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終末世界に帰省した元社畜、実家のネギを抜いたら聖剣でした~俺が収穫した野菜だけ性能がおかしい~  作者: k-ing☆孤独な王子①6/8発売


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24.社畜、畑を広くする

 化け物に会った日から俺たちは畑を広げるように作業を進めた。

 春に植える種で野菜を作るためだ。

 ただ、本当にできるかはわからないため、全ては人参の成長促進にかかっている。

 祖父もそこは農家としてもやったことのない経験だから、何とも言えないと言っていた。

 普通はハウスの中で温度管理をしっかりとしないといけないからね。

 昔はハウスもあったけど、そんな設備はもうない。


「ダイコ、畑を耕してもらってもいい?」


 ダイコは頷くと再び断末魔を上げた。

 相変わらず手足の生えた大根だけが飛び出て、ネギで雑草を刈った部分だけを耕していく。

 本当に大根たちには助かっている。

 だけど、そろそろ食べる順番になってきているが、ダイコは仲間を食べるのだろうか……。


「じいちゃん、どうやって植えた方がいいとかある?」

「あー、できれば同じ科が近くに来ないようにした方がいいな」


 種を増やすために人参で成長を促したら、やけに大きな大根の種が数粒できた。

 祖父が言うには近くに白菜を植えているから、交雑したのかもしれないと。

 同じ種類同士で植えると、変わった野菜が生まれてしまうらしい。

 ただ、それも良い方向に進むかもしれないとそのまま植えることにした。


「本当に夏野菜ができるのかな……」


 今回植える予定なのは、夏野菜の定番であるナス科のトマトとナス。

 それにウリ科のきゅうり、マメ科の枝豆だ。

 本当は同じ科の野菜をもっと増やしたかったが、種を買っていなかったことを今になって後悔している。

 まあ、その辺は今育てている野菜から種を採って増やしていけばいいだろう。

 種を植えたら畑に人参を埋めて準備完了だ。


「ダイコが水やりしたいって持ってきたぞ」


 ダイコはヨタヨタしながら、井戸からバケツに水を汲んで持ってきた。

 ただ、水がすでにキラキラと輝いている。


「これって浄化した?」


 俺の言葉にダイコはビクッとした。

 どうやら合っているようだ。

 本当に浄化した水を使ってもいいのかと迷っていると、祖父がそのままバケツをひっくり返すように水を撒いた。


「さっさと撒かないと、いつまで経っても終わらないぞ!」


 今回は元からある野菜四種類と追加の野菜四種類で計八種類も管理しないといけない。

 祖父が時間がないと言うのもわかる気がする。

 それに畑がかなり広いからな。

 俺は祖父に言われた通りに水やりを終えると、時間は昼過ぎになっていた。

 水道から直接水やりをやるのではなく、井戸から持ってこないといけないため、中々大変な作業だった。


「じいちゃん、ちょっと鴨田さんのところに行ってくるよ」


 俺は白菜を持って、鴨田さんの養鶏場に向かった。

 プテラノドン似の化け物が養鶏場を襲う可能性もあるからな。

 

