第三十九話「一つになった想い」(パープル3)
三十九話 「一つになった想い」
(主人公 パープル3)
クリスマスを目前に控えたこの日――。
ついに、バラレンジャー最後のヒーローショーが開催される。
会場には数え切れないほどの人々が詰めかけていた。
しかし、そのほとんどはネットやメディアの情報を見て来たわけではない。
クラウンが破壊された、後に「地球解放記念日」と呼ばれるあの日以降。
バラレンジャーに関する情報は徹底的に抹消され続けていた。
写真や映像はもちろん、関連する文章の投稿さえ規制の対象となり、ネット上から彼らの痕跡は消え去っている。
だからこそ、人々は足を運んだ。
人づてに語られる噂。
街に掲げられた横断幕。
そして――最後のヒーローショー。
この機会を逃せば、二度と真実を知ることはできないかもしれない。
国が隠し、世界が秘匿した存在。
その真相を、自分の目で確かめたい。
そんな思いが会場全体を熱気で包み込んでいた。
さらに観客席の周囲は透明な壁で覆われている。
まるで何かと戦うための防護設備のようにも見えた。
一体、何が始まるのか――。
期待と興奮が頂点へ達した、その時だった。
ブゥン……
低い駆動音が会場に響く。
「あれっ!?スマホが使えない!」
「あ、俺もだ!」
「私のも!」
ざわざわ……
会場がざわめき始める。
そして次の瞬間。
ウゥゥゥゥゥゥッ!!
大音量の警報が鳴り響いた。
『緊急事態発生。緊急事態発生。座標地点上空に、破壊されたはずのクラウン11機を確認』
無機質なアナウンスが流れる。
麗「ど、どうしてクラウンがまた…!?」
ことみ「分からないわ…でも、放っておくわけにはいかないわ。バラレンジャー、出動よ!!」
「「おう!」」 「「はい!」」 「「あぁ!」」
大型スクリーンへ映像が映し出される。
変身したバラレンジャー達は荒野へ降り立ち、空を埋め尽くすクラウンを見上げた。
金一「まさか…本当にあるなんて…」
朱祢「空が覆い尽くされてしまったわね…」
みどり「うわでっか~! 11個もあると大迫力だね!」
虎羽「そんな呑気なこと言っている場合ですか!」
桃華「っ!見てください!あそこに人影があります!」
桃華が指さした先には、一体のエネミーが立っていた。身長は二メートルほど。
人型ではあるが、その全身からは濃密な闇のオーラが噴き出している。
空気が歪み、周囲の景色さえ霞んで見えるほどの異様な気配。
これまで戦ってきたエネミー達とは明らかに格が違った。
銀河「皆、行くぞ!」
バラレンジャー達は警戒しながら接近していく。
しかし、その映像を見守る観客達からは不満の声も上がり始めていた。
「なんだよ……」
「せっかく生で見られると思ったのによ」
「ただ映像流してるだけじゃねぇか」
「つまんねぇな。映画見に来たんじゃねーぞ」
「まぁ仕方ないさ。極秘技術を一般人に見せるわけにもいかないんだろ」
紫雲「お前は何者だ!?」
エネミーはゆっくりと腕組みを外し、答える
ゼル「我が名はゼル…待っていたぞ、バラレンジャー…」
雪「私たちのことを知ってる…!?」
黄慈「光栄だね。名前を憶えてもらってるなんて」
ゼル「…お前たちの力には驚かされたよ…まさか、クラウンまで破壊してしまうとはなぁ…」
藍「それはこちらのセリフですわ まさか、まだあんな物があったなんてね」
ゼル「フッ…あれは幻影だ…お前たちをおびき出す罠だったというわけさ…」
シュゥゥウッ…!
クラウンは霧のように容が崩れたかと思うと、2メートル級のエネミーとなって地上に降り立った
「「!!!!」」
ブラウン「なんだ、コイツら……!?」
ゼル「新月……魔が最も力を持つ日…人を殺すにはいい夜だ……」
銀河「そんなこと、やらせると思うのかよ」
ゼル「…試してみようか」
ボワァッ!!
