表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末世界に帰省した元社畜、実家のネギを抜いたら聖剣でした~俺が収穫した野菜だけ性能がおかしい~  作者: k-ing☆孤独な王子①6/8発売


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/35

17.社畜、水が出なくなる

 にんにくの種と玉ねぎの苗も植え終えると、他の種もポケットから取り出す。


「じいちゃん、他にも種あるけど植えられる?」


 ちゃんと聞いてみようと、念の為に一袋ずつ持ってきていた。


「あー、この辺は春に植える種だから難しいかな」


 パッケージにも地域毎による適切な種まき時期やカレンダーが記載してあった。

 やはり適した時期じゃないと芽が出なかったり、病気になりやすいのだろう。

 どうやら今育てられる野菜は他にはなさそうだ。

 あとは春頃に植えるのを待つしかない。


「今の時期じゃないのに種って売ってるんだね」

「ああ、昨年の売れ残りだったり、早めに準備する人たちもいるからな」


 祖父の話では自家採種している農家もいれば、種や苗を扱っている店や農業協同組合で買ったりするらしい。

 特にF1品種と呼ばれている優れたところを掛け合わせたハイブリッドな種は一世代までしかできないため、買わないといけないと祖父が言っていた。

 やはり農家の仕事は思ったよりも大変そうだ。

 水やりもして、特に作業もなくなった俺たちは、家に戻ることにした。


「ダイコ、人参はあのままでいいの?」


 帰り道、俺は気になっていたことをダイコに確認すると頷いていた。

 新しい畑に刺さったままの人参はそのまま放置で問題ないらしい。

 それなら俺がわざわざ収獲する必要性があったのだろうか。


「ばあちゃん、ただいま!」

「はあさん、留守番助かったぞ」


 家に帰ると、揃って祖母に声をかけていく。

 だが、祖母は特に気にすることなく、どこかソワソワとしていた。

 普段からよく動いていた祖母にとっては、体が勝手に動いてしまうのだろう。

 そんな祖母にダイコは寄り添っている。


「ダイコがいると、ばあちゃん落ち着くのかな?」


 俺と祖父は祖母の顔を覗き込む。


「顔が優しくなってるぞ」

「ほんとだね」


 落ち着きを取り戻したのか、口元がわずかに緩んでいる。

 本当に大根は謎めいているな。


「じゃあ、お昼ご飯にしようか」



――ポタッ……ポタッ……


 お昼ご飯を作ろうと、蛇口を捻ってみるがついに水が出てこなくなった。

 何度繰り返しても、水は出てこない。


「どうしたんだ?」

「いや、ついに水が出なくなってね」


 畑に水やりをする時には、まだわずかに水は出ていた。

 あれからそんなに時間は経ってないが、どこの蛇口を捻っても水は出ない。


「電気が止まっているから仕方ないだろ」


 ポンプを使って送水していれば、電気が使えなくなれば断水するのは仕方ない。

 それに浄水場の人たちも避難している可能性がある。


「しばらくは溜めた水でどうにかしないとね」

「後で井戸でも見に行こうか」


 裏に庭に昔使っていた井戸が置いてある。

 衛生面が怖ければ、畑に使っても良さそうだしな。


「そうだな。まずは腹ごしらえだ」

 祖父の言葉に頷き、俺は貯めてあった水を使って昼食の準備を始めた。



「ごちそうさま」


 昼食を終えると、祖父は立ち上がった。


「それじゃあ井戸を見に行くか」

「うん」


 俺はバケツを持ち、祖父の後を追って裏庭へ向かう。

 しばらく使われていない井戸。

 果たして水は残っているのだろうか。


「ちゃんと水は出るかな?」

「わしとばあさんが修平の母ちゃんを育てていた時だからな……」


 俺の母が小さかった頃ってなると、軽く50年近く前になるだろう。


「母ちゃんもよく手伝ってくれたぞ」

「そうなんだね。母さんの記憶はあまりないからな……」

「修平が三歳の時だったもんな」


 冷たい風が枯れ草を揺らした。

 俺は何も言えず、ただ足元へ視線を落とす。

