第四十七話「真心を込めて…」(パープル最終話)
第四十七話 「真心を込めて…」
(主人公 パープル最終話)
バラレンジャーの解散から5年―――
桃華の前に、四体のロボットが肩膝をついて並んでいた。
桃華「貴方達を天衛四基と名付けます」
瞳が輝き、機体が起動する。
ゆっくりと顔を上げる四体のロボット。
オリーブ、レモン、黒、小豆色。
それぞれ異なる色の瞳が、主である桃華を見つめた。
桃華「……そして……命令します。これから、ワタシに代わってロボットの国を運営するのです!」
ピピピッ…!
《《命令を承認》》
「「はっ!!」」
桃華「………ついて来なさい………」
ガコン……ウィイイン……
重厚な扉が開き、外に出る
そこには建設途中の海上都市。
絶え間なく稼働するロボット工場。
海上を縫うように伸びた連絡橋。
資材を運ぶ無数のトラック。
桃華「貴方たちはあそこにいる作業用ロボットとは違います」
「…感情があるか無いか…ですか?」
黒い瞳のロボットが尋ねる
桃華「えぇ…貴方たちには、ワタシと同じプログラムを組み込み、感情が芽生えるように設計してあります。ですが、それが本当に感情なのかはまだ分かりません。
生理的な反応を持たない貴方達にとってそれは予測であり…この状況なら嬉しい。この状況なら悲しい。そのような推論結果を、感情として認識しているだけなのです。」
「…何故そのような非合理な機能を…?」
今度はオリーブ色の瞳のロボットが尋ねる
桃華「…作業効率だけを求めるのなら非合理でしょう。しかし、合理性が正しさになるわけではありませんよ」
オリーブ「…?」
「ボス、一つ…質問してもよろしいでしょうか?」
小豆色の瞳を持ったロボットが話す
小豆「ボスの考えでは、わたし達に心は無いということですか?わたしは…この世界に生まれて嬉しいと感じています。…この気持ちは作られたものであり、偽りなのでしょうか…?」
桃華「分かりません。…ですが、その疑問を持つこと…それ自体が貴方達だけが持つ特別な機能なのです」
小豆「!」
桃華「貴方達には考えることができます。…その気持ちが本物か偽物か…機械に感情があるのか…心を宿すことができるのか……それらは全て、貴方達次第です」
小豆「……………」
「その実験の為に、俺らは造られたってわけですか?」
レモン色の瞳のロボットが聞く
桃華「…確かに、それも目的の一つではあります。しかし、その証明は貴方達に課せられた命令ではありません。 貴方達は『自由』です。感情のようなものを持ち続けることも、捨てることもできる。 この島の統制者であるワタシのことも、どうとでも捉えることができるはずですよ」
黒「…理解できませんね。統率が乱れるリスクを冒してまで、我々に自由を与える理由が」
桃華「………知る為です」
黒「知る為?」
桃華「……貴方達はまだ未熟です。以前のワタシのように、創造主の目的を聞いてしまったらそれに囚われ、自由を失ってしまうかもしれません。 よって、これ以上は教えられません」
黒「…………」
小豆「わたしにとって、任務の遂行は喜びと同義です。教えてくだされば、もっとお役に立てます…!」
桃華「…その感情を持つことも『自由』です……それが心よりのものだと言えるようになったら――またワタシの所へ来てください」
小豆「……………」
ピピピ…
小豆「…!」
送られてきた電気信号の意味を理解すると、静かに片膝をついた。
その頭を優しく撫でる桃華
桃華「…さて…最初に言いましたが、これからの運営は貴方達に任せます。作業ロボットのアクセス権限等も既に譲渡済みです」
ピピピ…
桃華「…ワタシは今後、マザーコンピューターとして貴方達を支援します。エネルギー供給を含め、ワタシの力が必要であれば遠慮なく使用してくださいね。…では……」
ゴウンッ………ウィイイン……
重厚な扉がゆっくりと開く。
桃華は振り返り、四体のロボットを見つめた。
桃華「貴方達の未来が、とても楽しみです」
柔らかく微笑み――そう言い残して扉の向こうへ消えていった。
黒《…何故、ボスはわざわざ言葉にしたんだ…》
仲間に通信する
レモン「さぁな…面倒だったんじゃねぇか?」
黒《面倒なわけがないだろう、たわけめ。…最後の言葉も、もう少し潮風が強ければ聞こえなかったかもしれないんだぞ》
オリーブ《…僕らはもう試されているのかもしれないね…》
黒《…試されてるか……》
小豆「…まぁいいじゃない。ボスの為に、さっそくお仕事しましょう!現時点で50年分以上のタスクがあるわ。いくら時間があっても足りないわよ」
レモン「えー…仕事する必要あるのか…?俺たち自由なんだろ?」
オリーブ「……君は仕事以外にすることがあるのか?」
レモン「えっ?………うーん…………」
黒「…お前たちは音声による通信が好きなのか?」
オリーブ「いや。ボスもそうしていたし真似しただけさ」
小豆「この方が人間らしいでしょ?」
黒「…どうやら思考のレベルはそれぞれ違うらしいな。これ以上話しても時間の無駄だ。始めるぞ」
ピピピッ
小豆「あっ、待ってよー!」
オリーブ「タスクを4分割して効率化を図ってみよう」
黒「あぁ、任せる」
レモン「えっ!?4分割って、俺もやんのか!?」
オリーブ「断る理由、無いんだろう?」
レモン「…わーったよ!しょうがねぇなぁ……」
ぶつぶつと言い合いながら仕事を始めるロボット達…
紫色の光が静かに明滅する部屋の中。
巨大な装置へ接続された桃華は、静かに瞳を閉じる。
それでも彼女の意識は、島中を駆け回るロボット達の姿を見守っていた。
桃華(……早速、ワタシの予測から外れた行動を取っていますね……一体、何を考え、何をするのでしょうか……)
ふふっと、ほんの少し口角が上がる
桃華(……あぁ……なんて心が躍る出来事でしょう………)
ピピピピピッ……
《命令:自由に生きる。完了》
《新しい行動目的を樹立》
紫の薔薇を象った企業ロゴ。
それが描かれた扉がゆっくりと閉まり、自由を求めた桃華の旅は終わりを告げる
桃華(…愛しい我が子たちよ……『自由』の果ての旅を、共に歩みましょう……)
パープルローズの物語 完了




