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第七話「家族を想わせる夜」(ブラック1)

第七話 「家族を想わせる夜」

(主人公 ブラック1)


??「よぉ!ユキ!」


背後から雪の肩に手を回す少女


雪「ひゃあっ!?も、もう!ハク!びっくりさせないでよぉ!」

ハク「いーじゃんかよこれくらい。それよりも、ちょっと記憶見せろよ」

雪「えー…何する気………?」

ハク「別になんもしねぇって!…いいから見せろよ」

雪「…うん……いいけど………」


と、雪は目をつぶる。

それに呼応してハクも目をつぶる。


ハク「……………へぇ……これがユキのお気に入りかぁ…」

雪「ちょっと!何見てるのっ!」

ハク「はっ!なんだか最近やけに考え事してるから何かと思ってな。…コイツのことが好きなのかぁ?」

雪「そんなんじゃないってば!」

??「あら~恋バナかしら~?」


すぅーっと現れる白い靄(もや)のようなものが雪にふわりと纏わりつく。


雪「ミカさんも!茶化さないでよ~」

ミカ「うふふ…ごめんなさいね…。ハク、ユキはね、あの男の子のことが心配なだけなのよ」

雪「そうそう」

ハク「ふ~ん…本当にそれだけかぁ?」

雪「あ、当たり前でしょっ!?」

ミカ「そうよ……今はまだ…ねっ!」

ハク「やっぱりなぁ!」

雪「ち、違うってばぁ!!」

ミカ「あははははっ…!」 ハク「ハハッ!」

雪「も~!お、おこるよ~?」


ほっぺを膨らませる雪。

ミカはふぅと呼吸を整えてから「ごめんなさい」と謝罪をして続ける


ミカ「ハク、もう揶揄うのはやめましょ」

ハク「あー…そうだな」

雪「二人ともすぐ、わたしをおもちゃにするんだから…」

ミカ「……でも、どうしてそこまで彼を気にかけているの?」

雪「……だってあの人……なんだか似てる気がして……」

ハク「似てる?ユキとかぁ?」

雪「…う…うん……」

ハク「どこが?」

雪「そ…それは………………」

ミカ「…!」


ミカは「まぁいいじゃない」と言いながらハクの背後にふわりと回る。

そして、ハクにだけ聞こえるよう耳元で囁く


ミカ「ユキもまだ自覚できてない想いがあるのよ…今はそっと見守ってあげましょ」

ハク「あ?……あー…わかったよ……」



*


あの人とわたしは…どこか似ているような気がする…


他人には言えない、哀しみを宿しているような気がするから………


*



雪「………………」

みどり「…………」


業務報告をしているブラウンを見つめる雪に気づく、アイスを咥えたみどり


ブラウン「以上です…お疲れ様でした…」

ことみ「お疲れ様!ゆっくり休んでね!」

雪「お、おつかれさまですっ!」 みどり「おつかれ~」


夜勤が終わり、帰宅するブラウン


雪「………ブラウンさん…今日も元気なさそうでした……」

みどり「ん~たしかに…あれは眠いってだけじゃ無さそうだね~」

雪「……何かしてあげられないでしょうか…?」

みどり「ん~~夜勤が苦手なのかなぁ? 他の仕事に比べれば楽だと思うんだけどなぁ~」

ことみ「そうねぇ……クリーチャーは昼行性だから、夜はほとんど活動しないし…」

みどり「うんうん…通報が入るとしたら明け方がほとんどだし、たま~に夜中に鳴るけどしょうもないことだったりするからね~。鹿が居ただけだったとか、風の音を勘違いしたとかね」

