第四話「ドスグロイ正義」(ゴールド1)
第四話 「ドスグロイ正義」
(主人公 ゴールド1)
「正義とは何か…
ヒーローとはどうあるべきか……」
「そんなこと、オレに考える資格はない…
オレはもうとっくに人としての道を踏み外してしまった…」
「だが…それでもオレはこの道を進み続ける。
正しいと思っているからじゃない。
この役割は、なくてはならないからだ……」
*
ザシュッ!!!! ザシュッ!!!!
血が滴り落ちる太刀を握りしめるゴールドローズ
「……また……人を殺した………」
ザシュッ!!!! ザシュッ!!!!
「人……?…………あぁ…人か………邪悪な動物に見えていた…………」
ザシュッ!!!! ザシュッ!!!!
「どうしようもない悪人を、オレは殺し続けている……」
ザシュッ!!!! ザシュッ!!!!
「毎夜…毎夜……」
*
男「助けてくれぇ!もう二度とあんなことはしねぇ!だから見逃してくれぇ!」
ゴールドローズを前に、後ずさりする男
ゴールドローズ「……オレには子どもの頃から、一つの特技があった……」
男「…?」
ゴールド「オレには人の心の流れが分かる……表情、声色、身振り、心情などは時間と共に流れていく。…しかし、人間の心には簡単に流れない芯のようなものがある…。それを感じる取ると言葉の真偽がはっきりとわかるんだ……この力を手に入れてからは更にはっきりとな………」
男「な……なにを言ってやがんだ……」
ゴールド「お前は二度と…悪に染まらないと断言できるか??」
男「も、もちろんだ!だから、ここは見逃してく…」
ザシュッ!!!!
「…あぁ…また嘘だ……
この男の芯は悪に染まっている。
もう二度と、善の道へなびくことはない……」
サァーッ……
風に吹かれ、変身が解かれる
ブラウン「うっ………おぇっ!」
死体の隅でゲロを吐くブラウン
ブラウン「はぁ……はぁ…………オレは……いつまでこんなことを………………くっ……」
壁についた手をグッと握る
ブラウン「………止まれない………止まる資格だって…オレにはない……………この道へ踏み出すと決めたあの日から…オレは………………」
ふらふらとした足取りで夜の街へ消えていく……
*
ブラウン「……以上が引き継ぎ報告です。あとはお願いします。」
みどり「りょーかい!お疲れ様♪」
雪「わかりましたっ…!お、お疲れ様でした…!」
ブラウンは日勤の二人に昨夜の業務報告をし、帰る準備をした。
雪「ブラウンさん!」
ブラウン「?」
雪「あの…少し、疲れてませんか?」
ブラウン「疲れてない…」
雪「そっ、そうですか………」
ぶわぁっ…
ブラウンは風と共に消えた
みどり「不愛想だよねぇ~せっかく雪ちゃんが心配してるのに。」
雪「ブラウンさん大丈夫でしょうか……なんだか…とても辛そうでした……」
みどり「え?そうかなぁ?いつも通りな感じしたけど…」
ことみ「うーん……ちょっと心配ね……」
雪「ことみさんも、そう思いますよねっ?」
ことみ「うん……あの子…ちゃんと食べてるのかしら……」
みどり「そう言えば、ことみんの隣に住んでるんだっけ?ブラウンくん」
ことみ「そ…住む場所に困ってたから、大家さんに相談してあげたのよ…。…実は一昨日、おかずを分けてあげようかと思って訪ねたんだけど…どこかに出かけてたみたい」
みどり「外食でもしてるんじゃない?一人暮らしだと自炊するの大変だからね~」
ことみ「う~ん…そうでも無い気がするのよねぇ……」
雪「どうしてですか?」
ことみ「……一度、丁度ブラウンくんが帰ってきたタイミングに出くわした時があったんだけど……」
*
ことみ「あっ、ブラウンくん!」
ブラウン「!…どうも……」
ことみ「あっ!」
バタン!
