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第四十四話「金色の正義と永遠の愛」(ブラック&ゴールド最終話)

第四十四話 「金色の正義と永遠の愛」

(主人公 ブラック&ゴールド最終話)


バラレンジャーの解散から1年半――


夜景を見下ろすように、高層ビルの屋上へ立つ金色のヒーロー。


(…きゃぁああああ………)


常人には届かないその音を、ゴールドローズは“空気の震え”として感じ取る。


フワァッ……


その姿が風に溶けるように掻き消えた。


*



男1「早く開けろ!コイツがどうなってもいいのか!!」

子ども「んーー!!」


子どもを人質に、刃物を向ける二人の強盗犯


母親「お願いします……その子だけは殺さないで………」


頬を殴られた痣が残る母親が、震える手で金庫を開ける。

カチャッ……


男2「おぉ……たんまり入ってんじゃねぇか……おい、キャッシュカードの暗証番号も言え」

母親「っ…!」

男2「もし違う番号を言ったらガキを殺す………すんなり言ってくれれば、この子だけは生かしといてやるよ…」

母親「うぅっ……ぁ……っ……」


母親の目から、ぽろぽろと涙が零れ落ちる。


男2「ほら…さっさと言え!!」


――その瞬間。

ビュォオオオッ……

閉ざされたはずの部屋に、冷たい風が吹き込んだ。


「「!!!」」


カーテンが大きくはためく。


男1「あ…?」


ザクッ!!

男の首筋から鮮血が噴き出す。

ドサッ…!


男2「なっ……!!?」

子ども「!!!」


男の手から離れた子どもはようやくその救世主の姿を目にした


ゴールド「お前ももう、なびかないな……」


ズッ!!!


男2「ッ…!!!!」


男が最期に見たものは、心臓に刺さる刃に映り込む、苦しみに満ちた己の顔


ドタッ……!


母親「はぁっ……はぁっ…………ぁ……っ………」


過呼吸を起こし、気を失う母親


子ども「っ! ママ!!」

ゴールド「………大丈夫…少し疲れて眠っただけだ」

子ども「………あなたは……だれですか………?」

ゴールド「………知らなくていい……」


スッと立ち上がり、背を向けると同時に風が渦を巻き始める。


ゴールド「…ママの傍にいてやれ……」


フワァ……

その姿は風へ溶けるように崩れ、夜の闇へ消えていった


子ども「…………………」


少年の頬には、そよ風に吹かれた感触だけがそっと残った



*



人気の無い場所で元の姿に戻るブラウン


ブラウン「………ふぅ………」


一体いつまで…こんなことをする……

あと…何人殺せばいい……

いつになれば…平和な世界になる………


ブラウン「……!」


夜道を歩いていると、ハッキリとした影ができていることに気づく


ブラウン「……………」


……なんて…考えてしまう……

答えなんてとっくに出ているのに、覚悟なんてとっくに決まっているのに…

……それでも少し、心が疲れる時がある……


ブラウン「……………綺麗な月だ…………」


そっと右手を月に伸ばす

キラッ……

ブレスレットが微かに光る



*



キィ………………キィ…………………キィ…………………

窓際で一人、赤ちゃんを抱きながらロッキングチェアに座る


ハク「はぁ~……赤ちゃんってのは、どれだけ見ても飽きねぇもんだな……」

ミカ「そうねぇ~」

雪「…でも…こんなに可愛いのに、一緒にいられる時間は半分なのがもったいないね」

ハク「んー……まぁでも、考えようによっちゃ、母親が二人ってのは愛情が倍ってことだからな!そう、悪いことばかりじゃねぇんじゃねぇか?」

雪「! たしかに!」


笑い合う二人


雪「あっ、そうだ。今度カメラを買ってこようよ! そうすれば、わたしが撮ったビデオは、ハクが見て…ハクが撮ったビデオも、わたしが見られるから…これで一緒にいられる時間も倍になるねっ…!」

