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終末世界に帰省した元社畜、実家のネギを抜いたら聖剣でした~俺が収穫した野菜だけ性能がおかしい~  作者: k-ing☆孤独な王子①6/8発売


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16.社畜、あの頃を思い出す

「それで鴨田さんは何かあったんですか?」

「ああ、ちゃんと避難しているのか気になって寄ってみたんだ」

「ばあちゃんが認知症なのもあって、避難はできなかったですね」

「あぁ……そうか」


 鴨田さんの表情は曇る。

 どうやら鴨田さんが祖父母に避難するように伝えたらしい。

 当の本人はここにいるけど、大丈夫なんだろうか?


「そっちは避難しなくて大丈夫ですか?」

「ああ、俺は家族を置いていけないからな……」

『コケッエエエ!』


 鴨田さんが持っている鶏が返事をするように鳴いていた。

 そんな鶏を鴨田さんは優しく撫でている。

 昔は養鶏場を営んでいたが、今も変わらずやっていたら鶏を置いて避難できない気持ちもわからなくない。


「化け物に襲われてないですか?」


 養鶏場も化け物が襲ってくるなら、白菜で守りを固めることはできる。

 見た目は悪いが効果は少なからずあると、俺は思っている。


「ああ、俺のところは鶏たちが助けてくれるからな」

「助けてくれる……?」


 どういう意味かわからず首を傾げていると、鴨田さんがニヤリと笑った。


「いやー、うちの鶏たちが化け物を追い払うんだよ」

「例えば、力持ちになったり……?」


 避難所にいた同級生の相川拓也の顔をチラつく。

 あいつは力が強くなったって言っていたから、鶏も似たような力で追い払ったのかもしれない。


「聞いて驚くなよ? うちの鶏は火を吹くんだよ!」

「……はぁん?」


 俺よりも鴨田さんの方がおかしくなったのだろうか。

 だって、鶏が火を吹くなんて――。


「焼き鳥になっちまうよな?」

「焼き鳥になるつもり?」


 鴨田さんも同じことを思っていたようだ。


『コケッコケエエエエエ!』

「痛ったた!?」


 まるで反抗するかのように、抱きかかえている鶏に手を突かれていた。

 聞き分けがいいのは、うちの大根と似ているな。

 それに拓也が言ってきたプレイヤーって存在は人間だけではないようだ。


「何か助けて欲しいことがあったら家まで来てくれ」

「鶏田さんも――」

「誰だよ!」


 相変わらず鴨田さんのツッコミは素早い。

 大きな声で笑いながらも、鶏と一緒に帰っていく後ろ姿を見送る。

 化け物が出てくるようになっても、鴨田さんは変わらないようだ。

 それに能力は人……いや、生物それぞれ違うことを知った。

 本当にこの世界にも新しい時代が来るのかもしれない。

 また今度祖母の栄養の面も気になるから、卵と交換するために野菜でも持っていこう。


「おっ、結構時間経ってたな」


 時計を見ると、20分ぐらいは経っていた。

 急いでにんにくの種根と玉ねぎの苗を持っていく。

 もちろん庭のネギ畑からネギを抜いてくるのは忘れていない。

 いつ化け物に遭遇するかわからないからな。


「じいちゃん、ダイコ、お待たせ!」

「ああ、何やってたんだ?」


 畑に到着すると、ダイコは足を地面に踏みつけて怒っていた。


「鴨田さんが遊びに来てて、じいちゃんたちが避難したのか気になって見に来ていたよ」

「ああ、そうか……。彼も避難していないんだな」

「鶏たちが心配だったからって言ってた」


 同じ生産者でも畑は放置できるけど、生きている鶏を放置するのは難しいからね。

 命を簡単に無視することができないのも、養鶏場の難しさなのかもしれない。


「それでこれはどういう状況?」

「ああ、ダイコが修平を待っていたけど、中々来ないから植えていたぞ」


 雑草を刈り取った畑に人参が何本も刺さっていた。

 それに畑が全体的に橙色にキラキラと輝いているような気がする。

 まるで畑自体が野菜のような感じになっていた。


