表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
46/52

第四十五話「流星会会長、星乃藍様よ!!」(グリーン最終話)

第四十五話 「流星会会長、星乃藍様よ!!」

(主人公 グリーン最終話)


バラレンジャーの解散から三年後――


無名の丘に立ち、藍は静かに風を受けていた。


藍(…あれから忙しくて、なかなか来られなかったけれど……)


眼下に広がる街並みを見下ろす。

髪を揺らす風が心地よい。


藍「…いい眺めね……」


思わず、そんな言葉が口をついて出る。


藍「……………………」


そっと瞼を閉じる。

すると脳裏に浮かんできたのは、あの日――麗とぶつかり合った時の記憶だった。


藍(……懐かしい記憶………あの時…わたくしは…………)



麗「…藍さんは……どちらの道を選ぶんですか…?」

藍「え……?」

麗「強者としての藍さんか……

弱い人にも、手を差し伸べられる優しい藍さんか………

どちらが…『ヒーロー』としての藍さんなんですか…?」

藍「…!!」


あの言葉を聞いてからも、考えた……

わたくしは何故、“ヒーローをやっているのか”と……


藍「………………」


一狼が遠くで見守る中、じっと考え続ける



…でも、どれだけ考えても答えは変わらなかった。

結局、わたくしは…力を持つ者の責任としてヒーローになった…

ただの義務感……

…星乃財閥の娘としての義務感……

女優としての義務感……

そんなものから逃げたくてヒーローになってみようと思ったのに…何も…変われなかったわ……


藍(……あの時のわたくしにあったのは、強者としての責任だけ……そのはずだったのに……)


麗の顔が脳裏をよぎる


藍(…あの子のせいで…覚悟も鈍ってしまった………気づかなければ…強者のままでいられたのに……)



バラレンジャー全員の顔が思い浮かぶ


……もう…あの人たちに刃を向けることはできない……………でも………


ぎゅっと腕を組みながら服を掴む


…強者としての自分を捨てることもできない………

もしここでやめてしまったら……

今まで切り捨ててしまった弱者の想いは……

わたくしが蹴散らしてしまった敗者の夢は……

誰が背負うというの?……散々、強者であることに甘えておいて……今更全てを投げ捨てるなんて……そんなの……報われないじゃない………


目を開き、車へと向かう


一狼「…!!」

藍「……麗」

麗「! はい…!」

藍「戻るわよ………銀河に言いたいことができたわ……」

麗「はっ、はい!」

藍「…一狼、事務所へ戻るわ。運転しなさい」

一狼「…かしこまりました……」


車内で肘をつき、外を眺める藍


藍(……わたくしには…強者としての生き方を否定できない………誰か…わたくしを否定して…………わたくしを……『ヒーロー』にさせて…………)




昔を懐かしみ、

ぱち…

と目を開け、ふっと笑う


藍(……結局、うまいこと乗せられてヒーローを続けさせられてしまいましたわね………)


銀河「…それでもいい……絶対、後悔させませんから…!!」


藍(……えぇ、そうね………やっぱり、貴方のやり方は少し気に入りませんけれど…『ヒーロー』という在り方を知ることができて…本当によかったですわ………

…弱い者を助けたいという、強者にしか許されない傲慢な在り方……

『ヒーロー』は、それを美化してくれる……

強者としてではなく…『ヒーロー』として生きていける………

『誇り』を持って、生きていける………)


自信に満ちた表情で、振り返る。

すると――


一狼「お嬢」

藍「…!」

一狼「お迎えに上がりました」

藍「あら…気が利くじゃない」

一狼「お嬢が何も言わずに出かけるなら、ここかと思いましてね」

藍「……わたくしの考え事が終わるまで、待っていたのかしら?」

一狼「いえ…ついさっき来たところです…」

藍「……次郎もだったけど、その見透かしたような感じ…気に入らないわね」

一狼「ふっ…お嬢が分かりやすいだけじゃないですか?」

藍「………………」


なんとも言えない表情


藍「…まぁいいわ…さっさと行くわよ。慰問の時間に遅れるわ」

一狼「はい」




藍が立ち上げた児童養護施設――『星の家』へ向かう車内。

いつものように静かな時間が流れていた。

窓の外を眺める藍。

ハンドルを握る一狼。


一狼(…変わったな…お嬢は………)


バックミラー越しに、その横顔を見る。


一狼(…あれほど、遠くに感じていたお嬢が…今はとても身近に感じる………

…きっと…心を許せる友人ができて、少しずつ色んな重圧から、解放されていってるんだろうな……)




「みんなー!藍様がいらっしゃったわよ~!」


施設の中へ入ると、子どもたちが一斉に駆け寄ってきた。


藍「皆様ごきげんよう、元気にしていたかしら?」

「わぁー!藍さまだー!」 「藍さま~!!」

藍「ふふっ…元気だったみたいね」


足元へ抱きついてくる子どもたちの頭を、一人ひとり優しく撫でる。


「見てみて!!テストで100点とったんだよ!」

藍「あら、すごいじゃない…!よく頑張ったわね」

「あー!わたしも!わたしもこの前、100点とったもん!」

「藍さま見て!おれ、けん玉出来るようになったんだよ!」

藍「そうなの?ぜひ、見せてちょうだい」

「ねぇ!この本読んで!」 「あっ!ずるい!今日はあたしが先だよ!」

藍「はいはい…皆、順番ね」


子どもたちに囲まれる藍を、一狼は少し離れた場所から見守っていた。


一狼(……穏やかな顔だな…………)


