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King Colours  作者: TEAM,IDR
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第四十五話「命ある者」

第四十五話 「命ある者」

(主人公 パープル4)


バラレンジャー、世界にとって大きな変化をもたらしたあの戦いから数か月が経ちました。あの戦いでワタシは、『自由』と向き合いました。


ワタシにとっての『自由』…。

それはワタシ自身が選んだ行動…

感情…心…意思…愛に従う事…

それがワタシにとっての『自由』。


 あの戦いの後、バラレンジャーの皆さまと一緒に紅葉狩りに行きました。ワタシはそこで、感情や愛に従った自由な行動を心掛けていました。ワタシが自由であったかは定かではありませんが…とても、楽しいと思えました。

 初めて涙を流したあの日から、ワタシは感情を自覚し始めていきました。バラレンジャーの皆さまと過ごす日々を楽しいと感じたり、研究が人類に貢献できた時に嬉しいと感じたりするようになりました。しかし、一方で「悲しい」や「寂しい」などの負の感情をも意識するようになってしまいました。

 博士のお墓へ行くと、とても切ない気持ちになります。これは『尊いもの』を感じるためのリスクなのでしょうか…。愛するものを忘れないための反応なのでしょうか…。もう繰り返したくないと思わせる戒めなのでしょうか…。



 ワタシはこれから…自分の『感情』とどのように向き合うべきでしょうか…。そして…その感情に従った『自由』な行動とは一体どのようなものになるのでしょうか…。



 エネミーの出現回数が減り、バラレンジャーの出撃もほとんどなくなったことにより、これからはヒーローショーに力を入れる方針へ変わりました。

ワタシはショーで使う機材の準備やスケジュール調整、会場の手配などをしていました。


みどり「だぁ~~!つかれたよぉ~~!」

銀河「お、俺も……」

藍「あら?この程度で音を上げるなんて、この先が思いやられますわね。」

みどり「だって~…こういう仕事しないからと思ってヒーローになったのにぃ~!」

ことみ「う~ん…そうは言っても、会場班は黄慈さんと紫雲くんがいれば十分だし事務所での仕事なら各所への対応が山ほどあるからね!」

銀河「これ、いつまで続くんだよ~~!」

朱祢「…減らした分以上に増えている気もするし…ほんと…いつまで続くのかしら…」

ことみ「そうね……よし!そろそろお昼だし、休憩にしましょうか!」

虎羽「そうですね。お腹も空いてきましたし。」

金一「あっ!じゃあ僕お昼ご飯買ってくるよ!」

ことみ「あらほんと?じゃあお願いするわね!」

桃華「あの…ワタシもご一緒してもよろしいでしょうか…?」

金一「!もちろんいいよ!いいよね?」

ことみ「ええ、もちろん。お願いね!」

桃華「はい!」



金一「モモちゃんが自分から買い物に行くって言うなんて、珍しいね~。何か欲しい物でもあったの?」

桃華「いえ…欲しい物があるというわけでは…。…ただ…皆さま、慣れないことが続いてしまって、疲れているように感じたので…何か…少しでもお役に立てれば…と思いまして…。」

金一「あ~それで~!なんていい子なんだ!その気持ちだけで充分だと思うよ。それに、疲れたとか言ってるけど面倒くさくなっただけだろうし…。」

桃華「…ですがこの前の、あの戦いの時もずっと皆さまに迷惑をかけてしまってばっかりで…少しでも恩返しがしたいんです。」

金一「ん~そんなこと考えなくてもいいのに…モモちゃんが迷惑かけてるだなんて誰も思っていないよ。それよりも助けてもらってることの方がずっと多いよ!」

桃華「そうでしょうか…?」

金一「そうだよ!今日だってずっと、メールの返信とか次の会場のこと調べたりだとか、なんかこう…いろんな計算とかしてたんでしょー?僕らがやってたらモモちゃんの何倍かかるかわかったもんじゃないよ…。モモちゃんがいてくれたから今の僕らがいるんだよ。迷惑なんかじゃないし、いてくれて本当に良かったって思ってるよ!」