「こういう時に話せたら助かるのにね」


 俺は足を蹴ってくるダイコを持ち上げる。

 あれだけ叫び声みたいなものをあげたのに、話す様子もなく、意思表示は葉を動かすだけだ。

 今も降ろせと言わんばかりに、葉で顔をペシペシと叩いてくる。


「ごめんごめん」


 俺は大根を地面に下ろすと、すぐに祖父の元へ走って行った。

 どうやら祖父の方がダイコに懐かれているようだ。

 何か悪いことをしたつもりはないんだけどな。


「じゃあ、じいちゃんアドバイスをお願いします」

「任せとけ。これでも長年やっとるでな」


 そう言って、祖父は胸を張った。

 その姿にダイコは葉を横に振って嬉しそうにしている。

 まるで祖父と孫……いや、ひ孫か。

 見た目は大根だけどな。


「にんにくの種根はまず一欠片ずつに分けないといけないからな」


 祖父はにんにくの種根を剥き出した。


「これって皮は外さなくていいの?」

「ああ、わしは薄皮を1枚だけ残して植えるぞ」

「何か意味があるの?」

「薄皮がないと水を吸収しやすいから早く芽が出るが、その分乾燥や病気に弱くなるからな」


 にんにくは薄皮を剥いて植えても問題ないが、俺みたいな畑をやったことない初心者には特に薄皮があった方が良いらしい。

 直接土に触れるかどうかでかなり違いが出るなんて知らなかった。


「せっかくだから自由研究でもしてみるか?」

「ははは、懐かしいね」


 祖父の言葉に懐かしさを感じた。


「せっかくだから成長の差を見てみるのも楽しいと思ってな」

「ああ、それで自由研究か」


 よく畑で祖父と自由研究と言って、色々な方法で畑をやっていたのを思い出した。

 小さい時はそれが楽しかったのに、いつの間にか楽しさを忘れていた。

 祖父は数個にんにくの種根の薄皮を剥き出した。


「あとは一粒ずつ植えれば……ダイコも手伝ってくれるのか?」


 ダイコは大きく頷くと、祖父は数粒渡してみた。

 すると器用に葉を伸ばして穴を掘っては埋めていく。

 ダイコは楽しいのか、すぐに祖父を叩いては催促している。

 その姿が幼い時の俺の姿と被る。

 あの時は俺も楽しくて、毎日畑に行くのが楽しみだったな。


「じいちゃん、俺もやらせてよ」

「孫はいつまで経っても孫だな」


 そう言いながら、祖父も嬉しそうににんにくの種を渡してきた。

 俺たちは一定の間隔を空けて、横並びに並びながら植えていく。

 まるで幼い頃のあの時に戻ったみたいだ。

 楽しかったあの頃の思い出が溢れ出てくる。


「じいちゃん、あの時は反抗してごめんね」

「ははは、孫の成長を喜ばないじいさんはおらんぞ」


 その言葉に少しだけ報われたような気がした。

 反抗期だからって言っていいことと悪いことがあるからね。

 それをわかっていても言ってしまうし、言った後に後悔しても謝ることができなかった。

 その記憶だけは鮮明に覚えている。


「ただ、わしのことをハゲと言ったことは許さんからな」

「ぶふっ!」


 俺は思わず吹き出してしまった。

 まさか祖父がそんなことを根に持っているとは思わなかった。


「あの当時はもっとふさふさだったぞ!」

「ははは、ごめんてー! あの時は反抗期だったから……ん?」


 俺と祖父が笑い合っていると、ダイコは何かを持ってきた。

 葉の上には抜いたばかりの人参が置いてある。


「どういうこと?」


 俺の言葉にダイコは人参を持って、祖父の頭の上に置いた。


「くくく、カツラの代わりだって……」

「くっ、笑うんじゃないぞ!」


 状況がわからないダイコはその場でオドオドとしていた。

 ダイコは自分なりに考えて、祖父を励まそうとして人参を持ってきたのだろう。

 人参の葉を祖父の髪の毛の代わりにするとは、優しい大根だな。

 ……うん、優しい大根って意味もいまいちわからない。

 それでも祖父は怒りながら、でも顔は楽しそうに笑っていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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