*
ことみ「って、取り付く島もないし……しかもその時、物凄くやつれてたのよね……何か食べてきたって感じじゃなかったわ…」
雪「……心配ですね……」
みどり「う~ん…これは大人として一肌脱いでやらないとかにゃー?」
*
夜道を歩く一人の男
その背後から声をかけるゴールドローズ
ゴールド「おい…」
「…あ?」
ゴールド「そんな物を持って何をするつもりだ?」
「……??」
ゴールド「人を殺すつもりか?」
その男のポケットの中にはナイフが入っていた
「………」
ゴールド「そうか…誰を殺すつもりだ?」
「…………あ~……ま、お前でもいいわ」
ポケットからナイフを取り出し、突然襲い掛かる男
ザンッ…!
「ぐあああああああ!?」
男の前腕を斬り落とす
「な…なんだよテメェは…!?」
ゴールド「……死ぬか、改心するか……お前ならどうする…?」
「な…なにわけわかんねぇこと言ってんだ……!」
ゴールド(…やはり……流れないか………)
ザシュッ!!!!
*
この邪悪が被害を出さなければ、罪にはならない。
そんな不完全な法で、一体何が護れるというのか……
行動に移す前に邪悪だと分かるのなら…
死を目前にしても改心の余地が無いのなら…!
殺すしかない!!
見えない被害者を救うためには、これしかないんだッ!!!!
ブラウン「っ!!…はぁ…………………………何を思い出している………………オレはまだ……自分を正当化したいのか……………………」
*
男「むふぇふぇふぇ…。明日、れいちゃんに告白してやるぅ!そして……」
パリィイン!!!
ガラスを割って、男の部屋に入るゴールドローズ
ゴールド「告白するのにナイフが必要なのか?」
男「な、な、な、なんだお前は!?け、警察よぶ…ガッ!」
太刀が男の口に入る
ゴールド「この女は諦めろ。お前がやろうとしていることは悪だ。」
男「ん………がはっ!…ふ、ふざけんな!れいちゃんとぼくは結ばれる運命なんだ!お前みたいなやつに邪魔されてたまるか!」
ゴールド(………………)
ズシャァア!!
*
はぁ……………っ………うぅ……………
オレは間違っていない……
オレは……誰かを救っているんだ…………
誰からも認められていないだけで……誰からも知られていないだけで……
オレは……オレは正しいことをしているはずなんだ………
分かってる……正当化する資格なんてないことを………でも………正しいと思えなきゃ……やっていられない……………
オレは……………オレは…………………
「うぅっ…………う………………」
誰か……誰かオレを……………
*
ことみ「…なんのために力を使うの…?」
………それは…護るため………
許せない悪から、善人を護るためだ。
その為ならオレはどんなことだってする。
その為にこの力がある。
ことみ「君は誰かを護るために力が使える人だよ!誰かを護りたいという想いが間違いなわけないよ!!」
ブラウンの手を優しく包み込むことみの姿を思い出す…
*
静まり返る夜の街を見下ろすように立ち上がるブラウン。
拭った涙が、冷たく吹き抜ける風に飛ばされる…
そうだ………オレのことを認めてくれる人が一人でもいるのなら…オレはそれだけで……救われる…………
ブラウン「……すぅー…………ふぅーー…………………」
チャキ……
太刀を抜くと血が赤黒く固まっていた
ブラウン「……これが……オレの目指したヒーロー………………穢く…薄汚れた正義だ………」
チャキン!
太刀を鞘にしまう
ブラウン「……ふぅー……………思い……出すんだ……………あの時の怒りを……覚悟を…………っ!」
ゆっくりと瞼を開けると何かに気づいた
風に乗せられて届く、子どもの泣き叫ぶ声…
空を漂う邪悪な気……
ブラウン「……………………」
空を睨みつけるブラウン。
ぶわぁっ……!