桃華「金一さま…ありがとうございます…」

金一「ふふっ…こちらこそ、いつも助けてくれてありがとね。」

桃華「はい…!」



ワタシたちはドライブスルーでいくつかの店を回り、帰路に就きました。金一さまが運転する社用車の中でワタシは再び金一さまとお話しました。


桃華「金一さま…」

金一「ん~?」

桃華「ワタシが自主的に買い物に行くと言った理由ですが…実は、皆さまへの恩返しの他にもう一つ理由がありまして…」

金一「なにー?」

桃華「ワタシは…皆さまと戦ったあの戦い以来、『自由』とは感情に従うことではないかという一つの結論に至りました。」

金一「ふんふん。」

桃華「ワタシはバラレンジャーの皆さまのことを愛しています。その感情に従うことこそ自由な生き方ではないかと思い、買い出しに行くと発言したのです…」

金一「はわぁ~~!!僕らのことを愛してるだなんて…!なんだか照れるなぁ~…でも、とってもいい考えだと思うよ!モモちゃん、前から自由って何なのかずっと考えてたもんね!やっと答えが出たってことなのかな?」

桃華「…それが…わからないんです…。皆さまを愛していることも、自由を手にしたいと願っていることも真なのですが…本当にこのような生き方で合っているのか…自信が持てないんです……」

金一「ん~~そっかぁ~……誰かのためにって思うのは良いことだと思うけど~~……あっ!自分のために行動してみたら!?」

桃華「…自分の…ために…?」

金一「そう!誰かのために生きるのもいいけど、たまには自分のために時間を使わなきゃダメだよ~。趣味とかないの?」

桃華「趣味…ですか…。…特にありませんね…。」

金一「じゃあ、新しい趣味作ろうよ!協力するよ~!そうすればきっと新しい発見があると思うよ!」



金一さまの提案により、新しい趣味を考えることにしました。昼食を摂り、皆さまにもそのことを相談した結果、ワタシが唯一興味を示した「ネジ・ボルト」を趣味に取り入れることとなりました。

 そして、午後の休憩時に金一さまに連れられてホームセンターへ行きました。「小物の買い出しのついでだから」と特別に許可を頂き金一さまと買い物を楽しみました。

 金一さまに勧められたものをいくつか買い、戻りました。購入したネジとボルトは男性陣のお考えによりコレクションとして飾ることにしました。他にも、「磨いたり削ったりしてお気に入りの一本を作る」「ゴツイ工具箱にジャラジャラ入れたらカッコイイ」などの意見も頂きました。

 ワタシにはこの『趣味』がこれからどのような効果をもたらすのか想像ができません。ただのネジやボルトを特別に飾ることの意義も理解できていません。ですが、特別でないことを特別だと思うことが『特別な効果』をもたらすのかもしれません。(部屋に飾ったネジ・ボルトを眺めてバラレンジャーの男達を思い出し、微笑む桃華)




ワタシが皆さまに趣味を持ちたいと相談してから数日後、みどりさまがこんなお話をしてきました。


みどり「ねぇ!桃華ちゃん!」

桃華「はい、なんでしょう?」

みどり「桃華ちゃんってずぅ~っと『自由』に生きたいって考えてたよね?この前の趣味の話も、自由のために、自分のための行動をしてみたいって話だったでしょ?」

桃華「はい。」

みどり「そ・れ・でなんだけど…あたし気づいちゃったんだよね~。桃華ちゃんが自由に生きられる方法に♪」

桃華「っ!!本当ですか!?ぜひ、教えていただけませんか!?」

みどり「ふっふっふ~慌てない慌てない。桃華ちゃんはね~計算しすぎなんだと思うんだよね~」

桃華「……?」

みどり「なんでもかんでも計算してから行動してるでしょ!」

桃華「はい…それは、そうですが……」

みどり「だからだよ~!自由ってのは全てから解放された状態…まどろっこしい計算なんてない世界なんだよ。」

桃華「はぁ……」

みどり「そ・こ・で・これ!これからの行動はコイントスで決めるっていうのはどう?」

桃華「…と、言いますと…?」

みどり「桃華ちゃん、今飲み物を買いに行く理由なんてないよね?」

桃華「はい…」

みどり「いくら計算しても、今桃華ちゃんが飲み物を買いに行く理由や意味なんてない!でも、なんの意味もないことをするって桃華ちゃんにとってすごいことだと思わない?」

桃華「そうですね。ロボットが無意味なことをするなんて有り得ません。不確定な確率に頼ることも通常であればしないでしょう。」

みどり「意味のない行動をする…そしてそれを決めるのも運…そんな普段なら考えもしなかったことをやることで、自由への扉を開こうっていうあたしのパーフェクトな考え!どう!?」