ゼルの身体が闇の靄となって弾けた。
同時に――
シュッ!!シュッ!!シュッ!!
六体のエネミーが、それぞれ別方向へ跳び去る。
虎羽「なにッ!?」
みどり「急いで追わないと!」
藍「手分けして追いますわよ!」
バッ!と飛び出す藍
後に続くみどり、銀河
紫雲「僕はこっちを!」
ブラウン「オレはアイツを追う!」
桃華「ワタシも行きます!」
紫雲は雷となり、ブラウンは風となり、そして…
ピピピッ…!
バシュゥウンッ!!!
急停止した戦闘機に飛び乗り、急加速。桃華も凄まじい速度で飛び去った
朱祢「…貴方たちは“逃げない”のかしら?」
ゼル「…その余裕がいつまで続くかな?」
エネミー達が一斉に構える。
バラレンジャー達も武器を抜き放ち、迎撃態勢へ入った。
金一、黄慈、虎羽が前衛として飛び出し、攻撃を食い止める
雪「!」
朱祢「…!」
アイコンタクトを取り、一足先に朱祢が離脱
雪「みなさん、離れてくださいっ!!」
パッ――キラキラ……
手から零れた火の粉が宙を舞う。
そして次の瞬間――
ドガァァァァァンッ!!!!!
凄まじい爆炎が戦場を飲み込んだ。
黄慈「…っ…この程度じゃ倒せないか…!」
爆炎の向こうへ向け、朱祢が続けざまに矢を放つ。
ドンドンドンッ!!!!
だが――
ガンッ!! ガンッ!バキッ!!
矢が弾かれる。そして同時に―
シュゥゥ………
爆炎へ闇のオーラが混ざり始めた。
金一「うわっ!?」
影を伝い、突如目の前に現れるエネミー
ドンッ!!!
と身体が弾き飛ばされる。
黄慈「くっ!」
雪「きゃっ!」
虎羽「うっ…!」
続けざまに三人も、空の彼方へ消えていく
会場内。
並んだモニターの映像からも、一人、また一人とバラレンジャーが消えていく。
朱祢「ちっ…」
ドンッ!!ドン!!!
上空を飛び回りながら退き撃ちを続ける朱祢。
「逃げるのか?」
朱祢「っ…黙りなさい!」
矢を放ちながら距離を取る朱祢。
そしてついに、全員の姿が画角から消えた。
会場のスクリーンには、荒野だけが映し出される。
「おい! 全然映ってねーじゃねぇかよ!」
「どうなってんだ!? こっちは高い金払ってるんだぞー!」
不満の声が各会場から上がり始める。
しかし――
ドォォォォオオオンッ!!!!!
突如、会場中央に何かが落下した。
「「!!??」」
舞い上がる土煙。
誰もが息を呑む。
その煙の向こうから――
カァン!!!キィン!!!ガッ…!! キィン…!!!
激しく刃がぶつかり合う音だけが聞こえてくる。
会場は一瞬にして静まり返った。
誰も声を出さない。
土煙が晴れるのを、固唾を飲んで見守る。
*
ブラウン「ハァァアアッ!!!」
*
銀河「ふっ!!はぁっ!!」
*
紫雲「はっ!よっ!そらッ!!」
*
それぞれの会場で、バラレンジャーたちが戦闘を開始する。
「うぉおおおっ!!!」
「すげぇ!!」
「これがヒーローショーなのか!?」
「まるで本物の殺し合いだ!!」
観客たちの歓声が響く。
そして――
最後の会場にも、一体のエネミーが姿を現した。
「おあつらえ向きに人が集まっているな…」
「うわっ!さっきの奴が浮いてるぞ!」
「どうなってるんだ!?」
ズズズズ……
会場の中央に浮かぶエネミー
「何が始まるんだ!?」
「すごーい! 映像なのかな…?」
エネミーが小さく首を傾げる。
「お前たち……これが遊びだと思っているのか?」
ズァァァアアアアッ!!!!
