第三十話「闇夜に輝く正義」
第三十話 「闇夜に輝く正義」
(主人公 ゴールド2)
先日、麗という名前の女性を助けた。悪を引き付ける体質なのか彼女の周りにはクズが多かった。ストーカーしている奴、いじめをする奴、そして今にも襲いかかろうとしている奴…
ザンッッ!!(通り魔を斬り殺す)
ブラウン(どんな人間であれ武器を…力を使うことを決めてしまったら、簡単には流されないな………。それにしても何故あの女はこんなに狙われるんだ…)
ブラウンが斬った者は悪に違いない。だが、原因があの女にあるとすればあの女も悪だ。そして…もし、あの女に原因があり、斬る順番が違っていたら、結果が変わっていたかもしれない。そんなことを考えながらブラウンは麗に話しかけた。
ブラウン「おい!あんた…オレのこと覚えているか…?」
麗「ひっ!!……あっ、あの時の……覚えてます…」
ブラウン「少し、話がしたいんだがいいですか?」
麗「はいっ…!!…なんでしょう…?」
*
麗は怖がっている様子だった。それは当然の反応だろう。いくら知っている相手であったとしても、自分の身長と同じ程のむき出しの刀身を握られていては怖がるのも無理はない。
ブラウンは麗の視線に気が付き、変身を解いた。そして、近くの公園まで行き、ベンチに座る麗の正面で腕を組みながら話を始めた。
ブラウン「あれから…何か困ったことはありましたか?」
麗「いえ…もう嫌がらせを受けることはなくなりました……。」
ブラウン「そうか……」
しばらく沈黙が流れる。
麗「あの…本当にありがとうございました…!!わたし……何が善いことなのかはわからないですけど…ブラウンさんには感謝しています!ありがとうございました!」
ブラウン「……あんた…どうしていじめられていたんだ?それに、ストーカーもされていただろう?さらには今さっきもナイフを持った男に襲われそうになっていた…。何が原因だ?あんたはなんなんだ…?」
麗「えっ……原因ですか…?え……というか何故ストーカーのことを…?結構前に被害はなくなりましたけど……」
ブラウン「あんたをストーカーしていた奴はオレが殺した。だから知っている。だから被害がなくなったんだ。」
麗「っ…!!!」
麗は目を丸くして驚いた。そしてすぐに俯き黙っていたが、次第に涙を流し始めた。
麗「わたし……あの時…ほんとにっ…こわくてぇ…ぐすっ……夜も眠れなくなっちゃって……ぐすっ……でもある時からポストに何も入らないようになったり…電話がならなくなったり…してぇ…もしかしたらいなくなったのかもって思ったら…だんだん安心してきて…ぐすっ…眠れるようになったんです……ううっ…もういないんだぁ……よかったぁ……」
麗は泣きながら心中を語った。ブラウンは藍と雪に服を買ってもらったあの日からいつもポケットに入れるようにしていた肌触りの良いハンカチを差し出した。麗は感謝の言葉を述べながら涙を拭くが、しばらく泣いていた。
ようやく落ち着き、麗は自分のことを話し始めた。
麗「わたし、小学生の頃からよくいじめられていて…今思えばいじめというより、からかわれていただけだった気もしますけど…。でも中学校でもあまりそれが変わらなくて…それを見た他の子たちもわたしをいじるようになっちゃって…。人と関わるのが嫌になって…。大学に行っても馴染めなくて…。そして、ある時強引に誘われて飲み会に行くことになって…。…………その時に襲われかけたんです…。わたしは怖くなって逃げました……。たぶん、それがきっかけでいじめられるようになったんだと思います…。ブラウンさんがやっつけてくれた人たちはその時の人たちです…。いじめに耐えられなくなったわたしは学校に行かなくなって…その時くらいから電話や手紙が来るようになりました……。」
ブラウン「…そうか……」
ブラウンは麗の話を聞いて胸が苦しくなった。そして、向かい合い話すことで「この人は善」だと確信した。ただ、うまく生きることが出来なかっただけ…ただ、この人を取り巻く環境が悪かっただけ…それだけでこんな人生に…周りの人間によってここまで人生を歪められてしまうのか…と思うと胸が痛くなった。
ブラウン「大変だったな……」
麗「…!!…はいっ……」
ブラウンのその一言を聞いた麗は涙を浮かべながらそう答えた。麗はブラウンの一言が今までの苦労を認められ、労われたように感じた。そして、自分の人生を救ってくれた張本人の言葉であったため、安堵と感謝の涙を浮かべていたのだった。