桃華「……………やりましょう…!」

みどり「よし来た…じゃあ早速…この表が出たらあたしの勝ち。桃華ちゃんが負けたら飲み物を買ってくる。これでいいよね?」

桃華「はい。」


ピィイイン…パシッ…

ワタシは飲み物を買いに行くことになりました。当然ワタシが飲む用ではなく、さらにみどりさまが飲む為でもなかったのです。コイントスの後、みどりさまはワタシにくじを引かせました。そのくじには番号が書いてあり、自動販売機の左上から順に数えてその番号の場所の飲み物を買うことになりました。

最初は、みどりさまの提案に戸惑いましたが、計算もできずワタシにとって意味のない行動をさせられるというのはそれ以上にワタシを混乱させるものでした。


みどり「やった~!またあたしの勝ち~!じゃあ…くじで引いた番号分だけマッサージしてもらおうかな!」


みどり「次は~くじの番号の枚数分、あたしの仕事やってもらおうかな!」


みどり「次はくじ番号のチャンネルのテレビを見る!」


みどり「次はくじ番号の棚にある映画を借りる!」


次はメニューの注文!一発芸!落語!マッサージ!買い物!次は…次は…次は…………



桃華「はぁ…はぁ…今度こそは…統計学的に考えても裏が出ないとおかしいです…!18回連続で表が出る確率は約0.00038%…次こそは…!」

みどり「次、表が出たら桃華ちゃんの勝ちにしようか?」

桃華「っ!いいえ!次こそは裏が出ます。これまでの結果を踏まえれば期待値が高いのは圧倒的に裏です…!」


ピィイイン…パシッ……


みどり「あたしの勝ち♪」

桃華「…信じられません…ワタシの予想を大きく上回りました……」

みどり「今日一日、自分では思いつかないようなことをしてみてどうだった?」

桃華「不思議な感覚でした…意味も考えない行動があってもいいのだと…気づかされました…」

みどり「うん♪よろしい!考えすぎるとかえって視野が狭くなることなんてしょっちゅうあるんだから…。桃華ちゃんが見たい『自由』な世界はもっとずっと大きいと思うよ♪」

桃華「みどりさま……」

みどり「人生なんてもっと適当でいいのよ♪…ところで、勝ったあたしのお願いはこれを受け取ること♪はい、プレゼント♪」

桃華「……これは…!!!!!」

みどり「この世界は0か1か、表か裏かだけじゃないってことよ♪桃華ちゃん、もっとてきとーになってもいいんじゃない♪」


いたずらな笑みを浮かべるみどりさまから受け取ったコインは両方とも表でした。


 みどりさまは遊んでいたようで、とても大切なことを伝えようとしてくれていたのだと思います。


表しかないコイン…。これにみどりさまの気持ちがつまっているように感じました。



みどりさまとコイントスで遊んだ…遊ばれた…?数日後、ワタシ達バラレンジャーはヒーローショーで県外へ遠征しました。ショーを終え待合室で朱祢さまとお話をしました。


桃華「お疲れ様です、朱祢さま……他の皆さまはどちらに…?」

朱祢「お疲れ。銀河さんたちなら観光するって出ていったわ。ことみさんたちは関係者の人と話してたわよ。」

桃華「そうですか…」

朱祢「ことみさん達の方は時間かかるみたいだから、連絡あるまで自由時間みたいよ。」

桃華「朱祢さまは銀河さま達と一緒に観光に行かないのですか?」

朱祢「私は…騒々しいの嫌いだから…」

桃華「そうですか……」

朱祢「桃華は行ってきたら?きっとすぐ見つかるわよ。」

桃華「…ワタシがここに居ては迷惑でしょうか…?」

朱祢「えっ!?いや、そんなことはないけど……」

桃華「では、ワタシもここに居ます。銀河さま達のように賑やかな時間も良いですが、静かで落ち着いた時間も…ワタシは好きです…。」

朱祢「………桃華…なんか変わったね……」

桃華「えっ…それは…どういう意味でしょうか…?」