ことみ「うちもその万が一に備えているだけだから、仕事自体はそんなに大変じゃないと思うのよね……何か他にやってることがあるのかしら……」

雪「でも、引継ぎの時に通報はなかったって……」

みどり「…まだ仕事に慣れていないんじゃない?初めての仕事で初めての夜勤だったら何もなくても疲れちゃうんでしょ」

雪「慣れていないから…なんですかね……。でも、その可能性はありますねっ。それなら…何か、元気が出るようなことをしてあげたいです…」

みどり「そんなに心配?」

雪「はい………。」

みどり「ん~~……あっ! じゃあ一緒にごはんにでも行く?おいしいもの食べれば元気も出るでしょ!」


みどりの提案に表情が明るくなる雪


雪「それ、いいですねっ!あ…でもいつ誘いましょう?もうブラウンさん帰ってしまいましたし…」

みどり「今でしょー!善は急げだよっ、雪ちゃん!」


携帯デバイスをポケットから取り出すみどり


みどり「ことみん、ブラウンくんの連絡先教えて~」

ことみ「あー…あの子、ケータイ持ってないのよ」

みどり「えぇっ!?」

ことみ「業務用のトランシーバーしか持ってないわ。これがあるからいらないって…」

みどり「この世の娯楽に興味ないんか…」


呆れるみどりの隣でトランシーバーに視線を落とす雪


雪「……なんて言って誘えばいいんでしょうか……」

みどり「任せて~!」

雪「あっ!」


雪の無線機を借りてブラウンにかける

…ピロロロロ…ガチャ…!


ブラウン「こちらブラウン。どうした?」

みどり「こちらみどりでーす。仕事があるので18時に事務所に来てくださーい。」

ブラウン「分かった。」

みどり「あ!お腹を空かせてくること!わかった!?」

ブラウン「お腹を……??どういうことだ??」

みどり「いいからいいから♪」

ブラウン「…わ…わかった」

みどり「じゃ、よろしくねー」


ガチャ


ことみ「…強引な誘い方ね…」

みどり「仕事って言わなきゃ、あの子絶対来ないでしょ~」

ことみ「…でしょうね……」

雪「で、でも…仕事だなんて言っちゃって、い、いいんでしょうか…?」

みどり「いいでしょ。コミュニケーションも仕事の内だし!…って思ってたけど、これじゃあ確かに飲み会を強制してくるブラック企業と一緒だよね……」


困り顔の雪の視線に、はぁ…と一つため息をついて答えるコトミ


ことみ「仕方ないわね…あの子のことは心配だし、三人とも時間外労働として二時間つけておくから、仕事扱いでご飯に行って来なさい」

みどり「ほんとに!?」

雪「い、いいんですかっ!?」

ことみ「えぇ。その代わり、あの子のこと、お願いね」

雪「はいっ!」 みどり「はーい」

ことみ「あ、あと仕事扱いで食事に行くって事は、他のメンバーには内緒だからね!」

みどり「わかってるって~ さっすが社長!太っ腹だね~」

ことみ「はいはい…さっ!その分仕事頑張ってもらうからね!」

雪・みどり「「はーい!」」



こうして話はまとまり、雪とみどりはヒーロー業務をこなしながら、最近新しく始まったヒーローショーについて案を出し、ことみの仕事を手伝った



*


いつも通り何の問題も無く仕事を終え、日も暮れ始めた頃…


金一「おはようございます~」

ブラウン「お疲れ様です」


夜勤の金一が出勤。そしてブラウンが時間通りに事務所の前へと到着した


雪「お疲れ様ですっ!」

みどり「おっ、来たね~ じゃ、あたし達はもうあがるね~」

ことみ「はーい、お疲れ様」

金一「おや?これからみんなでお出かけ?」

みどり「そ!三人でご飯行くの」

金一「そっか~楽しんできてね!…ってあれ?ことちゃんは行かないの?」

みどり「あっそうだよ!ことみんも行こうよ!」

ことみ「実はこれ、期限近くて…今日中にもう少し進めておきたいのよ…」

みどり「えー!そうだったのー!?」

雪「そうですか……なら、お仕事が終わったあとにでもっ…!」

ことみ「たぶん遅くなっちゃうわ…」

みどり「んーじゃあ終わったら連絡して!まだやってたら合流しよっ!」

ことみ「そう…?私も行ったら邪魔になっちゃわない?」

雪「そんなことないですよっ!ことみさんとも一緒にご飯食べたいです!」

ことみ「…ありがと…なら、急いで終わらせて私も顔出すわ!」

みどり「やった~ じゃ、待ってるからね~」

ことみ「はいはい」

金一「じゃあね~楽しんでおいで」

雪「ありがとうございますっ!いってきます!」


ことみ、金一に手を振られて送り出された二人。

カラカラ…

と事務所の扉を閉めると…


ブラウン「仕事だと聞いていたが…食事に行くのか?」


事務所の壁に寄りかかり、手を組んで待っていたブラウンが質問をする


雪「ごっ、ごめんなさい…!こうでもしないとブラウンさん、来てくれ無さそうだったので………」

みどり「雪ちゃんは謝らなくていーの! んで、ブラウンくんはそんな睨まないの! これから食事に付き合ってもらうけど、ちゃんと仕事の一環だから!ちゃんとついて来なさいよね~!」