ブラウン「…あんたが悪い人じゃないのはよくわかった。周りが悪いだけだったんだな。」
麗「…そうかもしれませんね。昔からついていないって思うこと多くって…はは…」
麗は少し笑いながらそう言った。その笑顔にはもう怯えや不安はなかった。
ブラウン「そろそろ帰ろう。家まで送ります。」
麗「はっ!そうですね。つい、いろいろ話してしまいました。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」
ブラウンは麗を家まで送った。そして家の前で別れ際にまた少し話をした。
ブラウン「あんたの家はバラレンジャーの管轄に入っている。だから、何かあったらいつでも連絡していい。」
麗「はい、わかりました。ありがとうございます。」
ブラウン「それと…ヒーローに頼むこと以外のことでも…オレになら頼っていい。いつでも呼んでくれ…」
麗「はいっ…その時はどこに連絡すればいいんでしょう…?」
ブラウン「あっ…そうだな……」
ブラウンは携帯電話を持っておらず、いつもは業務連絡しかしない無線機しか持っていたかった。そこで、どう連絡を取ろうか考えていた時あることを思いついた。
ブラウン「あとで、ある物を持ってくる。それを鳴らせば分かるようにする…します。」
麗「わ、わかりました。」
ブラウン「じゃあ、オレは帰る。」
麗「はい…何から何までありがとうございました!」
麗は深々と頭を下げた。
ブラウン「……あの…うまく言えないが…その……あんたも頑張れよ…じゃあな」
ブラウンは自分にとって精一杯の励ましの言葉をかけて空を飛んだ。その背中に向かって麗は叫んだ。
麗「ありがとう!わたしのヒーローーー!」
ブラウンは背中を見せたまま腕だけで応える…。誰にも見せなかったが、口角は上がっていた。ブラウンはこの時、初めて『ヒーロー』になって良かったと心の底から思った。
人間の醜悪な所ばかりを見て、悪を裁く悪として手を染めていた。それが自分にしかできないことで、正しいことだと信じていても誇れることなどできなかった。それがようやく認められ、報われた気がしていたのだ。
麗の言葉には、ブラウンが後ろめたいと感じていたとしても麗にとっては『ヒーロー』として映っていたという意味が込められていた。
夜空を飛び回り、悪を斬るそのヒーローはようやく輝き始めた。
*
翌日
ブラウン「紫雲さん。お願いがあるんですが…」
紫雲「お願い…?珍しいね、なんでも言ってごらん?」
ブラウン「この前、黄慈さんたちと水族館に行ったんだが…その時に…」
ブラウンは紫雲に頼み込み、超音波の出る小型の装置を作ってもらった。ブラウンは黄慈と雪と水族館に行き、イルカの声を聞いて特徴的だと思った。なぜならイルカは人間には聞き取れない20キロヘルツ以上の高周波の音を出していたからだ。様々な物体の流れを操るブラウンには空気の振動を感じることもできた。
人間の声や物音とは違う、異質な振動であればいつでも感じ取ることが出来る。そのため、超音波装置を作った。そして後日、その装置を麗に渡した。
*
ドン! バキッ! ボンッ! ビキ… ジジジ…
何者か「…いつまでそんなことをしている?」
ブラウン「ふぅー……できるまでだ。」
何者か「お前の力は無限に等しい。ただでさえ、この狭く小さい星の中でさらに被害を抑えるために力を制限しているというのに、さらにその力を小さくして制御するなど不可能に近い。その力にそんな機能はつけていない。」
ブラウン「あの時だってやっただろう?あれを乗り越えたからオレはここにいる…出来ないなんて道理はない。」
何者か「力を与えた本人が無理だと言ってもやるのか?」
ブラウン「……諦めて何が変わる…。オレの力が少しでも役に立つなら……オレは……。お前も考えろ。この力のことを知っているなら、できないできないと嘆くエネルギーを、できると考える方に変えろ。」
何者か「ふっ…お前は変わらないな。その言葉が出るから気に入ったんだ。いいだろう。やってみようじゃないか」
何者か(そういえばブラウンローズのやつも諦めの悪い性格をしていたな…。自らが光を示すヒーローと、闇夜の中で闘うヒーローか…。対極にいるように見えたが案外変わらないのかもな…。同じブラウン同士、何か運命的なものでもあるのだろうか…。ふっ…出来すぎた偶然だ…)