朱祢「もちろん良い意味でよ…。笑顔も増えたし、なんていうか…話やすくなったと思うわ。」

桃華「…それなら、良かったです。これも全て、バラレンジャーの皆さまのおかげです。皆さまがいたから、変わることが出来ました。今ではとても感謝しています…。」

朱祢「そっか……。」

桃華「最近では自分が『自由』に近づいているという実感のようなものがあります。そういえば先日みどりさまと……」



朱祢「ふふっ…みどりらしいわね…イカサマだなんて…。それで…何か変化はあったの?」

桃華「はい。可能性が…広がったと思います。今までのワタシでは知り得なかったもの、見えなかったものが見えるようになった気がします。」

朱祢「そう……」

桃華「ですが…可能性が広がりすぎて、ワタシの求める答えまでもがどこかに消えてしまったかのように感じてしまいます。これからどうして行けば良いのか…。…皆さまと紅葉狩りに行った時、バラレンジャーとしての関係が終わりに近づいているという話がありましたよね?」

朱祢「…そうね…。」

桃華「ヒーローとしての役目を終えてしまったら…その次にワタシは何になるのだろうと…考えてしまいます…。考えても答えは出ませんが…。」

朱祢「…………ヒーロー以外にやりたいことは無いの?」

桃華「ヒーロー以外に…ですか……元々、ヒーローになったのも成り行きですし、ワタシには命令以外には何も………」

朱祢「……落ち込まなくてもいいと思うわ…」

桃華「……!」

朱祢「やりたいことが見つからないなんて、人間にはよくあることよ……私も…そうだから……」

桃華「朱祢さまは、もしヒーローを辞めたらどうするおつもりですか…?」

朱祢「私は……なんとなく生きると思う。…お金なら、いっぱいあるしね。…やりたいことも…いつか…見つかればいいかな…」

桃華「……待っているだけで…変われるのでしょうか…」

朱祢「っ…!」

桃華「ワタシは…ヒーローになれたことも、皆さまと出会えたことも奇跡だと思っています。皆さまがただの物質の塊に、変革を促し、愛し続けてくださったから変わることが出来たのだと思います。ワタシは……もうこれ以上の奇跡に甘えたくありません。変化とは…自由とは…自らの手でつかみとるものだと信じています…」

朱祢「……………」

桃華「…!!!…申し訳ございません。これはワタシの主観的な考察であって、決して朱祢さまに対して言ったわけでは…」

朱祢「大丈夫よ…わかってるから…。…変わりたいのなら、自分から動かないとだね。」

桃華「…はい。」

朱祢「…少し、ことみさん達の様子を見てこようかな。…桃華はどうする?」

桃華「ワタシは…少し、外に出てみます。何か、変わるかもしれないので。」

朱祢「そう…気を付けて…。」

桃華「はい…行って参ります。」

朱祢「いってらっしゃい……………………桃華は私なんかよりずっと…ずっと強い人だよ……」



 ワタシはあてもなく、ただただ知らない道を歩き続けました。目的のない時間の使い方など、みどりさまに気づかされなければ永遠に出来なかったでしょう…。

しばらく歩くと、公園が目に入りました。ベンチに座り、ぼんやりと辺りの景色をみていると小学生くらいの子どもに話かけられました。


男の子1「ねぇねぇ!なにしてんのー?」

桃華「………何もしていません…。」

男の子2「一人なのー?なまえは?」

桃華「一人です。名前は桃華と言います。」

女の子1「この近くに住んでるの?」

桃華「いいえ、仕事があってこの近くに来ました。この公園に来たのは偶然ですが…」

男の子3「しごとだって!大人みてぇー」

女の子2「わたしたち、ドッジボールやるんだけどいっしょにやらない?」

桃華「ドッジボール…ですか…」

男の子1「やろうよ!」

男の子2「そうだよ!やろーよ!」

女の子1「ももかちゃんも、いっしょにあそばない?」


命令…?