ブラウン「うっ…!」


前のめりになってブラウンに迫るみどり


みどり「本来はね…同じ仕事をする仲間とコミュニケーションを取るなんて、業務の合間にする仕事みたいなもんなの!それを君は全然やらないから…今回は特別に、ご飯でも食べながら、コミュニケーションと言う名の仕事をすることになったの…分かった?」

ブラウン「わ…分かった……」

みどり「ならよし……この食事会を計画したのは雪ちゃんなんだから、ちゃんと感謝しておきなさいね」

ブラウン「あ、あぁ……ありがとう…」

雪「いえっ!こ、こちらこそ…!(?)」

みどり「うん…それじゃあ行こっか♪」



*



歩いて移動し、居酒屋に到着した一行

席に着き、メニューを広げる


みどり「ブラウンくんはお酒飲むの?」

ブラウン「いや…オレ…酒は飲まない…」

みどり「そうなんだ。雪ちゃんは未成年だもんね。えーっと…あったあった。ソフトドリンクはここだね。二人で選びな♪」


メニューの向きを変え、二人に見せる


雪「えーっと、わたしはコーラで!…ブラウンさんはどうします?」

ブラウン「…オレは…………オレもコーラで。」

みどり「よっし!他のメニューはあたしに任せて!おすすめの沢山頼んであげるから♪」


焼き鳥、刺身、たこわさ、カキフライ、から揚げ、焼うどん、焼きおにぎり…と沢山の料理が運ばれてくる


みどり「二人ともたくさん食べてね♪」

雪「わぁ…どれもおいしそう…!」

ブラウン「………。」

みどり「ほら、この焼き鳥食べてみて♪ここの焼き鳥絶品だから!」


串をブラウンに差し出すみどり


ブラウン「…おいしい。」

雪「よかったぁ…!」

みどり「~♪ これも食べてみて!これも!これも!」


と、次々に食べ物を勧めるみどり。

こうして、お腹も少し落ち着き、焼き鳥などをつまみながらことみが合流するのを待つことにした


*


みどり「ブラウンくんは好きな食べ物あるの?」

ブラウン「…そうだな…………なんでも好きだが………母さんが作った料理が好きだった………」

雪「好き…“だった”……?」

ブラウン「あぁ………もう会えないんだ…………」


さっきまでの和やかな空気が一気に緊張感に包まれる


みどり「…そっか……色々あったんだね………元気がないのもそれが関係してるのかな?」

ブラウン「…元気がない…か………そう見えるのか……」

みどり「そりゃそーよ だって、いつも暗い顔してるんだもん…ねぇ…?」

雪「はい……いつも辛そうで……」

ブラウン「…………………」


飲み物のグラスに視線を落とすブラウン


ブラウン「…もう疲れてるのかもしれない……」

雪「……………………」


カラン…と、氷が動く音が響く

雪(………家族のことで悩んでるのかなぁ…………それならやっぱり…わたしと同じだ……)


