第三十三話「消えない傷跡」(ブラック3)
第三十三話 「消えない傷跡」
(主人公 ブラック3)
1泊2日の秋の旅行が終わり、解散したバラレンジャー。
コトミ、みどり、金一の三人に迫られ、半ば強引に雪を家まで送ることとなったブラウン。
雪「…………………」
ブラウン「……………………」
静かな住宅街を、横並びで歩く二人
雪「……………………」
ブラウン「………………………」
雪「……あ…あの……す、すみません……わたしなんかに付き合わせてしまって…」
ブラウン「…?…いや、大丈夫だ……」
雪「…………………」
ブラウン「……………………」
雪(うぅ~~…どうしよう……なんて切り出したらいいか分からないよぉ……意識するほど頭が真っ白になっちゃうし…どうしたら…………昨日、ことみさん達…何て言ってたっけ………)
*
旅館の女子部屋にて
ことみ「…さっきも言ったけど…クラウンも無くなって、バラレンジャーとしての活動も年内までって会議で決まってしまった以上、ブラウンくんともいつまで会えるか分からないわ……伝えたい気持ちがあるのなら、後悔しないようにね」
*
雪(……そうだ……もう…二人っきりになれる時間なんて、ないのかもしれない………だったらわたしは………)
ブラウン「…そういえば…少し、話したいことがあったんだ……」
雪「へ?話したいこと…ですか?」
ブラウン「ああ…。……オレはあそこで働いてからずいぶんと変わった。…沢山の友達ができて…生きるのが少し…楽しくなった……。それに…服も変わって…ごはんも食べるようになった……心も…元気になった………」
雪「…そう……ですか………」
安らかな笑顔を見せる雪
ブラウン「…オレが変われたのは雪ちゃんがいてくれたおかげだ」
脚を止め、まっすぐに雪を見つめる
ブラウン「…ありがとう……」
雪「っ…!」
その微笑みが胸の鼓動を昂らせた
雪「…わ、わたしなんて何も……!」
ブラウン「…そんなことはない。…ことみさんや、みどりさん…藍さん、黄慈さんから聞いた…。…雪ちゃんは、いつもオレのことを気にかけてくれたんだろ?…最初の頃は、そんな優しさ…必要ないと思っていた……。でも、今は……笑えるようになって、良かったと思える…。…雪ちゃんが…優しくしてくれたおかげなんだ……」
雪「…っ!!」(…どうしよう……わたし………)
ブラウン「…暗くて何もない世界に…光をくれた……。オレは…雪ちゃんがいてくれたおかげで……バラレンジャーのこと…好きになれた気がする……。本当にありがとう…」
ブラウンは深々と頭を下げた
雪「……はい………それなら、よかったですっ…!」
ブラウン「…………」
雪「…………」
互いに少し、頬を赤らめ数秒固まる
ブラウン「…ちょっと…恥ずかしかったな…」
雪「は、はい……」
ブラウン「…それだけ伝えたかったんだ……」
再び、歩き出すブラウン
ブラウン「ごめん……行こうか」
雪「は…はいっ…!」
*
その後も何度か会話があったけれど、わたしは緊張してしまったし、ブラウンさんも口数の多い人じゃないから一言二言で終わってしまった。
休日は何をしているのかとか、お給料はどう使っているのかとか、好きな食べ物とか…そんな他愛もないことを話していたらあっという間に家の前まで来てしまっていた…
ブラウン「ここか…………もう、大丈夫か?」
雪「は、はいっ!…今日は、送ってくださってありがとうございましたっ!」
ブラウン「ああ………じゃあまた職場で…」
雪「あ、あのっ!」
ブラウン「…? なんだ?」
雪(あ…どどど、どうしよう…!咄嗟に引き留めちゃった…!!何か…何か話さないと……)
ブラウン「…?」
雪「あのっ……ブラウンさんは…バラレンジャーが終わった後、どうしますか…?」
ブラウン「…………」
雪(っ~!何聞いてるのー!?そんなことわたしだって考えてないのにー!!)
