナスを取り出すと低空飛行をする。

 やはり頭が良いのか絶妙な距離を保ってくる。


『グヌヌヌ……』


 ただ、化け物もどうすることもできないのは同じだ。

 逃げた瞬間、俺に狙われるからな。


「ネギかー、それともナスかー!」

『グウッ……グワッ!? グヌヌヌ……』


 俺はネギとナスを交互にチラチラと見せる。

 大きなペットを飼い慣らしているみたいでこれはこれで楽しい。


「なぁ、お前のご主人様楽しんで……痛っ!? 何で脚を蹴ってくるんだよ!」


 背後には拓也とダイコが楽しそうに遊んでいた。

 ダイコに蹴られるってことは、あいつも嫌われたみたいだな。

 さっきダイコのことを悪魔って言ったのが、根に持っていそうだな。

 大根だけに――。


「そろそろ決着つけようか」


 俺がナスを振ると、化け物は近づいてくる。

 だが、雷が落ちてこないことに俺は驚いた。

 よく見ると萼を広げるのを忘れていた。


『グハハハハハ!』


 まるで化け物は笑っているようだ。

 チャンスだと思ったのか、化け物は大きな口を開けて近づいてきた。

 だが、俺もニヤリと笑う。

 ずっと口を開けて近づいてくるそのタイミングを待っていた。

 右手にはナスを持っているが、左手はネギではなく野菜袋に入れたままだからな。


「くらえ! にんにく爆弾!」


 化け物の口目掛けてにんにくを放り投げた。


『グワアアアア!』


 口の中で音を立てて弾けるにんにくに化け物は声を上げていた。

 だが、声を上げるたびに問題が起きた。

 鼻を押さえないといけないほど、悪臭がする口臭が広がる。

 雄叫びを上げた瞬間、目の前でにんにくを食べた口で息を吐かれたような感覚に近い。


「修平、何やってるんだよ!」


 さっきまで拓也に怒っていたダイコですら、俺の脚を蹴ってくる。

 それに臭いのせいで、避難所にいる人たちの顔色が段々と悪くなってきた。


「くっ……ここは逃がしてやる!」


 俺は野菜を地面に置いて手を上げる。

 化け物はその場でキョロキョロとすると、その場から立ち去っていく。

 やっと悪臭の元がいなくなった。

 一安心したのも束の間――。


「なぁ、あっちはお前の家の方じゃないか?」


 拓也の声に俺はハッとする。

 確かに化け物が飛んで行った山を越えた先にあるのは我が家だ。

 いくら何でも佐々木さんだけでは、あの化け物は倒せないだろう。


「拓也、運転してくれ!」


 俺は拓也に運転を任せて、化け物を追っていく。


「もっとアクセル踏めるか?」

「わかった!」


 拓也は車のアクセルを思いっきり踏み込む。

 警察官が速度違反になるぐらいの速さで車を運転する。

 どこか不思議な感じもするが、変わり果てた世界には交通ルールもない。


「この距離なら――」


 重力で体が後ろに押されるが、雷が届く範囲であれば大丈夫だ。

 俺はナスの萼を広げて、振り下ろす。


「なっ……避けやがった!」


 それでも化け物は低空飛行になって、雷を避けていく。

 俺が雷を放つタイミングがわかってきたのだろう。


「そっちがその気なら、俺だって手段は選ばないからな!」


 雷を警戒しているから、自然と低空飛行の今がチャンスだ。

 俺は野菜袋から、とにかく野菜を出しては投げていく。


「おまっ!? あぶねーだろ!」


 拓也は野菜から離れるように車を運転していく。

 やはり警察は運転技術もないとなれない職種のようだ。

 何度か繰り返していると、玉ねぎの空気爆弾のおかげで化け物はふらついた。

 その瞬間、俺はネギを振る。

 ネギの斬撃が化け物を捉えた瞬間、その巨体は真っ二つに裂けた。


――ドォンッ!


 爆発と共に黒い煙が舞い上がる。


「やったか……?」


 車が止まり、俺は煙の向こうを見つめる。


「これで死んだだろ」


 今までで一番手応えがあった。

 雷で動きを止め、玉ねぎで体勢を崩し、最後はネギの一撃。

 さすがにこれで終わりのはずだ。

 だが、どこか違和感を覚えた。


「……あれ? 化け物って爆発するのか?」

「いや、やつらはそのまま消えるはずだ」


 拓也の言う通り、いつもなら化け物を倒したら、そのまま消えていくはず。

 なのに今回はその場で爆発した。

 玉ねぎによる爆発かとも思ったが、ネギを振ってからは投げていない。


「倒したのか見にいくぞ」

「あぁ……」


 拓也は乗る気ではなさそうだが、確認しないとまた襲ってくる可能性があるからな。

 化け物が落ちた先で黒い煙が立ち込めていた。

 何かが地面に横たわっているように見える。

 俺はネギを構えて、ゆっくりと近づいていく。


「修平、待て!」


 拓也が止める声を上げる。


「まだ生きてるかもしれねぇ!」


 ここであの化け物を倒さないと、いつまた襲われるかわからない。

 毎日怯えながら生活するのは今後もストレスになる。

 俺はネギを握り締めたまま、ゆっくり近づく。


「どこだ……」


 俺は煙の中で化け物の姿を探す。

 嫌な予感が胸を締め付ける。

 化け物の姿はどこにもない。

 少しずつ黒い煙が晴れていく。

 だが、そこに倒れていたのは――。


「えっ……」


 思わず声が漏れた。

 そこには五歳ほどの小さな少年が倒れていた。

 服はボロボロで、全身に傷を負っている。


「……嘘だろ」


 俺の手からネギが力なく下がる。

 さっきまで化け物だと思って斬った相手は、本当に化け物だったのか……?

お読み頂き、ありがとうございます。

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よろしくお願いします(*´꒳`*)

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