「鴨田さーん! 佐々木さーん!」


 俺は鶏舎に着くと、声を上げる。

 すると、勢いよく頭に何かが乗ってきた。


「あっ、佐々木さん」


 俺の頭には火を吹く鶏、佐々木さんが乗っていた。

 最近のお気に入り場所に認定されたのか、ここに来るたびに俺の頭に乗っている。


「あんまり修平をいじめるなよー」


 鴨田さんの声に反応したのか、佐々木さんは俺の頭の上で胸を張っていた。

 佐々木さんはそんなつもりはないだろうと思うが、急に動くと俺の首が痛くなる。

 頭に乗っていると言ったが、正確には首から後頭部にかけて座っているからね。

 胸を張ると首が前に押し出されて、強制的にストレートネックの完成だ。


「鴨田さん、白菜持ってきました」

「おっ、俺の養鶏場もついに白菜要塞にするのか」


 俺が白菜を持ってきたのは養鶏場の周りに白菜を吊り下げるからだ。

 この間、プテラノドン似の化け物が襲ってきた話をすると、鴨田さんは驚いていた。

 ただ、佐々木さんが鶏なのに、人の言葉がある程度理解しているのと、火を吹くことを考えると、知能がある凶暴な化け物がいることはすぐに受け入れてくれた。


「じゃあ、白菜を干してきますね」

「助かるよ」


 その対策として我が家でもやっている白菜による守りの強化だ。

 鴨田さんに遭遇した時、実際に家の前で見えていたから、反応としては受け入れが悪いと思っていた。

 だが、思ったよりもすんなり受け入れてくれた。

 その理由が正常の白菜に戻るまでの時間だ。 鶏の餌のために白菜を渡しているが、正常の白菜に戻すには、白菜を触り続けないといけない。

 白菜一つならそこまで時間はかからないが、鶏に食べさせるには数が必要となる。

 思ったよりも時間がかかるために、その作業に比べたら、時間の短縮になると言っていた。

 白菜は干していたら、自然と光を失っていくから、養鶏場も守ってくれて、時間の短縮ができる。

 これこそ一石二鳥だね。


「そういえば、有精卵ができたけど持ってくか?」

「有精卵?」

「ああ、佐々木さんはこの鶏舎で唯一の雄鶏だからな」


 佐々木さんが他の鶏よりも、大きいのは雄鶏だったかららしい。

 力に目覚めたのも、雌鶏を守らないといけないって思ったのかもしれない。

 ただ、雌鶏の数に対して、雄鶏がかなり少ないから、佐々木さんも大変そうだね。

 今も俺の頭の上でウトウトしている。


「いくつかもらっていくよ」


 我が家でも鶏を育てられたら、卵の確保はさらに楽になる。

 俺は有精卵をいくつかもらって、家に帰ることにした。



 玄関の扉を開けると、味噌の良い香りが漂ってくる。

 祖父がご飯を作って待っているのだろう。


「ばあちゃん、ただいま!」


 祖母とダイコが上り框に座って待っていた。

 声をかけると、祖母は小さく頷いている。

 この間化け物が襲ってきた影響か、祖母は俺が出かけると、不安な顔をして玄関で待つようになった。

 昔の記憶が戻ってきたのか、それとも俺が帰ってこなくなると思っているのだろうか。

 そんな祖母を俺は抱きしめると、穏やかな優しい顔に変わる。


「ばあさんが寂しそうだったぞ」

「ちょっと白菜を吊るすのに時間がかかってね」


 祖父も台所から顔を出して様子を見にきた。

 祖母が認知症になったばかりの頃、俺が帰ってこないから、よく玄関でソワソワして待っていたらしい。

 次第にそれがなくなったころには、俺への電話もなくなり、ついに忘れたのかと思っていたと祖父が話していた。

 その頃の祖母に戻ったのかもしれない。


「いたた……」


 祖母ばかり相手していたからか、ダイコが俺の腕を蹴っていた。


「ダイコもただいま」


 俺が声をかけたら、満足したのか部屋に入っていく。


「ばあさんと修平もそんなところにいないでご飯を食べるぞ」

「はーい。ばあちゃん、行こうか!」


 俺は祖母の手を引いて居間へ向かう。

 テーブルの上には味噌汁と漬物。

 そして、少し焦げた卵焼きが置いてあった。


「じいちゃん、だいぶ卵焼き上手になったね」

「ははは、わしは料理もできるからな」


 ここ数日、卵焼きを作ったはずなのにスクランブルエッグのようなものが出てきたのを思い出す。

 祖母は簡単に卵焼きを作っていたけど、実際にやってみると難しいからね。

 今は立派な卵焼きを作れるようになったことを尊敬している。

 もちろん俺は一回で諦めたからな。


「あっ、そういえば鴨田さんから有精卵をもらったよ」

「おっ、ちゃんと孵化するといいな」


 鴨田さんからもらった卵を見て祖父が笑う。

 ダイコも興味があるのか、卵を貸してくれと葉で突いてくる。


「気をつけろよ」


 俺はそう言って渡すが、ダイコはすぐに割ろうとしていた。


「おいおい、まだ普通の卵と変わらないぞ」


 俺がすぐに止めると、ダイコは葉を傾けていた。

 有精卵と言われても、見た目は普通の卵と変わらないもんね。


「ここには佐々木さんの子どもがいるから、大事にしないとダメだぞ」


 佐々木さんの子どもと言われてやっと理解できたのだろう。

 葉で卵を包んでいた。

 あとで孵化できるように、環境を準備してあげよう。


「ほら、飯が冷めちまう」


 祖父は早く食べろと急かしてくる。

 せっかく出来立てのご飯が冷めちゃうもんね。


「いただきます」


 俺たちは手を合わせてお昼ご飯を食べていく。

 外には化け物がいて、いつ命を落としてもおかしくない。

 それでも家族が揃ってご飯が食べられるこの毎日が今は幸せだ。

 ただ、この時の俺は知らなかった。

 畑に植えた種が、たった一週間で予想もしない姿に育ち、俺たちの運命を大きく変えることになるのを。

お読み頂き、ありがとうございます。

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