ブラウン「……そうか………そういえば……終わるんだよな…バラレンジャーも………」
雪「……………」
ブラウン「……終わったら…か……………」
ブラウンは遠い目をしながら空を見上げ続けた
雪(………ブラウンさん…すごく考えてる………………なんだろう……不思議な感じ………時間が止まったみたい……。わたし……ずっと待てる……。この人といる時間は、何も話すことが無くっても苦痛じゃない………あ……あれ…?この気持ち…………そういえばさっきも……)
*
「…雪ちゃんが…優しくしてくれたおかげなんだ……」
「…っ!!」(…どうしよう……わたし………)
*
雪(…あの時…わたし……この人の気持ちを独り占めしたい…って……思っちゃった…………)
この優しさはわたしの物…
わたしが育ててきた物……
あなたはわたしで救われて
わたしはあなたで救われたい
わたしだけを見て
わたしの優しさを愛して
あなただけは、わたしに優しくして
雪(っ!!!………なんだろう………知ってはいけない…心の奥の気持ちが………………あれが……本当の……わたし………?)
ブラウン「………考えたけど……」
雪「!」
ブラウンがようやく口を開く
ブラウン「…皆がいない生活は…哀しい……」
雪「…!」
ブラウン「…できれば……皆と一緒にいたい……けど…そうは言ってられないよな……………でも…バラバラになりたくはない………」
雪「…………わたしもです…」
ブラウン「…!……雪ちゃんも?」
雪「…はい…。…わたし……バラレンジャーの皆さんのことが…大好きです………。沢山助けてもらって…沢山笑って…沢山ぶつかったけど、その分仲良くなって………」
ブラウン「……………」
雪「…わたしにとって、あの場所は……もう一つの家みたいなもので……あの人たちは、わたしにとって……家族のような………そんな温かさを感じていました……」
ブラウン「……家族…か………………オレも…そう思う……」
雪「…! ブラウンさんもですか…!?」
ブラウン「…あぁ…………オレは…長い間…家族と会えない日々を送っていた……。だから、あの人たちの優しさは、とても温かく感じた………」
雪(…この人も…やっぱりわたしと同じ…………強がっていたけど…家族の温もりが恋しいんだ………)
ブラウン「………………!」
雪の視線に気づき、じっと見つめ返すブラウン
雪(…皆と…離れ離れになりたくない…………)
心に、そっと手を伸ばすかのように視線が交わり続ける…
雪(…今なら言えるかも……わたしの…気持ち…………)
ブラウン「………………」
雪「………あのっ……」
その時
ガチャ…キィイイ……
「「!!」」
アパートの扉が開き、一人の男が出てきた。
??「………チッ……」
その男は、二人を見ると舌打ちをして中に戻っていった
ブラウン「……知り合いか…?」
雪「あ………う………うん…………」
ブラウン「……もしかして…あれが、父親か…?」
雪はコクリと頷く
ブラウン「……………」
雪「…も…もう、わたし…帰らないと……」
ブラウン「…!」
ガシッ!
立ち去ろうとする雪の腕を掴むブラウン
ブラウン「……いい人なのか」
雪「…えっ…」
ブラウン「あいつは良いお父さんか?」
雪「…………うん。いいお父さんですよ……」
ブラウン「…嘘だな。どうして嘘をつく?」
雪「っ…!………………」
ブラウン「………何かされているのか?もしかして暴力なんか…」
雪「っ!!違いますっ!……ほんとに…なんでもありませんから……」
少しだけ力を入れるが、ブラウンが放す気配はない
ブラウン「…また嘘を……っ!!………もしかして……夏でも長袖を着ていたのは……」
雪「違っ…!…うっ………」
頭を押さえ、苦しむ雪
ブラウン「…腕…見せてみろ!……っ!!!これは……」
雪「見ないで……みな……………」
袖をまくると、そこにはいくつもの傷跡が残っていた
ブラウン「……………」
ハク「やめろっつてんだろうがっ!!」
ブラウン「がはっ!!」
ドムッ!!