次の瞬間。会場が闇に飲み込まれた。
「きゃああああっ!?」
「な、なんだ!?」
光が消え、視界が消える。
まるで世界そのものが塗り潰されたかのような闇。
そして――
何かが首筋に触れているような感覚。
何かに見られているような感覚。
死、そのものと向き合っているような恐怖…
「死を恐れる生物か……」
闇の中で声だけが響く。
「…興味深い……反応を調べるためにいくつか殺してみよう…」
桃華「エネミーを補足、攻撃開始」
桃華の声と同時に、空気を裂く轟音が響く
直後――
ガコンガコンガコンガコン……ドォンッ!!!!!
上空から切り離された四つの塊が、会場へと降下する
キュィイン!!
胸のコアが急速回転する
ビシュゥン…!
闇の中で四対の瞳が光る。
「わざわざ追いかけてまで邪魔をするか…」
カチャ……バババババババババババッ!!!!!!!!!
エネミーの言葉を無視し、一体のロボットが問答無用で機銃を撃ち放つ
「…!」
エネミーは空中を駆けるように飛び回り、弾幕を回避する。
しかし、既に他の三体が包囲を終えていた。
《挟み込め》
《《ラジャー!》》
ドンッ!!
保護シールドを足場に飛び上がり、二体が同時に接近。
ヌンチャクと鋭い蹴りを繰り出す。
「くっ…!」
《地面に下ろさせるな、二人から離れたらすぐに撃て》
《了解》
女性型ロボットは機銃を上に構えたまま待機する
「くっ…こいつら…!」
エネミーは押し切られる前に距離を取ろうとする。その瞬間――
シュッ!シュッ!!
二枚の手裏剣が飛来した。
「…!!」
エネミーは身を捻って回避する。
だが――
クイッ!
手裏剣を投げたロボットが指先を曲げる。
クルッ!!
結ばれていたワイヤーが引かれ、空中で軌道を変えた糸がエネミーの腕へ絡みついた。
「なっ――」
動きがわずかに止まる。
《ボス!!攻撃を!!》
ドンッ!!
二体のロボットが同時にエネミーを蹴り上げると――
プシュンプシュン!!
ミサイルが発射され、直撃
ドガァァァアアアンッ!!!!
爆炎が夜空を染める。
「おぉおおおっ!!!すげー!!!」
「やったのか!?」
観客席から歓声が上がる。
ドサッ!!!
会場中央に落ちるエネミー
チャキッ!
ガトリングを構えるロボット。そして、その横に3体のロボットが並ぶ
「ぐっ…キサマらァ……!!」
ゆっくり立ち上がるエネミー
ババババババババッ!!!!!
ガトリングを撃つが、闇のオーラを集め、バリアを展開する
《! 回り込んで攻撃するぞ!》
左右に分かれるロボット。指示役のロボットは軽やかに跳躍し、頭上から迫る
しかし――
シュゥウウウ………ズァアアッ!!!!
会場全体に散っていた闇のオーラが一斉に収束するのと同時に、衝撃波を放った
《《…!!!!》》
吹き飛ばされたロボット達は床を転がりながら体勢を立て直す。
「遊びは終わりだ……まずはキサマらから殺してやる……」
腕を肥大化させ、より凶暴なフォルムへと姿を変えた
プシュン!! ドカァンッ!!!
ミサイルがエネミーに直撃
ゴォォオオオオッ!!!!!
噴射されるジェットエンジンが保護シールドに空気を押し当てる
…タンっ!
機体から飛び降り、着地する桃華
桃華「ここからは5人で戦いましょう! ロボットの強さを証明し、新時代の扉を開くのです!!」
《《ラジャー!!!》》
五体のロボットが並び、ポーズを決める
「「うぉおおおおおおおお!!!!!」」
「やっちまえー!!」 「絶対勝ってくれー!!!」
歓声が爆発する。
「殺してやるぞ!!ヒーロォォオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」
*
ググググ……ズンッ!!!!!