要望「ドッジボールで遊ぶ」を確認。


→要望に応える


桃華「かしっ…わかりました。一緒に遊びましょう。」

かれん「わーい!やったー!あっ!あたし、かれん!よろしくね!」

桃華「よろしく…かれんさ…かれんちゃん。」

めい「あっ…わたし、めい…きさらぎめい。よろしくね…?」

桃華「はい。めいちゃん、よろしく。」

けいた「おれ、けいた!よろしく!」

こうた「ぼく、こうた!」

たくみ「おれ、たくみ。よろしくー」


 こうして、自己紹介も終わりドッジボールが始まりました。


かれん「きゃあ!あー…あたっちゃった…」

たくみ「これでももかちゃんだけだな!」

めい「ももかちゃんがんばってー!」

かれん「まけないでー!」

桃華「っ…!!」


命令「頑張る」「負けない」を確認…

桃華「はい!お任せを…!」

こうた「わっ!」

たくみ「うわ!!…ダブルアウトだ…」

けいた「これで一たい一だな…おっら!」

桃華「もらいました……」


シュルルルルル……!!!

シュッ…バシィッ…!!

けいた「うわぁあ!」

かれん「やったー!あたしたちのかちー!」

めい「ももかちゃん、すごい!」

たくみ「すげー!シュルシュル!!ってなってた!」

こうた「まじすげぇ!どうやったの!?」

桃華「…!!…これはワタシの能力です。ワタシは何か別の物に特別な回転をかけられるのです。」

けいた「もっかいやってよ!」

桃華「いいですよ…ほら…」

かれん「うわー!すごーい!!」

こうた「もう一回!もう一回!」

たくみ「ねぇ、これは!?これは!?」



 それからしばらく、ワタシは子供たちと遊びました。ワタシがロボットであることを打ち明けると、より一層瞳を輝かせて接してくれました。腕を取ってみたり、リフティングテクニックを披露したり、お話を聞かせてあげたりしているとあっという間に時間が過ぎてしまいました。