そして、風と共に姿を消す…
*
「んーーー!!!!!!!んーーーー!!!!!!」
口を塞がれた子どもが壁に縛り付けられ、もがいている
目の前にいる男は怯えた表情の子どもを見ながらクチャクチャと食事を楽しんでいた
「なぁ坊や……人間の体の中で一番うまい所はどこか分かるかい?」
「んーーー!!!!!んーーー!!!」
必死に首を振る子ども
「腿なんかは食べ応えがあってうまいんだが…一番うまいのは腕だ……」
そう言いながら子どもの腕と思われる物にかじりつく
ブラウン「そんなにうまいのか」
「!!??」
男の背後に現れるブラウン
「……なんだお前……どこから入りやがった……」
男はさっと解体用の包丁を手に取り、ブラウンの腹部に突き刺す
バタッ!と、血を流し、仰向けに倒れるブラウン
「……ふっ………大人の肉は硬くてまずいが……まぁこいつくらいなら食べれないことはないな…」
「んんんん………!!!!」
「もうじき、坊やも同じようになる……楽しみに待っておくんだね………それとも、その前に恐怖で死んでしまうかな…?それはそれで見ものだがね…はっはっは」
「…………!!!!」
ゴールドローズ「…………………」
ゆらりと直立のまま体が起き上がる
そしてそのままゴールドローズへと変身し、男の背後に立つ
「っ!!!??なっ!!!!なんだおまっ…ンガッ!!!????」
ゴールド「…………………」
太刀を口の中に突っ込むゴールドローズ
…コイツのように躊躇なく人を殺せるようになったら、オレも楽になれるのにな………
ゴールド「てめーの最後の食事はコイツだ……味の感想は地獄で聞かせてくれ」
ズシャァッ!!!
ゴールド「…………………………」
…せめて最期は痛みも苦しみも無く、安らかに……
それがオレにできるせめてものこと………
「んー!んー!」
子どもの拘束を解いてあげるゴールド
「はぁ………あ……………あぁ……………」
震える子ども
ゴールド(…そうだろうな……オレもコイツと同類だ。怖いに決まってるよな………)
くるりと背を向け、太刀を納刀する
ゴールド「もうじき、警察が来る………あとはその人の世話になるんだな……」
と言い残し、立ち去ろうとするゴールド
しかし、その鎧を掴まれる
ゴールド「ん……」
「あ…………あのっ………………」
ゴールド「……どうした…?」
「助けてくれて……あ…ありがとう……」
子どもの純真な眼差しに、言葉が詰まるブラウン
ゴールド「……………あぁ…………こんな助け方しかできなかったがな………………オレといると怖いだろう……その手を離してくれ、どこか行く…。」
「あっ………え……………一緒にいて……………」
ゴールド「………分かった……」
*
「すぅ………すぅ…………」
ブラウン「……………………」
ブラウンの膝枕で寝てしまった子ども
ブラウン(………ありがとう、か…………………そんな言葉を貰う資格なんて無い……そんなこと分かってるが……刺されるよりもずっと………救われる一言だったな…………)
刺されたはずのお腹をさするが、不滅の肉体に傷はもう残っていない
ブラウン(………今回だけは、受け取っておこう……)
ウーッ!!
サイレンの音が近づいてくる
「ん…?…あれ!?お兄さん!?どこ行ったの!?」
警察が子どもを保護したのを見守り、そっと闇に消えるブラウン…
*
「昨夜未明、市内で発見された遺体について、警察は一連の子ども連続失踪事件の犯人であると断定しました。
現場に残された証拠やこれまでに発見された複数の遺体の状況から、同一人物による誘拐・殺害が繰り返されていたとみられています。
また、保護された子どもの証言により、遺体で発見された人物が犯人であることが確認されました……」
*
「ねぇ、ニュース見た?」
「あ~…子どもを攫ってたの、人間だったってやつでしょ?」
「そうそう!…しかも犯人、誰かに殺されたって…」
「それこそモンスターにやられたんじゃないの?」
「それが違うらしいのよ…鋭利な刃物でスパッとやられたらしいわ。モンスターの仕業じゃ、そうはならないらしいのよ」
「ふ~ん…まぁ、悪いけどそんな犯人、誰に殺されたって自業自得としか思えないわね」
「そうねぇ……それに比べて子どもの親は可哀そうよ……モンスターのせいだと思ってた方がまだ諦めもついたろうに…」
*
ビュォォオオオ…!
夜風に吹かれるブラウン。そこに何者かの声が聞こえる
何者か「…今日も何も食べないのか…?」
ブラウン「あぁ……オレに食事は必要ない……」
ぶわぁ…!
風に包まれ、黄金の鎧を身に纏う
何者か「今夜も行くのか…」
ゴールド「あぁ…当然だ……止まることなんて…出来ないからな…………」
ザシュッ!!!
そのヒーローは、今宵もどこかで悪を斬る…
たとえ心が削れても…
「…それでしか救われない人も…沢山いるのだから…………」