会場一帯を覆う超重力。
エネミーは地面へ押し付けられ、膝をつく。
黄慈はゆっくりと歩み寄った。
黄慈「沢山の人たちの想いを背負うヒーローは、決して屈しない!!」
鎚の柄を地面へ突き立てる。
ドォォオン……
まるで巨大な重機が落下したような轟音。
黄慈「罪の重さを、あの世で思い知るといい…!!」
鉄槌が振り下ろされる。
ドゴォォオオオンッ!!!!
地面が陥没し、エネミーは重力ごと叩き潰された。
「「うぉおおおおおおおお!!!!!」」
*
雪「私は決めたんです!!この力を…護る為に使うんだって…!!!」
ガッ!!!
火の粉をエネミーの腹部に押し付け、盾を振り抜いて上空に飛ばす
??「ハハッ!! 木っ端微塵になって死になァ!!!!!!」
ぐっ…!
拳を握った瞬間――
カッ!!!!ッバァァアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!!!!!
夜空そのものが爆発したかのような閃光。
観客席から悲鳴にも似た歓声が上がった。
*
氷に覆われている会場
「す…ずげぇ…一体どうなってるんだ……!?」
「屋外なのに、こんなに涼しい…」
足元から凍り付き、動けなくなったエネミー。
金一「絶対零度のこのエリアで動けるのは僕だけだ…観念するんだな…」(……ど、どうしよ……カッコつけたはいいけど…ちょっと距離遠いな……)
会場の端と端に立っている金一とエネミー
金一(もっと近づいてから能力発動すれば良かったぁぁあ…! テンション上がってついアドリブ入れちゃったよぉ……このまま進んで大丈夫かなぁ…またあの時みたいに転んだら………あっ!そうだ、いいこと思いついた!)
ピキッ!!ガチガチガチッ!!!
金一の大剣に氷が伸びていく…
「うぉおお……でっけぇ………」
金一(えーと…決め台詞どうしよう……こんな時、能力が炎だったら…正義の炎に焼かれろ!…とか言えるのに……えーっとえーっと……)
観客たちが固唾を飲む。
金一「………砕け散れ……」(……んー!後に続く言葉思いつかないぃぃ!雰囲気で誤魔化さないと!)
ダァンッ!!!!ガシャァンッ!!!!パキィィイイン………
巨大な氷剣が振り下ろされ、砕けた氷片が夜空へ舞い上がった。
キラキラキラ……
降り注ぐ氷の雨。
「…綺麗……」
「最っ高にCoolなヒーローだぜ!!」
「「Fooooooooooo!!!!」」
「レッドローズかっこいい!!」
金一「…ふっ……」
片手を挙げて歓声に応える金一
金一
*
桃華「ハァァアアアアアッ!!!」
ザンッ――!!
振り下ろされた斧が、エネミーを真っ二つに断ち切る。
桃華「……………」
残骸を見下ろし、動かないことを確認したあと
ピピピッ!
こめかみに指を当て、通信を開く。
桃華「エネミーの沈黙を確認、任務を完了致しました」
ことみ「よくやったわ!」
銀河「こっちも討伐完了だ」
みどり「あたしも倒したよ~」
モニターが12分割され、それぞれの会場の様子が映る
ことみ「お疲れ様!皆のおかげでまた、世界が救われたわ!」
ゼル「それはどうかな…」
「「!?!?」」
各会場に倒れていたエネミーの残骸が、ぐにゃりと蠢いた。
まるで粘土のように形を失い、
ズルリ……ズズズズズ……
黒い球体へと変貌していく。
虎羽「まだ生きていたのか!?」
朱祢「本当にしぶといわね…!」
ゼル「囚われの分際でよくもここまでやってくれたな……」
シュゥウウ……!