ハク「おぉ!いいなそれ! じゃあ明日、おれがリューガと一緒に買ってきてやるよ!」

雪「えっ…!…い、いいよ…ハク、カメラのこととかよく分かんないでしょ?」

ハク「あぁ?ユキだって似たようなもんだろ」

雪「…ハクはちょっと乱暴なとこもあるから…カメラみたいな精密機器を見に行くならわたしと一緒の方がいいんじゃないかな…」

ハク「おれが触ったくらいで壊れるようなカメラなんて買わねーよ ってか、簡単に持ち運び出来るようなカメラの方がいいんじゃねぇか?なら、頑丈なの買わねーとだろ?」

雪「で、でも……」

ミカ「ひょっとして…ユキはデートしたいだけなんじゃないの~?」

雪「…!」

ハク「あ!てめーそういうことかよ!」

雪「うぅ…だって…最近、あんまりお出かけできてないし……」

ハク「そりゃ、おれだって同じだっつーの! 明日はおれの番なんだから、おれがデートしてきちゃうもんね!」

雪「あぁっ!ハクずるい…!」

ハク「なんなら、キスもいっぱいしてきちゃうもんね~」

雪「だめーっ!もう…!ハクはそうやってすぐ………は、破廉恥だよっ!」

ミカ「ふふふっ…!」

ハク「愛してる旦那とスキンシップとるのなんて当たり前だろ? いつまでも恥ずかしがってたらそのうち愛想尽かされちまうぜ?」

雪「あの人はそんなことしないもんっ!」

ハク「どうかな~ まぁでも、このままだとユキよりもおれの方が好きになっちまうかもな~」

雪「っ~! わたしの方が、いっぱい愛情あるもん!」

ハク「はぁ!?だったら、おれの方がもっと愛情あるもんね!!」

雪「わたしの方があるもん!ハクのは、えっちなのも含まれてるからダメ!」

ハク「っ! おれのは普通くらいだっつーの!!大体おれがいなかったら今頃だってなぁ…!」

ミカ(…また始まった……まったく…このやり取り何回やるつもりよ………)


ガヤガヤ言い合う二人を見守るミカ


ミカ(……ま…おもしろいからいっか…♪)