みどり「……ねぇ、何かあたし達に話せることない? 家族のことでも、自分のことでも……話したら意外とスッキリするし…同じチームで働いてるんだから、何でも聞くよ?」

ブラウン「…話せることか………………無いな……」

みどり「ん~んんっ…じゃあ逆に雪ちゃんは?」

雪「えぇっ!?わたしですか!?う~んと……えーっと……わたしも…家族のことはちょっと………」

みどり「(おっとぉ??)…んじゃあ、別の話題にしよう!せっかくの楽しー食事会なんだからさ!…えーっと、ブラウンくんの趣味は?普段家で何してるの?」

ブラウン「家で………寝てるな……」

みどり「そーいやケータイも持ってないんだったよね……テレビ見たりとかは?」

ブラウン「…ニュースを見たりするくらいだな……」

みどり「(ふ…ふくらまね~ も~この子に対して何を話したらいいんだろ………)……………雪ちゃんは?」

雪「へぇっ!?」

みどり「何か趣味とかある?」

雪「え…えぇっと………う~んと………あっ…料理……」

みどり「料理!?料理が趣味!?いーじゃん!」

雪「あっでも…そんな大層なものじゃ……お父さんの為に料理してるくらいで……」

みどり「へ~家族思いなんだね~ 得意料理は?」

雪「えぇと………卵焼き……とか?ですかね…」

みどり「へー!卵焼きか~ ちなみに雪ちゃんの卵焼きは甘いの?しょっぱいの?」

雪「わたしはいつもお塩を入れてしょっぱくしますっ!」

みどり「わかる~ 実はあたしもしょっぱい派~ ご飯に合うもんね!」

雪「はいっ!…ブラウンさんはどっち派ですか?」

ブラウン「…オレは……甘い派だったな…」

雪「あっ、そうなんですね…」

みどり「なんだ、甘い派か~ 甘いとご飯のおかずにならなくない?」

ブラウン「…卵焼きはそのまま食べる……甘い方がおいしい…です…」

みどり「ふ~ん……」


その取って付けたような敬語にふと疑問がよぎるみどり


みどり「……そういえば、聞いたことなかったけど…ブラウンくんって外国人なの?」

ブラウン「あぁ……ずっと海外に居た…だから敬語…っていうのも慣れない……です…」

みどり「敬語って難しいもんね~…まっ、あたしは気にしないからいいけど! にしても海外か~…じゃあ学校も向こうだったんでしょ?友達と離れ離れになっちゃって寂しくない?」

ブラウン「……寂しくない。オレには友達なんていないし、学校にも行っていないからな…」

雪・みどり「「!!」」

みどり「………それって…どういうこと?」


二人の視線がブラウンに集中する


ブラウン「……オレは8歳の頃から研究施設に入れられて、実験に協力させられていた…。だからまともな勉強なんてしてないし、当然そんなところで友達なんてできなかった……」

雪「そ……そんな………」

みどり「…………………」

ブラウン「…………………」


衝撃の告白に静まり返る一同


ことみ「お待たせ~!ごめんなさい、遅くなっちゃって……ってあれ?なんか静かじゃない…?」

みどり「あー!ことみん、お疲れ~!待ってたよ~」

雪「お、お疲れ様ですっ…!」

ことみ「うん…何かあった…?もしかしてタイミング悪かった……?」

みどり「ううん!そんなことないってば~ 丁度、会話の区切りだっただけだよ~…ねっ、雪ちゃん?」

雪「は…はいっ!そ、そうです…たまたま話題がなくなっちゃって……あはは……」

ことみ「そう?ならいいけど……あっ、話題が無いなら金一くんからブラウンくんへの質問を訊いちゃおっかな」

みどり「おっ!いいね~ なになに~?」

ことみ「ブラウンくんの好きな食べ物が知りたいんだって。今度、お弁当作ってきたいって言ってたわよ」

雪「あっ…」

みどり「ん~!その質問はまた今度にしない???」


ブラウンを隠すようにことみの前に割り込むみどり


ことみ「え…なんでよ……私もちょっと聞いてみたいんだけど…」

みどり「その質問はもうしたっていうか~なんかもっと他の話題振ってよ~!」


コトミに近づき、ゆさゆさと肩をゆするみどり


みどり(ちょっと!ことみん、この子の事情のこと知ってるの!?会話に地雷が多すぎるんだけどっ!!)

ことみ(…!!……そう…聞いたのね……そりゃあ少しは知ってるけど……)

みどり「(とにかく!今は他の話題にしよう!せっかくの食事会なんだから…!)…好きな食べ物なんてありきたりすぎるでしょ?つまんない~」

ことみ「え、えぇ……んー…そうねぇ……なら、定番の恋バナなんてどう?」

みどり「おぉ!?」

ことみ「好きなタイプとか…!」

みどり・雪「「お~!!」」

ブラウン「…?」


今度は三人の視線が集中する


ブラウン「…え……なんだ……?」

ことみ「好きなタイプとかないの……!?」

みどり「女の子のタイプ!年上とか年下とか…!」

ブラウン「えっ…う~ん…………」

ことみ「髪は長い方がいい?短い方がいい?」

みどり「性格は?大人しい子がいい?それとも活発な子?」

ブラウン「う~ん……………」

雪「あっ、ぶ、ブラウンさんが困ってますよぉ…!」

みどり「あははっ、ごめんごめん」

ことみ「…やっぱり、恋愛にもあんまり興味無いかしら」

みどり(やっぱりって何よ!)