と、空に昇っていく闇の塊
紫雲「ちっ、今度はどこへいくつもりだ!?」
桃華「また、後を追うしかないようですね…」
ゴォォオオオオオッ!!!
変形した戦闘機が会場に降り立つ
《ボス…俺たちは置いてってくれ》
《わたしも…もう弾もエネルギーも切れてしまいました…》
桃華「…分かりました…」
《ボス、私達も想いは同じです。必ず、地球に平和を取り戻してください》
《僕らのエネルギーだけでも、一緒に連れて行ってください》
手を差し出す4体のロボット
桃華「…貴方達の想い…ワタシが引き継ぎます!」
《《………………》》
シュゥウウン…………
ガコン…
エネルギーが切れ、停止するロボット達
桃華「……………」
機体に乗り込み、会場を後にする
「なんだ…まだ続くのか…!?」
「今度は何が始まるんだ!?」
麗「み、皆さん!見てください! クラウンが出現した地点に、莫大なエネルギー反応が集まっています!」
モニターに映し出されるのは最初にゼルがいた荒野
そして、各地から集まる闇の塊を吸収し、どんどんと体を肥大化させるゼルの姿があった
「グォオオオオオオオッ!!!!!!」
藍「何よアレ!大きすぎるわ!」
黄慈「このままじゃ、歯が立たない…もうぼくらも力を使い果たしてしまった…」
ことみ「諦めちゃダメよ!私たちにはまだ秘密兵器があるじゃない!」
「「!!!」」
モニターに映し出されたのは格納庫
ギュィィイイイイイインン!!!!!
と、けたたましい音を立てて起動する巨大ロボ
ガコン!!プシューーーッ!!!
ウィイイン……
格納庫内の足場が次々と移動する。
整備員たちが退避し、巨大な隔壁がゆっくりと開いていく。
ゴゴゴゴゴ……!!
地面を震わせながら、バラレンジャーロボが姿を現した。
ことみ・麗「「バラレンジャーロボ、発進よ!!・です!!」」
ゴォオオオオオッ!!!!!ドシュゥウウッ!!!!!!!
「うぉおおお!!あれ見たことあるぞ!!!」
「バラレンジャーロボだ!!!」
会場は熱気に包まれる
ゼル「無駄だ!完全体となった我を止められるものなど、存在するものか!!」
ことみ「だったら試してみましょう……人類の希望が、絶望なんかに負けるのかどうか!」
ゴゴゴゴッ!!!!…ドンッ!!!
巨大化したゼルの前にバラレンジャーロボが着地する
金一「皆!ここからはバラレンジャーロボで戦うよ!!」
「「あぁ!!」」「「おう!」」「「うん!」」「「はい!!」」「「えぇ」」
ぴょいん!
とジャンプするカットが入ると、次のシーンで全員がコックピットにいる映像が映される
紫雲「バラレンジャーロボは操作が複雑だ。皆が心を一つに合わせないと上手く動かない…できるか!?」
みどり「出来ないわけないでしょ♪」
虎羽「そうです!これまでずっと一緒に戦ってきたんですから!」
ブラウン「あぁ…オレ達の心は既に一つだ」
黄慈「…ということだ。問題ないよ」
紫雲「ふっ…よし、皆レバーを握ってくれ!アイツを倒すぞ!」
「「おぉーー!!」」
ゼル「決着をつけるぞ!バラレンジャー!!」
大地を砕きながら突進するゼル
紫雲「ペタルビット展開!」
小型ビーム兵器が攻撃を仕掛ける
藍「抜刀!」
シャキィイン!
銀河「ファントムウィングシステム起動!!」
光の翼が生え、高速移動が可能になる
ガンッ!!!キィン!!
ゼルと刃が交わり、鍔迫り合いになる
ビシュン!ビシュン!!
その隙にペタルビットの攻撃がゼルの背中に直撃する
ゼル「ぐぅうッ! ウォオオオオオッ!!!」
ゼルは腕を脇腹から二本増やし、バラレンジャーロボを殴った
「「うわぁあああああっ!!!」」
雪「こ、このままじゃ…!」
ブラウン「こんな時のために!」
ギュィイイン!!!!