と、突然腹パンを食らうブラウン。
ブラウン「!?!?」
ハク「あ~あ…ったくよぉ…おれが出てきちまうとはな…。…てめー…ブラウンだろ?」
ブラウン「………そうだが…………」
ハク「これはおれ達の問題だ、他人がどうこう口挟むんじゃねぇよ。わかったらさっさと帰れ。そして、このことは忘れろ。おれのことも…この傷のことも…」
ブラウン「………………」
状況が飲み込めていないブラウンを置き去りにし、部屋へと戻るハク
*
バタン……
ミカ「……いいの?あんな風に突き放しちゃって…。彼、混乱してたわよ?」
ハク「しょうがねぇだろ!急に出されたおれの身にもなれよ!」
ミカ「でも……彼、ユキのお気に入りでしょう?もしユキが嫌われでもしたら…」
ハク「じゃあおれにどうしろっつーんだよ」
ミカ「……とりあえず後でフォローを入れておきましょう。」
ハク「はぁ?誰が?」
ミカ「ハクが!に決まっているでしょう!?」
ハク「ちっ、やっぱりそうかよ。クソッ……あ~あ、まためんどくせーことが増えた」
小声で話していると、奥から男の声が聞こえる
「おい!帰ったんならさっさと飯作れ!」
ハク「……ま、とりあえず今はあのクソ親父からなんとかしねぇとな……」
ミカ「……ねぇ…そのこともそろそろ決着つけるべきじゃない?せっかくいい人がいるんだからもうあんな奴にこだわらなくても…」
ハク「……そりゃダメだ……そんなことした方がユキが悲しむだろ……」
ミカ「…………………」
*
一週間後
ピンポーン
ブラウン「…はい…」
ハク「よう!」
ブラウン「!!! ゆっ……何か用か?」
ハク「ちっと話さなきゃなんねぇことがあってよ。…お前も今日休みだろ?入っていいか?」
ブラウン「…………」
*
ズカズカと上がり込み、何もない部屋の真ん中に胡坐をかいて座る
ハク「この間は悪かったな。…ストレスが限界突破すると勝手におれが出てきちまうんだ」
ブラウン「…二重人格ってやつか…?」
ハク「おっ知ってんじゃねぇか!なら話は早ぇな。見た目がおんなじでも全然違う人ってことだ。まぁ今は髪型変えてるけどな。」
ブラウン「…雪ちゃんと違うっていうのは、なんとなく分かっていた……」
ハク「…そうだ。おれの名前はハク。まぁ覚えなくてもいいがな。で、おれが言いたいことはただ一つ。あの時のことはおれがやったことだ。ユキがやったことじゃねぇ。だから、ユキのことは嫌いにならないでくれ!頼む!」
手を合わせ、頭を下げる
ブラウン「……ああ、わかった。」
ハク「おっ!なんだよ!お前話がわかんじゃねぇか!ほら!言ったじゃねぇか!話せばわかるってよ!」
ミカ「ちょっと!なんで今話しかけんのよ!」
ブラウン「!?」
虚空に向かって話しかけたかと思うと、白い靄がふわりとハクの横に現れる
ミカ「ほらー困惑しちゃってるじゃない。ユキはアタシのこと教えてないのよ。」
ハク「ありゃ、そうだったのか。まぁいいじゃんか!こいつは多分それでも受け入れてくれるぜ!」
ミカ「突然ごめんなさいね。アタシはこの子たちの保護者みたいなモノよ。この子を護るために力を与えたのだけれど…そのせいでユキから神様、神様って言われるようになっちゃって…。流石に神様って呼ばれるのは恐れ多いからってことで「ミカさん」と呼ばれるようになったわ。 ミカさんでも呼び捨てでもいいわよ。それとも…他の呼び方で呼んでくれるのかしら?」
ブラウン「……………」
ハク「おい!グイグイいってんじゃねーよ!余計に混乱しちまったじゃねぇか!」
ミカ「えぇ~ だってぇ…せっかくならアタシも仲間に入れてほしいんだもん…」
ブラウン「……一旦落ち着かせてくれ………今、飲み物を用意する……ちょっと整理させてくれ。」
台所に立ち、みどりから貰ったインスタントコーヒーを取り出す。
ポットからお湯を注ぎ、そのままマグカップをハクに渡す
ハク「おう、サンキュー。……これは……コーヒーか?」
ブラウン「あぁ……嫌いだったか…?」
ハク「………………」