 すると、かれんちゃんが「あっ!ママだ!」と指を指して言いました。そちらを見ると二人の女性が歩いていました。かれんちゃんとめいちゃんの母親でした。


かれん母「かれん、そろそろ帰るわよ。」

かれん「うん。あのねーお友だちができたのー」

かれん母「あらほんと、こんにちは。遊んでくれてありがとうね。」

桃華「こんにちは。こちらこそ、楽しい時間を過ごすことができました。」

かれん母「あら!しっかりしてるのね~」

かれん「ロボットなんだよー」

けいた「そうなんだよー、ボールをこうやってシュルルルルってできるんだよー!」

こうた「あとね、いろんなお話も知ってるし、ボールけるのもすごいんだよ!」

かれん母「へ~。ロボットなの?」

桃華「はい。自立式人型ロボットです。」

かれん母「自分で動いてるってこと?」

桃華「はい。」

かれん母「すご~い!」


 ワタシが意思を持っていると気づいためいちゃんの母親は表情が険しくなりました。


めい母「はい?じゃあ誰かに操縦されてるわけじゃないってこと!?」

桃華「はい…。」

めい母「…気持ち悪い…。めい、帰るわよ。」

めい「でも…もうちょっと…」

めい母「帰るの!」

めい「あっ…!」


 腕を引っ張られた拍子にめいちゃんの手から何かが落ちました。


桃華「めいちゃん、落としましたよ。」

めい「あっ、それ…ももかちゃんに…」


 と言いかけると、めいちゃんの母親はワタシの手からシールを奪い取って言いました。


めい母「機械が人間の真似事をしているの?優しくすれば人間が信じると思ったの?」

桃華「え……」

めい母「なんの実験してるのか知らないけど、二度とうちの子に関わらないで。…行くよ。」


ピピピピ…

命令……「二度と関わらない」を…確認……


命令に従う

命令に従わない



→命令に従う

命令に従わない


桃華「はい…かしこまりました…」

かれん母「……行っちゃった…」

けいた「あんなこと言わなくてもいいのになー」

こうた「そうだよね」

たくみ「そうだよ!ももかちゃんすごいのに!」

かれん母「そうだね~」

かれん「なんで、めいちゃんのお母さんはあんなこと言うの?」

かれん母「え~う~ん。桃華ちゃんのこと、わからないからじゃない?」

かれん「なんで?なんでわからないとおこるの?」

かれん母「わからないと不安になっちゃうんだよ。私も、人型のロボットなんて初めて見たし…」

かれん「なんでーなんでー!?ももかちゃんはやさしいのに…」

桃華「かれんちゃん、ありがとうございます。あの方の仰ることももっともです。力を持った未知の存在を信じろという方が無理なのです。でも、皆さんに信じてもらえて嬉しかった……ワタシはこれで…さようなら…」


 ワタシは帰ろうとしました。すると突然空から飛行型のエネミーが2体出現しました。


一同「うわー!きゃー-!!」

桃華「皆さま!ワタシの後ろに!!」(『解・填』の出撃を要請…ことみさまへ連絡…)


 2体のエネミーはこちらを伺いながら、ゆっくりと両脇へと移動する。背後は階段だが、回り込めないわけではない。目的はおそらくワタシではない。人間を捕食するつもりだろう。

武器もないワタシに人を護りながら戦うことができるだろうか…。一体ならまだしも、挟み撃ちにされてはどうにもならない。目的がワタシでないなら囮になることもできない…どうすれば…囮…この中の誰かを囮にし、二体を引き付けることができれば…ハッ…!ワタシは何を…ヒーローであるワタシが護るべきものを危険にさらすなんて…しかし…

どうする…!?



誰かを囮に使う(成功率92%)

→一人で戦う(成功率63%)


 ワタシは左腕を取り外し、遠くにいる方のエネミーに向かって投げつけました。投げられた腕に反応し、尻尾で弾こうとした瞬間、腕に回転の力を加え威力を高めました。エネミーの尻尾は鱗が欠け落ち、折れ曲がりました。

 投擲で怯んだ隙に、近くのエネミーへ近づきました。翼のついた前足での攻撃を躱し、後ろ回し蹴りを頭部へ叩き込みました。エネミーはのけぞりましたが、すぐさま前足で攻撃してきました。

 その攻撃を間一髪で避けていると、遠方のエネミーが突進してきました。バク転で距離を取りましたが、子ども達からは離れてしまいました。二体の視線はこちらに向いていましたが、その内の一体が近くの人間に気づきました。


桃華「逃げて!!」


 振りかぶった攻撃が当たってしまうかと思われたその時、ゴォオオオという音でエネミーの視線はそちらに向きました。


ピッピッピー!  バシュッ!!

 『解・填』から打ち出された斧を受け取り、構える。ゆっくりと持ち上げた巨大な斧に回転の力を加え、高速で振り回す。エネミーは成す術無く首を落とされた。もう一体のエネミーはワタシへの攻撃か、人間の捕食か、逃亡かの選択をしている間に空から『解・填』に潰された後、首を斬られた。


「きゃーーー!!!」


 終わったかに思われていたが、別の場所で悲鳴が聞こえました。そちらを見ると飛行型エネミーがもう一体、それにあちらはめいちゃんとそのお母さんが向かった方向。

 すぐに助けに行かなければ…!!しかし、非力なワタシはこの斧を持って素早く移動はできない。『解・填』もここに来るまでにエネルギーを使ってしまっている。動かすにはワタシと接続させエネルギーをチャージしなければならない。それに…


「二度と関わらないで」


ワタシは…


命令に逆らう

→命令に従い続ける




命令に逆らう

命令に従い続ける



→命令に逆らう

命令に従い続ける



→命令に逆らう

→命令に抗う


→心に!感情に従う!!

→命令よりも大切なものを守る!!


→己の自由を信じて踏み出す!!!!