自然と口元が緩む。

ここではもう、護衛として神経を尖らせる必要もない。


一狼「………………」


強きをくじき弱きを助ける……

まさに、お嬢にぴったりなヒーロー像だ……


そんな藍を見ていると、ふと、あの時の記憶が蘇る…



藍「ねぇ!この子を助けてあげてよ! ほっといたら死んじゃうよ!」

父「……私達には関係の無いことだ…。ほら、行こう。商談の時間に遅れてしまう」

藍「…いや!! 助けて!!かわいそうだよ!!」

「……………」


朦朧とする意識の中、俺はただお嬢の姿をぼんやりと眺めることしかできなかった


父「どうしたんだ急に……いいか?今、私がその子に食べ物を恵んでやったとしよう…その時はいいかもしれないが、この子にお金を稼ぐ能力はない。またすぐに飢えて死んでしまうだけだよ」

藍「…………」

父「下手に希望を与える方がよっぽど残酷だ……分かるね?」

藍「…いやぁあああっ!じゃあ飼う!! お家に連れて帰る!!」

父「…はぁ…それは出来ないよ……」

藍「できるでしょ!! パパ、お金あるでしょ!!」

父「…………」

藍「わたくしのお洋服の代わりにご飯あげさせればいいでしょ!」

父「……………」


俺はこの時、これが最後のチャンスだと思った。


ガシッ!


父「…!」


残った力を絞り出し、父親の足にしがみつく


一狼「頼む……助けてくれ…なんでもする…靴磨きでも…荷物持ちでも……生きるためだったら…死ぬ気で働く……た…のむ………………」

藍「! うちで雇えばいいじゃん!」

父「…………はぁ………」


ちらりと腕時計を見る


父「…まぁ、これも勉強か……いいだろう。次郎、この子たちのことを頼む。」

次郎「はっ!」

父「私は先に行く………藍、一度面倒を見ると言ったからには責任が伴うよ?」

藍「うん!」

父「…これからはお前が、その子の主となりなさい。…いいね?」

藍「わかった!」




一狼「…ふっ……(懐かしい記憶だ………)」

「藍様、大人気ですね」


振り返ると、施設職員が微笑みながら立っていた。


一狼「えぇ………今のお嬢が…一番、お嬢らしい………」


腕を組むのをやめ、近くに置かれた観葉植物へ歩み寄る。

それは藍自身の提案で施設に置かれたものだった。


生活の中に緑があれば、心は豊かになる。そして、生活に必須ではない緑にまで手入れが行き届くようになれば、それこそ心が平穏に保たれている証。

子どもたちが健やかであるかの、一つの指標となると藍は考えていた。


一狼「…………」


そっと葉に触れる。

艶やかな緑。

埃一つない。

丁寧に世話をされていることが一目で分かった。


「藍様がいらっしゃると聞いたら、みんな大はしゃぎで……はりきって、お掃除と植物の手入れをしたんですよ」


職員が楽しそうに笑う


一狼「…そうでしたか……それは何よりです…」


本を手に取り、子どもたちを座らせる藍


??「……なにしてるの…?」

一狼「…!」

藍「!」


子どもたちが集まる様子を不思議そうに見つめる少女


「藍様が来てくださったのよ!今から、読み聞かせをしてくださるみたいだから、一緒に聞いてきたら?」

少女「…あい様…?」

藍「…一狼! その子にわたくしが誰なのか、教えてあげなさい」

少女「…?」


一狼は少女の隣へ歩み寄った。


一狼「あの人は、この施設を作った…流星会の会長、星乃藍様だ」

少女「……偉い人…?」

藍「いいえ。ここでは偉さとか関係ないのよ…」


ゆっくりと少女の前まで歩み寄る藍


藍「貴方ももう、わたくしの家族よ…遠慮なんてさせないわよ」

少女「!!」


ふわりと微笑む。

そして藍は少女の手を取ると、そのまま抱き上げた。


少女「わっ……!」

藍「特等席よ」


少女を膝の上へ乗せる。


藍「今日の読み聞かせは特別よ!聞きたい子たちは、わたくしの周りに集まりなさい!」


少女の後ろから手を回し、本を開く


藍「むかしむかし、あるところに―――」


子どもたちの瞳が輝く。

夢中になって物語を追いかけるその姿を、一狼は静かに見つめていた。


一狼(……義父さん……ようやく分かったよ……俺は、『ヒーロー』のこの人についていくことが…どうしようもなく嬉しい…………)


あんたの『誇り』……

俺が受け継がせてもらうよ……




グリーンローズの物語 終幕


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