ことみ(あっ!しまった!)

ブラウン「うーん……考えたこともなかった……」

みどり「…まぁ、ブラウンくんもまだまだ若いしそんなもんかもね~…(もー無理だ。ことみん、あの二人は聞き役に回してあたし達で盛り上げるよ!)」

ことみ「…!(えぇ…わかったわ…)」


アイコンタクトを取る二人


みどり「あたしも似たようなもんだし~ 興味無いととことん考えないからね~」

ことみ「え?みどりちゃん、恋愛に興味ないの…?」

みどり「うん」

雪・ことみ「えぇ~!!」

みどり「え~そんなに驚くこと~?」

雪「みどりさん、すごくモテそうなのに…」

みどり「そう?えへへ~ありがと♪」

ことみ「なんでそうなっちゃったの?元から~?(いい話題だわ、みどりちゃん!このまま広げちゃうわよ…!)」

みどり「(でしょ♪ガンガン質問しちゃって~)ん~…結構元からかも。昔っから何かに縛られるのが好きじゃないんだよね~」

ことみ「え~でも、それは相手が束縛するタイプだったからそう思っちゃっただけなんじゃないの~?ねぇ、相手が寛大な人だったら上手くいくと思わない~?」

雪「そうですねっ! みどりさんを自由にしてくれる人ならっ!」

みどり「ん~ でも、相手がいると色んな人間関係が増えちゃうじゃん? 昔から噂されたり、相手のこと友達に話したりするのが好きじゃなかったんだよね~ めんどくさいし…」

ことみ「あーなるほどねぇ……そのレベルで不自由さを感じちゃうのね~」

みどり「そーなの…どうしたらいいと思う?やっぱり一生独身がいいかな?」

ブラウン「えっ、うーん………そうだな………」


顎に手を当てて考えるブラウン。ふと視線を戻すとみどりは両手で頬杖をついて笑顔で待っていた


ブラウン「…誰かに…いや、何かに縛られてるみどり…ちゃんはみどりちゃんらしくない。…と思う」

みどり「やっぱり~?ブラウンくんもそう思うよね~」

ことみ「まぁ、今のままが一番みどりちゃんらしいわよね」

みどり「あたしにはニンニンがいるだけで充分なの♪」

ことみ・雪「ニンニン?」

みどり「あたしのバイクちゃんの名前♪」

雪「へ~可愛いですねっ!」

みどり「まっ、あたしの話はこんなもんかな!本命は~やっぱことみんでしょ~ ことみんの恋バナ聞きたいな~」

雪「おー」

ことみ「ふふふ…聞いちゃう?私の話~」

雪(あっ…)

みどり(おや……?これはもしかして……)

ことみ「私、学生の時から恋バナ大好きで~友達ともずっと話してたくらいなの~!でも、仕事始めてからはぜんっぜん話す機会なかったからもう話したくてたまらなかったのよ~! だってねぇ、うちにいる女の子だって他に朱祢ちゃんと桃華ちゃんと藍さんくらいでしょ~?朱祢ちゃんも男っ気無いし…桃華ちゃんはロボットだし…あっでもロボットだからって恋愛できないわけじゃないと思うのよね~。でもあの子は情緒がまだ発展途上だからもう少し見守ってあげないとねっ!あーんでもでも~機械の体に恋心が芽生える…なんてロマンチックよね~!もし、桃華ちゃんがそういうことになりそうだったらすぐに私に教えてね!絶対おもしろいわ~……えーっと何の話だったっけ?あぁそうそう、うちの女の子たちの話だったわね。藍さんは気品があって大人な感じだけどー…あの他を寄せ付けない感じは恋愛面においてマイナスだと思うのよね~もう少し雰囲気を柔らかくして、他人が入り込めるような余地があった方がいいと思わない?」


早口で喋るコトミに圧倒される


みどり「う、うん」

雪「はい…その通りだと思います」

ことみ「そうよね~ あ~藍さんとも恋バナしてみたいな~…あっ、あとね…」

みどり(雪ちゃんごめん……これが飲み会なんだ……)

雪(だ、大丈夫ですっ!楽しそうに話してることみさんを見てるのが楽しいですから…!)