桃華「ワタシは、この自由の意思を信じる!!」


 ワタシは駆けだした。勢いをつけたロンダートからの連続バク転、そしてバク宙で植木を飛び越えながら標的を捕捉。縦回転から、身をねじり横回転へと移行。取り外した頭をエネミーに向かって蹴り飛ばしました。威力を高めた回し蹴りで飛ばされた頭部パーツに更に回転を加え、威力の増大と軌道の安定を図りました。

 頭部パーツはエネミーの肩へ直撃し、骨を砕きました。しかし、こちらの右脚へもダメージが入り全体の運動性能が更に低下しました。

エネミーがこちらに気づいた。…それならば都合がいい。

ワタシは前宙からの踵落とし蹴りをしましたが、カウンターをもらい、ふっ飛ばされました。

ほぼ全てのパーツを損傷し、立つことすらままならないほどでしたが、止めを刺すためかエネミーはこちらへ歩いてきました。…実に…都合がいい…

ズン!!

鋭い尻尾で胴体を貫かれました。が、それでいい…

ワタシは右手で尻尾をつかみました。エネミーは振りほどこうとしますが、ワタシは最後の力を振り絞り、しがみつきました。

何度も何度も地面に叩きつけられ、とうとう物理的につかむことが不可能になるほど腕を、体を破壊されました。


めい「ももかちゃん……!」

みどり「闇の速さでただいま参上~っと!」

桃華「みどりさま……お待ちしておりました…」

みどり「うわ!生首がしゃべってる!?って桃華ちゃんか~ごめんね、遅くなっちゃって~」

ダンッッ!!!!

 拳銃が放つとは思えない程の重たい音の一撃でエネミーは倒れました。


みどり「この一体だけ?」

桃華「はい、おそらくは…向こうに同じタイプのエネミーが二体…ですがそちらはワタシが対処しました。あちらにも子ども達がいるので、安全確認をお願いできますか?」



みどり「よし、じゃ帰ろっか。」

桃華「みどりさま、ワタシの頭部を持ってあそこにいる親子に近づいていただけませんか?」

みどり「へ?あ~あの小っちゃいかばん持ってる女の子?」

桃華「はい、そうです。」


めい「あっ!ももかちゃん!ごめんなさい!ごめんなさ~い!!」

桃華「めいちゃん、謝らなくていいんですよ。こうなってしまったのはあなたのせいではありませんから。…お母さま、先ほどは「二度と関わらない」という命令を無視し手を出してしまい、申し訳ありませんでした。…これ以上はもう…」

めい母「ごめんなさい!」

桃華「えっ!?」

めい母「私…あなたのこと誤解していたわ…さっきは酷いこと言ってごめんなさい。それと、助けてくれて…ありがとう…!」

桃華「っ…!!」

めい「ももかちゃん、ありがとう!!」

桃華「…お二人が無事で…本当に良かった…!お役に立てて…本当に良かった…!!」

みどり「何はともあれ、みんな無事でよかったよ~」

桃華「はい…あの…また…会いに来てもいいですか…?」

めい・めい母「もちろん!」

桃華「っ!!…ありがとうございます…では、また…。」




桃華「ただいま戻りました。」

ことみ「おかえりなさい。どうだった?」

桃華「はい、皆さんあれからも問題なく過ごせているようでした。ワタシの回復も、とても喜んでくださりました。」

ことみ「それは良かったわね。…それは?」

桃華「こちらはお菓子だそうです。皆さまで召し上がってほしいと、いただきました。」

ことみ「そうなのね。…なんか、オイルが入ってるんだけど…」

桃華「あっそれは、ワタシ宛てにいただきました。」

ことみ「そ、そう…よかったわね…。あら?手の甲に何か付いてるわよ?」

桃華「これは…友達の、証…だそうです。大切な友達から、貰いました。」

ことみ「そう……桃華ちゃん、ほんといい顔するようになったわね。」

桃華「…パーツを変えたからでしょうか?」

ことみ「いや、そういうことじゃなくて…」

桃華「ふふ…わかっていますよ…」





ワタシは心に従った、自由に選択した。そのおかげで護りたいものを護ることが出来た。

それはワタシがヒーローだったから

ワタシが自由を手に入れたから

ワタシに心があったから

ワタシがワタシになれたから


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