ブラウン「ストリームブラスターキャノン!!」
ズドォオオオオオン!!!!!
ゼル「グァアアアアアアアッ!!!!」
胸部から発射された至近距離のビーム砲に焼かれるゼル
ダァン………!!
地面に倒れるゼル
朱祢「これで終わりよ!」
刀が喉元に突きつけられる
ゼル「フッ…フハハハハハッ!!!」
桃華「何がおかしいのです?」
ゼル「…終わりなのはキサマら人類だ…見よ…」
ゆっくりと腕を持ち上げるゼル。
そこには……
銀河「なっ!なんだありゃ!?」
「えっ…えぇええええええっ!!!!!??」
「…?どうした……うわぁあああっ!?」
「な、なんだアレ!?」
「空が……!!」
会場の観客たち。街を歩いていた人々。世界中の人間が、次々と空を見上げる。
そして息を呑んだ。
ゼル「クラウンは転送装置だ……膨大なエネルギーと準備が必要だが、惑星ごと転送することだってできるのだよ」
空を埋め尽くす巨大な球体。
その大きさは月などとは比べ物にならない。人間に視野では視界に納めるのが精一杯なほど近くに迫る巨大な塊
「お…おい…あれ…ホントに映像なんだよな……」
誰かが震える声で呟く。
しかし、その問いに答えられる者はいない。
ゼル「我々はヒーローとの戦いに負けた!だが!! 戦争に敗北したわけではない!!この星諸共、消え去るがいい!!」
紫雲「くそっ!!」
ゼル「我が同胞よ!!あとは…頼んだぞォオオオッ!!!!」
ドカァアアアアアン!!!!!!!!!
「「うわぁああああああっ!!!!」」
ゼルは自爆し、コックピットが大きく揺れる
桃華「っ!! バラレンジャーロボ、損傷率45%!……これでは…もうまともに動かすことも……」
金一「そ、そんなぁ…!」
麗「ど…どうしましょう…何か、手立てはないんですか!?」
ことみ「……………………」
重たい沈黙が流れる。
世界中の人々もまた、固唾を呑んでその行く末を見守っていた。
銀河「…一つだけ…方法がある…」
ことみ「! どんな方法なの!?」
銀河「ヒーローギアを接続して、おれ達のエネルギーもバラレンジャーロボに回すんだ」
黄慈「…いや無理だ…ぼく達はもう、ゼルとの戦いでエネルギーを使い果たしてしまった…」
みどり「そうだよ! このヒーローギアは、あたし達の生命エネルギーを使ってるんだから…これ以上使ったら死んじゃうよ!」
朱祢「…でも…私たち11人の命で地球が救えるのなら……」
ことみ「っ!そんなのダメよ!」
桃華「はい。ワタシの計算でも現在のエネルギー総量では、必要出力の7.3%しか満たせません。仮に全員の生命エネルギーを変換したとしても、動かすのがやっとです」
麗「なら…どうすれば……」
桃華「…ワタシ達だけでは足りません」
ことみ「え…?」
銀河「あぁ…おれ達の力だけじゃ足りない…おれ達11人だけじゃ、世界を救えない。だから――」
銀河は世界へ向かって叫ぶ
銀河「力を貸してくれ!少しずつでいい!皆の力を、おれ達に分けてくれないか!!」
静まり返る会場。
誰もが息を呑む。
その時――
「いいぞー!!」
一人の男が立ち上がった。
「持っていけー!!!」
その声を皮切りに、
「おれのも使えー!!」
「私もー!!」
「あぁ!いくらでも貸してやるぞー!!」 「どうすればいいんだー!?」 「私の力も使ってー!」
次々と声が上がっていく…
銀河「っ!みんな…!ありがとう!! 力を貸してくれる人は、空に向かって両手を挙げてくれ!!おれが光にして、ここまで運ぶ!!」
「こうか…?」
無数の手が空へ伸びる
ポワァ…
「うわっ!なんか出た!?」
人々の掌から、光の粒が舞い上がる。
麗「すごい…!エネルギーの塊がこんなに沢山…!!」
モニターに映し出されたバラレンジャーロボの周りにも次々に光の粒が集まる。しかし…
銀河「っ!駄目だ…くっつかない…!」
光は粒のまま、それぞれが独立して宙に浮いている
紫雲「バラバラのままじゃ、エネルギーとして使えないぞ…!」
ことみ「!」
ことみは大きく息を吸い込む。
ことみ「皆さん!どうか、心を一つにしてください!!