ハクはじっと見つめた後、恐る恐る一口すする
ハク「うぇ……苦い………」
ミカ「あらあら…ハクはコーヒー苦手だったのね…」
ハク「ユキだって嫌いだろ、こんな苦いだけの飲み物…」
ブラウン「ごめん……」
ハク「砂糖とかねぇのかよ」
ブラウン「ない……」
ハク「………(ズズ…)…うぇぇ………」
ブラウン「無理に飲まなくていい」
コトンと、フローリングの床にカップを置く
ハク「……んで、状況は整理できたか?」
ブラウン「……あぁ……なんとなく……」
ハク「……まっ、おれがユキと違うってことが分かってくれりゃそれでいいんだ。…頼むから、ユキのこと嫌いにならないでくれよな…」
ハクは立ち上がり、玄関へ向かう
ブラウン「っ!待ってくれ!」
ハク「……なんだ?…わりぃけど、全部は飲めねぇよ……」
ブラウン「いや、それはどうでもいい………雪ちゃんは……いや……ハクちゃんも、あの男から酷いことをされてるんじゃないのか…!?」
ハク「…………お前には関係ないことだ…」
視線を戻し、家を出ようとするハク
かみさん「ハク!!…お願い…話してあげて…ユキよりもあなたの方がこの問題を解決できるわ…。彼も力になりたがっているし、これはチャンスよ!ユキを救う最大の…!」
ハク「…………………」
ブラウン「……聞かせてくれ……何があったのか………」
鋭い目つきで質問するブラウン
ハク「……………はぁー…わぁったよ……」
ゆっくりと元の位置に戻り、また胡坐をかいて座る
ブラウン「…ハクちゃん……ありがとう……」
ハク「…ちゃん付けはやめろ……ハクでいい……」
ブラウン「…わかった………」
ハク「…………………」
ハクは視線を下に向けたまま、「ハァ……」と深いため息をついてから話始めた
*
おれが生まれたのは小学校に上がる前だった……
おれはあのクソ親父に殴られていることに気が付いた。そして心の中に泣いているもう一人の女の子がいることにも気が付いた。
その時思ったんだ。おれがこの子を護らなきゃいけない。そのために生まれてきたんだって…
だから、おれはユキの代わりに殴られた。あいつに痛い想いをさせないために。最愛の親に憎悪を向けられるなんていう苦痛を味合わせないために…
そんな日々が続いた。おれの他にも母親が殴られている時もあったが気が付いたら二度と帰ってこなくなっていた。その時から暴力はエスカレートしていった。食事もろくに与えてもらえなかった。おれはあいつの食い残しを漁って食っていたよ。それすらもない時はひたすら我慢したね。あれほど辛い時は無かった。お腹が空くのはまだ耐えられる。だがな…心が満たされないっていうのはその何倍も辛いんだ…。
中学に上がったくらいからあいつの行動が変わってきた。顔や手のひらなんかには傷が出来ないように腹や太もも何かをよく蹴られたり殴られた。そして保護者として最低限のことだけはするようになったよ。児童相談所の奴らや近所の人間とかから文句を言われない程度のな。おかげで給食は食えたがな。まぁでも…それだけだ。まともな食事は給食だけだった。学校が無い日はずっと公園にいたよ。家にいたらそれだけで殴られるしな。公園なら勉強もできるし、水も飲める。ただ、目立つからな。大人が来た時はすぐに隠れたよ。もしかしたら捕まるかもって思ってたから内心ビクビクしながらな……
*
ブラウン「……どうしてそこまで……大人に言えば、助けてもらえたんじゃないのか……」
ハク「……あぁ…おれもあんな生活嫌だった……。でもユキは…お父さんが悪者になっちゃうって言って絶対に通報されるようなことはやらなかった。学校でも全ての人間に嘘をついてまで隠していたよ…。だから誰にも頼れなかった……本当の友達なんて一人もできなかった……」
ブラウン「……………」
ハク「……そんな生活は続き……高校に入るとバイトをさせられた……おれ達は…金稼ぎの道具にされたんだよ……」
ブラウン「……………」
ハク「ろくに学校も行けず、食べたい物も食えず、買いたい物なんて、何一つ買えずに!