 小さい頃に母は病気で亡くなっているため、俺には母と遊んだ記憶があまりない。

 母は俺が生まれて少し経った頃に癌が見つかった。

 子育てに忙しい中、体調を崩した母はすぐに治ると思い、病院にはいかなかったらしい。

 その結果、癌だと診断された頃には手術をしたとしても治らなかった。

 突然静かになった俺たちを心配したのか、ダイコは葉を揺らして俺たちを叩いていた。


「ん? どうしたんだ?」

「別に喧嘩してるわけじゃないぞ」


 ダイコに慰められると、なぜか落ち着くんだよな。

 本当に大根セラピーの効果が出ているようだ。

 俺はバケツを井戸の前に置き、井戸についている手押しポンプの柄を握ると、ゆっくりと押し下げた。


「重っ……」


 柄は途中までしか動かないし、錆びた金属が擦れる嫌な音だけが響く。


「やっぱり駄目かな?」

「いや、まだわからんぞ」


 祖父の言われた通りにもう一度力を込める。


――ギィィッ!


 悲鳴のような音を上げながら、固まっていた柄がわずかに動いた。

 そのまま何度か上下させる。


――ギッ……ギッ……ギギッ


 無理やり起こされたかのように、ポンプは不満そうな音を鳴らし続けた。


「出ろ出ろ!」


 10回程度動かした頃。


――ゴボッ!


 井戸の奥から何かがせり上がってくる音がした。


「おっ?」


 さらに数回動かす。

 すると、吐出口から茶色く濁った水が飛び散った。


――バシャッ!


 それを見たダイコは慌てて飛び退き、祖父の後ろに隠れた。

 葉っぱだけをひょこっと覗かせている。

 勢いよく井戸から水が出てきたら、背が低いダイコだと全身が濡れちゃう。

 びっくりするのも仕方ない。


「ははは、最初はこんなもんだ。しばらく汲み続ければ綺麗になるかもしれん」


 ダイコも気になるのか、再び井戸の前まで出てきた。


「やってみる?」


 どこかジーッと見られているような気がして、声をかけてみると、葉を上下に動かしていた。

 前から思っていたが、ダイコって何にでも興味津々な子だ。

 ダイコに柄を上下に動かすことを伝えると、葉を絡めて引っ張る。


――バシャー!


 勢いよく出てくる水にダイコも楽しそうに何度も柄を動かしていく。

 次第に出てくる水も色が透明に変わってきた。


「水を捨ててくるからちょっと待ってね」


 俺はバケツに溜まった茶色く濁った水を捨てに行こうと持ち上げたら、足が引っ張られる感じがした。

 嫌な予感がして振り返る。


「ダイコ、危ないよ」


 やはりダイコが俺の足に葉を絡めていた。

 一回転びそうになったから、そう何度もやられるわけにはいかない。

 ただ、俺を止めた理由が何かあるのだろう。

 そう思い、俺はその場でしゃがみ込むとダイコは急いで近寄ってくる。


「バケツの中身が気になるのか?」


 ダイコは茶色く濁った水に興味があるのか、頑張って中身を覗こうとしていた。

 だけど、身長が低いため、中々バケツの中が見えないようだ。


「よいしょ! これだけ汚いと使えないぞ」


 祖父はダイコを持ち上げて、一緒にバケツの中を覗く。

 だけど、ダイコにはそんなこと関係ないのだろう。

 葉をそのまま水の上に持っていくと、キラキラと光がバケツの中に降り注ぐ。

 まるで流れ星のようだ。

 それに祖母にもたまにやっている動きだが、何か変化があるのだろうか。


「修平、見てみろ!」

「じいちゃん、どうしたの?」


 祖父が急かすように俺に声をかけてきた。

 俺は言われた通り、祖父の視線を追っていくとバケツの中身を見ていたようだ。


「どうし……えっ?」

「ダイコの葉には洗浄効果があるんだな」

「いや、洗うってレベルじゃないだろ……」


 バケツの中には茶色く濁った水はなくなり、澄んだ透明な水からキラキラと輝く光が放たれていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。

よろしくお願いします(*´꒳`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