国が違っても!
人種が違っても!
考えが違っても!
平和を願う気持ちは、きっと同じはずです!!
心の中で祈ってください!世界の…平和を!!」
その言葉を聞いた会場の人たちは、世界の平和に思いをはせる。
空を見上げる者もいる…
どうか…と呟く者もいる
目を閉じ、両手を組む者もいる
十字を切る者も、神を信じる者も、大勢で声を上げる者たちも……
十人十色。行動はバラバラだったが、その心は同じ…
人々の想いは重なり、大きく、強くなっていった……
虎羽「光が…一つになっていく……」
一つの巨大な塊となった光はバラレンジャーロボを包み込んだ
朱祢「っ! 力が…溢れてくる…!!」
雪「すごい…!」
桃華「エネルギー総量上昇!300%……500%……700%を突破しました!!」
光に包まれるコックピット
金一「みんな……ありがとう!!これなら、まだ戦えるよ!!」
ブラウン「あぁ…負ける気がしない!!」
ググググッ……! ドンッ!!!!!
膝をついていたバラレンジャーロボが立ち上がる。
「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」
その姿を見た瞬間――
国境も、人種も、言葉の壁さえも越えて。
世界中で同時に歓声が上がった。
桃華「最終兵器を使いましょう!!」
「「あぁ!!」」
バサァッ!!!!
光の翼が大きく広がる。
ドンッ!!!!!
大地を蹴ったバラレンジャーロボは、そのまま空へと飛び立った。
ことみ「使うと思って用意してたわ!!」
金一「行くよ!みんな!!」
「「アルティメットドリルコネクト!!!!!!!」」
ドッガシャァァアアン!!!!!!
右腕へ超大型ドリルが接続される。
そのまま大気圏を突破し、宇宙へ。
青く輝く地球を背に、
巨大な惑星の前へと躍り出た。
桃華「皆様の力を一つに……そして…地球の人々の想いも、一つに!!!!!」
銀河「地球のみんな!!」
虎羽「信じていてくれ!」
ブラウン「ヒーローは必ず――」
みどり「悪を打ち砕き――」
雪「正義の光と共に――」
金一「勝利すると!!!」
藍「それを目の前で証明してみせますわ!」
「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」」
世界中から歓声が轟く。
ことみ「薔薇薔薇戦隊バラレンジャー 最後の作戦開始よ!!!」
麗「絶対、帰って来てくださいね!!」
朱祢「えぇ…応援してくれる人たちの想いに懸けて…」
黄慈「しっかり、見守っていてくれ!」
紫雲「準備はいいね…!…行くぞ!!」
ドリルを前へ突き出す
ギュィイイイイイイイイイ……!!!!!!!
世界中から集まった光が渦を巻き、七色の螺旋となる
「「必殺!!!スパイラルレインボー・インパクト!!!!!!!」」
ドガッ!!!ガガガガガガガガガガガガッ!!!!!!!
超高速回転するドリルが惑星へ突き刺さる。
後方には地球からも観測できるほど巨大な光の尾が伸びた。
「「いっけぇええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!」」
「「「「頑張れぇえええ!!バラレンジャーーーー!!!!!!」」」」
地殻を砕き、
マントルを貫き、
灼熱の核へ到達する。
カッ!!!!!!!ドォオオオン……………
銀河「まだまだぁッ!!!!!」
桃華「はい!!」
ドリルを装着した右腕を大きく引く
「「アルティメットメテオ!!!!」」
ドォンッ!!! ズガガガガガッ!!!!!!