あんなろくでなしのために働き続けたんだ!…………ユキがいなけりゃ……こんなこと……絶対にしねぇのに………」
ブラウン「…………………」
ハク「………そして……………………」
ブラウン「……?」
ミカ「……ある事件が起きたのよ」
ブラウン「…!」
ハク「…………………」
ミカ「…アタシがこの子たちに会ったのはその瞬間だったわ。…あの男が、無理矢理ユキの服を脱がそうとしていたのよ…」
ブラウン「!…なんだと…!!」
ミカ「…そんな状況、見て見ぬふりなんてできるはずないでしょう? …だから、この力を使って助けたの。……その時は力に驚いて、何もされなかったし…それ以来、暴力を振るう頻度もかなり減ったわ。」
ハク「……おれもミカも…あいつのことを良く思っちゃいねぇんだ。…この力を手に入れてから、何度殺そうかと思ったかわからねぇ……」
ブラウン「…………」
ミカ「…アタシもね…そのつもりで渡したのよ………でも…この子たちは……いえ…ユキはやろうとしなかった……」
ハク「…ユキはな……あんな奴でも好きなんだよ……愛してるんだよ………」
ブラウン「…………………」
ハク「……いつか優しいお父さんに戻るって信じてんだ……だからおれ達にはどうにもできねぇし、ユキもそれを望んじゃいない……お前にも、余計なことはしてほしくねぇんだ……わかったか……?」
ブラウン「…………………」
しばらく、重たい沈黙が続いた
ミカ「……ねぇ…ハク………」
ハク「…あ…?」
ミカ「………もう………いんじゃないかしら………」
ハク「…………何がだ………」
ミカ「…ねぇ…ブラウンくん。あなた、ユキのことどう思ってるの?」
ブラウン「え……」
ミカ「…もし、ユキが助けを求めてきたら…救ってくれる?」
ブラウン「…当たり前だ。」
ハク「!」
ブラウン「…雪ちゃんは…オレのことを救ってくれた………オレは…そんな人の為なら、全てを捧げられる…!」
ミカ「……ねっ…この子もそう言ってくれてることだし……もう…決着をつけていいんじゃないかしら……」
ハク「……決着って…どうするつもりだ………」
ミカ「児童相談所に相談するとか……とにかく、あの男とは距離をとりましょう…」
ハク「………………」
ブラウン「…距離を取るだけじゃ……ハクが幸せになれないんじゃないか…?」
ミカ「っ…!」
ハク「……なぜ、そう思う………」
ブラウン「………雪ちゃんがいる限り…それだけじゃ足りない………」
ハク「……よく分かってんじゃねぇか……」
ブラウン「……二人が幸せになるには………二人が知り得ない所でアイツが消えることだ」
ハク「………ハッ!…んなこと出来んのか?」
ブラウン「………君がそれを強く望むのなら……いや……アイツが本物の悪であるのなら……いつか『ヒーロー』が裁く。」
ハク「…………………」
覚悟を宿したその瞳をじっと見つめるハク
ハク「……おれの記憶を、ユキが読むことはできない。…だから、おれになら言ってもユキには伝わらない。………お前…何しようとしてんだ?」
ブラウン「……………君は、辛い秘密をおれに教えてくれた………だから…おれも秘密を話そう……」
ミカ「秘密…?」
ブラウン「…おれは、人の心が読める。…正確には人の思考の流れがな……。ハクのことを、すぐに別人だと判断できたのも、この能力のおかげだ。」
ハク「…へぇ……」
ブラウン「…あの時、明らかに流れが変わった。いつもの雪ちゃんじゃなくなった。…今もそうだ。同じ人の流れをしていない…」
ミカ「そんなことが分かるのね…」
ブラウン「…だから、質問一つでその人が嘘をついているのかもわかる。……オレはこの能力を使って、更生の余地の無い悪人を裁いている。」
ハク「…裁くって……殺しでもやってんのかぁ?」
ブラウン「…そうだ」
「「!!」」
ブラウン「……オレは…雪ちゃんみたいな善人を護る為に、悪を裁いている。……善人が笑えない世界なんて…オレは許せない…。…たとえ、雪ちゃんに嫌われることになったとしても……君が救われるのなら……雪ちゃんが、今よりも楽になるのなら……オレはやる……」
ハク「……!!」
ミカ「……………どうする……?…ハク………」
ハク「…………………」
ブラウン「…………覚悟はできている。…オレは…雪ちゃんとハクが今より幸せになってくれるのなら、それだけでアイツを殺せる。……たとえ…どれほどの憎悪が、オレに向くことになったとしても…………」
ハク「…………………」
もう一度、ブラウンの顔を見つめる
ハク「…………………」
ミカ「…ハク……頼っていいのよ……あなたはもう充分苦しんだ………もう………お願いだから楽になって………」
ハク「…………あぁ………………そうだな…………………アイツが変わるわけなんてねぇ…………もういい加減……ケリ…つけねぇと……………」
ブラウン「…………………」
ハク「……ブラウン。」
ブラウン「…!」
ハク「…やるのなら…おれもやる………いや……おれにやらせろ……」
ブラウン「……いいのか……」
ハク「………長年ユキを苦しめた責任はおれにもある………おれも…背負うべきなんだ………」
ブラウン「……わかった………」
ハク「いつ決行する?」
ブラウン「今夜だ。」
ハク「…ハッ!………いいだろう……わかった………やるぞ……」




