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終末世界に帰省した元社畜、実家のネギを抜いたら聖剣でした~俺が収穫した野菜だけ性能がおかしい~  作者: k-ing☆孤独な王子①6/8発売


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29.社畜、働き手を探す

 枝豆を食べ終わると自然に顔色が良くなったのか、各々体を動かし始めた。


「ご迷惑をおかけしてすみません」

「もうしばらくは休んだ方がいいと思いますよ」


 拓也の言葉に女性は首を横に振った。


「ありがとうございます。でも、私たちはここから出て行こうと思ってます」


 その言葉に拓也は息を詰まらせた。

 避難所を出ていくって言うのは無理もない。

 迫害されてきた場所にいたところで、今後も生きていけるのかわからないからな。


「こんな俺たちのためにずっとありがとう」

「拓也さんがいなければ、ここにいた人たちはもう死んでました」


 次々と頭を下げては拓也に感謝の言葉をかけていく。

 この人たちも拓也の足を引っ張りたくないと思っているのだろう。


「でもみなさんどうやって生活を……」


 拓也の言葉にみんなニコリと微笑んだ。


「もう心配かけないって決めたんです」

「俺たちは家族と一緒にいるだけで幸せですからね」


 肩を寄せ合う姿が俺の胸にも突き刺さる。

 拓也がやってきたことは無駄じゃなかったんだろう。

 でも、化け物と戦う力がなければ、この先いきていくのも大変だ。

 町はすでに荒らされているし、食べ物すらないかもしれない。

 それはここにいる人たち全員がわかっている。

 だけど、その選択をするということは、それだけ拓也のことを考えた結果なんだろう。

 それなら俺からも提案がある。


「もしよかったらうちの家の近くに引っ越しませんか?」

「引っ越しですか……?」


 俺は我が家の近くに住むように提案した。

 ただ、その言葉に首を傾げていた。

 突然言われても戸惑うだろう。


「山を超えた先に住んでるけど、空き家とかもあるし、この辺に比べたら食べられるものは揃ってますよ」


 畑ばかりだけど、空き家もチラホラそのまま残っているからね。

 化け物が中に住んでいなければ、この状況ならそのまま使っても問題ないだろう。


「見ず知らずの私たちが行ってもいいんですか?」

「むしろ働いてくれる人たちを探してたんです。この通り、野菜が出来すぎて収穫が間に合わないんですよね」


 俺は浮いているトマトを指さす。

 正直、光った野菜を確保するだけなら、俺だけで十分だ。

 だが、全てを収穫するってなると、祖父とダイコだけでは人手が足りない。

 この間、祖父も足を痛めたばかりだからね。

 そのまま放置していたら、食べられる野菜も腐らせるか種にすることになる。

 食べ物が足りないこの世界でそれは出来ないし、祖父母を気にかけてくれる人が増えたら、それだけで安心できる。


「本当にいいんですか?」


 男性の言葉に俺は頷く。


「ありがとうございます! 命の恩人なだけではなく、神様みたいだ」


 安心したのかお互いに抱きしめあっていた。

 これで俺も少しは役に立っただろう。


「修平、大丈夫なのか?」

「ああ、お前もそのうち連れていく予定だからな」

「へっ……?」


 俺はニヤリと笑った。

 この避難所はそもそも拓也が一人で守らなければいけない理由はない。

 生きたいなら一人に頼らず、各々行動をするしかない。

 だが、今の拓也を説得しても付いてくる気配はないからな。


「とりあえず、お前もこれを食べろ」

「いや、俺は……」

「拓也さん、自分の体は大事にしないとダメですよ」

「この世の中、体が資本ですからね!」


 気づいたらみんなで拓也が逃げないように抱え込んでいた。

 みんな拓也が心配だったんだな。


「つべこべ言わず食べる!」


 俺は拓也の顔を無理やり掴み、口元に枝豆を入れる。

 教室にいた人たちが良くなれば、この中で体調が一番悪いのは拓也だからな。


「おっ、どこか疲れが取れた気がする」

「ほぉ……そういう効果もあるのか」


 まさか疲れが取れるとは知らなかった。

 社畜時代に手に入っていたら、毎日多量摂取していたな。

 今の俺は程よく働いて、早寝早起きしているから、枝豆の効果が分かりづらかったのだろう。


「おい、俺を実験台にしたのか!」

「ははは、お前の体は丈夫そうだし――」


 拓也は笑いながら俺にプロレス技をかけてきた。

 昔はこうやって遊んでいたのが懐かしい。

 だけど――。


「痛ったたた!」


 謎の力で車を投げられるようになった拓也にプロレス技なんてかけられたら、俺はすぐにあの世に逝ってしまう。

 川の向こうで祖父が手を振っているのが一瞬だけ見え……いや、まだ祖父は生きてたか。

 家に帰ったら祖父にも枝豆を食べさせてあげよう。

 骨折はしてないと思うけど、歩くたびに痛そうだったからな。

 そんな俺たちを見て、みんな笑っていた。


「そういえば、ここにいるのはふた家族ですか?」

「はい。お互いに親戚同士なんです」


 どうやら親戚同士で助けあっていて、お互いに風邪を移し合っていたのだろう。

 二組の夫婦と三人の小学生で合計七人だ。


「大根のくせに逃げ足はやいぞ!」

「兄ちゃん、そっちに行ったよ!」


 子どもたちはダイコに興味津々で、今も教室の周りを追いかけっこしている。


「もう! 二人とも追いかけないの!」


 男兄弟と少し年上の女の子が、二人の首元を掴んでいた。

 さっきまで熱でうなされていたのに、もう走り回る元気があるなら問題ないね。