ロケットパンチのように射出されたドリルは猛烈な勢いで惑星内部を掘り進む
バシュゥウンッ!!!!
その間に反対側に回り込み、抜刀――
シャキィイン…!! ズォオオッ!!!!!!
刀身に光が収束していき、ついには惑星を超える巨大な光剣となった
「「エクスロード・スラッシュ!!!!!!!!!!」」
光の斬撃が惑星を両断する。
ズァアアッ!!!!! カッ!! ドカァアアアアアアンッ!!!!!!!!!!
剣が地表を焼き、中心部でドリルが大爆発を引き起こし、惑星は耐え切れず貫いた穴から崩壊した
麗「やったっ…!!」
ことみ「あともう少しよ!!」
金一「これで終わらせる!!」
ペタルビットを周囲に展開。
両腕のビーム砲。
胸部のストリームブラスターキャノン。
全武装へエネルギーが集中する。
「「ファイナル・フォース・フルバースト!!!!!!!」」
ドシュゥン!!!ビシュン!ビシュン!ビシュン!ビシュン!ビシュン!!
一斉に発射されたビーム砲が星の残骸を爆破する
カァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!
宇宙そのものを染め上げるような大爆発。
やがて光が収まる。
…プシュゥウ……
エネルギーを使い果たしたバラレンジャーロボが静かに停止する。
桃華「任務完了です」
一瞬の静寂。
そして――
「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」
「「やったーーー!!!!」」 「「バラレンジャー!!」」 「「バラレンジャー!!」」
「なんだ…あの会場、やけに盛り上がってるな…」
「おい、見ろ!空のあれ消えたぞ!」
*
「ふぅ……いったい、どんな仕掛けだったんだ……」
「少なくとも、我々のレーダーには本物に見えましたね」
「……本物なわけがあるか」
男は首を振る。
「もし本物なら、百年……いや二百年は先の技術を見せつけられたことになる……」
「ですが途中、明らかにCGと思われる映像もありました」
「あぁ……何か仕掛けがあるはずだ」
しばしの沈黙。
「何にせよ、調査するしかない。徹底的にな……」
*
銀河「ここまで応援してくれた皆……どうやら、おれ達はここまでのようだ…」
モニターに映し出されるコックピット内
ガガッ…ボン!
と、音を立てて壊れるヒーローギア
銀河「もう、おれ達はヒーローになれない……でも、君たちは知っている。世界中の人々が力を合わせれば、どんな絶望だって撥ね返せると…!どんな困難だって、乗り越えられるってことを!!」
紫雲「次のヒーローは、これからを生きる世界中のみんなだ!!」
虎羽「信じる心が、人類の『可能性』を切り拓く……このことを絶対、忘れないでくれ」
みどり「…さっ!お話はそれくらいにして……プレゼント、あるんでしょ?」
銀河「あぁ、そうだった…これはおれ達からのお礼も兼ねた、少し早いクリスマスプレゼントだ!受け取ってくれ!!」
映像が切れる
「…なんだ…?プレゼントって……」
「まだ何かあるのか…?」
「…っ!見て!!」
一人の女性が指をさす
「「!!!!!」」
空を見上げるとそこには…
「すげぇ……」
「綺麗………」
無数の虹色の流れ星。
砕け散った惑星の欠片が、夜空いっぱいに光の軌跡を描いていた。
「まるで神話だ……」
*
「おい!外みてみろよ!」
「え?なに?お兄ちゃん」
「いいからいいから!」
二人の幼い兄弟が外へ飛び出す
「わぁ…!!」
「な!すげーだろ!?」
「うん!!すごい!!」
世界中を虹色に染め上げたヒーロー
その正義は、誰かの心に刻まれ、受け継がれていくのかもしれない…