この後、延々とことみが喋るターンが続いたのだった…


*


店員「失礼しまーす。ラストオーダーの時間となりますが…」

ことみ「えっ!!もうそんな時間!?」

みどり「うん…いっぱい話したからね」

ことみ「ごめんなさい…そろそろ出ましょうか」



*


お会計をするコトミ


みどり「ことみん、ありがと~!そんなつもりで呼んだわけじゃないのに奢ってもらっちゃって~」

ことみ「いいのよ…久しぶりに楽しい時間を過ごせたわ…また、やりましょうね!」

みどり「うん!その時は他のメンバーも呼んじゃお~」

ことみ「えぇ」

みどり「……ほら、ブラウンくんもお礼言ってきなっ!遅れて来たのに奢ってくれるありがたい社長さんに!」

ブラウン「あぁ……………ことみさん…ご馳走様でした…」

ことみ「うん、今日は楽しめた?」

ブラウン「はい………」


ことみとブラウンが話している隙に、そっと雪に近づくみどり


みどり「ことみん、あんなに喋ると思わなかったけど呼んでおいて良かったね。…あたしだけだと間が持たなかったかも…」

雪「…今日はとっても楽しかったです…!…ことみさんとも…ブラウンさんともいっぱい話せましたし…!」

みどり「うん……なら、よかった♪」

雪「…みどりさん……」

みどり「ん?」

雪「今日はたくさん助けてくれてありがとうございましたっ!」

みどり「…!」


満面の笑みを見せる雪


みどり「…またやろーね!」

雪「はいっ!」



*


店員「ありやとございやした~」


店を出る一行


みどり「ふぅ…食べた食べた♪」

雪「とても美味しかったです!ごちそうさまでした!」

ことみ「えぇ、楽しんでもらえたならよかったわ」

ブラウン「………」

みどり「…ブラウンくんはどうだった?」

ブラウン「…おいしかったです。」

みどり「何が一番おいしかった?」

ブラウン「…やきおにぎり…」

雪「焼きおにぎり…!おいしかったですよね!」

みどり「……一緒にごはん食べると楽しいでしょ?」

ブラウン「…そう…ですね……」


そう言って星空を見上げるブラウン


雪「少しは、気が楽になりましたかね…?」

ブラウン「…!……気が楽に……そうだな…こんな気分になったのはいつぶりだったか…」

雪「…!!(今……)」

みどり「…まだ、仕事に慣れなくて大変かもしれないけど慣れてきたら絶対楽しくなるから!またこれからも頑張ってこーね!」

ことみ「えぇ。それに、何かあったらいつでも頼っていいんだからね」

雪「そ、そうです!楽しいこともありますから!元気出してください!」

ブラウン「…皆、ありがとう。…楽しい時間でした。それではオレはこの辺で…」

ことみ「えっ?アパートこっちでしょ?」

ブラウン「少し、遠回りして帰る」

ことみ「そう…気を付けてね」


夜風に当たりながら歩き去るブラウン


ことみ「…………さっ、私たちも帰りましょ!雪ちゃんは送って行くわ。遅くまで付き合わせちゃったし……って雪ちゃん?」

雪「はっ!はい!」

みどり「何かあった?」

雪「いえっ…その……ブラウンさん…最後少し笑ってたなって……」


ブラウンの微笑みを思い出し、雪も思わず笑顔になる


みどり「えっ!いつ!?気づかなかった…!」

ことみ「…おや~?おやおや~?」

雪「え…?」

みどり「どうしたの、ことみん?」


みどりの肩に手を回し、小声で話す


ことみ「ブラウンくんの笑顔を思い出してる雪ちゃんの顔…めちゃめちゃ乙女だったよ~気づいてないみたいだけど」

みどり「えぇ~!?そ、それってぇ~~~?」

ことみ「これは面白いことになりそうね…」

雪「あのっ!お二人とも何を話してるんですか?」

ことみ「いや~」

みどり「別に~(口笛を吹きながら)」


ニヤニヤしながら振り返る二人


雪「(あの感じ…!ハクとミカさんと同じ…!)あ、あ~!その顔……もしかし…わたしをからかおうとしてませんかぁ…!?」

みどり「…バレた……逃げるよことみん!」

ことみ「えっ!?えぇー!?」


笑って、走って、からかい合って…

そんな時間が、これから続いていく気がした。


雪「に、逃がしませんから~!」

ことみ「待ってみどりちゃっ…食後にそんな走れないんですけどー!」




夜空には三日月にも満たない、かすかな月が浮かんでいた…


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