*


ガチャ……

玄関のドアが静かに開く。

パチ…と、目を覚ます雪


ブラウン「…ただいま」

雪「おかえりなさい…あなた…」

ブラウン「悪い…起こしたか…?」

雪「ううん……あなたを待ってたから」

ブラウン「…そうか………」

雪「…………………」


この人が夜、何をしているのかは大体想像がつく…

でもわたしは何も言わない…

だってそれが……

そうすればこの人は……


ブラウンは雪の隣へ腰を下ろし、眠る娘の顔を覗き込む。


ブラウン「……よく寝てるな……」


そっと頬を撫でる


雪「うん……お月様が見守ってくれてるからかな」


雪が窓の外へ視線を向ける。

つられるように、ブラウンも夜空を見上げた。


雪「……………………」

ブラウン「………今日は月が綺麗に見えるな……」

雪「うん……」

ブラウン「…………………」

雪「……まるでわたし達みたい……そう思わない…?」

ブラウン「…え…?」

雪「ふふっ……なんて……ちょっとおこがましいかな……?」

ブラウン「………………」


一度雪を見つめ、それからまた月へ視線を戻す。


ブラウン「…月が満ちたり、欠けたりするのが…雪ちゃんとハクみたい…ってことか…?」

雪「ううん……月があなたで、夜がわたしとハク……」

ブラウン「!…………いいな…それ…」

雪「ふふっ…でしょ?」


少し照れくさそうに笑ってから、雪は静かに続ける。


雪「……わたし、自分の人生に色をつけるなら…ずっと黒だと思ってた…………暗くて……中々、光が差し込まない人生だったから………」

ブラウン「…………」

雪「…でも、そんな時…あなたが現れてくれた……。最初は…わたしと同じ黒だと思ってたけど、違った………。あなたは…黒を照らせる唯一の光……そんな気がするの」

ブラウン「…………そうかな………救ってくれたのは、雪ちゃんの方だと思うけど…」

雪「……お互いに救われたのかもねっ…!」

ブラウン「!……そうだね……」


再び、二人で月を見上げる。


……もし仮に…オレが月なんだとしたら……やっぱり君には敵わない……

こんなに大きな黒で、包み込んでくれているんだもんな……


雪「……わたしは…あなたと一緒なら…ずっと黒色の人生でいい……ううん、黒色がいい」

ブラウン「…どうして…?」

雪「…そうすれば……」


そうすればあなたを……


雪「あなたにそっと、寄り添えるでしょ?」


包み込んで離さない……

ずっとずっと……永遠にわたしのもの……♡


ブラウン「…!」


くすっと笑う雪


雪「ブラックローズをやって、黒色が好きになっちゃったし…!」

ブラウン「……たしかに……よく似合ってたよ…」

雪「ほんとう…!?」

ブラウン「あぁ…」

雪「えへへ……じゃあ今度、黒い服とか選んでみようかなぁ……」

ブラウン「きっと似合うと思う」

雪「…あなたとお揃いでもいいなぁ~」

ブラウン「…今度、見に行ってみよう」

雪「! うんっ!行こうっ! ハクとじゃなく…わたしとねっ!」

ブラウン「あぁ…分かってる」


二人は顔を見合わせ、静かに笑い合う。


ブラウン「……さぁ…そろそろ寝よう…体が冷えるぞ?」

雪「……………」


ブラウンが立ち上がる。


ブラウン「……? どうした…まだ寝ないのか?」

雪「…お……おやすみの……キスは………?」

ブラウン「!」


顔を赤らめる雪に、そっと唇を重ねる


ブラウン「愛してるよ」

雪「っ~~!!……うん………わたしも………!」

ブラウン「………………」


添えた右手のブレスレットが僅かに揺れる


……君が優しく包み込んでくれるから…オレは輝ける………

君が黒い夜空になるのなら……

オレは金色(こんじき)の月になる……

……闇を照らす、『ヒーロー』で在り続ける………


ブラウン「さ…もう寝るぞ」


娘をそっと抱き上げ、一足先に寝室へ向かう。


雪「ふふっ……!」


その背中を、雪は幸せそうに追いかけた。


ブラウン「………そういえばさっきの話………オレが月で、雪ちゃんとハクが夜空なら…この子は太陽だな……」

雪「……太陽?」

ブラウン「あぁ。オレに元気をくれる……希望の光だ」

雪「……………」


ベッドへ娘を寝かせ、三人で川の字になって布団へ入る。

雪は娘のお腹にそっと手を乗せ、優しく撫でた。


雪(……この子が太陽なら…家族が揃わなくなっちゃうなぁ……家族なら絶対に、繋がって離れないのに………)


雪「……………あっ…!」

ブラウン「ん…? どうかしたか?」

雪「ふふっ……いいこと思いついたの。さっきの話」

ブラウン「……?」

雪「……この子が太陽で、あなたがお月様なら…」


二人が輝いてくれるのなら…わたしはそれに寄り添いたい…


雪「わたしは宇宙になろうかな……」

ブラウン「ははっ……大きいな……」

雪「……だから……」


あなたが月でいれくれるのなら…わたしは、その光を受け止める宙になりたい……


雪「ちゃんと照らしてくださいね…?」

ブラウン「…!」


……なんて…やっぱりおこがましい気もするけど…

どこまでも広く、優しく包み込めるような…

そんな黒になりたい……

『家族』を護る、『ヒーロー』みたいに……


ブラウン「あぁ」

雪「…♡」



ブラック&ゴールドの物語 END


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