「ねね、大根ちゃんのその葉で三つ編みしたら可愛いかな?」


 ダイコは戸惑った様子でこっちを見ている気がするけど、俺は知らないふりをする。

 きっと俺よりダイコの方が子どもたちの面倒見が良さそうだからね。


「俺たちの車では全員は乗せられないので、どこかで車を探しますか」

「車なら数台あるからそれを使えばいい」


 拓也が一台車を譲ってくれるようだ。

 町に食料を探しに行くぐらいだから、多少は車も準備しているか。


「拓也も何かあったら俺の家に来いよ。飯なら……野菜と卵でいいならいくらでも食べさせてやるからな」

「卵もあるのか……」

「ああ、隣に住む人が養鶏場をやっててな。鶏が火を吹くぞ」


 俺の言葉にみんなが怪しそうに目を向ける。

 佐々木さんを見たことがないから、そういう反応になるのは仕方ない。

 俺も実際に見るまでは信じなかったからな。


「僕、その鶏と遊びたい!」

「俺も見たいぞ!」


 きっと佐々木さんは子どもたちの人気者になりそうだね。


「じゃあ、暗くなる前に俺たちは帰るよ。化け物も来なさそうだしな」


 あまり長居して祖父母を心配させてもいけない。

 そう思い教室を出たところで、数人の人たちが立っていた。


「おい、お前たちだけ助けてもらうなんてせこいだろ!」

「そうよ! 私たちだって連れて行きなさいよ!」


 どうやら話を聞いていたのだろう

 突然の出来事に俺は頭が回らない。

 そもそもこの人たちは何を言いたいのだろうか。


「いや、別に連れて行かないなんて言ってませんけど……」


 俺がそう言うと、男は鼻を鳴らした。


「だったら俺たちの面倒を見ろよ!」

「食べ物もあるんでしょう?」


 その言葉に隣にいた拓也の表情が曇る。

 避難所に来てから一度も……いや、今まで友達だったけど、こんなに怒った顔を見たことがない。


「お前ら、修平に何を言ってるんだ」


 拓也から聞いたこともない低い声に周囲が静かになる。


「だ、だって……こういうときは助け合いをするもんだろ?」

「俺たちだって困ってるんだ!」


 声を揃えて自分たちが困っているんだと声を上げていく。

 別に生きるのに困っているのは、ここにいる人たちだけではないはず。


「だからって他人に全部押し付けるのか?」


 拓也は一歩前に出た。


「病人の世話もしなければ、食料探しも手伝わない。パンを一つ盗んだだけの小さな子どもを追い出して、自分たちは化け物が来たら何もせず隠れてるだけだ」


 男たちは目を逸らす。

 拓也が言うことはほとんど間違っていないようだ。

 それだけ聞いていたら、本当に最悪なやつらの集まりだな。


「力があるやつがないやつを守るのは当たり前だろ!」

「それにお前は警察官じゃないか!」

「そうよ! 守って当然の仕事じゃない」


 ついに俺の耳がおかしくなったのか?

 さっきから人とは思えない言葉が耳に入ってくる。


「守る……?」


 拓也の声がさらに低くなる。


「あの子が外でどうなったか考えたことはあるのか?」

「それは……」


 ああ、もうこいつらは手がつけられないな。

 人として大事なものを失っている。

 そう思ったのは俺だけではないはずだ。


「まだ小学生だったんだぞ。大人が守るべき子どもをあなたたちは追い出したんだ。しかも、食料を探しに行っているときにな!」


 男たちは何も言えなくなった。

 小学生を化け物がいる外に一人で追い出すってかなり残酷なことをしているからな。

 それにここを守っている拓也がいない時を狙ってやってたとは最悪だ。


「だってあなたじゃ頼りないのよ!」

「そうだ! 俺たちは生きていくためには食べ物が必要だ」

「そこの兄ちゃんがくれるって言うだからな」


 もう呆れて俺は何も言えなかった。

 結局責任転嫁して、いい年した大人がまるで寄生虫のようだ。

 もはや寄生虫の方が話さないから、可愛げがあるのかもしれない。


「この人たちは自分たちだけで生きようとした。だから、修平も手を差し伸べたんだ」

「私たちも生きているわ」

「だから助けてくれるよな? な?」


 たぶん拓也はずっと我慢していたのだろう。

 避難所を守り、誰も見捨てないために……。

 だけど、ここにきて気づいたのだろう。

 何のために避難所を守っているのだと。

 いくら警察官で町の人を守る正義感が強い人でも、何度も責められたら耐えられない。

 それに今まで命懸けで守ってきた人たちに裏切られたらね。

 その時だった。


――ガァァァァァァァッ!!


 耳をつんざくような鳴き声が空から響いた。


「な、なんだ!?」


 全員が反射的に窓の外を見る。

 校庭の上空でやつはクルクルと様子を窺うように旋回していた。


「きたか……」


 拓也が顔を強張らせる。

 でも、俺としてはちょうどよかった。


「なあ、俺があいつを倒したら、この避難所を脅かす化け物はいなくなるよな?」

「へっ……?」


 男たちは声を揃える。


「だったら拓也がここに残る理由もないし、もらっても文句は言えないよな?」


 俺はニヤリと笑った。

 あのプテラノドン似の化け物を倒せば、避難所を襲ってくる化け物はいないだろう。

 それに拓也をこんな頭のおかしいやつらばかりのところに置いておきたくない。


「ダイコ、拓也行くぞ!」

「えっ……俺も行くのか!?」

「ああ! 警察官は来てもらわないとな!」


 俺は拓也と肩を掴んで外に出ていく。

 ダイコも嬉しそうに走ってきた。

 子どもに追いかけられなくて、やっと安心したのだろう。

 さぁ、化け物よ。

 三度目は逃さないぞ。

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